□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2003/10/06]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第157号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  人は論じすぎて,真実を見失う。                     ・・・・・ブブリリウス・シルス  親は考えすぎて,子どもを見失う。  夫は考え足らず,妻の情を見失う。                      ・・・・・H.モリのクマさん ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★知ってましたか?★               『白粉?』 -----------------------------------------------------------------  「おしろい」と入力して変換すると「白粉」が現れます。パタパタと顔に粉 をはたいて,白くなった地にほんのりと赤みを差すというお化粧が思い出され ます。関連して,白い肌が理想とされて来ましたが,今では健康志向で小麦色 もありのようですね。ところで,世間一般にイメージされている小麦色は実際 の小麦色よりもかなり濃いめになっています。色見本に決められている小麦色 は薄いのです。  白粉について調べてみました。平安時代には,白粉をヘラで厚く塗り込め, まるで白い仮面をつけているような状態でした。絵巻物に現れる女性の肌が真 っ白に描かれているのは,そのためです。白粉が厚いので,笑うと白粉がはげ 落ちてしまいます。そこで能面のような無表情にならざるを得ませんでした。  でも,どうしてそんなに白粉を塗るようになったのでしょう。当時の住居で ある寝殿造りは,きわめて採光の悪い建物であり,さらに貴族たちは夜型の生 活を送っていました。当然電気による照明などはないので,薄暗い中で生活し ていました。そこに白い肌が登場すればくっきりと浮き上がり美しく見えるわ けです。  白い肌は目立つだけではなく,周囲を明るくする効果もあるので,白粉を塗 りたくった女性たちの周囲は明るく華やいでいたかもしれません。この薄暗い 中での習慣が白い肌を美しいという形で伝統に刷り込まれていったようです。  化粧も外の自然光の中や,蛍光灯の灯りの中,キャンドルの灯りの中,その 場の照明に応じて変わった方がいいということでしょうか? 暗い中で白い顔 というのは,今ではいささか想像をしにくい美しさかもしれませんね。     ・・・・・参照=「和モノの知恵に何を学ぶか」:藤野紘(雄鶏社) ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12指針★          『育てたい 自分で決める 素直な子』                             《第13-01講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ■つれづれ・・・  4年目に入る機会に,「子育て羅針盤」の柱立てについて改めてお話しして おこうと思います。版を重ねる中で,壁の中に埋もれて見えにくくなってきた からです。羅針盤と称しているからには,それなりのコンセプトがあります。  子育ての場では迷うことが多いものです。振り返れば,これまで親になるた めにどれほどの学びをしてきたでしょう。確かに大人になるために学校で勉強 をしてきたはずですが,「親」になるためには何も学んでは来ませんでした。 子どもを育てることは動物でもしていることであり,本能的に備わっている能 力と思いこまれていたのかもしれません。しかしながら,私たちが直面してい る子育ては「人」を育てるという奥深いものなのです。  このマガジンでは,個別の具体的な処方をお届けするよりも,その背後にあ る方針を提示することが目標です。こんなときはこうするというものではなく て,どういうときにでもここだけは押さえておくべきであるという必須のポイ ントを知っておいて頂きたいのです。勘所を押さえておけば,間違えることは ないからです。同時に,ツボを弁えておけば,自信を持って対処できるように なります。  子育ては子育ちの支援です。そこで子どもが育つために不可欠なポイントを 完全に把握しておかなければなりません。そのためには完全な問いかけをする 必要があります。完全な問とは? それは5W1Hです。誰が育つのか,どこ で育つのか,いつ育つのか,何が育つのか,なぜ育つのか,どのように育つの か,という6つの座標が想定されます。これが基本的な羅針盤の方位に相当し ます。  さらにその上に,「人」が育つという仕上げを付加しなければなりません。 人とは原理的に複数で考えるべき概念です。無人島で一人で暮らすときには, 人である必要はありません。共同して生きるためにこそ,人でなければなりま せん。人間関係能力があるから,人になれるということです。自分自身の育ち と人としての育ち,その両面の育ちに対して,それぞれ5W1Hを考えると, 合計12のポイントが想定されます。子育ちの方位には12の方向があるとい うわけです。  子育ちの12の指針に向けて育ちの輪が中心から均等に広がっていくように, まん丸く育っていけばいいのです。もしもどれかのポイントが抜け落ちたとき, 育ちは中心を外したいびつな形になります。自分の子育てが,いつも中心から 全方位に丸く気配りできているか,その自己評価ができるということで「羅針 盤」と名乗っているのです。12指針それぞれについて,この13版の各号で 一つずつ再び解き明かして参ります。