□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/04/05]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第183号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■               『風の子?』  子どもは風の子。どこからともなく登場し,平穏だった家の中を吹き荒れ, 外に出れば風に真っ向から突き進んでいきます。寒い冬にはほっぺを真っ赤に して,暑い夏には真っ黒に日焼けをして,徒党を組んで近所を走り回ります。 そんな自然児はめっきりと少なくなっています。冬は風邪を引かないため寒さ に触れないように,夏は暑さを避けるように,エアコンディションのある快適 な部屋に閉じこもっています。スイッチ一つで部屋の環境が思いのままです。  2歳の女の子がゆったりとしたコンクリートの坂道を走っていきます。転ん だら危ないなとハラハラします。階段を踏み外して擦り傷をつけても平気です。 痛かっただろうに親は我がことのように痛みを感じます。親という字を分解す ると木の上に立って見るとなります。離れて見守るという間合いが求められて いるようです。ハラハラドキドキしているしかないことが親心です。子どもに とっては,その方がいいということです。  野山に身を置くという自然体験が少なくなっています。自然とは人のことな ど斟酌しない世界です。思い通りにならない場にいると,自分をどう扱えばよ いかという課題に直面します。じっと我慢すること,なんとかしようと考える こと,助け合うことなど,生きる力が引き出されるきっかけになります。子ど もは環境に馴染もうとして育ちます。江戸っ子,なにわっ子など土地柄に似合 った育ちがあります。軟弱な人工的環境ではひ弱な子に育つでしょう。  かわいい子には旅をさせよ。親元のあったかい庇護の元を離れて,浮き世の つめたい風に立ち向かう経験が,少年少女を一回り大きく育てるという知恵で す。浮き世もまた思い通りにはならない,自分が脇役でしかない世界です。し かし,捨てる神あれば拾う神ありでもあります。思いがけない救いもあり,世 の中まんざら悪くもないという希望も見つかります。サクラの花が寒気の後に 来る暖気に誘われて開花するのが,自然の摂理であり,育ちのありようです。  枝があればぶら下がってみたくなります。穴があれば覗いてみたくなります。 鳥が歩いていると追っかけてみたくなります。水たまりがあると棒で突いてみ たくなります。影法師を踏んでみたくなります。無邪気な戯れですが,その他 愛のない一つひとつが,この世界を知る手がかりになります。現場検証で手に 入れた材料が多ければ多いほど,子どもの世界観は正確になります。いつまで くだらないことをしているの! その制止は育ちの邪魔です。  転がっていくボールを一心不乱に追いかけて曲がり角から飛び出していきま す。縁石の上を歩こうとしていて踏み外します。椅子の上から跳んで転びます。 ヤカンの湯気を掴もうと手を伸ばします。注いだばかりの熱い味噌汁に口を付 けようとします。お箸を口にくわえたまま歩き回ろうとします。自転車に乗っ て歩道を猛スピードで疾駆します。いろんな局面で危険な行動にはみ出すこと もあります。それはきちっと叱っておかなければなりません。叱るのも親から の強い風です。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12指南★        【ママは,どうして子どもの先回りをするの?】                             (質問15-01) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○泣いた後!     動物園に行きます。お昼前になるとママがソワソワしてきます。早く    行かないと食堂が混むという予測に急かされて,見学もそこそこに引っ    張っていきます。子どもはもっとゾウさんを見ていたかったのに,とい    う不満が残ります。気の済むまで見せてやりましょう。中途半端な気持    ちになる癖をつけると,飽きっぽくなります。子どもが自分の中で完結    するペースをしっかりと持つことができるようにし向けて下さい。     どんなに幼い子どもでも自分が何をしたいかを決めたいのです。お店    で何かをせがんで泣きわめくことがありますが,自分の欲望を満たすこ    とで,楽になろうとしています。苦しいから泣くのです。少し成長する    と欲しいと思っても勝手に取ることができないと弁えているために,自    分を抑えなければならず,その葛藤にどう対処すればいいか分からない    からわめきます。     泣かれると仕方なく子どもの欲望を満たしてやります。葛藤が消える    から,ケロッとして上機嫌です。この対処はママの先回りに過ぎず,子    どもに教えることは泣けば思いが叶うという手管です。ママはただ泣か    れるのが格好悪いという理由でしょうが,子どもの育ちの歩みをスキッ    プしているという意味で先回りしています。そんな場合は泣かせておけ    ばいいと言われます。では,子どもの気持ちの中で何が起こっているの    でしょうか?     気持ちの揺らぎは大声というエネルギーの発散でかなり低下させるこ    とができます。いらついたときには,思わずバカヤローって怒鳴りたい    ですね。それが本当に言えたらスーッとするだろうなと思いますが,言    えないのが余計辛いです。せめて子どものうちは言わせておきましょう。    また,落ち込んで辛いときには思いっきり泣けば落ち着くということが    あります。気持ちの発散で身体の力が抜ければ,その後では思いもよら    ず楽に気持ちを切り替えられます。     子どもたちが泣かなくなったといわれています。泣けないというべき    かもしれません。泣くことを禁じられていると,暮らしの中で感じる葛    藤は閉じこめられていきます。気持ちの淀みがどす黒く蓄積し,ちょっ    としたきっかけでドバーッと噴き出してきます。子どもたちが見せてく    れる理解不能な行動に,大人はどう向き合えばいいのか戸惑っています。    もちろん,子ども自身もどうしてそんなことをしでかしたのか分かって    いません。