□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/05/10]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第188号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『チェック?』  1年生の算数のテストで「つぎのこたえをかきなさい」という問題が出まし た。ある子どもが次のような答えを書きました。  2+2=5 1+4=6 5+3=9 6+1=8 4+5=10  当然ですが,全部「×」がついて,0点になりました。子どもはがっかりし て,この採点用紙を家にもって帰って,泣きながら母親にみせました。母親は 愕然としました。「0点!」。しかし,気を落ち着かせて,よく見てから,に っこり笑って言いました。「全部,あっているじゃないの。まちがってないわ よ。お母さんなら,全部丸をつけてあげるわ」。そう言ってから赤鉛筆で大き な丸をつけて,100点と書いて,子どもをだきしめてやりました。  お母さんの行為の意味が分かりましたか? それよりも,なぜ子どもが泣い たのか分かりますか? 「次の答えを書け」というので,子どもは正答の次の 数字を答えとして書いたのです。「2+2=4」ですが,4の次の数は5なの で「5」と書いたというわけなのです。普通ならそんなややこしい計算をする はずがないと思われるでしょう。それは大人が計算の型に馴染んでいるからで す。でも,習い始めの子どもは問いの言葉通りに受け止めて,とんでもないと ころに踏み込んでいきます。  先生はチェックをする際にこの間違いに気づきませんでした。間違いには間 違いようがあります。それが分からなければ正しい指導をすることはできませ ん。同時に,教える側の言葉がちゃんと伝わっていないことにも気づきません。 「次の答えを書きなさい」という問いを「次の問題の答えを書きなさい」と改 めたり,「先生が悪かった」と正答扱いにしたりするとか,あるいは,特別の ○をあげるとか,いろんな対応をすることができたはずです。  日頃の子どもの力をしっかりと見ていれば,「おかしいな」と感じたはずで す。お母さんにそれができたから,この子どもは救われました。子どもはいろ んな間違いをしますが,いつも子どもなりの考えがあっての上です。自信を持 って答えたのに拒否されたから,泣いたのです。決していい加減な答えではな かったからです。そのことをしっかりと受け止めてやらなければなりません。 どこが間違えているのか,子どもの考え方に一理はないか,子どもに寄り添っ たチェックをしてやることが見守りの目です。間違いの中にこそ指導のポイン トが見つかるという優しさが,見守る者の要件なのです。  なぞなぞを一つ。「ありさんはどうしていつも裸なんでしょう?」。そんな こと当たり前? それでは真面目すぎて遊び心がありませんね。ありさんの洋 服はどこにも売ってないから? それは現実的で面白くありません。答えは 「ありのままに生きているから」。大人にはくだらないダジャレですが,子ど もはそんな言葉遊びが大好きです。子どもの発想はある面ではダジャレにも通 じています。先の算数のテストの話も,なぞなぞに見立てることもできますよ ね。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12指南★       【ママは,どうして子どもの体験を見過ごすの?】                             (質問15-06) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○体験の質!     小学2年生の娘さんが,いつもはおばあちゃんかお父さんとお風呂に    入っています。ある日たまたまどちらも不在になって,約2年ぶりにお    母さんとお風呂に入りました。お母さんが洗面所で化粧を落としていた    ら,突然金切り声で「おまえは誰だ!」と娘さんに問いつめられました。    お母さんは普段スッピンの顔を見せたことがなかったので,その衝撃的    な素顔に娘さんがとても驚いたらしいと気づくのに,少しばかり時間が    掛かりました。     一緒に暮らしていても,お互いのすべてを知っているわけではありま    せん。子どもはお母さんの顔といったらどんな顔を思い浮かべるでしょ    う? 怒った顔という子どもが少なくありません。