□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/05/03]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第187号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■               『虐待では?』  ある中規模市の教育委員会が保護者を対象に市民意識調査を行いました。そ れによると,幼児の保護者では73%が子育てに自信が持てず,26%が虐待 したと思っており,児童の保護者では69%が自信がなく,24%が虐待した と思っているということです。虐待の内容については,感情的な言葉が幼児・ 小学生共に9割,暴力は幼児で42%,小学生で32%になっています。とて もつらい現状がうかがえます。  子育てに自信が持てないから,なんとかしなくてはという焦りが強くなり, 思う通りに動いてくれない子どもに責任を転嫁して,子どもが悪いと考えてい って,ついには罰するための暴力に至っています。この連鎖を断ち切らないと, いつまでも事態は改善されません。最も望ましいことである元を断つには,子 育ての自信を持てるようになることです。そのためのお手伝いをしようと願っ て,この子育て羅針盤をお届けしています。ただし,体質改善のようなものな ので,時間がかかります。  対処療法としては,子どもの行動などの属性面から気持ちを離してみること です。落ち着きを取り戻すためです。夜眠っている子どもの顔を覗くと安らか な寝顔があります。昼間のいさかいが胸に痛く刺さってくるでしょう。期待通 りの子どもでなければという欲は脇に置いて,子どもそのものの存在をしっか りと受け止めてやることです。子どもをどうこうしようということよりも,子 どもにそっと寄り添ってやればいいのです。そう思っていればやがて焦りは軽 減されていきます。  子どもは未完です。自分でも思い通りには動けません。子どもは大人のよう には走れません。すべてがそうなのです。決して能力がないのは子どものせい などではありません。待つという忍耐が親には求められます。言い換えれば, 大してできるはずもないと諦めることです。それが子どもを子どもとしてきち んと見てやることです。子どもには悪いところはないと信じるようにすれば, 責める気持ちは薄れていくことでしょう。  言葉遣いにも気をつけましょう。支配者的な指図をする言葉は御法度です。 代表的な言葉は「〜しなさい」です。偉そうな言葉を使っていると,言うこと を聞かない子どもにプライドを傷つけられたような錯覚に陥ります。プライド が高慢になっているから,暴君特質が現れお仕置きが激してきます。幼気な子 ども相手に偉ぶったら,結果は悲惨になるに決まっています。命令的な言葉は 相手に有無を言わせません。追いつめても詮無い相手であることを弁えて頂け ませんか。ママは言葉の先生です。美しい言葉だけを口にしてもらえば,どん なに素敵なことでしょう。先ずママは言葉美人になってください。  不幸な出来事が起こるときには,いくつかの要因が偶然に重なるものです。 ということは,一つでも確実に外しておけば,防ぐことができます。つい弾み で,こうなるとは思いもしなかった,そんな過去の数多くの反省から学んでお くことが大事です。ほんのちょっとした気遣いをするだけで済みます。歯車を 一つ替えるだけで,全体はよい方に回り始めます。すべての方策はいつもママ の方にあることを知っておいてください。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12指南★       【ママは,どうして子どもの言葉をさえぎるの?】                             (質問15-05) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○展望!     ママが慌ててしまったことがあります。6歳の次男は言葉の言い間違    えがとても多いのですが,ある日のことです。次男が台所で遊んでいた    三男の様子を見ていたのですが,「○○ちゃんが"ねっとり"してるよ」    と,隣りの部屋にいたママを呼びにきました。ん,ねっとり? 悪戯を    して油でもかぶったのか!? びっくりして見に行くと,そこには熱を    出して"ぐったり"とした三男がいたのです。次男の言い間違いを正すこ    となど忘れていました。     ちょっとした言い間違いですが,弟の様子がおかしいということはち    ゃんと伝えてくれています。ねっとり? もしもママが何をわけの分か    らないことを言っているのと聞き流したら,大事なメッセージが無に帰    したはずです。油を被った? それはママの思い違いでしたが,胸騒ぎ    を覚えたのはさすがに母親の鋭い直感です。そこから弟思いの次男の優    しさを受け止めてやることもできました。「ありがとう」。そう言って    あげたら,優しさへの展望が見えてくることでしょう。     スーパーマーケットでよく見かける母子の会話です。「ねえねえ、こ    れ買って」,「これはラムネがいっぱい入ってるだけだからダメよ」。    「じゃぁ、これ買って」,「これはだだのアメじゃない。ダメよ」。    「じゃぁ、これは?」,「これはパイの中にチョコが入ってるだけ」。    「これは?」,「これはチョコの中にアーモンドが入ってるだけでしょ」。    お母さんはいったい何だったら買ってやるのでしょうか? おそらくす    べてダメなんでしょうね。     子どもの要求をまともに受けて,理由を言って聞かせながらいちいち    拒否しています。子どもはこれがダメならあれをとしつこく責め立てて    きます。根気よく受けているところをみると,このお母さんは優しいの    でしょうね。普通だったら,三つ目になると「いい加減にしなさい」と    ガツンと言ってやるはずです。子どもの言葉を振り払うだけではベター    ではありません。なぜなら,繰り返すだけできりがないからです。子ど    もの気持ちを別の方向に上手に逸らしてやることです。     例えば,モノの選択の良し悪しではなくて,今日はダメだけど明日な    ら,といった時間をシフトすることです。欲を拒否するだけでは治まり    ませんが,時を移すことなら欲を持続できるので待つというしつけに転    換することができます。約束というしつけにもなります。もっともママ    が守らなければなりませんが,それは嫌ですか? 要は気持ちを切り替    えることです。考え方や見方を変えると,新しい展望が開けます。