□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2003/11/17]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第163号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  人はいつも,行動する時より口で言う時のほうが大胆になる。                            ・・・・・シラー  親はいつも,実行する時より子に言う時のほうが立派である。  自分のことを棚に上げないと,子の前に立てないからである。                      ・・・・・H.モリのクマさん ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★知ってましたか?★               『日本酒?』 -----------------------------------------------------------------  お父さんが晩酌として飲んできたお酒ですが,近頃はビールや焼酎や洋酒な どバラエティに富んできたのかもしれません。お酒を嗜まないので,世情の趣 向はよく分かりません。いろんな酒の中で,燗をするのはやはり日本酒です。 伝統的な日本古来のお酒はかなりの優れものでもありました。  日本酒について調べてみました。日本酒は,麹菌発酵をおこなった上で,さ らにイースト菌発酵を重ねた二重発酵の工程を経ているので,世界一優良なア ルコールと言われているそうです。西洋酒は,どちらか一方の発酵だけのもの がほとんどのようです。  その上,日本酒には世界に類を見ない知恵が込められています。火入れとい う低温殺菌です。冬に仕込み,夏にかけて何度も火入れをします。そうしなけ れば梅雨の湿気の多い時期に変質してしまうからです。この苦肉の工夫がかえ って思わぬ効用を招き入れることになりました。火入れは,老酒でも行われま すが,その温度が85度くらいで,日本酒の60度前後の低温殺菌とは違って います。  明治の頃,日本酒の製法が西洋に紹介されたとき,学者たちは絶賛しました。 というのも,西洋ではパスツールが葡萄酒の低温殺菌法を発表して世界を驚か せていたのです。最先端の技術であると思われていたのに,東洋の小国では古 くから実践されていたのですから当然です。  直面する難局を何とか乗り越えながら良いものを手にしようとする工夫は, 意図しない別の良さも招き入れてくれます。真っ当に生きていればいろんなこ とがごく自然に良い方に進んでいくという経験は大事にしたいものです。一つ のことに打ち込めば道は開けるようになっているということでしょう。     ・・・・・参照=「和モノの知恵に何を学ぶか」:藤野紘(雄鶏社) ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12指針★          『育てたい 手を動かして 楽しむ子』                             《第13-07講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ■つれづれ・・・  「下手な芸人の道具集め」という諺があります。下手な芸人は自分が下手な のは道具が悪いからだと考えて,あれこれと道具を集めるようになるという意 味です。自分のことを棚に上げる愚かさを自戒するつもりで言い伝えてきたの でしょう。諺は,人を中傷し,あざ笑うためにあるものではありません。  似たようなことはざらにあります。物事がうまく進まないとき,あれがない から,あの人が助けてくれないからと,周りに原因を押し付けようとします。 心理学的には自分の身を守るために防衛本能が機能すると説明されます。自分 を責めるのは辛いことですから,誰でも避けようとしますが,そのためには別 の理由が必要です。  このことは人としては弱みになります。だからといって,この弱みを恥じる 必要はありません。大人はじっくりとつきあって生きています。だからこそ, がんばることができるのです。このがんばりのコツを子どもに確実に伝授する ことが疎かになっていないかと心配です。  子どもの前で愚痴ばかりこぼしていると,子どもに愚痴る癖が感染します。 学校が悪い,友達が悪い,あげくは親が悪いとエスカレートします。好きな人 と一緒になるのに家族が邪魔だから抹殺しようという,とんでもない道に迷い 込んでいきます。  人は自分のできることを見つけなければ生きられません。周りのせいにした ら,自分が正しくできることを見失います。周りは自分の力ではどうにもなら ないものであり,それを何とかしようとすれば必ず無理無体になり,結局は人 権を侵すことになります。人にできるのは,自分を何とかすることでしかあり ません。能力というのは,自分を何とかしようという願いによって身に付くも のです。生きることは自助努力であるとしつけられたら,子どもは健全な育ち をするはずです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問13-07:お子さんは,あれこれやろうとしてはいませんか?】         ・・・・・「あれこれやる」という意味を理解しましょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○《指針4−1》何が育つ?     ちょっと目を離したすきに,子どもは思いもしないことをしでかして    います。考えられないこと,大人はそう言いますが,子どもは考える力    が未熟ですから,考えてはいません。そんなことをして何が面白いの,    そう言いたくなるようなことを嬉々としてやっています。ちゃんと意味    はあるのです。     テレビを見ていたら,子どもの仕草について話している場面がありま    した。どうして子どもは押入に入りたがるのか? それは自分の大きさ    を確かめようとしているから。どうして子どもは引き出しを開けたがる    のか? それは中が見えるという新しい視界に転換することが楽しいか    ら。どうして子どもは人差し指でボタンを押したがるのか? それは指    を使って何かができることが面白いから。     大人が子どもの行動をつまらないこと,バカなことと見るのは,結果    で考えているからです。そんなことをして何になる?というわけです。    子どもは結果よりも,できるプロセスに関心を持っています。こんなこ    とができるんだ,こうすればいいんだ,こうなっているんだ,いろんな    体験をすることで,環境を学ぶと同時に,関われる自分の能力を見つけ    ているのです。     もう一人の自分が自分という超高精密な生き物を試運転しているよう    なものです。自分の中に組み込まれている性能をチェックしていると思    えばいいでしょう。現実の環境と関わる能力を選別していきますが,そ    の作業が何が育つという問に対する答えです。これから生きていかなけ    ればならない環境に適合できる能力を自分の可能性の引き出しから棚卸    ししています。     試運転とは,普段とは違ったいろんなやり方を試しながら,最適な方    法を探し出す作業です。こうすれば失敗するという体験をしなければ,    適切な方法は見つかりません。失敗は成功の元とは,子どもの能力開発    の鉄則でもあります。  ・・・《もう一人の子どもは,最適な潜在能力を選び出すことで育ちます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○指使い?     若者は親指を器用に使って携帯メールを打っています。端から見てい    ると,感心させられます。これまで人が使ってきた機器では,ボタンを    押すという作業は人差し指が担当するのが普通でした。今までにない親    指使用という指使いがどのような能力を開発するのか楽しみです。     人は手,特に指を器用に使うことで知恵を獲得してきました。ハード    である十指を微妙に動かすには,超高精度のソフトが必要です。触覚か    ら力の程度を検知し筋力をコントロールしながら動かすという複雑な動    きをリアルタイムで瞬時に計算し実行します。そのソフトは膨大な作業    手順が順序よく組み上げられています。     知能とは,これをしたら次はこれという一連の手順の総体です。こう    したらこうなるという理屈通りにつながっていなければなりません。体    験することで検証しながら知能というソフトを書き上げることができま    す。こうして体験を整理した膨大なソフトは神経回路として定着し,論    理回路という機能を持つようになります。     ちょっと堅苦しい話に入り込みましたが,仕事は手で覚えるという庶    民の知恵は確かな裏付けがあるということです。あれこれやってみるこ    とでいろんなことを覚えますが,そのソフトはそのまま多方面に転用で    きるものです。一芸に秀でたらあらゆることが処理できますが,基本は    おなじだという例証です。     家の中で出会う経験は便利で手軽でなければという理由で簡素化され    ていますが,外で遊ぶという体験ではあらゆる方面の体験に直面させら    れます。やったことがないことはできませんが,やったことがあること    は何とかこなせるものです。たくさんのやったことから,それに対応す    るフリーソフトをインストールしているからです。体験の差,それは知    能の差を産み出していくのです。   ・・・《人としての能力は,あれこれの経験の多寡に左右されています》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○できる?     何が育つのかという問に対して,一言で答えるなら「能力」です。能    力とは,平たくいえば「あれこれができること」です。この「できる」    ということについて,しっかりと理解しておかなければなりません。な    ぜなら,できる子を勉強ができる子と勘違いしているために,子育てが    偏向する羽目になっていたからです。     畳の上での水練,という言葉があります。言うばっかりで何もできな    いという批判の言葉もあります。その構造を解き明かしておきましょう。    もう一人の子どもは言葉を覚えて育つと言っておきました。つまり,も    う一人の子どもは言葉で知るという知識システムとしてのソフトです。    できるという現実世界における機能は,ハードとしての自分に備わるも    のです。