□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/02/02]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第174号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■             『分かる喜びの条件は?』  講演に出かけるとき,参加者が女性であると張り切ってしまいます。専門の 講義ではほとんどが男子学生を相手に話してきました。ところが,子育ての講 演ではママさんたちが主役であり会場がとても和やかで華やかです。張り切る のは,そのような見た目のせいではありません。話し手を乗せてしまう雰囲気 があるからです。女性は反応が豊かなのです。笑うところでしっかり笑い,頷 くところできちんと頷いてくれます。  男性はほとんどが反応してくれません。話していることが会場にすっと吸い 込まれていくだけで,跳ね返ってこないのです。聞いているのかどうかがつか めません。話していても何かしら虚しい気持ちになることもあります。講演と は聞かせるものではなくて,聞き手の力で語らせてもらうものであると悟った 次第です。でも,ちょっとばかり気になるのは,反応のよい女性のみなさんで すが,お伝えしたいと思っているポイントと違うところを受け取ってくださる 方もおられることです。  ところで,大学での講義というものがどのような構築をされているか,お話 ししておきましょう。講義は予習と復習を合わせて三本柱になっています。予 習して自分なりに理解できるところと理解できないところを見つけておきます。 それを講義で確認し見直しをし発見します。復習では自分流に,つまり自分の 言葉で整理し直します。この家庭学習2+講義1からなる三点セットが基本で す。ですから,講義だけを聴きっぱなしでは,理解には至らないのです。  いつのまにか,学校で受ける授業だけで分かるようになるはずという甘えが あるかと思えば,一方では,学校の授業だけでは足りないから塾で学ばせれば いいという錯覚が定着してきました。分かるというのは自前の努力の結果でし か得られないものです。人に分からせてもらえるものと人頼みにしているから, 学力は低下していく一方です。字はこう書くんですよと教えられただけでは書 けませんね。自分の手で何度も書いてみなければなりません。授業が分かると いうことも同じです。  一つの話を聞いて,どこが大事なポイントかを自分で見つける力が,かつて の学生に比べてとても劣ってきています。自分で見つけようという気がないと 言った方が適格かもしれません。どこが大事なところかさえも教えて貰おうと 待っています。自分でするという姿勢が萎えてしまっています。勉強する気が ないということです。勉強させられるという教育・しつけの成果です。予習と いう自分で取り組む家庭学習のしつけを疎かにするツケが高利であることを見 抜けなかったようです。  学ぶ力を育てるためにしつけなければならないことは,授業の前の予習です。 予習というのは,教科書を読んで分からないところを見つけておくことです。 予習で全て分かる必要はありません。分からないところが見つかると,授業が 待ち遠しくなります。授業ではそこだけしっかり聞けばいいという目当てを持 てるからです。授業の説明で「ああ,そうか」という分かる喜びが生まれます。 分かることが楽しくなります。この喜びは自分で作り出すしかありません。予 習とは喜びの下準備なのです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12指標★     【お子さんは,おしゃべりですか,それとも無口ですか?】                             (質問14-05) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○おしゃべりな子!     子どもの育ちの一里塚は,立って歩くこと,言葉をしゃべること,顔    が洗えること,洋服が着れること,字が書けること,数が分かること,    いろいろあります。その一里塚をどれほどの速さで駆け抜けていくか,    いつしか競争になります。それが間違っていることは十分にお分かりで    すが,やはり無事通過すると一安心するのが親です。特に言葉を話すよ    うになるのは,大きな節目になります。人としての育ちの始まりであり,    それはもう一人の子どもの誕生に他ならないからです。     パソコンはソフトがなければただの箱と言われます。人も同じで,言    葉による知恵というソフトが備わってこそ人になれます。育ちとは言葉    によるソフトのインストールと考えることができます。パソコンの性能    はどんなソフトを備えているかで決まるように,人はどんな言葉を覚え    こむかで人となりが異なってきます。言葉遣いで人が見えるということ    がありますね。美しい言葉,元気のある言葉,優しい言葉に対して,汚    い言葉,弱い言葉,意地悪い言葉があります。どちらが望ましいか,言    葉だけの問題ではありません。     おしゃべりな子は,言葉を自在に操って語ります。ところで,言葉に    はスタイルがあります。子どもらしい言葉遣いということです。こまし    ゃくれた言葉遣いとは,身の丈に不似合いな背伸びした様をいいます。    また,男言葉や女言葉というスタイルもあります。男女差を言えば時代    の流れに逆らうことになりかねませんが,現状の言葉遣いは,女言葉と    して守ってこられた細やかさや優しさが衰退し,ぶっきらぼうな男言葉    に寄り添っているようです。女であることを主張できないのでは,アイ    デンティティの喪失ではないのかと危惧します。     言葉はもう一人の子どもの母乳であり,母親が口移しに与えるもので    した。いま情報化の中で,子どもたちは言葉の洪水の中に育っており,    手当たり次第に吸い込んでいます。食べてよいものか食べてはいけない    ものかどうか,全くノーチェックです。さらに,言葉のファストフード    化といいますか,軽食化も気になります。真面目な言葉遣いが敬遠され    ています。いわゆる軽口,おしゃべりしかできないというレベルに留ま    っているのです。     言葉は部品です。自分の気持ちを表すのに相応しい言葉を選んで表現    します。大人でも「なんて言ったらいいか」と,言葉に窮することがた    まにあります。表現できないとすっきりしません。子どもは言葉の数が    少ないので,どうしても自分の気持ちをピタリと言い表すことができま    せん。赤ちゃんは泣き声しか持ち合わせていないので,どんなときでも    泣くしかありません。