□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2003/05/26]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第138号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  希望は人を成功に導く信仰である。希望がなければ何事も成就するものでは ない。                        ・・・・・ヘレン・ケラー  願いは子どもを育てる信仰である。願いがなければどんな育ちもなるもので はない。                      ・・・・・H.モリのクマさん ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★ママの?★              『這わない?』                               (第08号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  いまの子どもは這わないで立つ,そんな感想が年輩の方から聞こえてきます。 ママの方は,赤ちゃんがほとんど這うこともなくすぐに立ち上がると,うれし くなります。よその子どもはもう立っちができるのに,うちの子はまだハイハ イしている,それが発育不全のような不安に見えてしまいます。焦らないでく ださい。  這えば立て,立てば歩めの親心。かつての親はそう思っていました。はやい 育ちを待ちわびる気持ちはいまの親と変わりませんが,這うことを一つの過程 として認めていました。決して特急が通過してしまう途中駅とは思ってもいま せんでした。育ちには特急はあり得ないのですから。  かつては,赤ちゃんは畳の布団の上で寝かされていました。いまでは,ほと んどがサークルベッドの上なので,這うことは全くできません。サークルの柵 に捕まると,立つことを覚えていきます。ハイハイをする場が与えられていな いから,飛ばしてしまっています。ハイハイはしなくてもいいことなのでしょ うか?  ハイハイすることは,手や胸の発達が促されるとか,背骨が育つなど,身体 の育ちにとって意味のある過程です。それだけはありません。赤ちゃんがハイ ハイするときは,あそこに行きたいという意志があります。その実現に向けて 全身の力を振り絞って,少しずつ近づいていきます。きつい思いをしてたどり 着いたとき,やったという達成感を味わいます。ハイハイは根性ややる気の種 を植え付けることになるのです。  何かを取ろうとハイハイしている赤ちゃんを見て,優しさのつもりで,取っ てやることをしていませんか? 見ていられなくて,つい手出しをしたくなり ますが,赤ちゃんから成就の喜びを奪うことになります。やろうとしているこ とを最後まで見届けてやることが,本当の優しさです。それが子どもの喜びを 生み出すからです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★親の役割12講★         『できること 逃げてばかりは 卑怯なり』                             《第11-08講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ■つれづれ・・・  学校が土日休みになったために,授業時間が減りました。その分内容の削減 が実施されました。その結果,子どもたちの学力も低下してしまいました。至 極当たり前の成り行きです。五日制の導入のデメリットとして言われてきた危 惧が実現したわけです。だから,言わないことじゃない!  家庭二日制になってしまった今,家庭での教育はどうすればいいのでしょう か? そんなテーマでお話を聞きたいという講演依頼が増えてきました。心配 する親心はよく分かります。何とか安心をしていただきたいと思いますが,ど のように解きほぐしたら納得していただけるのか,難しい依頼です。  全国的に眺めると,土曜日にいろんな形で補習のための企画が現れています。 文部省や教育委員会も気がかりになったのか,それとも親の不安に対する施策 なのか,いずれにしろ何かしなくてはならないという状況でしょう。それは, さらに不安を煽ることになっていきます。やっぱり,心配してた通りなのよ!  実は,子どもたちの学力はかつての子どもたちに比べて土台が細っているの です。授業内容を受け入れる土台が軟弱になっていて,消化不良に陥りやすく なっています。例えば,理科離れが言われていますが,きちんと論理を構築す る科目は受け付けなくなっているためです。勉強してもおもしろくないという 感想は,消化できない体質から生まれているのです。学力の構造改革が必須で す。  ゆとりの学習,総合学習という形で導入されようとしているものは,土台の 再構築です。土台ですから外からは見えませんし,つぎ込んだ効果も分かりま せん。でも,土台が丈夫でないと,本物の実力にはなりません。試験はできて も,自分で物事を考え答えを探す能力がついていなければなんにもなりません。 