□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/03/22]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第181号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■               『性教育?』  役目柄で講演を聞かされる場合も多いのですが,どうせ聞くからには何か一 つの情報を獲得しておかなければ損です。それさえもなければ,全く骨折り損 のくたびれもうけという仕儀になります。転んでもただでは起きないがめつさ も,好きなればこそでしょう。過日,間違いを起こした子どもたちと関わって 矯正に導いている方の講演を聞く機会がありました。そのときの数語のメモを 脚色しておきましょう。  精神的な病に罹患している子どもは,勉強に真面目に取り組んできた子ども に多いそうです。いわゆる「おくて」な子どもです。成熟しないことにいらだ ち,精神的に孤立しています。男の子の場合,母が無意識的に押し付けてくる 「女」を真っ当に受け止めてしまって,抜け出せなくなっています。感性が女 性化されて,男性性が上書きされ,中性化していくため,何か違うという本能 の発揮がねじれるようです。  女の子の場合は,父親不在もあり,対象となる性の理解が全く白紙のままで す。白紙であるから,父親にある男のかすかな匂いでさえ過敏に拒否します。 一緒に洗濯することを嫌悪している自分に疑問を抱かないことが心配です。一 方で,甘い言葉に隠されたオオカミの本性を思いも及ばない無垢さが発揮され ています。バランスのとれた男と女の存在が子どもの近くになくなっているよ うです。  犯罪,特に肉体的段階での充足に溺れていく子どもは,放任されて育った子 どもに多いそうです。いわゆる「おませ」なこどもです。構ってもらえなかっ た寂しさを癒すには,密着できる濃厚なふれあいが必要になるということです。 身体の触れ合いが心の触れ合いに転化するはずもなく,隔靴掻痒であるために, どれほど溺れても満たされません。放任とは現実に関わらなかったということ よりも,気持ちのつながりが持てなかったことです。いつも叱られてばかりと 子どもが感じたら,それは放任になります。親がどう思っているかではなくて, 子どもが受け止めているかどうかが決め手なのです。  栄養豊かな食事をしていると母乳の出が悪くなります。母乳は子どもを産み 育てるためのものですが,その前に子どもを産み育てなければというスイッチ が入らなければなりません。母親が貧しい食事をしていると長く生きられない と身体が察知し,子孫を残さなければという本能のスイッチが入り,母乳をた くさん出すようにホルモンが機能するのです。豊かな暮らしは子育て機能を封 印するということでしょう。残るのは,快楽という付加価値だけです。豊かさ が淫らな道に迷い込むはずです。  生きる力を育てるときに,身体が備えている生きる本能を抑えたり曲げたり しないようにしなければなりません。身体の成熟は無意識の世界に組み込まれ ています。年頃になれば自然に成熟していきます。気をつけることは,意識の 世界の育てです。親との気持ちの触れ合いが素直にできあがっていればいいの ですが,往々にして,忙しいとか面倒だとか親の勝手が優先して切り捨てられ ます。心身のバランスを保つこと,それが性教育の真髄です。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12指標★      【お子さんは,思い切りますか,くよくよしますか?】                             (質問14-12) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○思い切る子!     思い切るとは,あきらめる,決心するという二つの意味があります。    いずれにしても,そこには,目一杯の遠慮や自信のなさに直面するとい    うある種の限界が意識されています。思い切ってと言えば,限界を乗り    越えてその先に飛び込もうとすることになります。思いを断つというこ    とであれば,あきらめて踏み止まることになります。結果は正反対のよ    うに見えますが,限界を見極めて自分なりに納得しているという点では    同じとみなすことができます。     これ以上踏み込んだら危険だという場合があります。潔く思い切らな    ければなりません。どうあがいてもできない状況もあります。あきらめ    るとは,明きらめる,明らかにし見極めて止めることです。ですから,    状況の推移を予断できる力が育っていないうちは,あきらめることはで    きません。たとえば,帽子が風に飛ばされて川に落ちたとき,急な土手    を降りてまで拾おうとして不幸な結果を呼び込んでしまいます。大切な    帽子でもあきらめさせるためには,川縁は「危ない」という強いイメー    ジを植え付けておくべきです。     人が頭で考えたり望むことと身体でできることの間には溝があります。    思い通りにならないのが現実です。子どもは気持ちが先走りして無茶な    行動に走ります。危険を予測して回避したり備えることはとても大事な    ことですが,じつはかなり難しいことなのです。子どもにおいそれとで    きることではありません。そこで,親はどうしても子どもが幼い間には    いろんな場面でダメ出しをせざるを得ません。ここに,子育ての難しさ    が潜んでいます。抑え込みすぎて諦めの早い子にしてしまうのです。     身長の数倍の高さがある滑り台の上に立つと,その高さゆえに怖いと    いう気になります。親は「思い切って滑っておいで」と下で受け止めて    やろうとするでしょう。恐怖を振り切れということです。このように,    子どもの育ちには思い切ってやってみるという挑戦が不可欠です。子育    ての世界では「やる気」と呼ばれています。そこで必要なのは,できる    かもしれないという可能性を信じることです。親が保証しているからで    きるはずとか,友だちもしているからボクもできるはずという証拠を見    つけることです。自分の可能性の奥行きをもう一人の自分が見極められ    るまでには,たくさんの体験の蓄積が必要です。     努力するという前向きな行動指針は育つためには必要なものです。で    きないと思えること,あきらめていることへの再挑戦によって,能力が    開発されていきます。そこに第二の思い切り,決心することが関わって    きます。努力とはできるかもしれないと見極められる範囲の中でするも    のです。努力可能領域があり,その先にはできない領域が横たわってい    ます。100mを20秒で走っている人が努力すれば19秒で走れるよ    うになれますが,どんなに努力しても10秒では走れません。