恐怖の感情に増幅さ    れて,強く印象づけられるからです。よその子には見せている笑顔が,    子どもには向けられないから見えません。笑顔の美しいママを印象づけ    ようと願うなら,一寸の間でいいですから,思いっきり子どもと楽しく    遊ぶことです。一緒に何かをする体験に笑顔を添えてやってください。     ある叔父と甥の一こまです。いつもママと一緒でないとお風呂に入ら    ない3歳の甥に,「たまには,おじちゃんと入るか?」と聞いたら,    「いいけど,おじちゃんのおっぱいって,どう?」と聞かれました。    「どう?って言われても自信ないけど」と答え,いっしょに入るのをあ    きらめたというお話です。甥っ子がママとどういう風に入浴しているの    か,いささかきわどい?シーンですが,それはおじさんにはよく分かり    かねることです。     幼い男の子にとって,ママはおっぱいです。乳離れした後は,入浴時    にしかお目にかかれません。習慣という強い体験から,お風呂といえば    おっぱいという連想ができているのでしょう。今のうちに飽きるほど検    分しておけばいいのです。自分にはないものだから関心が強くなってい    るのですが,やがて記憶の中に収めていくようになります。そのために    も,お父さんと裸のつきあいをすれば,男であることに安心と自信を持    つようになります。そんな体験が不可欠です。     お母さんと3歳の息子との会話です。「大きくなったら何になりたい    ?」,「しんかんせん!」。「新幹線じゃなくて新幹線の運転手でしょ」,    「ちがう!しんかんせんになるの!」。「そんなこと言ったって新幹線    にはなれないの。だいたい,新幹線みたいに早く走れないでしょ」,    「じゃゆっくりはしる」。「ハハハ!それじゃ新幹線じゃないでしょ」,    「とまってても,しんかんせんだよ」。「・・!」。お母さんはすっか    りやりこめられています。     男の子の感性と女であるママの感性がすれ違っています。男の子は速    い動きに憧れているから,その速さを体得したいという願いそのままで    す。ところが,ママが早く走れないという現実を突きつけてきました。    それでも速さを秘めている新幹線,停まることもある新幹線,その同一    性を体験から知っているから,切り返してきました。男の子は速さ,マ    マは早さ,同じ「はやさ」でも思っているイメージが違うのです。男の    体験を持っているお父さんの出番です。ママの感性をあまり強引に押し    付けようとすると,男の育ちがしにくくなります。「そうなんだ」って,    受け止めておいてくださいね。   ・・・《子どもの言葉を読み解けば,体験の質が浮かび上がってきます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○体験知?     小学校の先生が国語のテストに漢字の書き取りを出題しました。その    中に「わんりょく」,「うもう」がありました。正解は「腕力」,「羽    毛」です。ところが,一人の子どもが,「犬力」,「羽牛」と答えたの    です。ワンは犬,モーは牛というわけです。先生は○も×もつけられず    に,大きな☆をあげたそうです。余裕がありますね。それに☆印をつけ    てあげたところがうれしくなります。正誤の尺度から離れて,子どもが    体験から絞り出した答えに敬意を表しています。     犬の力,羽のある牛? 子どもはその答えを書くとき,何を思ってい    たのでしょう? 怖い犬の力=わんりょく(腕力),妙に頷いてしまい    ませんか? 羽のある牛が「ウモウー」と鳴きながら空を飛ぶ姿,ママ    が読んでくれた絵本に登場していそうですね。子どもは自分の体験を総    動員して,言葉を紡ぎ出そうとします。言葉はイメージですから,見た    り聞いたりしたことと直結します。○×の厳正な目は,子どもの豊かな    イメージをあっさりと拭い去る消しゴムです。     数年前のある夫婦の風景です。NHKの「私の青空」と言うドラマの    中で,おじいちゃんが孫に「たけのこは大きくなると竹になる」と教え    ている場面がありました。妻が「そんな事誰でも知ってるよねー」と言    おうして,隣の夫の方を向こうとした瞬間です。隣から「エー!!マジ    !」と言う驚きの声がしました。「・・・・」。