いずれどこかでお話しできると思いますが,学力とは,与えられた問いに答え る力ではなくて,分からないことを自ら見つけて,それを学ぼうとする意欲を 土台とする力なのです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問11-08:お子さんの卑怯を抑えていますね?】      ・・・・・「卑怯を抑える」という意味を確かめておきましょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○逃げる?     砂場で一緒に遊んでいた友達が突然泣き出しました。周りにいた子ど    もたちは,「ぼくは何も知らないよ」と逃げていきました。遊んでいた    ら砂がかかってしまったのかもしれません。何が起こったのか確かめよ    うともせず,とにかく責任逃れをしようとしているようです。ちょっと    したことでも不都合な事態には関わりたくない,それは卑怯です。     遊んでいる仲間を見捨て放り出して自分を守ろうとする,それは逃げ    ることです。自分にも何かが降りかかっていれば,身を守ることは仕方    ありません。でも,自分に何もないのに友だちのことを気遣おうとしな    いのは,仲間としての信頼を失墜することです。     「どうしたの?」,その一言を掛けてやることができたらいいのです。    それができるような子に育てるためには,どうすればいいのでしょうか?    子育ちは体験の賜物という原則に従えばいいでしょう。「どうしたの?」    とママからいつも声を掛けてもらっていると,聞き慣れていきます。慣    れるということが大切です。     慣れると自分から言えるようになります。ママに向かって「どうした    の?」と言ってくることもあるでしょう。そんなとき「何でもないの」    と受け流してはいませんか? 幼い子どもに言ってみたところでどうし    ようもない,ということでしょう。でも,ちょっとだけ助けを求めてみ    てはいかがでしょうか。子どもなりに,ママのために一所懸命考えてく    れますよ。     ママの力になれるという体験が,友だちにシフトするのは簡単です。    したことがあることは,いろんな場面で苦もなく発揮することができる    ものです。言って聞かせてできるようにはなりません。同じようなこと    をしたことがある,ママはそんな体験の練習台になってくださいね。     幼い子どもが友だちを放り出すような卑怯な行動をするのは,責めら    れません。どうすればいいのか,学習していないからです。でも,児童    になっても同じままでは,卑怯な子どもとして仲間からの信頼は得られ    ないでしょう。卑怯を抑えるためには,卑怯にならないような体験をさ    せることです。 ・・・《逃げるのを抑えるには,逃げないでやるべきことを教えることです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○自己責任?     試験でいい点数を取れないのは,ちゃんと教えてくれないからという    泣き言を並べ立てる子どもがいます。自分のことを棚に上げるのは卑怯    です。約束が守れなかったことに対し,「だって,でも,どうせ」とい    う言い訳が先行するのも卑怯です。     すべて自己責任だということではありません。予測のつかない不可抗    力があるのは承知しています。その上で用心を重ねて,いつもリスク管    理をしておくべきだということです。第二の構えを備えておけば,かな    りの不都合は避けられるはずです。そのためには,自分から取り組もう    とする姿勢を取らなければなりません。     勉強は教えられるものと思うような受け身の姿勢だから,くれないと    いう恨み言が出てきます。学ぼうとする取り組み方をすれば,念のため    にここも押さえておこうという備えができるようになります。自分がで    きることに対する責任を意識し実行することが,自分を卑怯にしないこ    となのです。     何かあれば社会のせい,みんなのせい,あの人のせい,他人のせいで    こうなった,そんな繰り言ばかり言っていると,人は寄りつかなくなり    ます。いつ自分のせいにされるか分からないので,こわくてつきあいた    くなくなります。卑怯な言動は,自業自得という巡り合わせによって,    負の自己責任を突きつけられようになります。     自分のことを棚に上げるというのは,やればできることをあれこれ屁    理屈をこねてやろうとしないことです。いいこともわるいことも人に寄    りかかって当然という考え方は,結局は自分を生かそうとしないことで    あり,自分に対して卑怯になります。すればいいんだろうと,ものごと    をいい加減にする怠けも,同じことです。     だからといって,ただ闇雲に突進すればいいというのではありません。    できることを精一杯見極めて,できることはすべてやったと思えればい    いのです。そうしておけば,たとえ結果が思い通りでなくても,「あの    とき,しておけばよかった」と後悔することはないでしょう。   ・・・《自分に対する責任を感じていれば,卑怯の出番はなくなります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○パパでなければ?     弱いから,汚いから,泣くから,という理由でいじめをする子どもが    います。