□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2003/12/01]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第165号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  顔を映す鏡はあるが,心を映す鏡はない。                         ・・・・・バルタサール  親を映す子はいるが,子を映す親はいない。  よい子は自分に似たからとは自惚れである。                      ・・・・・H.モリのクマさん ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★知ってましたか?★               『千羽鶴?』 -----------------------------------------------------------------  折り紙の入門編は鶴ですね。ほとんどの人が鶴ならば折れるはずです。ちょ っと先に進めば,羽根のつながった連鶴もできます。子ども時代に経験する折 り紙の鶴はしばらく忘れられ,母親になったときに思い出す方も多いでしょう。 あるいは,願掛けのシンボルとして,友達が集って千羽鶴を折ったことがある かもしれません。  折り鶴について調べてみました。鶴そのものについては,白い翼を広げて飛 ぶ優雅な姿,際だった鳴き声に,古人は神の遣わした鳥とみなし,千年の寿命 を持つとされてきました。折り鶴は室町時代に登場しました。最初は,祈りを 込めた恋文に折り鶴を添えて送る風習として流行りました。  時代が下がって,江戸時代になると,家族の健康や幸福を願って寺へ折り鶴 を奉納するようになりました。美人画の中に,折り鶴模様の着物を着た女性が 描かれるようにもなりました。ところが,千羽鶴にするようになった理由は, 定かではないようです。  お百度参りのように,願いを数多く重ねることで,必死の願いという気持ち を込めようとしたのでしょう。千羽鶴が広く全国的に広まったのは,戦後の世 界平和を祈るための「千羽鶴運動」が盛り上がった時期と重なっています。ち なみに,必ずしも千羽でなくても千羽鶴と言っていいようです。  一枚の紙が手を加えることでいろんな形になります。平面から立体に組み上 がるプロセスをメモリーしておくと,想像力の基礎になります。そういえば, あやとりという遊びもあります。一本の紐が,指の中で構造物を組み上げてい きます。ママの手から子どもの手に,いろんな技を伝授してください。 ・・・・・参照=「日本人の素朴な大疑問」:ハイパープレス(PHP文庫) ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12指針★         『育てたい 明日に楽しみ 探せる子』                             《第13-09講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ■つれづれ・・・  路上に子どもの三輪車がぽつんと待っています。どこに行ったのかなあ。置 いていかれちゃったみたいだけど,早く思い出してくれないかな。夕暮れの中 で,じっと迎えを待っている三輪車がいます。真ん中に放置されていましたが, 通りかかった方が脇に退かしてくれました。もう日差しが消えて冷たくなって います。  子どもにとって,毎日遊んでいる所は家なのです。モノに対する所有権,ボ クの三輪車ということは意識していますが,家々という場所に権利があるとは 思っていません。かすかに縄張りという広がりを自分のところと感じています。 家の近くの道路も自分の縄張りですから,そこに三輪車を置いていても一向に 気になりません。  子どもにとって,公共の場所は自分の場所なのです。正確に言えば,自分の 場所とそうでない場所の区別がないのです。だから,乗り物や施設の中でも自 分の思うがままに振る舞います。大人になっても,みんなの場所は自分の場所 と考え違いをしている人がいますが,公共という意識が曖昧になっているよう です。  先ず教え込むべきことは,皆の場所は自分が使うことはできるが,自分が使 わないときはきちんと他者に明け渡すということです。勝手に使うのではなく, 周りの了解の上で使わせてもらうものという節度が肝心です。この言い方は旧 い考え方を持ち出しているように思われるかもしれませんが,そうではありま せん。使う権利とは自分が持ち出すものではなく,皆から付与されているもの だからです。  公園のブランコは,みんなが遊んでいいものです。みんなの中の一人である 自分も遊ぶことができます。でも,所有権はありませんし,占有権もありませ ん。使い回しをするために,順番制というルールによって,みんなの権利を守 っています。公共という感覚をきちんとしつけることが,安心して仲良く遊ぶ 入り口になります。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問13-09:お子さんは,楽しみを探そうとしてはいませんか?】         ・・・・・「楽しみを探す」という意味を理解しましょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○《指針5−1》なぜ育つ?     