□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/01/05]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第170号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『出題者の悩み?』  新年,あけましておめでとうございます。今年も「子育て羅針盤」をよろし くお願いいたします。  今号から第14版に入ります。お約束しておきましたように,少し身軽な形 にダイエットしてみました。毎回のテーマスタイルもダブルスタンダード形式 に変更します。比較という構成が理解を促進するという試みです。従来と違っ たスタイルに違和感があるかもしれませんが,新鮮さを感じて頂ければと願っ ています。  この「徒然子育て想」の欄では,ちょっぴり辛口の話も持ち込んでみようと 思っています。良薬は口に苦しとか。大事なポイントをお伝えしておかなけれ ばならないという切羽詰まった思いで,お目障りは覚悟の上です。親業の先輩 からの苦言と受け止めて頂ければ幸いです。  勤めていた国立大学で入学試験問題を作成したときの思い出から始めましょ う。担当した科目は理科の選択科目である物理です。身内に受験者がいない教 官数人でチームを作ります。作成プロセスの中で問題に関わる文書は問題と模 範解答の作成完了に伴って全て廃棄されてしまいます。作成者に記憶は残りま すが,夏時期には作業が終わるので試験時には忘れています。  ところで,問題作成の際に最も気を遣うのは,間違いのないことは当たり前 のこととして,問題のレベルです。大学の授業では高校終了レベルの知識を前 提として講義をしており,それを出題するとどうしても受験生には難しくなり ます。つまり,出題者の希望レベルは少なくても90点以上という意識が働い ています。一方で,競争試験ですから点差がつかないと困ります。基本から応 用まで取りそろえなければなりません。  ほとんどの受験生ができるだろうという問題は迷いなく作成できます。他方 で,できる受験生しか解けない問題も作成することはできます。ところが,そ の中間レベルの問題をつくるのが難しいのです。半数程度の受験生が解ける問 題,つまりちょっぴり難しい問題,それが見えてきません。問題を作る方は解 答を知っているので,余計にやさしく見えてしまいます。点差がつかないので はないかという心配が出てきます。そこで,経験上,勇を奮ってやさしくする ことで決着します。・・・(次号に続きます)。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12指標★      【お子さんは,素直ですか,聞き分けがないですか?】                             (質問14-01) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○素直な子!     親が望んでいる子どもは素直な子どもですね。親の言いつけを素直に    受け容れてくれる子どもは本当にいい子です。生まれて間もない頃は完    全介護状態ですから世話が大変ですが,それでも母子関係はママの思い    通りに運んでいきます。子どもが見せてくれる笑顔にホッと心和むこと    もあり,母としての喜びを貰うようになります。     子どもはママが大好きです。だから,ママの言うことを聞いてママに    好かれたいと思っています。ママが何を望んでいるかを察知して,ママ    が喜ぶようにすれば,自分に笑顔を向けてくれるからです。微笑ましい    関係ですが,少し穿った観点から見ると,子どもは母子一体感の中で親    を操る術を意識することなく覚えていきます。     素直な子は親に可愛がられます。親もあれこれしてやる甲斐があると    感じるようになります。いきおいやりすぎてしまうことがあります。過    保護になり,甘やかされて育つようになります。子どもが欲しいと思っ    ていなくても,親が先回りして与えてしまいます。特に「お勉強」に関    わることであれば,かなり先走ることもあります。嗜好品もいつでも揃    っている,至れり尽くせりの優遇を与えます。     食物であれば,過食は見た目に太るという結果が明らかですから,修    正するきっかけがあります。そのほかに,柔らかいお菓子で育ててしま    うと,栄養面のみならず,噛む力が身に付かず,顔つきまでが引き締ま    らなくなります。口をボーっと半開きにしたような情けない表情が普通    になります。素直さに親がつけ込まないように用心しなければなりませ    ん。     素直な子どもが抱えている弱点は,言われることに慣れて,自分を見    失うことです。自分が感じて自分で考えなければならないのに,親が先    回りをするから,考えなくて済みます。そのことが「もう一人の子ども」    の目覚めを邪魔します。親がいなければ何もできない子どもに育てたく    はないですよね。それを本当に望むのであれば,子どもに任せてみて,    親は後からついていくつもりでいた方がいいのです。     もちろん,人柄としての素直さは大切な資質です。しかし同時に,素    直な人は頼りにならないといった面も感じてしまうはずです。個性化の    意味はともかく,自己主張にウェイトが傾いている現代,素直さだけで    は物足りないのも事実です。ほどほどがいいということでしょうが,目    安として6割程度と考えておいてください。  ・・・《素直な子は受け身の立場に置かれやすいと知っておいてください》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○聞き分けのない子?     