□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/06/07]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第192号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■               『6.1ショック?』  6月1日の学校の恐怖。忘れものないか? ない。振り向くこともなく通り 抜けて学校に出かけた愛娘が・・・。天国から見守っていたはずの母親の涙は, いかばかりであったことでしょう。カッターナイフを首筋に振りかざして襲い かかってくる友を,どのような思いで受け止めたのでしょう。何が起こったの か? どうして? 残されたものは,わけが分かりません。6年生の小さな諍 いがあまりに重い結末を掘り起こしてしまいました。想像するのも嫌ですが, きっちりとその痛ましさを受け止めておくことから哀悼は始まります。  悲劇の回廊には,いくつかの扉があります。もしもあのとき,あの扉さえ閉 まっていたら,そう悔いることがいくつかあります。たまたますべての扉が開 けっ放しになっていたせいで,暗闇の淵まで一直線に吸い込まれていきました。 最初の扉は,チャットという世界に通じていました。チャットなんかしなかっ たら,それが扉を開けないという選択です。しかし,チャットの扉を開けたか らといって,悲劇の世界に直接入るわけではありません。非難中傷するという 扉を開けさえしなければよかったのです。そのつもりがなくても,受け手がど う思うかという扉の不思議があります。  ネットの世界でコミュニケーションすることが,若い人や子どもに好まれて います。気楽に思いが表明できるということのようです。どうしてなのか?  少子化できょうだいが少なくて,会話の訓練ができず,核家族でコミュニケー ション能力が培われず,人と直接言葉を交わす力が身に付いていないからであ るという指摘があります。直接の会話では言葉が流れていて,普通は一つひと つの言葉が鮮明に残ることはありません。さらに,記憶するときには,自分の 言葉で書き直しているので,意味の緩和が起こります。  書かれた文字による対話は,画像として文字が残り,曖昧さがなくクリアで す。その明瞭さが若い人に受け容れられている要因でしょう。しかしながら, それだけに悪意に満ちた言説は,効力をいつまでも保ち続けます。聞き流すこ とのできない,見過ごしにできない,強烈なインパクトを視覚的に打ち込まれ てしまいます。ネット上であれば,公開という側面が付け加わり,言いふらす というおまけまで付きます。メリットは逆に働き,悪意?を増幅していきます。  間接的な会話は,お互いに確認ができません。そんなつもりで書いたのでは ないという話者の意図とのすれ違いは,修復できないままに,受け手である自 分の中で反復してかえって疑心暗鬼は広がっていきます。また,間接的である ことは,陰の声として本音であるという勘違いを産み出し易いという特質があ ります。表情や口調や語調といった感情表現が伴わないことも,むき出しの言 葉が持つ鋭いトゲを抜きません。  言葉の世界のことは言葉の世界の中で解決することが原則です。それが身体 的な世界に向かう扉を開けて,危害を加えるという実行行為に突き進むことは 反則です。さらに,素手ならまだしも,凶器を手にするという扉も開けてしま いました。まだまだ他にいくつかの扉があるのですが,無造作に開けっぱなし になっていたようです。社会のありようが,近づいただけで扉が開くような自 動的な構造になっているのかもしれません。これからの注意深い分析を期待し ましょう。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12指南★       【ママは,どうして子どもの感動を茶化すの?】                             (質問15-10) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○知的感動!     自称大変な音痴と言われるお父さんがいます。悲しいことに神様は私    に音感とかリズム感とかを与えてくださらなかったと嘆いています。そ    んなお父さんにも,7歳の息子さんからは○○ってどんな歌だっけ?と    聞かれることがあります。そこで,音痴なお父さんは歌詞を覚えてない    ので,「ラララ〜」とリズムだけを教えていました。ところがある日,    いつものように「ラララ〜」と教えていると,とうとう息子さんに「お    父さん,お父さんて,ドとかレとかミとかって,知ってるっ?」