ここまで    ならできると見えるとき,挑戦という形の努力が始められます。     世の中はディジタル思考が主流です。それは努力を破棄する思考法で    す。1か0か,それはできるかできないかという単純な思考であり,子    育ての世界で通用させていけません。育ちはできるかもしれないという    曖昧なところを目指して進むものだからです。全くできなかった子ども    が,繰り返し挑戦を続けて,5回に1回=10%,3回に1回=33%,    2回に1回=50%,3回に2回=66%,4回に3回=75%・・・    と,限りなく1に近づいていくことができます。育ちはアナログです。   ・・・《思い切る子は,あきらめて身を守り,決心して力を伸ばします》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○くよくよする子?     あきらめきれない,決断できないときがくよくよするときです。でき    なくても当然なのに,自分の非力を思い詰めてくよくよします。やれば    できるのに,自分の能力を見くびってくよくよします。ちょっとした穴    に落輪しているような状態です。もがけばもがくほど穴を穿つだけで深    みに嵌るようになります。早い時期に適当な手当てをすれば,楽に抜け    出せるものです。どうすればいいのでしょう?     幼いうちは,したいことがほとんどできません。例えば,生活空間は    大人サイズですから,小さい子どもにすれば手が届かないことが多いの    です。ママにしてもらわなければなりません。泣き叫んでもしてくれな    いとなると,思い通りにならないフラストレーションが溜まります。く    れない病という言葉がありましたが,他者のせいにしてあきらめさせら    れます。ママが世話を焼くという形でしてやらなければならない時期で    すが,必要なことに抑えておき,遊びには少しずつ手控えて,自分でな    んとかしようという気持ちを引き出してやりましょう。     一応のことはできてもちゃんとできないのが,育ちの途中です。そこ    で,ママがちゃんとできないことを叱れば,もう一人の子どももできな    い自分を責めるようになります。不甲斐ない自分と見くびります。大事    なことは,「それでいいんだよ」という励ましです。ここまではできた    んだからと,できたことを認めるようにすれば,もうちょっとがんばろ    うという気持ちを持つことができます。ガンバレという言葉は,今を認    めてやった上でないと,脅迫的なイメージが漂います。     あれこれやってみるという試行錯誤が育ちのプロセスです。それがで    きるためには,やり損じても構わないという許しが不可欠です。例えば,    食事の場面で「こぼさないで」という条件を押し付けると,最初からい    きなりできませんから,「いつまでもできないんだから」と烙印を押し    かねません。そのうちできるようになるはずと,ゆとりのある,つまり,    しくじりという助走期間を長くとってやるようにします。子育ては子ど    ものしくじりの後始末をすることと思っていた方がいいのです。     くよくよするという穴から抜け出すには,考える力をつければいいの    です。ここで言っておきたい考える力とは,勉強する力ではありません。    結果としてそうなるということに過ぎません。考えるときに気をつける    ことは,考える目的です。できるかできないかを考えるのが普通ですが,    それでは考える力が十分に発揮できません。多くの場合,できない方に    結論が導かれます。アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなもの    です。どうすればできるかを考えるのが力の正しい使い方です。     もう一つは,人のせいにする脇道を封じることです。ママがしてくれ    ないから,そう思っている限り,子どもは動き出そうとはしません。こ    れまで自分にできたことは何かを弁えて,その上でこれから何ができる    かを考えると道は拓けてきます。自分から動かなければ物事は全くうご    かない,でも自分が動けば少しはなんとかなる,そういうかすかな達成    感をたくさん体験すればいいのです。地道な試行錯誤の繰り返しが考え    る実力を育んでいくことを忘れないでください。  ・・・《何も始めないクヨクヨから抜け出すには試行錯誤しかありません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《思い切るか,くよくよするかは,できると思えるかどうかの違いです。》 ※できないと思っていたら,何もできません。今のままではできないけれど, どうすればできるようになるか,それこそが全力を集中して考えることです。 自分の力で変えることのできる条件は何かないか,そういう目で周囲を見ると 何かが見つかります。手の届かないところには,椅子を持ってきて乗っかれば 届くようになります。狭いところに転がり込んだものは,箸などの細い棒を使 えばかき出せます。道具を産み出した知恵が子どもの身に再現されます。  窮すれば通ずといわれますが,そのためにはなんとかしなければと自分を追 いつめることが必要です。なんとなく考えていても,埒はあきません。その意 味で考えることはとてもしんどいものです。外で遊んできた子どもがぐったり と疲れているのは,自分の身体をフルに使っているからです。ゲームを指先だ けで操る遊びでは,自分を操ることはしていません。外遊びの方が数倍も知的 な訓練になります。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ☆予告☆  次号では,【お子さんは,いい子ですか,それともいけない子ですか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ★編集後記★  サクラ花がひらいて,列島をピンク色に染め上がっています。かつてサクラ は入学式のシンボルでしたが,今は卒業の象徴にシフトしてきました。温暖化 の証なのでしょうか。先日,小学校の卒業式に招かれて参列しました。歌いな がら涙をこぼしている卒業生がいました。別れは否応なく子どもたちを次のス テップに追い上げます。思いっきり生きていってくれるようにと願います。  この子育て羅針盤の第14版も次週で完結し,新たな第15版へ展開してい きます。どのように変調するか,サクラの花に尋ねてみます。どこからかサク ラメールという風が吹いてくれないかなと心待ちにしています。あったかい風, つめたい風,いろんな風があることでしょう。それはこのマガジンが送り届け た風への素直な吹き返しです。進学や進級には不安もありますが,それ以上に 期待もあります。皆さんの身近にはどんな風がそよいでいますか? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○