幸せになりたいですね。でも幸せっていったいどんなものでしょうか?    パンドラが箱を開けたために,人の災いの素が蔓延してしまいました。    かろうじて「希望」という道標だけが残されました。災いに満ちた迷路    を抜ける秘密の地図のようなものです。同時に,人は幸せになるために    不可欠な能力の種を持って生まれてきます。     能力の可能性を秘めた種の中で,自分に相応しいものを選び抜いて,    しっかりと育て上げなければなりません。育ちとは,幸せになる準備な    のです。ところで,自分に相応しいものを選ぶのは,どうしたらいいの    でしょう? 希望を手に入れなければ,選ぶことはできません。希望に    向かっていく道が,幸せの道です。     抽象的なおとぎ話ですが,日々の暮らしに当てはまるように翻訳して    おきましょう。まず,「夜寝るときに,明日の朝起きるのが楽しみです    か?」と自分に問いかけてみてください。もし,「寝るだけが楽しみ」    と思っていたら,それは幸せの道から外れています。楽しみだと感じら    れたら,今現在幸せの途上にいるはずです。     明日はいいことがある。それが希望という地図の一里塚なのです。毎    日を幸せに向かう道筋に沿って辿っていけることになります。育ちによ    って能力が高まれば,それだけ幸せを掴む可能性が確かになるから,人    はうれしくなるし,生きることを感動的に喜ぶようになれるのです。幸    せになりたいから,育とうとします。     生きていればいいことがある,明日はきっとよくなる,それが希望と    いう地図をしっかり握りしめている証です。もう一人の子どもが明日の    自分の目標を見定めることができるとき,育ちの進行は順調に進みます。    明日にいい目標を見つけようとしさえすれば,そこに幸せの明かりを見    ることができます。  ・・・《もう一人の子どもは,やがて来る楽しみを探す意思を発揮します》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○楽しみ?     明日の楽しみとは? 最も身近なものは,「明日はお休み」というも    のですね。でも,それが「○○しなくてもいい」とか,「ゆっくり寝て    いられる」というものであったら,楽しみと言うことはできません。確    かに休養は必要ですが,目指す目標としての楽しみとは別物です。     仕事の後に,ゆっくりお風呂に入って,くつろいだ気分で頂く酒肴は    格別でしょう。辛くてきつい仕事をやり終えた自分へのご褒美です。一    日の疲れがすっと抜けていく快感を味わうことができます。ところで,    親は自分に対して褒美を上げていますが,子どもは一日の疲れを癒す褒    美をもらっているでしょうか? 家族の団らんの場で親子共にご褒美を    分け合えていますか?     この延長上に,勉強したら欲しいものを買ってあげるというご褒美作    戦があります。楽しみを目の前にぶら下げるとがんばれます。馬を走ら    せるのにニンジンをぶら下げてやるというやり方です。動物的な本能に    働きかけるやり方です。幼い子どもに対しては効果的ですが,人間的な    やり方ではありません。あまりに欲望だけに片寄るからです。子育ての    場では,早く卒業すべきなので,止めるようにアドバイスされています。     大事なことは,楽しみを今夜ではなくて明日に見つけることです。休    養とは本来明日の楽しみのための下準備に過ぎません。「今日はここま    でやった。明日はあそこまでやれる」,「今日は失敗したけど,明日は    やり方を工夫してやり遂げよう」,「明日は嫌な算数の授業があるけど,    午後からは大好きな国語がある」など,楽しいことを目指すようにすれ    ば,気持ちは明るく前向きになれます。     がんばるということは,やりかけていることを続けることです。続け    ようという意欲は,その先にある目当ての楽しさを感じ取る能力から派    生します。できたらいいな,なれたらいいな,あったらいいな,いろん    な「いいな探し」をすれば,「明日は早く起きたい」と思うようになり    ます。      ・・・《人として,明日を目指す楽しみが生きる意欲になります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○できたら?     砂場で遊んでいる子どもは,あれやこれや気ままに砂をいじくってい    ます。大人は何を作っているのだろうという目で見ています。「そんな    所を触ったら壊れちゃう」と思って,つい口出しをします。そこにいく    つかの余計なお世話が潜んでいます。まず,壊れるという体験をさせな    いことです。こうしたら壊れるんだ,それが大事な学びなのです。知恵    とは失敗をすることで身に付きます。     大人の最も重大な勘違いは,子どもが何かのできあがりを期待して遊    んでいると思うことです。子どもは,自分の手で何ができるかを試すこ    とが楽しいのです。自分の力を知ることにワクワクしているのです。で    きあがりは二の次です。その証拠に,大人が手伝って作り上げてやって    もうれしそうにしません。