□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/02/23]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第177号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■               『教科書は?』  教科書の使い方と成績にはある程度の相関があります。学年終わりまできれ いなままであれば,成績は白紙に近くなります。教科書に学びの記録があれば, それなりの実績が残ります。学びの記録とは,欄外や行間に書き込みとして残 されています。もちろん,手遊びの落書きでは意味はありません。キャラクタ ーがびっしり書きこまれているようなら,学年はじめで学びの足は止まってい るはずです。学校に行く意義は半減されています。勉強が分からないという子 の教科書は,ページを開いた形跡が見当たりません。  大学ではかつて,教科書は使われていませんでした。ほとんどがノート講義 で,教授が板書した文字を書き写すという形式でした。コピーという機能もな かったので,手書きするしかしようがありません。ノートを取るのに追われて, 内容を味わう余裕などありません。当然,わけも分からず書いていくので,後 でノートを整理する必要があります。書き損じや間に合わなくて写せなかった 空白行を埋めなければなりませんが,そのためには順を追って理解していくと いう復習作業をせざるを得ません。手で学ぶという基本的なパターンがフル稼 働していました。  やがて,教科書を求める要望と教官による執筆意欲が重なり,教材はかなり 充実してきました。ところで,教科書というものを書く側からみると,読む生 徒や学生のレベルを想定しなければなりません。大学生用なら,高校レベルの 知識と学力を前提として,途中から記述されるということになります。もう一 つは教科書の目的をどこにおくかということです。どの知識まで誘導するかと いう到達点です。学期という時間制限の中で,内容記述は途中で打ち切られる ことになります。この点が教科書を使って教える側に降りかかってきます。教 科書に書かれていない部分が授業の話になります。  小・中学校の教科書では,例えば1年生用と3年生用で説明する内容の段階 と難易度が異なってきます。教科書はあくまでも初歩から書くのが基本ですが, 全てを書くわけにはいきません。そこで,学びの学年に合わせて切り取られて いきます。教科書は全てひとつながりと考えておかなければなりません。学年 毎に分冊されている,義務教育期間を通じて9分冊で一つの教科書と見なされ るものです。ですから,中学生になったから小学生の教科書は不要ということ にはならないのです。  教科書は読み込むものです。さっと読んでだいたい分かった,そのままで先 に進めば,後で必ず見過ごした部分の続きが大きな壁になります。一つ曲がり 角を間違えただけでとんでもないところに行き着いてしまうことに似ています。 当の本人には見逃したこと自体を分かっていないから困ります。1年生の時は 90点,2年生でがんばって81点,このペースが続けば,中学卒業時は39 点と下がっていきます。2年生時に1年生時にし残した10点を取り返してお くという学びをしていけば,90点ペースを保持できます。教科書は前の所を 全て分かっているものとして書かれていることを,知っておいてください。  子どもたちは教科書をバカにしているところがあります。勉強とは問題集を 解くことであると,考え違いをしています。教科書を理解しないままに問題を 解いても,力にはなりません。解けない問題が出てきたら,教科書に戻ります。 理解し残した部分,あるいは教科書から一歩だけ踏み出した部分をさかのぼる ことで,教科書に沿った理解の整理ができます。知識は整理されてこそ,使え るものになります。教科書は学習の台紙であると考えておくことです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12指標★      【お子さんは,引き受けますか,押し付けますか?】                             (質問14-08) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○引き受ける子!     引き受ける,押し付けると言えば,いわゆるしなければならない用事,    自分のことではない仕事に対する態度です。家族みんなのこと,クラス    みんなのことです。堅苦しく言えば,公共に関わる姿勢です。大人も子    どもも,今最も弱くなっている心構えです。