自分とはパソコン本体や周辺機器に対応します。     ソフトとハードが一体化してはじめて,さまざまな機能が実現するの    と同じで,もう一人の自分が自分と一体になることによって,できるよ    うになります。情報化の中で子どもたちは知っていますが,できる力に    はなっていません。生きる力と表現されている力も,できる力のことで    す。能力とは,この一体化の完成なのです。     自分の体験によってもう一人の子どもが知恵のシステムとして育ち,    同時にもう一人の子どもの力を自分の力として発揮できるように自分が    育つのです。練習や訓練という行程が,自分を育てる作業に相当します。    思うようにならないのは,自分のできる力に完成していないということ    です。未熟さとは,この一体化における育ちの途上にあるということで    す。     夢というのは,もう一人の自分が思い描くことです。それを実現でき    るのは自分なのです。1%のひらめきと99%の汗が創造の公式である    とするなら,汗をかくのは自分であると気づかない限り,夢の実現は不    可能です。バーチャルな世界に片寄っていると,できる力を発揮するは    ずの自分をないがしろにすることになります。生活している自分を脇に    置いていたら,決してできる力は得られません。        ・・・《能力とは,もう一人の自分と自分が協働した力です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《あれこれやるとは,できる力を見つけ獲得しようとする訓練です。》 ※子どものうちはあれやこれやに手を出します。何をやっても長続きしないと いう嘆きの声が向けられるかもしれません。でも焦らずにじっくりとつきあっ てあげて下さい。子どものうちにあれこれやっておかないと,もう一人の自分 は自分を見つけることができません。  これまでの話の中では,もう一人の子どもの育ちが中心でしたが,ここで子 ども自身との共育ちが出てきました。現在の子どもの育ちで不可解といわれる 事象は,もう一人の子どもだけが勝手に育っているからです。自分を置き忘れ ているから,生身の生きているという感覚を持ち得なくなっています。幼い子 どもではまだそんなことはありませんが,中高生ぐらいで表立ってきます。 17才頃の危険な時期は,そんな背景があるのです。そのときは手遅れです。  【質問13-07:お子さんは,あれこれやろうとしてはいませんか?】    ●お答は?・・・なるべく適えるようにしていますよね! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第163号は,いかがでしたか?  女子中高生がねらわれる事件が頻発しています。これから夜の訪れが早くな ります。部活の子どもたちは最大限の用心が必要ですが,まちを万遍なく明る くすることが効果的です。通りに面した部屋の灯りは遅くまで点けておいてく ださい。電気代は月当たりコーヒー一杯分ぐらいだそうです。隠れる場所を無 くすことが肝心です。  子どもたちを守るのはまちぐるみが一番です。特に治安というのは,みんな がちょっとした思いやりを出し合うことです。みんなが関心を持っているとい うことを周知するだけで十分効果があります。部屋に閉じこもっていると,つ け込まれるだけです。大人が立ち上がらなければ,事態の好転はやってきませ ん。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内です※  ●モリのクマさんのホームページは ・・・   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear です。   ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・    「子育て羅針盤バックナンバー」,週刊「今週のコラム」,    「子育ち12章(Ver.1〜11)」,「子育て心温計」などの受賞論文,    養育アンケート調査,社会教育・ボランティア活動の指導者テキスト   などを掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●PTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   関心をお持ちの方は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールをお知りになりたい方は上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。  ●モリのクマさんへの連絡や相談のEメールアドレスは      mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問13-08:お子さんは,人に頼られようとしてはいませんか?】 について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行うこと  はできません。事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○