幼児も少しはましですが,大して変わらないと思    っておきましょう。     うちの子はおしゃべりだから,子どもの気持ちはよく分かっていると    思っていると肩すかしをくいます。子どもは自分が本当に言いたいこと    を分からずに,違った言い方をしたり,中途半端に言ったりします。本    当は寂しいのに,それを紛らわせようと明るくすることや,構って欲し    いのにわざと強がりを言ったりします。友だちが落書きをしているのを    言いつけにくる子どもがいます。落書きした子を叱ると,その子はがっ    かりします。「あなたは我慢したんだね」と言ってやると,分かってく    れたとにっこりします。     ・・・《おしゃべりな子は,全てを語っているわけではありません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○無口な子?     言葉を覚えはじめの頃,赤ちゃん言葉です。そのまま聞いていていい    のですが,ちゃんとした言葉で話しかけてください。もちろん無理に正    しい言い方を押し付けないようにします。自然にしておけばいいでしょ    う。さらに,子どもの気持ちや関心に沿った言葉を話しかけてやります。    直ぐには口にできないかもしれませんが,子どもは言葉を覚えていきま    す。いろんな言葉があることを分かっていけば,言葉の価値を信じるよ    うになります。とても大事なことです。     まず言葉を覚えなければ話すことができません。仕入れが先ですから,    分かりやすい話しかけを繰り返してやりましょう。最初の言葉はママが    教えなければなりません。生まれてはじめて口にする初乳が子どもにと    ってとても大事なように,言葉がどんなに素晴らしいものかを初体験す    ることは大事なのです。「ママ」という一つの言葉が笑顔のママとつな    がれば,こんなに素敵なことはありません。     子どもが近頃何も話してくれなくなったというママの声をよく聞きま    す。一つには,ママの方に原因があります。ママが言わせようとしてい    るからです。そんなつもりはないと思われるかもしれませんが,子ども    の方はそう受け取っているのです。遠足から帰ってきた子どもに,「楽    しかった?」と問いかけます。子どもは楽しかったことを言わなければ    なりません。本当はもっと別のことが言いたかったかもしれません。子    どもにすれば,ママは聞いてくれないのです。     話そうとする気持ちになるのは,話したいことが相手にきちんと受け    取ってもらえるときです。問いかけに答えるのは,話していることとは    違うのです。問いつめられたら誰でも嫌になります。答えたくありませ    ん。だから無口になっていきます。何か言えば,必ず問いつめられるか    らです。いつでも聞くというサインさえ出しておけばいいのです。聞き    手に徹するのです。どうすればいいのでしょう? ニコニコとしている    だけで十分です。子どもが話してきたら,反論や注意などしたくなって    も後回しにして,黙ってひたすら聞いてやってください。     家ではよく話す子どもなのに,外に出ると無口になることがあります。    それほど心配することはありません。何を話せばいいのか迷っているだ    けです。もちろん相手のことなどお構いなしに押しかけ的に話す子ども    もいますが,きちんとお話ししようとすれば相手のことを分かるまで話    すことはできません。無口であるには,それなりの理由があります。単    純に無口であることが心配なことと早とちりしないでくださいね。     無口であるときは,二つのことができます。一つはじっと聞き取りが    できます。おとなしく聞き耳を立てているから無口です。もう一つは,    自分に話しかけています。独り言という形で,声には出しませんがお話    ができます。どちらにしてもちゃんと言葉の世界にいるのですから,育    っていると見守ってやればいいでしょう。ただし,無口であるとき,い    わゆるボーっとしていることもあります。たまにはいいのですが,しょ    っちゅうであれば言葉が捕まえられていないので,手当てが必要です。     ・・・《無口な子は,言葉の仕入れや整理の作業をしているのです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《おしゃべりか,無口かは,本来どちらもあるからバランスがとれます。》 ※何事も過不足のないのがいいですね。話しすぎても話したりなくても,事は こじれます。それを解消するためには,きちんと話すこととちゃんと聞くこと が交互に絡み合わなければなりません。一つひとつの言葉を互いが順序よく積 み上げていく作業です。言葉に親しみ言葉を操るしつけのために,なぞなぞや しりとりなどの言葉遊びを楽しむこともいいでしょう。  俳句や川柳という大人の嗜みもその流れに乗るものですが,若い方は馴染ん でいないでしょう。親である大人の方が案外と言葉のやりとりを楽しんでいな いかもしれません。また,言葉の使い方は発想や見方そのもに対応します。ご 自分の言葉がどれほど多様性を持っているか,再確認してみてください。最も 簡単な方法は,作文をしてみることです。ママは言葉の先生なのですから,簡 単に書けるでしょう。お題は「子育て羅針盤を読んで」!! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ☆予告☆  次号では,【お子さんは,引っ張る方ですか,ついていく方ですか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ★編集後記★  隣接する町で来年度から,小中学校の二学期制が導入されようとしています。 説明によると,終業式と始業式が一回減り,定期試験が一回減り,その分授業 日数が増えるからだそうです。年間数日を増やすために大枠の区切りを変更し ようというのは,何ともお粗末な限りです。ゆとりのために土曜日を削って, 削りすぎたから学力低下が心配で学期をいじるという見通しの無さを露呈して います。  改革というのは本来目的があるはずです。修正ごとき事由で大枠を変更する ものでありません。夏休みの学期中断がそのまま残されているので,やがて夏 休みをいじらなければなくなります。何のためにという目的がないからです。 2学期制にするなら,このような教育をするためにという新しい教育理念が先 行すべきです。場当たり的なことで,将来を担う子どもたちを教育してもらっ ては心配になります。そうでないことを祈ります。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○