たとえば,駅前の不法駐輪    は歴然とした証拠です。いっぱしの社会人のつもりかもしれませんが,    その稚拙な振る舞いは成人式で騒ぐ幼い二十歳と同類です。自分だけで    はない,みんながしているから,という押し付け理屈に屈していて,大    人の決断をする勇気もありません。     電車内の通路をパンのものらしい袋が風に乗って漂っています。壁を    背にした長いすに座っている乗客の目にも触れているはずですが,みん    な無視しています。一人の若い女性が降りる途中ですっと拾って出てい    きました。ホームのゴミ箱に捨てて,静かに去っていきます。黙って袋    を見ていた人は,気になっていたことが解消された安堵感をかすかに感    じています。同時に,取り残された思いも味わっています。しなくても    よいこと,でもしたほうがよいこと,それを引き受けられる方が豊かで    す。     教室に落ちているゴミをすんなりと片づける子どもを育てたいもので    すが,たったそれほどのことでさえ難しいようです。家庭で普段から皆    がそうしていれば,子どもも自然に身に付くのでしょうが,掃除はママ    の仕事と思い込んでいれば無理です。拾いなさいと指示してみると,ど    うしてボクがとか,私が散らかしたんじゃないものという口答えが返っ    てきます。そんなことはどうでもいいから,拾いなさい。たまには,問    答無用と強いることも必要でしょう。     ところで,した方がよいことを引き受けた子を,別の子が足を引っ張    る場合がかなりあります。古いですが,いい子ぶりっ子を忌避する風潮    です。そのような行為はきわめて卑怯なので,しないようにきちんとし    つけなければなりません。妬みや嫉みに発する言動は,お互いに傷つく    だけです。大人でも,皆のために役割を引き受けてくれている人に,物    好きだからとか,裏で何かしているのでは,といった陰口めいた声を言    いふらす方がおられます。人の好意を邪魔する奴は馬に・・・。     公共に奉仕するという大層なことではなくて,できることであるなら    引き受けるということさえできれば,人生という道は広々と開けてきま    す。一見損するように思われますが,損をしないと得はやってこないよ    うになっています。その損も,人に喜ばれるものでなければなりません。    本物の損得勘定をしっかりと子どものときから教えておくことです。基    本をまず身につけておかないと,大人になってから大損するようになり    ます。それは金銭的にも,人間関係においても,生き方についても降り    かかってくるはずです。     人の嫌がることをしなさいという教えが,建前ではなくて本音で子ど    もに伝えられているでしょうか? ただし,気をつけないと,人の嫌が    ることをして嫌われることになります。もちろん,人が嫌がってしない    ことを引き受けるということですよね。それはちょっとしたことでいい    のです。そんな優しさや思いやりを引き出す呪文の言葉は,ドウゾの一    言です。ドウゾが言えたら,それだけで「できた人」になれます。   ・・・《人の喜ぶことを引き受けたいと思える子どもに育てたいですね》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○押し付ける子?     子どもたちは家事の分担をしなくなってきました。学校や会社の疲れ    を理由に,家のことをママに押し付けて,家族をやっているつもりです。    あるときは妻であり,あるときは母であり,主婦でもあり,たまには娘    であり,昼間は職業人であり,そして一人の女であるという変化をこな    しているママさんたち。それに引き替え,園児・生徒や勤め人でしかな    い人々は,何様のつもりでしょうか? ただの甘ったれ?     大事な旦那様やお子さんをこき下ろすのは止めましょうね。自分でそ    う思っていても,人に言われると嫌なものです。今年のサラリーマン川    柳に「家事分担 それパパこれパパ ママはどれ?」という一句があり    ます。近頃は,ママが司令塔になって,家族をこき使っているようです。    「小遣いが 欲しいと父も チワワの目」という句もあって,ママの暴    君ぶり?が見えてきます。川柳で鬱憤晴らしをしている間は大丈夫です    が,過ぎると崩壊しかねません。思いやりは家族の要です。     渡る世間は鬼ばかり。傍迷惑な鬼とはわがまま気まま,自分勝手な振    る舞いをします。それはやらなければならないことを,他人に押し付け    ようとする嫌らしさです。