□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2003/06/16]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第141号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  間違いと失敗は,我々が前進するための訓練である。                          ・・・・・チャニング  間違いと失敗は,子どもが育つための課程である。                      ・・・・・H.モリのクマさん ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★ママの?★              『甘えっ子?』                               (第11号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  3歳頃までは一人っ子という場合が多いと思われますが,まだ目の離せない 時期ということで,家の中で過ごす時間が長くなります。ママがついているか, グランドママがついていると,どうしてもついつい甘えさせてしまいます。か わいいから仕方ないですよね。  甘えにも種類があって,よい甘えとわるい甘えがあります。よい甘えはママ にしっかり気持ちがつながっていることから現れる甘えです。わるい甘えはモ ノを与えすぎたり構い過ぎてわがままになる甘えです。甘えをすべてわるいと 考えて厳しくしつけをするのはちょっと待ってください。絆まで痛めます。  ママに十分甘えて安心していると,少しずつ離れていこうとします。友だち 遊びをおもしろそうだなと思うようになっていきます。外にも楽しいことがあ ると気付いたら,ママの姿が見える範囲で飛び出していきます。何かあったら いつでもママに甘えることができる,そんな後ろ盾があってこそ外に目を向け られます。  ママにべったりという甘えの姿勢であるだっこをするとき,顔を向き合わせ るだけではなく,ママと同じ向き,後ろ向きに抱いて,一緒に周りを見回すよ うにしてください。おんぶをすると,背中の子どもは親と同じ視線を持つこと ができます。親と一緒に外の世界に関わる訓練ができていきます。シミュレー ションをすることができるのです。  普段から子どもに声を掛けるようにします。声に慣れてくると,ママの姿は なくても声が聞こえていれば安心するようになります。家の中でママの姿を探 してまわる甘えん坊さんもいますが,どこにいるかはっきりと知らせておけば 不安は少なくなるはずです。声かけをこまめにしてやってください。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★親の役割12講★         『ハラハラと 見守る親を 子は知らず』                             《第11-11講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ■つれづれ・・・  地域二日制の対応として,通学合宿という体験行事が広まっているようです。 ずいぶん前から,福岡県庄内町で始められたものです。一週間から十日程度の 期間で,施設に集団で住み込み自炊し,そこから通学します。もちろん,親の 付き添いはありません。数人の大人が指導し見守ります。  公民館などを利用する場合は,調理場はあるのですが,入浴がネックになり ます。そこで,近所の家数軒に協力をしてもらって,子どもたちが数人ずつに 分かれてもらい湯をすることが多いようです。特に高齢者の家などでは,孫の ように感じてくれて,かえって喜ばれていると聞きます。生活の一部がつなが ることは,親近感を育むようです。  かわいい子には旅をさせよ。古くからいわれている子育ての一つです。今で は,文字通りにホテルなどを利用する旅行とすり替えられているようですが, 実のところは人の家にやっかいになるということです。偉そうにするお客様で はなくて,感謝しながら世話を受ける客になることです。ホストの迷惑になら ないように気配りをするゲストになることです。  集団の一員として暮らしを経験すれば,一人で生きているのではないという ことに気付きます。そこから社会性が芽生えます。助け合っているという思い 上がりではなく,助けられているという謙虚な気持ちを実感できたら,自分を 見失うことはないでしょう。  通学合宿から帰ってきた子どもがたくましくなった,落ち着いているように 見えるという親の感想があります。子どもなりに暮らしてきたという自信もあ るでしょうが,自分の立場を見つけたという成長をしたせいです。環境が子ど もを育ててくれるということを知っておいてください。よそのお家で暮らすこ とがない今の子どもたちにとっては,通学合宿は一つの大事な育ちの環境を回 復する機会になっています。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問11-11:お子さんの冒険を認めていますね?】      ・・・・・「冒険を認める」という意味を確かめておきましょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○やる気?     やればできるじゃないの! そんな言葉がいつも出せたらいいですね。    やればできるのにやろうとしない,そんなじれったい思いを味わうのが    親かもしれません。なんとかやる気を引き出そうと,叱ったりすかした    り,あれこれ手を変え品を変えし向けますが,いっこうに効き目が現れ    ません。困ったものですね。     授業で学生に向かっていると,私語はする,聞く耳を持たない,何を    いってるのだろうというしらけた空気,むなしさにおそわれることがあ    ります。以前はそんなことはありませんでした。最近は特にひどくなっ    てきました。あーんと言って口まで箸で運んでやらないと食べられない,    そんな幼児性を残しています。     自分のお箸で食べられない,どう食べたらいいのか知らないといった    風で,言葉に乗せて知恵を運んでやっても,それを受け止める耳を働か    せていません。教えてもらおうという気ばかりで,知ろうという感度が    殺されています。常日頃,ワクワクさせてもらおう,何かワクワクする    ことないかな,それは自分の感度を上げない限り無駄な探索なのです。    おもしろいことはあるのではなくて,感じる自分を作り出すことです。     無関心は育ちの敵であり,学びの敵です。なによりも生きているとい    うことへの反逆です。五感を働かせることが生きることであり,それは    関心なのです。心を関わらせることで,知恵が摂取できます。知らない    ことに向かって,気持ちを沿わせようとする,それは五感の冒険です。    ワクワクするのは,自分の気持ちの感度を上げた状態なのです。     目の前に現れるものに対して,単純に反応できる感性,それがおもし    ろいものを見つけるきっかけになり,楽しさを掘り出す端緒になり,知    恵を取り入れる興奮をもたらしてくれます。やってみなければ分からな    い,そんな取り組み方,それが冒険というものの正体です。やる気とは    冒険する気持ちと重なっています。子どもの無邪気な関心を決してつぶ    さずまっすぐに応援してやれば,やる気はどんどんあふれてくるはずで    す。   ・・・《やる気とは,分からないことを恐れずやってみる冒険心です。》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○気の持ちよう?     臆病風に吹かれるという場合があります。臆病とは,あれこれ憶測す    る結果です。心に思うことが胸につかえている状態が臆です。それをぐ    っと飲み込んでしまえば病にはならずに済みます。同じ状況をどのよう    に判断するかで,結果としての転換点が現れます。物事は気の持ちよう    で逆転できるものです。     もう半分しかない,まだ半分もある。どちらに見るかは,見る人に任    されています。その後の取る道が分かれます。慎重派か冒険派かという    違いになります。実業界でのたとえ話で,未開の世界では靴を履いてい    る人がいない,だから靴は売れないと考えるか,だから靴が売れると考    えるかという選択が教えられます。同じ事実から,相反する結論が導き    出せるのです。     子どもの育ちには,慎重派は似合いません。なぜなら,育ちの道は育    つ者にとっては冒険の道にしかならないのです。したことがないことに    挑戦することが続きます。したことがないとためらっていたら,育てな    いのです。ところで,ママはしたことがないことに毎日挑戦しています    か? PTAや育成会などの委員を逃げてまわっていませんか? 子ど    もはそんなママの姿を見覚えています。     そんなことはない,毎日がしたことのないことの連続です! そうで    すね。子育ては毎日が挑戦です。はじめてのことばかりが容赦なく襲い    かかってきます。だからこそ親になることができ,大人として一回り大    きく育っているのです。冒険の報酬としての喜びはちゃんと用意されて    います。代々の親がそうしてきたのです。     育つこと,育てること,親子にとっての冒険です。どうせやるなら,    ドンと来いという覚悟を決めましょう。その方がよい結果を生みます。    へっぴり腰では,うまくいくはずのことも取りこぼします。やれるだけ    やってみよう,そう思うだけでいいのです。それが後悔をしない鉄則で    す。うまくいかないことがあったにしても,冒険をしたという結果は残    ります。どれだけ冒険をしたか,その数だけ育ちの階段を上ることがで    きます。         ・・・《初体験の壁を越えない限り,育ちは始まりません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○安全?     子どもは,親の目を離れたときに,とんでもない所まで足をのばしま    す。「あんな所まで行ったの」と,後で聞いてびっくりです。ときには,    思わずぞっとすることもあります。もう二度と行っちゃだめよ,と釘を    差します。