羅針盤を親としての必須科目と受け止め て頂ければ幸いです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問13-01:お子さんは,自分で決めようとしてはいませんか?】         ・・・・・「自分で決める」という意味を理解しましょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○《指針1−1》誰が育つの?     鏡を見ている犬は,映っているのが自分だと認識できません。生まれ    て間もない赤ん坊も同じです。それが分かるようになるのは,自分を相    対化できる自意識を獲得したときです。このことを,この子育て羅針盤    では,「もう一人の自分の誕生」と呼ぶことにしています。結論を先に    言えば,親が育てている,あるいは育っているのは,この「もう一人の    子ども」だと考えます。     自信という言葉がありますが,自分,もしくは自分の力を信じるとい    う意味です。自助努力という言葉が聞かれるようになりました。自助と    は文字通りに解せば自分を助けることです。ところで,これらの意味の    背後にある大事なものをつい見落としてしまいます。信じたり助けたり    するのは誰だ,ということです。自信とは「自分」が自分を信じること    です。つまり,主語をはっきりと意識すれば,自分を信じる「もう一人    の自分」の存在を分かって頂けるでしょう。     それでは,もう一人の子どもの誕生とは,どのようなことなのでしょ    うか? 自分の幼い頃を振り返ってみると,原点というべき記憶の出発    は3,4歳頃の断片的な思い出でしょう。その頃にもう一人の自分が生    まれているのです。幼児を見ていると,自分のことを「○○ちゃん」と    名前で呼べるようになる時期があります。そのとき,もう一人の子ども    が誕生しています。     産みの親より育ての親の方が結びつきが強いのは,育ての親がもう一    人の子どもを産み出し育てているからです。つまり,親は二度の出産を    し,子どもは二度生まれると考えることができます。固い言い方をすれ    ば,自我の誕生ということです。幼いときの第一次反抗期は,まさにも    う一人の子どもが誕生しようとしている時期に相当しているのです。あ    わてずに,ママも第二の出産と思って辛抱をしてください。     誰が育つのか? そんなことは考えたこともなかったことでしょう。    育っているのは目の前にいる「子ども」。見た目には確かにそうなので    すが,人を育てることを考えようとすると,もう一人の子どもを想定し    た方が分かりやすくなります。どのように? それはこれから追々にお    話ししていきます。とにかく,この羅針盤全体を通して,育っているの    は「もう一人の子ども」という立場から子育ちを説明して参ります。        ・・・《育っているのはもう一人の子どもであると考えます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○体罰は是か非か?     しつけをしていると,いけないことをしようとしている子どもに手を    あげることがあるかもしれません。お尻をペンペンする程度に抑えてお    いて下さいね。叩くことで矯正しなければならない場合もあるでしょう。    ただし,そのようなしつけの通用する時期には期限があるということを    弁えておいてください。     叩かれた子どもがわーっと泣き出します。ちょっぴり痛い目に遭うこ    とで,してはいけないことを痛みと連動して覚えていきます。動物の親    が子どもを甘噛みしてしつけています。痛い思いをするのが嫌だから,    止めておこうという形で我慢を身につけていきます。     このしつけはもう一つの大事なことを教えています。それは甘噛みす    るということです。セーブした痛みです。子犬とじゃれているとき,子    犬が人の手に軽く噛みつきますね。親から噛みつかれることで覚えてい    ます。噛みつく力を加減できる能力が身に付きます。それがどうしたの,    と思われるかもしれませんね。     今の子どもたちは人に向けられる力の加減を知りません。そこまでや    るかと,暴走していますよね。「殺すつもりはなかった」といっている    ようですが,甘噛みを身につけていないからです。親に思いっきり叩か    れているか,あるいは叩かれた覚えがないとき,力を加減することがで    きなくなります。甘噛みを忘れないように!     ところで,もう一人の子どもが誕生したら,もう叩くしつけは通用し    ません。それだけではなく,逆効果になります。叩かれた子どもがぐっ    とこらえて,涙をにじませながらにらみ返します。その目の奥にいるの    が,もう一人の子どもです。叩かれた自分をもう一人の自分が庇って,    叩いた相手を敵視するようになります。言って聞かせるしつけに転換し    なければなりません。あくまで味方として,もう一人の子どもに分かる    ように話せば,子どもは反省できます。          ・・・《体罰はもう一人の子どもを敵に回し逆効果です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○拒否権とは?     親が遭遇する子育ての壁は,子どもが親の言うことを聞かないことで    す。子どもから「イヤだ」と突き放されて,「どうして分からないの?」,    「何遍言わせれば気が済むの!」という愚痴は,親なら十分すぎるほど    味合わされます。