人がしているから自分もという思いで加担し    ていくから,住みにくい社会にスパイラルしていきます。人にしてもら    おうとするから,してもらえなくなっています。子どもたちを自分の手    で守ろうとせずに,守ってもらおうと皆が押し付けあっているから,子    どもは丸裸のままに放置されていきます。     そんな世間の中で育っていれば,子どもも押し付けることしか学ぶこ    とができません。道の真ん中に自転車を放置して車の邪魔になっても,    公共の道で何をしようと自由であると,知らんぷりです。邪魔ならあな    たが除けなさいと押し付けてきます。交差点で飛び出して,車に接触し    掛かっても,注意をしない車の方が悪いとにらんできます。できること    をしないで一切を他者に押し付けていこうという不遜な態度は,社会で    は受け容れられません。そのときでも,自分を理解してくれない社会が    悪いと押し付けていくことでしょう。     家事とはうるさい用事ですか? したくないですか? それなら誰も    しなければいいでしょう。子どもたちは,ご飯を作るのはママの仕事だ    と思っています。ママが病気で寝込んだりすると,ママの心配よりも,    ご飯はどうするのと考えます。ママにすれば,私は飯炊き婆さんかと腹    が立つと共に情けなくなることでしょう。子どもに自分で食事を作らせ    てみましょう。買い物から食べ終わって後片づけまでの全てを体験させ    ることです。ついでに,ママの分も。ママが美味しいといって食べてく    れたときに,家事とは決してうるさい用事ではないことを実感するはず    です。     誰それの仕事だ,私の責任ではない,そんな逃げ腰で幸せがつかめる    はずはありません。幸せは面倒なことを人を押し付けている限り寄りつ    けません。自分から逃げているのですから。みんながそれぞれのできる    ことを持ち寄るために,家族という暮らし方があります。あたたかな家    庭とは,押し付け合う家族の所にはありません。手伝いといったことで    はなくて,引き受けようという気持ちが家庭を作る力を生み出します。    家庭も作れないで,社会人にはなり得ないのです。      ・・・《家庭はママに任せたとは,卑怯な押し付けに過ぎません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《引き受けるか,押し付けるかは,人としての成熟指針の踏み絵です。》 ※わがまま気ままで自由に生きたいという風潮が強くなっています。人が持っ ている欲望を解き放つのですから,快適です。ところで,欲望はエスカレート します。気に入らない奴がいたら徹底的に痛めつければすっきりする,むしゃ くしゃするから火をつけて面白がる,気に入らないから虐待する,欲望の負の はけ口が他者に押し付けられていきます。  要らなくなったゴミを辺りに放り投げることも同じです。自分の始末を自分 でつけられなくなったら,自分勝手をまき散らしたら,住みにくい世の中にな って当たり前です。だからといって,我が子をそんな世間に染まらせているわ けにはいきません。大人の無為を子どもに押し付けることは大人の恥です。子 どものためにも,社会で生きていく上での心構えを思い出して,しっかり伝え ていかなければなりません。人を責める前に,自らを確認してみることです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ☆予告☆  次号では,【お子さんは,やんちゃですか,それとも弱虫ですか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ★編集後記★  今号は,親というよりも大人としてのあり方に話の主点を移しました。子ど もに何を伝えればいいのかという問題を考えると,どうしても親の後ろ姿に触 れないわけにはいかなくなったからです。親の生き様が子どもに伝わればいい のですが,その際に親自身が育ちの目標とされて大丈夫かという再確認をして おくべきです。自分のように育って欲しいという自信を持てれば,それでいい のです。  子どもの人生は子どものものという物わかりの良さが,子どもを迷わせてし まいます。どんな風に育とうとそれは子どもの勝手,学校に任せておくという 押しつけでは困ります。子どもにはあなたの命が伝わっているからです。あな たの生きた証が子どもたちです。別人格という言葉に振り回されないように。 他人ではなく,親子なのです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○