ジャングルジムでも,いつの間にか高いてっぺんまで登りつ    めます。ときには,降りられなくなって,べそをかくこともありますが。     子どもは目の前の興味につられて足や手を夢中に動かしています。ま    っすぐに突き進むことはできますが,いざ後戻りをしようとするとでき    ません。だから,迷子になります。子どもは,ある特定の場所に行こう    というのは難しいのです。全体の道筋を描いて,逆算しなければならな    いからです。予定された行動ができるには,繰り返しによる学習が必要    です。     このまま進んだら帰れなくなるかもしれない,登るときに手が滑った    ら落ちるかもしれない,そんな先の心配や恐れを持っていません。ちょ    っぴり失敗する体験の後になってはじめて,失敗しないようにしようと    いう気持ちが育っていきます。失敗によって先のことを考える力を身に    つけていくので,できるだけ放っておくことです。親が前もって用心す    るように言っても,経験していないことは理解できません。     ある大学の先生が,学生に行動する上でどんなことを考えているかと    問いかけたそうです。答えに唖然としたそうです。先生は「正義」とか    「挑戦」とか「善意」などを想定していましたが,学生の答えは「安全」    だったそうです。そのように育てられてしまったのです。何をするにも    安全を優先する,そこに「よい子」というイメージの真髄が見えてくる    ようです。     闇雲に用心する姿勢は安全ではあるのですが,冒険ができません。恐    れが先に出てくると,どんな場面でも躊躇し,尻込みするしかなくなり    ます。最も安全なのは,どこにも行かず,何もせず,ただじっとしてい    ることです。追い立てられて何かをしようとしても,ちょっとしたつま    ずきでびびってしまいます。苦難を乗り越えるなどはとても望めません。    冒険しない,させない,そんな子育ち,子育ては反省した方がいいよう    です。   ・・・《冒険しない安全より,冒険して失敗した方が育ちには有効です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《冒険を認めるとは,生きようとする型を伝授することです。》 ※できる子に育てるにはどうしたらいいのでしょう? 丸が上手に描ける子が います。そうなるまでは,グニャグニャの丸をどれほど描いてきたのでしょう。 まっすぐ歩けるようになるまで,何度フラフラとよろけたことでしょう。キャ ッチボールができるまで,何度後ろに逸らしたことでしょう。  できないことを恐れずに,何度も何度も繰り返し,その積み重ねが少しずつ 上手の手を育てていきます。習うより慣れろ,それは冒険の彼方に能力が待ち かまえているということです。パソコンが壊れないかと心配しているから,い つまでも上達できない,そういう理屈もあります。  【質問11-11:お子さんの冒険を認めていますね?】    ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第141号は,いかがでしたか?  あと2回で第11版も終わります。7月からの第12版のテーマを考慮中で す。何かいいテーマはありませんか? 皆さんが知りたいテーマがあったら, 教えてください。基本的なことはこれまでの版ですでにお届けしているつもり ですが,応用編として書き続けていると,なるべく皆さんの近くに歩み寄りた いと思います。  田圃に水が張られると,どこにいたのかカエルの合唱です。雨が降ると喜び の歌が奏でられます。数日するとすっかり慣れてしまって,聞こえなくなりま す。感覚とは変化に対して敏感なもののようです。この特性は,いいこともあ れば困ったことにもなりますね。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページは ・・・「徒然窓」=      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear   です。「子育て羅針盤」の「バックナンバー」,〜「掲示板」,     週刊「今週のコラム」,「子育ち12章(Ver.1〜9)」,     「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,     社会教育・ボランティア組織活動の指導者用テキスト〜    などを掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●大小問わずPTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   関心をお持ちの方は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールをお知りになりたい方は上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問11-12:お子さんの無茶を抑えていますね?】 について考えます。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○