□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/03/29]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第182号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■               『桜散る?』  サクラチル。大学の入学試験に不合格のサインでした。合格者発表の掲示板 を見に行けない遠隔地からの受験生のために,入学試験の場所で合格電報の受 付をする風景がありました。大学からの通知は遅れるので,早く知りたい人が 利用します。昔は郷土の合格者名が大学別に地方紙に掲載されていましたが, 最近はなくなっています。合格通知の「サクラサク」だけを申し込む人もいま した。通知がなければ不合格ということです。なんとなく曖昧にしておきたい という気持ちも分かります。  サクラチル。サクラにとっては自然であり,喜ばしいことです。花が散るか ら実を結ぶのです。花の立場に立てば,サクラチルは卒業のサインこそが相応 しいと思われます。何事かをやり遂げて新しい段階に入る喜びというのは,本 当は地味なものかもしれません。人生にはいくつかの花道があります。大きな 花道は恋の花が咲き,結婚という結実に続きます。蜜月の後に,出産に至りま す。子どもは誕生でサクラサク! サクラチルで卒業し,また入学でサクラサ ク。こうして年輪が重ねられます。  一花咲かせたい。誰もが抱く夢です。大輪の花,小輪の花。華やかな花,目 立たない花。艶やかな花,渋い花。いろんな花があります。生きているからそ れなりの相応しい花があります。しかし,花は散るために咲きます。いつまで も花のままでは,実になりません。例えば,職場の花に納まってチヤホヤされ ることがいいとは思われなくなったことは,実を求める前向きな生き方です。 実の力と書いて実力です。花は人の力を頼りにしようとするサインに過ぎませ ん。  サクラチル。普通には,事に破れた意味です。冷酷な風に事半ばにして無惨 に散らされたという状況でしょう。花の命は短いので,その間にきっちりとや るべき事を済ませておかなければなりません。助けを受けて,生長のスイッチ を入れるのです。子ども時代は,花の時代です。子どもに親が手を貸して,ス イッチを入れてやるべきときがあります。それがどのようなスイッチか,この 子育て羅針盤で述べてきました。  花であれば雄しべと雌しべがあります。子どもには心と体があります。夢と 現実があります。期待と不安があります。理性と欲望があります。過去と未来 があります。喜びと悲しみがあります。真偽,善悪,美醜があります。生きる ために必要な要素をしっかりと結びつけて実がなる準備をしてやるのは,親の 務めです。抽象的な言い回しですが,花である子どもに親は常に関わっていれ ばいいのです。ただし,気をつけないと,花は脆いので散らしてしまいます。 サクラが自らチルのです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12指標★     【お子さんは,いい子ですか,それともいけない子ですか?】                             (質問14-13) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○いい子!     笑顔を見せる赤ちゃん。いい子ですね。腕の中や背中でぐったりと眠    っている子は重たいですが,完全に身を任せてくる愛しさいっぱいで,    いい子です。しばらく離れていると,ママって言いながら駆け寄ってく    る危なっかしさがありますが,いい子です。いきおいママの語りかけも    優しくなります。幼くて頼ってくる子はかわいいものであり,頼られれ    ばいい子だと思うものですよね。子育ての起承転結を想定すれば,起の    時期です。やがて承の時期に突入します。     もう一人の自分が誕生すると,自分で自分を支配しようとし始めます。    親離れです。確かに可愛くなくなりますが,いい子であることに変わり    はありません。自分のことがちゃんとできます。ママの言いつけはよく    守ります。世話をやかせることも少なくなってきます。友だちともケン    カせずに仲良く遊びます。外で遊んで汚れて帰ってきますが元気いっぱ    いです。お手伝いもニコニコとしてやってくれます。いい子がいっぱい    ですね。     この子はもう長くはないかもしれません。お医者さんにそう告げられ    たとき,親は何を考えると思いますか? 生きていてくれさえすればい    い,それだけです。生きて傍にいてくれれば,それだけで十分にいい子    です。おかげさまで小児喘息で苦しんでいた子は今でも通院が続いてい    ますが,息災に暮らしています。一緒に入院していた子どもたちの幾人    かはもういません。年下の女の子,年上の男の子,風の便りに知りまし    た。みんな生きようとしていたいい子たちでした。     親にとっては赤ちゃんがつつがなく健やかに育ってくれたら何よりで    す。突き詰めていけば誰しもそこに行き着くのですが,成長と共にそれ    を忘れるといい子の姿は遠くに去っていきます。100点満点でなけれ    ばいい子ではないという物差しを振りかざすとき,すべての子どもは落    第をします。そこそこでいい,それがいい子の資格です。半分以上いい    子であれば,少しのことはお目こぼししてやりましょう。だって,10    0点満点の親ではないんですから。     いい子といっても,どうでもいい子では困ります。いてもいなくても    いい子でもありません。親の手を煩わさないいい子は,往々にしていな    くてもいい子に放り出されます。バカな子ほどかわいいという親心の機    微は不思議なものです。関わりの深さが利くのでしょう。子どももそれ    を望みますから,いい子になりたくないとブレーキを踏むことがありま    す。いい子であれば構ってもらえないのですから。いい子であったとき    は思い切り構ってあげることです。     子どもはいい子であろうとしています。でもママはそれが当たり前と    考え,何の反応もしませんし,ましてやほめてやることもありません。    思い出してください。小さい頃は,取り立てるほどのことでもないのに    大げさにほめまくっていましたね。いい子にしていたら認められる,そ    れはとても大事なことです。ママだって家族に美味しいものを食べさせ    ようとがんばったとき,当たり前という顔をされたら拍子抜けしますよ    ね。これは美味しい。その一言で,またがんばろうという気持ちになる    でしょう。子育ての転の時期は七転び八起きの連続です。       ・・・《いい子は常に認められ続けるから育つことができます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○いけない子?     遊ぶ金が欲しくて,窃盗や恐喝,ひったくりに走る子どもが現れてき    ました。いけないどころではなくて度を超えて,社会から隔離して鍛え    直すという荒療治を受けざるを得ません。多くの場合,親の手に負えな    くなったときが,道を踏み外す発端になります。いくら言っても改める    どころか意固地になって拒否しようとします。そこでビシッと立ち直ら    せてやれば,深みに落ち込まずに済みます。そのときになったら親は本    気になって全力で絆を結ぶつもりでないと通じないでしょう。     不登校の子どもが少なくありません。いろんな対処がなされています    が,なかなか功を奏していません。かろうじて抑えている程度で,減少    に転じないままに過ぎています。次々にそうならざるを得ない子どもが    送り込まれているということです。ある日から急に不登校になります。    きっかけは子どもによってさまざまでしょうが,原因を内に秘めている    から反応してしまいます。長い育ちの間に,不登校に向かって近づいて    しまっているということです。中学生になって不登校になるとき,小学    生時代から下準備されているのです。     疲れていると風邪を引きやすいですね。心が疲れているから,ちょっ    としたトゲで発症します。病気に罹った子どもはいけない子ですか?     そうではありませんね。熱を出している子どもを無理矢理登校させます    か? ゆっくり養生させますね。登校できないことは責められることで    はありません。何より先に心の健康を回復する必要があります。そして,    病気に罹らないように普段の健康に気遣いしているように,もう一人の    子どもの健康にも気を配ってやってください。健康が耐性なのです。     うちの子はまだそれほど問題となるような発症はしていないと思われ    るでしょう。ただ,普段の姿を思い起こすと,夜泣きをする子,おねし    ょをする子,好き嫌いをする子,言うことを聞いてくれない子,いちい    ち逆らう子,わがままを言う子,甘える子,幼稚園に行こうとしない子,    おとなしくしていない子,きりがなく出てきます。ついついいけない子    と感じてしまいます。感じるのですから感情です。親の気分が害された    だけのことであり,子どもにはそんな悪意があるはずもありません。     子どものすべての行動は育ちのために必要なことです。ただそれが型    に馴染んでいないためにうまくいかないだけです。だからこそ,慣れさ    せるためのしつけがなされます。ところで,無理矢理性急なしつけをす    ると,もう一人の子どもはあちこちに小さな傷を受けていきます。弱っ    ていくのです。見かけはしつけのよく行き届いたいい子かもしれません    が,内実は無理をしてゆがんでいるということになります。そうである    かどうかの診察法は,子どもに笑顔があるかどうかです。本当にいけな    い子,病んでいる子の笑顔には力がありませんから,親ならすぐに診断    できるはずです。傷の癒える時間をたっぷりとるようにしてください。     よその子はいい子に見えるものです。それに引き替えうちの子は!?    そんな嘆きはよしにしましょう。嘆いて効果があるなら別ですが,ズル    ズルと落ち込んでいくのが関の山です。いけない親になります。いけな    い親になるのは簡単です。思い通りにさっさと育っていないからとイラ    イラすればいいのです。しつけと称して折檻すれば気持ちがスーッとし    ます。子どもがわざといけない子になろうとしていると思って,子ども    のせいにしておけば苦になりません。この子がいなければどれほど楽に    なるだろう? 悪魔の囁きが耳元に聞こえてくるはずです。さあ,そろ    そろ白昼夢から覚めてください。お子さんが呼んでますよ。     ・・・《いけない子だから見かねて育てようという親心が目覚めます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《いい子か,いけない子かは,親の懐の深さによる見た目の違いです。》 ※学校時代の成績ランクが,その後の人生の評価と重なっているでしょうか? 周りの大人を見回して,あの人は成績優秀だったろう,あの人はそこそこでは, あの人はダメな人だったかも,そんな見計らいができますか? それをしたと ころで,八卦のようなもので当たらないことの方が多く,大した意味はありま せん。同級生を思い出しても,成績なんてそれほど重要な要素ではないでしょ う。人となりが最も利いているはずです。  子ども時代にいい子であるかいけない子であるか,普通にはどうでもいいこ とです。もちろん人に危害を及ぼすような逸脱は論外ですが,子どもから被せ られる迷惑は黙って引き受けておけばいいのです。またやったの! 仕様がな いわね。そのたびに子どもの方は育ちをしているのです。子どもはがむしゃら に育ちます。辺りに泥はねをまき散らすのは仕方がありません。親が泥を被る から,子は感謝の気持ちを貯めていけるのです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ☆予告☆    次号では,【ママは,どうして子どもの先回りをするの?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ★編集後記★  今号で子育て羅針盤第14版を終わります。子どもはいろんな姿を見せてく れます。しかし時として,子どもは首尾一貫しているのに,親の方がふらつい ているから,同じ子どもが違って見える場合もあります。家庭にいるときの子 どもと,外にいるときの子どもが違っているのは,子どもが違うのではなくて 環境の色がただ反映しているだけです。朱に染まれば赤くなるということです。 そんなあれこれをいくつかお話ししてきました。  次号からは第15版に入ります。「子育て12指南」と題して,従来どおり の構成で書き下ろしていきます。背後にある12テーマは基本であるがために 変わるはずもなく,数版にわたって購読されている方にはおなじみのことと思 います。切り口を変えてああでもないこうでもないと,お話ししています。そ うはいっても,少しずつですが,概念の精選が進んでいると思います。書き手 には容易に見ることはできませんが・・・。引き続きのご購読をお願いいたし ます。また,よろしかったら本マガジンのご紹介もして頂けたら幸いです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○