子ど    もの言葉を遮るのではなくて,生かしながら次につないでやりましょう。     子どもが大きくなってくるといつの間にかママと話さなくのは,理由    があります。それはママが「でもね,・・・」と話をひっくり返してば    かりいるからです。自分のペースに持ち込もうとして,子どもの話を途    中でご破算にしようとします。話しても無駄になるから,話さなくなり    ます。話していることがママとの会話で当初の方向からずれたにしても,    つながりながら展開していけば子どもは受け容れることができます。つ    ながりを断たれることが分かっていれば,口は閉ざされていきます。   ・・・《それではと展望が開けていけば,親子の会話は楽しくなります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○決めつけ?     両親と6歳の男児が道端の植え込みのところでもめています。母親が    「何であんたはさっきからこんなにおしっこばっかりするの!」と言っ    ていると,父親が「立ちションなんかしてないで家でして来れば良かっ    たんだ!」とフォローしていました。息子は負けずに「だって僕,おし    っこ貯めてるんだもーン」と返します。即座に母親の大声と激怒が追い    打ちです。「何言ってんのッッ、貯めていいのはお金とかお菓子とか道    で配ってるティッシュとか…そういうものだけなのッッッ!!」。父親    はその剣幕よりも内容に驚き,居心地の悪い表情を浮かべるだけでした。     確かに子どもの方が奇妙な理屈を繰り出しています。小生意気な減ら    ず口というものでしょう。それに負けじと対抗するあまり,激情が噴き    出して,母親の言うこともいささか失笑ものです。もしも父親が突っ込    みをしようものなら,「どこが間違っているって言うの!!」と開き直    られ,巻き添えを食うのが関の山です。目には目をという単純な応対で    すが,大人げないですね。貫禄を示さなくちゃ,そう思いませんか?     でも,そのときになればやっぱり言っちゃうかも。     学校の三者懇談の席でのことです。中一の女生徒は二学期の成績がか    なり落ちていました。先生から「どうしたの?」と聞かれて,「部活を    がんばりすぎました」と理由を言っていましたた。懇談の最後に先生か    ら「では,ここで三学期に向けてがんばりたいことを宣言してください」    といわれた女生徒は,「部活をがんばります!」と力いっぱい宣言しま    した。親はもちろんのこと,先生もずっこけてしまいました。「違うだ    ろう!」。     子どもの気持ちが大人の思惑とは全く正反対に向かっているとき,呆    気にとられます。そんなことは想定できないからです。その場の流れに    は,ある方向が前提とされており,それが共通理解されているはずです。    三者懇談は勉学に勤しむためにあるという大人の側の前提は,子どもに    はなかったということです。何にも分かっていないと嘆く場面はたくさ    んあります。ついつい言って聞かせたくなりますが,できるだけ子ども    本人が気づくように誘ってみませんか? 言っても変わりませんから。     ある学校での出来事です。男子生徒がタバコを喫煙したという理由で    学校を停学になりました。その停学が始まった翌日,世界禁煙デーの標    語募集で,その生徒の作品が入賞しました。学校では,先生も生徒もや    はり経験にもとづくのが一番という結論に達したということです。普通    であれば,教育的配慮という意見が巻き起こって,入賞の取り消しにな    ったかもしれません。ひねり出された結論もどことなく苦し紛れの感が    漂って,そこに皮肉な可笑しさがあるから伝聞されたのでしょう。     子どもはいろんな程度の望ましくない間違いを犯します。何度かの間    違いで素行の悪さというレッテルを貼り付けるのは,かなり酷です。標    語の一つでも認められることで,立ち直るきっかけがつかめるなら?     そんなチャンスを与え続けることが教育の理念です。ともすれば,難癖    をつけて切り捨てていくパターンが横行しますが,子どもの育ちを見限    ることになるということを忘れています。許しと励ましというのは,な    んとなく生まれてくるものではないようです。理想にすぎないと捨てる    には,あまりに大事なことです。 ・・・《ひどすぎて呆れることがあっても,育ちを信じ切ってやりましょう》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子どもの言葉はまだまだ次に続いて変わりうるものと心得て下さい。》 ※情報化社会の中で育っているにもかかわらず,子どもたちの言葉の力は貧弱 です。きちんとしたお話ができません。食品がインスタントになったように, 言葉もインスタント,ファストフード的に落ち込んでいます。深い味わい,正 確な意味,多様な言い回し,含蓄のある語句,そんな言葉の美しさが褪せてい きます。誰に向かってもため口でしか語れない未熟さを,そうと教えていない のは大人自らです。  ただ単にしゃべればいいというのではなく,洗練してやらなければなりませ ん。それは日常の語り合いによるものであり,コツコツと磨き上げる手間を掛 ける必要があります。言葉は一方的に伝えるものではなく,伝わり合わなけれ ば用を為しません。お互いの思いをきちっと重ねられたか,そのことを心掛け て子どもと話をしてください。大人と子どもの間には必ず誤解が生じます。そ れを解きほぐすのは,根気よく話を聞き,ゆっくりと確かめてやる親の言葉掛 けです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  近くの神社の境内に藤棚があり,花の垂れ幕がズンと迫ってきます。フジの 木は元気そうに見えているのですが,長い間に根周りの表土を人が踏み固めて しまったらしく,実際には弱っていました。樹木医の指導で地域の方による手 当てがなされて,今は立ち入り禁止の療養中です。きっと元気を回復してくれ ると思います。  春は花が咲き乱れる季節であり,心が弾みます。人になぞらえれば,青春は 子育ての仕上げの時期に対応します。子ども時代は冬の時代なのです。親の温 もりがなければ寒さに冷え切ってしまうことでしょう。親は何はともあれ温か くなければ! そんなことを思い浮かべています。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,【ママは,どうして子どもの体験を見過ごすの?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○