と言わ    れてしまいました。お父さんはどう落ち込んでいいのかわからなかった    そうです。     好きな音楽は小さな感動を呼び起こします。ちゃんと歌えるようにな    ると,感動はより深くなります。何かができるようになることは,子ど    もにとってはワクワクすることです。歌のメロディを覚えるには,音符    という道具の助けがあれば楽です。「ラララ〜」であっても耳移しで伝    わるのですが,発声の時には音符の方が確実性があります。とはいえ,    音痴ではなくても,音階で歌えるお父さんは数少ないのではないでしょ    うか? 楽器の一つも演奏できたらいいでしょうが。     お父さんは,今年36歳になる年男です。その話をお母さんとしてい    たら,娘さんが話に入ってきました。「お父さん,さるなん?」。「そ    うやで」。「へぇ〜,めずらしいなぁ」。「そうかぁ?」。「うちの周    り,みんないぬやで」。トントンと進んできた対話が,ガクッとギャグ    に様変わりです。子どもには,別の意味でギャップがありました。お父    さんは,「いやいや,あんたは小学校4年生。同級生は戌(いぬ)か亥    (いのしし)しかおらんやろ…」と苦笑いです。     自分の知識とは違うものごと,珍しいことを知ったとき,不思議とい    う感動があります。子どもの知識は,子どもの世界と深く関連していま    す。子どもたちの日常世界であるクラスは,とても特殊な世界だという    ことですが,普段はあまり意識されていません。干支というキーワード    が,その特殊性を浮き上がらせてくれました。子どもが自分の世界は特    殊だということに気づく前に,外の世界の方が珍しいと感じるのは仕方    のないことです。人は自分中心なのです。不思議という感動が新しい世    界の認知に向かうチャンスです。     お父さんが小学3年生の息子の理科の宿題をみてやっていました。    「いくつかのふしに分かれているのは,ア.頭,イ.胸,ウ.腹,のう    ちどの部分ですか?」という問題がありました。答えは腹ですが,息子    さんにはそれがわかりません。とうとうお父さんが,「答えは"腹"だろ    ー,お母さん見てみろ」と言ってしまいました。息子さんは思いっきり    納得していました。生涯忘れないことでしょう。でも,お父さんは,余    計なひと言のせいでどつかれて痛い思いをしたのは言うまでもありませ    ん。     そうか! 分かる瞬間には感動があります。「腹」と答を教えられた    だけでは,何の感動もありません。お母さんの腹という普段見慣れた例    と結びついたとき,腑に落ちる感覚が納得を産み出します。理由とかわ    けとかが分かるためには必要ですが,それは類推や連想という形式にな    る場合がよくあります。子どもの疑問に答えるときに例えを引き出すこ    とが多いのは,同じであるという納得を得やすいからです。それにして    も,ママには気に入らない例えでしたが,子どもの理解のためです。    ・・・《感動があるからこそ,子どもは前向きに学ぼうとしています》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○期待像?     息子さんのお友達の幼稚園児が,不審な男の車に乗せられそうになる    という事件がありました。心配になったお母さんは,早速息子さんに尋    ねてみました。「もし,知らないおじさんに,車に乗せられそうになっ    たらどうする?」。「ゆーかいされちゃうかもしれないから,はしって    にげる!」。一応のことは分かっていると安堵しながら頷き,ついでの    つもりで確かめてみました。「じゃあ,おじさんじゃなくて,きれいな    お姉さんだったらどうする?」。「う〜ん,どうしよっかな〜。のって    みようかな〜」。その返事を聞きながら,どういうわけか,お母さんは    ふっと「間違いなく夫の子だ」と思ってしまいました。     男の子にとっては,年齢に関係なく,きれいなお姉さんは最高の感動    です? なにも,愛しい夫だけの専売ではありません。男は本質的にロ    マンチストであり,きれいなお姉さんは悪いことはしないと思い込んで    います。女であるママが,イケメンの若いお兄さんが悪いことをするは    ずがないと信じたいのと同じかもしれません? もっともこのような期    待は宝くじほどのことで,こうあって欲しいという夢に過ぎません。期    待に胸躍らせる,そんなうたかたの感動もあります。     3歳の息子とお母さんが夕食時の会話をしています。その日のおかず    である魚を食べながら,「このお魚ママがつかまえたの?」