妻は結婚した事を一瞬    後悔したそうです。そんなことも知らないなんて! でも,似たような    状況は誰でもあるでしょう。枝豆って大豆だと知ってましたか?     タケノコが竹の子であることは,竹林に入った経験があれば,その場    のイメージとして記憶に残ります。食材としての皮付きの尖ったタケノ    コしか見たことがないと,理屈として竹と結びつけなければなりません。    一目瞭然という学びもあるのです。因みに,タケノコはいつタケになる    か知っていますか? タケノコの成人式はいつかということです。タケ    ノコは筍と書きます。この字に含まれる旬とは,上旬などというときの    旬で10日間という意味です。その頃に皮が剥がれて竹になります。     小学2年生の子どもが,宿題の暗記が覚えられないと泣いていました。    お父さんが,「お父さんの脳みそはもう硬くてだめだけど,子どもの脳    みそは柔らかいから,何でも覚えられるから頑張れ」と励ましてやりま    した。一時張り切って覚えようとしていましたが,しばらくして「僕の    脳みそ,柔らかすぎてはね返ってくる〜」と泣いていました。子どもは    面白い言い方をしますね。柔らかくてはね返るとは逆のようですが,脳    をゴムまりのようなものと思ったのでしょう。     暗記をする基本は,書くことです。書くという動作と,書いた結果を    目で見るということ,その二つがセットになって体験になります。体験    とは自分の身体でしたことですよね。自分の手で書いたものをイメージ    として捉えて記憶する,それが暗記なのです。口で唱えても,メロディ    がついていない音は簡単には記憶に残りません。学びがノートを取る形    を取るのも,記憶の助けになるからです。面倒なことをさせる,体験さ    せているのです。   ・・・《子どもの言葉は体験そのものと直結していて,未整理なのです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《体験学習とはキャンプなどの行事ごとではないと心得て下さい。》 ※子どもの言葉は未熟です。その未熟さは体験不足に寄ります。それでも,子 どもは未熟な言葉を懸命につなぎ合わせて考えています。お風呂にいっしょに 入っていた娘から「おなににやさしいってなに?」と尋ねられたお父さんが, 「オナニー?」,ドギマギして娘の方を見るとシャンプーの容器を持っていま す。「お肌にやさしい」の肌を何と言っていたのでホッとしました。知ってい る言葉だけがつぎはぎになって口に出てくるから,とんでもない未熟な会話に なります。  さらに,たくさんの情報の中で育つ子どもたちは,確かに言葉が豊かになっ ているように見えます。しかしながら,言葉の意味が浅くなっています。深い 納得をしていません。人の痛みや思いやりという,生きる上で大事な言葉が生 きることに結びついていないようです。普段の言葉が体験に結びつかないまま になっているからです。おそらく気持ちがいっぱいつまった暮らしから外され て育てられているのでしょう。邪魔だからあっちに行って大人しくしていなさ いと・・・。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  ゴールデンウィークはいかがでしたか? まさか散財しすぎて今月は緊縮財 政なんてことはないですね。それもまたいいのですが。今週からはまた普段の 暮らしに入ります。5月病というものがあるそうですが,ママにはそんな贅沢 な病は関係ないですよね。一日一日をつつがなく暮らすことで精一杯です。で も,子どもたちだって遊びに学びに一所懸命でしょう。ですから,気持ちよく 見守ってあげてください。  ところで,9日は母の日でしたが,いかがでしたか? カーネーションの花? ママを描いた絵? それとも,もっと素敵なプレゼント? 子どもさんからあ たたかい思いが届けられたことでしょう。うれしい日だったでしょうね。慕っ てくれると可愛いものです。素敵な想い出だけを残していってください。大事 な1ページです。親というのはそんな小さな出来事,日が経つにつれて大きく なります。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,【ママは,どうして子どもの力を借りないの?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○