もちろん,親の都合に沿ってくれない場合と,子ども    のためにという純粋な思いが通じない場合とは区別しなければなりませ    ん。     子どものしつけについて,アラビアには「子どもたちの教育は硬い石    を噛み砕くのに似ている」という言葉があります。子育てが子育ちにす    んなりとつながらないのはいつでもどこでも同じだということであり,    決して我が家だけのことではないと分かれば,落ち込む必要もありませ    んね。私たち自身がそんな風に育てられ,育ってきたはずです。     もう一人の子どもが誕生したら,その産声はオギャ〜ではなくて「イ    ヤだ」なのだと思ってください。親の言いなりになるのはロボットと同    じですね。庇護と引きかけに支配されている者が支配を脱しようとすれ    ば,それは先ず「イヤだ」と言うより他にはないでしょう。母親と見え    ないへその緒でいつまでもつながっている一心同体ではなくて,自分は    違う存在なのだと思うのはもう一人の自分が誕生するからです。     幼い時期の第一反抗期は,親を困らせようといった他意はありません。    「生まれたよ」という,自分を奮い立たせるための雄叫びです。主導権    を持つためには「自分が決める」ということが必須ですが,その独立宣    言をしようとしているのです。鉄腕アトムが自分の意思で行動しようと    し始めたと考えていただけばよいでしょう。自立への育ちの始まりです。     もちろん,子どもが決めるといっても,知恵も経験もないままですか    ら,親から見れば頼りなく間違っていることでしょう。よほど危険でな    い限りはなるべく子どもに決めさせてください。間違っていいのですか    ら。毎日忙しくしているからそんな悠長なことはしておれない,という    思いが現実かもしれません。しかしながら,その小さな手抜きが子育ち    のボタンを掛け違う羽目になります。   ・・・《イヤだと親離れすることで,もう一人の子どもが誕生できます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《自分で決めるとは,子どもが育つ上でもっとも大切な出発点です。》 ※子どものためだからと親があれこれ「しなさい」と言います。子どもは余計 なお世話だと受け止めます。誰でも言われてするのはイヤですよね。干渉だか らです。自分がしようと思わなければなりません。「こうした方がいいよ」と アドバイスをしてください。これが指導の基本です。  親のしつけが,子どもから干渉ととられるか指導ととられるか,その違いを 弁えておくことが大切です。決めるのは誰かということです。子どもに決定権 を残してやるのが指導です。決めるのは子どもに委ねるので,しつけとしては まどろっこしいことになりますが,それでも決めさせることの方が優先すべき ことなのです。  【質問13-01:お子さんは,自分で決めようとしてはいませんか?】    ●お答は?・・・なるべく適えるようにしていますよね! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第157号は,いかがでしたか?  これまでと違って,すこし説明調にしてみました。きちんとした内容をお伝 えしたいと考えているからです。これまでの号で読んだことがあると思われる 部分もあるはずですが,大事なことですので,あえて繰り返しております。子 どもが育っているので,同じことであっても以前とは受け止め方が違うかもし れませんね。  世間で子どもたちが見せてくれるあれこれは,子育て最中の親には衝撃的な ことばかりです。何がどうなっているか,はっきりしないままでは不安になり ます。不安になるのは,子育ちが見えないときです。子育ちがどういうものか, その全体像をある程度掴めたら怖くなくなるはずです。一緒に考えていきまし ょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内です※  ●モリのクマさんのホームページは ・・・   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear です。   ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・    「子育て羅針盤バックナンバー」,週刊「今週のコラム」,    「子育ち12章(Ver.1〜11)」,「子育て心温計」などの受賞論文,    養育アンケート調査,社会教育・ボランティア活動の指導者テキスト   などを掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●PTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   関心をお持ちの方は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールをお知りになりたい方は上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。  ●モリのクマさんへの連絡や相談のEメールアドレスは      mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問13-02:お子さんは,人まねをしようとしてはいませんか?】 について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行うこと  はできません。事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○