。「そうだ    よ」。「すごいね〜ママ。泳いで捕ったの?」。ママはつい調子に乗っ    てしまって,「そうだよ〜」。息子は感動の目を輝かせながら,「ホン    トにすごいんだね,ママって。裸で捕ったの?」。ママは悪のりしまし    た。「そうだよ〜〜」。「ダメじゃん,裸は! 水着着なきゃ。今度は    ちゃんと水着着てね!」って,叱られちゃいました。     男の子は,ママを大切に思うものです。ママを自慢できることはうれ    しいことであり,ママのすごいところを見つけるのは大きな感動です。    だからこそ,いつもちゃんとしていて欲しいという気持ちが湧き上がり    ます。ママの裸を自分以外の人目にさらすことは,男の目ではなく,息    子として許し難いことと直感します。自分だけの素敵なママでなければ,    そんな独占欲があります。たとえわが子とはいえ,男の子の前ではした    ない振る舞いに及べば,憧れの女性像が崩れ去ります。ご用心を!     普段,充電式のハンディタイプの掃除機ばかり使っているお母さんが    いました。たまには本格的な掃除をと,久々に重い腰をあげて,クロー    ゼットから大型の掃除機を取り出しました。それをめざとく見つけた5    歳の息子さんが目を輝かせて,「今日はそれ使うの!? 初めてだね!」    とのたまうのです。痛いところをチカッと刺されたママは苦笑しながら,    「初めてじゃないでしょ」と反撃したのですが,「そうだね,なつかし    いね!!」。完全に見透かされていました。     子どもにとってのママ像は,ご飯の用意をしてくれたり,お掃除をし    てくれたり,何やかやと家事をこなしてくれる大切な人です。それゆえ    に,自然とママのお仕事ぶりはとても気になります。今日はしっかりと    したお掃除をしようとしているんだ,ママガンバレという気持ちから,    初心の緊張感を伴って感動を味わっています。でも,初めてじゃないと    いうママの口ぶりに,ちょっぴり気勢をそがれます。それでも,今日は    特別のお掃除というエールを送ろうとして,健気です。    ・・・《子どもは,求めている親としての期待像に感動をしています》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子どもの感動は育ちの道への誘導灯であると心得て下さい。》 ※よいものを目にすると感動します。その余韻が自分もよいものに近づけたら いいなという期待になります。その思いが育ちに誘います。お父さんのように, お母さんのようになりたい,その一心で育ちの長い道を走り抜けます。あんな にはなりたくない,そんなマイナスイメージを,子どもが育ちにつなげること は,かなり困難です。自分はどうすればいいのか,それが明確には見えてこな いからです。  よいモデルであることが親に求められますが,それは子どもの心にかすかで もいいから感動を呼び覚ますことです。すごいな,いいな,さすがだな,そん な大人の魅力を子どもは直に感じたいと願っています。後ろ姿で育てるという ときには,のんべんだらりと大人の姿を見せておくのではなく,今の輝きを受 け取れというポイントがあります。それは子どもを感動させる場面でもありま す。恋人の前ではいい格好をしていたのと同じで,子どもの前でも時にはよい 大人振りを披露してください。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  言うことを聞かないから叩く。それが幼子の命を奪うことにまで一直線に駆 け抜けています。そんな事例がなくなりません。パソコンが思い通りに動かな いからといって,キーボードを力一杯に叩いても詮無いことです。ましてや, 未完の幼子は指示命令の言葉が分かるはずもありません。伝えたから伝わるの ではありません。伝えても伝わらない場合の方が普通なのです。  養育は思い通りにいかないもの,とにかく我慢一筋でなければつとまらない もの,そんな覚悟をしておかなければうまくやり通せません。その覚悟を早い 時期で獲得して欲しいものです。子どもは親の優しさをどん欲に吸い取ります。 親は優しさを奪われ続けます。優しさをコンコンとわき出させないと,負けて しまいます。ママのそばにいるパパは,優しさの補給をしてあげなければなり ません。それがパパの出番第一幕なのです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆     次号では,【ママは,どうして子どもの弱点を暴くの?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○