ときにはせっかく出来上がったものを壊して    しまうこともあります。     遊びでも勉強でも,そこには取り組むべき課題があります。大人の目    は結果の善し悪しを見ていますが,それは育ての目ではありません。で    きなかったら悔しいと思うのは自分に対するもう一人の自分の思いであ    り,取り組む力の不備を思い知らされるからです。一方,結果が出れば    うれしいのは,できる自分を確認できるからです。子どもは結果よりも,    自分の方に関心があることを知っておいてください。     機能快という言葉があります。人は自分の持っている機能を使えると    き快感を得るという意味です。字が書ける,線が描ける,動かせる,作    れる,話せる,歌える,走れる,飛べる,そんなことが楽しいのです。    子どもの楽しみとは,そういう根元的なレベルから生まれているのです。    だからこそ,できたねという言葉が何よりも必要なのです。     子どもは徐々にできるようになります。できるのが当たり前ではなく    て,できないのが当たり前です。そんなとき,できないと嫌な目に遭う    と脅かして無理矢理がんばらせようとしてはいませんか。できたらいい    ねという風に,楽しみを引き出してやってくださいね。それが可能性を    引き出す方法です。       ・・・《できるようになりたいと思うから育つことができます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《楽しみを探すとは,自分の可能性を開き伸ばそうとすることです。》 ※今の子どもには堪え性がないと言われています。言うのは簡単です。どうす ればいいのか,何が足りないのか,元を見極めて手を打たなければなりません。 我慢とあきらめの違いを考えておきましょう。先に楽しみがあれば我慢できま すが,何もなければあきらめるより他になく嫌がります。  大人になりたくない,今のままがいい,十代でありながら昔はよかったとも らす,そこには育ちの先に楽しみを見つけられない苦悩が芽生えています。大 人になったら素晴らしいことが待っている,大人ってすごいな,そう思わせら れない大人の姿を見なさなければならないようです。  【質問13-09:お子さんは,楽しみを探そうとしてはいませんか?】    ●お答は?・・・なるべく適えるようにしていますよね! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第165号は,いかがでしたか?  街から離れていてもクリスマスの気配が漂ってきます。子どもには楽しい季 節になってきました。もういくつ寝るとお正月,これは昔ほどのワクワク度は ないようですね。何しろクリスマスプレゼントがメインになっていますから。 それでもお年玉という楽しみもあって,いいですね。逆の立場は辛いですけど ・・・。  ところで,サンタクロースはいるんでしょうか? いると信じられる子は幸 せになる資格があります。いつまでも信じている必要はありませんが,幼いと きは本気で信じていたという経験が大切です。楽しいことを納めておける心の 引き出しができるからです。  ●再送:「パブジン:Pubzine」でご購読をいただいている方には,今年中は 現在の13版の配信をしますが,来年1月からの14版の配信はしません。パ ブジン社が2月でマガジン配信業務を廃業するために,版途中での打ち切りに なるからです。登録先の変更を予定しておいてくださるようにお願いします。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内です※  ●モリのクマさんのホームページは ・・・   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear です。   ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・    「子育て羅針盤バックナンバー」,週刊「今週のコラム」,    「子育ち12章(Ver.1〜12)」,「子育て心温計」などの受賞論文,    養育アンケート調査,社会教育・ボランティア活動の指導者テキスト   などを掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●PTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   関心をお持ちの方は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールをお知りになりたい方は上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。  ●モリのクマさんへの連絡や相談のEメールアドレスは      mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問13-10:お子さんは,人を喜ばせようとしてはいませんか?】 について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行うこと  はできません。事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○