なんとなくやってしまったということです。     耐性がないという指摘も,根っこはつながっています。子どもにイヤ    な思いをさせたくないという親心が,甘やかしになります。結果的に余    計な先読みをしています。子どもであればこそ,イヤだと思えることは    たくさんあります。そのすべてを満たしてやることはできません。かな    らずどうしようもない局面に至ります。そこで泣くことができたら,そ    の肩を優しく抱きしめてくれる人がいたら,我慢しようという決意が生    まれ,ケリがつきます。自分でそう決める力が育っていきます。   ・・・《気持ちの入口と出口が完備してこそ,子どもは健康に育ちます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○先走り?     しつけの手段として,ほめると叱るがあります。良いことをしたらほ    めてやり,悪いことをしたら叱りますね。この至極簡単なことが意外と    実行されていません。「〜したら」という部分が意識されていません。    あからさまにいえば,行動が終わった後でほめたり叱ったりするという    ことです。行動を決めるのは子どもに任せるのです。結果について正し    く評価をしてやるのが親の務めです。     念を押しておきましょう。多くのしつけが,子どもの決める前に発動    されていませんか? 良いことをしなさい,悪いことはしてはいけない    としつけていませんか? 幼い頃は親の言う通りにしていれば間違いあ    りません。でも,物心がつき始めた子どもには,相応しくありません。    もう一人の子どもの考えるチャンスが奪われてしまうからです。指図通    りに聞き分けのよい子に育ってきた子どもが,突然きれてしまうことが    あります。ママの言う通りに育ってきたことを後悔するからです。     人は他人に言われてしてきたことは,自分がしたとは思えないもので    す。育ちも一仕事とみなせば,言われるがままに育った自分は,自分で    はなくて,ママに作られた自分であることに気づきます。自分はいった    い何者という疑いが生じたとき,自分の存在が危うくなり,自暴自棄な    破壊を自分に向けていきます。自分なんか壊れてしまえという切羽詰ま    った衝動です。親から逃亡して徘徊に及ぶ子どもたちは,自分探しをし    ようとしています。     子ども自身がこうしようと考えて行動を決めることはとても大事です。    親がちゃんとその判定をしてやることで,子どもは考えたことが正しか    ったか間違っていたかが分かります。たとえ間違っていたとしても,す    ぐには反発するにしても,考え直すというプロセスが可能ですから素直    に聴くことができます。この繰り返しによって真っ当な考え方に導かれ    ていきますが,何より大事なことはもう一人の自分がちゃんと考えたと    いう経過です。     走ったら危ないから気をつけなさい。その注意はした方がいいでしょ    う。多少は控えめにしようと考えるでしょうから,大事には至りません。    転けたらちょっぴり痛い目に遭います。自分の考えが甘かったと修正で    きます。危ないからダメ。その強い制止があると,大丈夫と考えたこと    が丸ごと否定されますから,考えることをしなくなっていきます。実際    に転けてみてはじめて,どうすれば良かったのか?と必ず考えます。     よい子に育てようと先回りをすれば,その気持ちは子どもにはありが    た迷惑です。自分に考えさせて欲しいと子どもは思っています。たとえ    考えが足りなくても,それは自分のせいであり,納得できます。子ども    に考えさせて決めるチャンスを与えること,それは親にすれば回り道で    ありまどろっこしいことです。忙しいからそんな悠長な暇はないという    先走りをしたい事情も分かりますが,育てるということは手間暇の掛か    ることだとあきらめて下さい。    ・・・《たとえ未熟であっても,自分で考えることが育ちの鉄則です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《ママの先回りは,子育ての手抜きになると心得て下さい。》 ※ボクがする。きっぱりと言い切って来る時期があります。させてやればいい のです。ママはあっちに行ってて。ハイハイと引き下がればいいのです。任せ たのはいいけど・・・! しばらくして覗くと,どうしたのと驚かされる羽目 に合います。とんでもないことになっているかも? 仕方ありません。穏やか に注意をし,必ず一緒に仲良く後始末をして下さい。自分でしたことですから, 責任を取らせるのです。  子どもは親に迷惑を掛けて育ちます。臑をかじるだけではありません。親だ から引き受けてやれます。逆に言えば,子どもの迷惑を淡々と引き受けられる ようになることで,親になっていきます。もしも子どもが重荷に感じるような ことがあったら,自分も親にそうやって育ててもらったことを思い出して下さ い。いろんな考え違いや思い違いを親が丹念に吸い取ってくれたから,今の自 分があることを。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  子どもたちの食生活の崩壊を訴える特集記事が地方紙に掲載されています。 栄養の偏りが感情や理性の機能に影響を及ぼしていることが分かってきました。 口を酸っぱくしつけをしても,食生活が乱れていれば,受け付けるどころでは ありません。食については,このマガジンの守備範囲を外れているので詳しい 説明はしませんが,いずれ機会を見つけてポイントをお伝えします。  入学や進学を迎え,子どもたちは不安と期待が渦巻いているでしょう。その デリケートな心境をそっと包んでやって下さい。無理に背中を押すこともなく, かといってことさら庇い立てするのでもなく,普通に接して下さい。親がオタ オタすると,子どもまで揺れ動いてしまいます。何よりゆったりとした後ろ盾 が必要なときです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,【ママは,どうして子どもの揚げ足をとるの?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○