いじめられる側にも相当の理由があるという言い募るのも卑怯    です。弱者の非をあげつらうのは筋違いなのです。どうしてこんな理不    尽な無法がまかり通るようになったのでしょう?     卑怯という言葉は,ママの辞書にはないかもしれません。前号の「勇    気」と今号の「卑怯」とはペアになりますが,どちらも従来は男性の世    界に通用していた言葉です。パパによる子育ての中で,パパが最も得意    とする分野であったはずなのです。ところが,パパによる子育てが弱体    化したとき,特に男の子から勇気と卑怯という言葉が失われていきまし    た。     男の子に備わる腕力が野放しになることによって,少年の無軌道振り    が蔓延しています。強きをくじき弱きを助けるのが通念としての勇気で    あり,特に弱きをくじくことは卑怯であるという厳然とした査定基準が    かつてはありました。卑怯という言葉を知らない子どもに,歯止めが掛    かるはずもありません。     人をからかっておとしめて笑いものにする,それが許されるという風    潮があります。プライドを逆なですることに馴染んでしまうと,いじめ    はすぐそばに近寄ってきます。それくらいのことで痛みを感じるのはお    かしいという不感症に陥ります。人の心の痛みを感じなくなったとき,    人間関係は自己防衛のために希薄にならざるを得ません。それがまた不    感症をより悪化させていきます。     不登校になる子どもが増えてくるのは,弱いものをさげすみいたぶっ    て楽しむというアブノーマルな下地があるからです。一人でも庇うもの    がいてくれればいいのですが,寄って集ってという状況では,生きる活    力さえ吸い取られてしまいます。     保護者としての役割は,守ることです。何を守るかを明確に示してお    かなければなりません。人として踏み込んではいけない領分があり,そ    れは卑怯という烙印によって封鎖されているということを,ある程度強    制的にしつけなければなりません。それはこわい父親が子どもを守るた    めに果たすべき役割なのです。    ・・・《卑怯という歯止めを失ったら,暴力が野放し状態になります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《卑怯を抑えるとは,自分を信じてできることを実行することです。》 ※面倒だな,自分がしなくても,慣れた人に任せておけば,・・・,いろんな 陰の言い逃れを持ち出し,表向きは如何にもという理屈で上塗りをして,楽を しようとはかります。人は弱いものです。その弱さを恥じる必要はありません が,卑怯にならないように努めなければ,生きていることにはなりません。  ちょっとだけできることをやろうとすればいいのです。それががんばるとい うことですが,がんばっていれば卑怯は出てきようがありません。卑怯を抑え るのは,それにふさわしい蓋が要りようです。それががんばってみることです。 がんばった自分をほめられるようになればいいですね。  【質問11-08:お子さんの卑怯を抑えていますね?】    ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第138号は,いかがでしたか?  保母さんが消えて,保育士さんが登場しています。保父さんという呼称は短 命でした。「士」には資格を持った人というニュアンスがあります。子育ては 専門家しか関われないものというイメージが増長されるようで,クマさんはと てもイヤです。  子どもは母の心,父の心を生き写しに育ちます。母がお呼びでなくなったら, 子どもは規格に押し込められます。専門家に任せるというのは,そういうこと です。私の子ども,我が子,その父母の思いが子どもに育つエネルギーを与え ていることを忘れてはいけません。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページは ・・・「徒然窓」=      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   です。「子育て羅針盤」の「バックナンバー」,〜「掲示板」,     週刊「今週のコラム」,「子育ち12章(Ver.1〜9)」,     「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,     社会教育・ボランティア組織活動の指導者用テキスト〜    などを掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●大小問わずPTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   関心をお持ちの方は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールをお知りになりたい方は上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問11-09:お子さんの願いを認めていますね?】 について考えます。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○