全体として素直であったとしても,子どもの成長過程には何度かの反    抗期があります。反抗とは親の側の勝手な言い分です。子どもの側から    見れば,育ちの大事なプロセスであり,決していけないことではありま    せん。最近の子は,反抗期がないと言われることがあります。全く反抗    しなくて済むか,あるいはのべつまくなしにダラダラと反抗をしていま    す。メリハリのある反抗している「時期」がはっきりと特定できないの    です。梅雨明け宣言ができないのと似た状況です。     聞き分けのないというのは,煎じ詰めれば親の言葉に逆らったり拒否    することです。親にすれば沽券に関わると感じるはずです。昔なら,    「言うことを聞かないなら,出て行け」という折檻が発動されました。    今の親御さんはそれが言えません。実はこの折檻には一つの効用があり    ました。親子共に修羅場を離れることができて,それぞれが一人になっ    て考える冷却の時間が持てたのです。親は言いすぎたかな? 子どもは    親の言うことにも一理はあるかな?     現在は,逆上してもケンカ別れをする時間を持たないので,キレルと    ころまで突っ走ってしまいます。虐待は突っ放してみるという方法を失    ったという意味で閉塞的な環境が産み出しているのです。父親が出て行    けと突っぱねて,母親が後でそっと取りなすという親の二人三脚が機能    しないのです。ご近所のおばちゃんが一時預かりをしてくれるという協    力もありません。閉じこもっていたら,いざというときに働く歯止めが    なくなるのです。     聞き分けない子どもにすれば,それは自己主張です。もう一人の子ど    もが自分の思いや考えを表明しているのです。生意気に見えたり浅はか    であるかもしれませんが,精一杯の主張をしています。主張している内    容は別にして,そうすることがいいことだという受け止め方をしてやら    なければなりません。どうすればいいのでしょうか? 取りあえずは任    せてみるのです。「自分でしたいなら勝手にしなさい!」。それでいい    のです。     大きな子どもであれば,親あるいは大人としての考えをきちんと返し    てやります。そうはいっても,子ども相手に議論をすることはできない    でしょう。「ママはこう思う」と言って聞かせることで十分です。押し    付けるのではありません。親の思いを伝えることでいいのです。それで    も自分はこうすると子どもが言えば,そうさせてやります。結果として,    どちらの言い分が正しかったかを分からせるチャンスです。     子どもは他人の立場から見れば家庭の中で生まれながらの暴君です。    それを飼い慣らすといえば語弊がありますが,人に育てなければなりま    せん。人とは共に暮らす能力を持つということです。誰かのわがままは    周りのものに迷惑です。人はその迷惑を平等に引き受けることで,仲良    く暮らしていけます。親も子どももお互いに聞き分けるようにすれば,    お互いに迷惑を引き受けることができて,和やかな関係を持つようにな    れます。聞き分けのない子どもからの迷惑も少しは引き受けるというこ    とです。   ・・・《聞き分けのない子は自己主張をしていると受け止めてください》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《素直か,聞き分けないかは,どちらにも子育ち上の意味があります。》 ※素直な子か,聞き分けのない子か,それは親の一方的な判定に過ぎないとい うことを弁えておいてください。もちろん,単純なわがままとは区別をしなけ ればなりませんが,全てを子どもの勝手な言い分と抑え込む手だけを使ってい ると,子どもの育ちの芽を摘み取ってしまって,見かけ上素直な子にしてしま います。  ママがいないと何もできない,それは素直な子に現れる姿です。自分の主張 をたとえ聞き入れられなくても,一応主張のできる子どもに育てておきましょ う。このことをこのマガジンでは「自分を育てるもう一人の子どもの誕生」と 表現しておくことにします。子どもの中にいるもう一人の子どもを育てている と考えます。自分で自分が好きになるという言い方をする場合がありますので, 分かって頂けると思います。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ☆予告☆  次号では,【お子さんは,活発ですか,それとも内気ですか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ★編集後記★  この14版では,一見いい子とそうでない子の性質のようなものを並べて考え ていきます。結論は,どちらも育ちの姿であるということになると思います。 それは人はどちらかにディジタル的に区分けすることはできないと考えている からです。いいとかいけないという判定は,物差しの使いように過ぎません。 物差しの方を考えてみたいと思っています。  根暗であるから心配だと親に追いつめられた子どもが,姉妹の間で刃傷事件 を起こしました。根暗であってもいいではないですか? 考えることに長けて いるから見かけ上暗いという場合もあります。あらゆる場合に根暗であるはず もありません。状況次第でしょう。時期的なものでしょう。もっと大きな物差 しを持って頂ければ,子育てはかなり楽な気持ちでやっていけるはずです。そ んな願いを込めて,書いていきます。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○