□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/06/21]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第194号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『苦あればこそ楽?』  蝉噪(さわ)いで林いよいよ静かなり 鳥啼いて山更に幽(しず)かなり。 芭蕉の詠んだ有名な俳句,しづかさや岩にしみ入る蝉の声 の元になった句で す。蝉や鳥の声があるから,静かさを感じるという風情です。かすかな音が聞 こえるのはその周りが静かだからですよという気付きです。人の感受性の特徴 をつかまえています。古典の教養として,この芭蕉の俳句は知っているという 方は多いのですが,それを生かしている方は少ないでしょう。  ものごとは否定するファクターを加えることで,かえって際立つということ がありますね。ぜんざいの甘さを引き立たせるために,隠し味として塩を加え ます。ちょっとした邪魔が入ると,好きだという恋心が増幅されたという経験 はどなたもお持ちでしょう。内緒だから教えられないといわれると,余計に関 心がかき立てられます。限定品であれば,価格以上のプレミアムがつきます。 あなた以外いないと思うから,夫婦という絆が強まります。絵を描くときも, 例えば山を描くときに,山の一部を雲で隠すと,高い山ということが際立ちま す。  ママ〜,お腹空いた〜,何かな〜い? 夕ご飯前になると必ずおねだりをし てきます。一番空腹になる時間ですから,仕方ありません。それでも「ダメ」 と却下されます。食べたい気持ちを抑え込まれ,焦らされるから,やっと食べ られる夕食の美味しさが引き出されます。美味しさというのはご馳走にあるの ではなく,食に触れる感性の繊細さにあります。待っていた,その出会いの喜 びが味覚に転じたとき,美味しさという共感が溢れてきます。  簡単にできることには感激がありません。あれこれ考えて工夫して,何度も 失敗して,やっとできた! そこに感激が生まれます。否定されることで,焦 らされ,期待が熟成され,受け止める気持ちが静かに整えられていきます。盛 り上がっていくと言えば,分かって頂けるでしょうか。子どもが育つとき,す んなりといけば,育ちに喜びは感じないでしょう。大人でも同じです。あれや これやのつまずきがあるから,迎える今日を喜ぶことができます。十月十日の 辛さがあるから,ママはわが子が愛おしくなります。残念ながら,パパにはそ の苦労がありません。  ところで,子育てをする側は,うまくいくことを願っています。でも,子ど もは親の思い通りには育ってくれません。初めての子育てでは,そのことがい けないとか,間違っているとか感じてしまいがちです。それは子どもを責めた り,親が自責の念にとらわれたりする要因です。今はうまくいかなくてもいい のだ,少し待ってみようという気持ちがとても大事です。否定されることを楽 しむつもりで,子どもと向き合ってください。できないから,育っていること がちゃんと見えるのです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12指南★        【ママは,どうして子どもの冒険を遮るの?】                             (質問15-12) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○冒険こそ体験!     シルバニアファンの6歳になる娘さんがいました。ウサギさん一家の    お父さんだけを持っていなかったために,しかたなくリスをお父さんに    していました。やがて,ウサギのお父さんをゲットできることになりま    した。ママが「リスはどうするの?」と聞くと,「リスとは別れさす」    と,まるで頑固親父のような台詞を真剣な目で答えていました。その言    葉は,やがて年頃になった自分に向けられるかもしれませんね?     人とのつきあいは,大きな冒険です。あの子とは遊んではいけません,    そんな言葉は今時流行らないでしょうが,やはり友だちは大切と思われ    ています。ところで,自分の都合でつきあい相手をコロッと変える移り    気は,大きなしっぺ返しを招く場合があります。誰とつきあおうと勝手    であり,それなら誰と別れようと勝手という開き直りは,その無神経さ    が要注意です。若者たちの姿に見える危うい人づきあいのパターンを心    配するからです。     小学一年生の息子さんが勉強をしています。「3+2」を使って問題    を作りましょう,という宿題が出ていました。息子さんが「こんなの,    ありかな?」と聞いてきたのでノートを見ると,「おんどりが3羽いま    した。めんどりが2羽いました。おんどりはなんと鳴くでしょう?     (答え)おんどりゃー」。このまま本当に提出する勇気があるのか,マ    マは聞いてみたくなりました。     子どもは冗談や悪ふざけが好きです。勉強をしていても,ついいたず    らをしたくなります。宿題という大まじめな舞台でギャグを言うのは,    大きな冒険でしょう。それを知った以上,ママは封じるはずです。その    ときに,「何をバカなことを考えているの!」と咎めるのは止めて下さ    い。たとえ悪ふざけであっても,子どもはノートに書きました。書きな    がら,ワクワクしていたはずです。外れていることは十分承知していま    す。それを否定するのではなく,もう一つ考えてみよう,と先に進ませ    てやればいいのです。     3歳の嬢ちゃんがママの実家に電話をしました。電話に出た祖母に向    かって「おばあちゃん?」と聞いたところ,祖母が気取って「左様でご    ざいます」と応えたようでした。嬢ちゃんは思いがけない応対に「?」    となり,隣にいたママに「おばあちゃんの名前って"さよ"だった?」と    尋ねました。「"さよ"じゃない」と言われた嬢ちゃんは慌てて電話を切    ってしまいました。     見えない相手とのやりとりは,嬢ちゃんには大きな冒険だったでしょ    う。おばあちゃんと呼びかけた時,おばあちゃんですよという返事を期    待していたはずです。見えない世界に踏み込む心細さは,言葉が予想通    りにつながるという一点に支えられています。大人でも間違い電話をか    けた時,とんでも無い世界に踏み込んでしまったという思いにとらわれ,    大人げなくガチャッと切ってしまいます。嬢ちゃんにはちょっとハイレ    ベルの冒険だったようです。        ・・・《子どもにとっては,あらゆることが冒険になります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○冒険にも程が?     パパと3歳の息子さんが一緒にデパートに行きました。子どものフロ    アに行ってみると,時節柄,雛人形がたくさん並べてありました。数が    数えられるようになった息子さんは,自慢げに人形の数を数えだし,女    性の人形がお雛様と三人官女で4人いるのを確認して,「この人,4人    かのじょっていうんだよ」と教えてくれました。パパは,ちょっぴりお    内裏様がうらやましくなりました。嘘ですよ!     最近の幼児はテレビや大人社会の開けっぴろげな性モラルの中で,男    女関係への早熟さが見られます。もちろん本物ではありませんが,バー    チャル体験として器用にこなしています。会話だけ聞いていると,大人    の軽口さながらです。時代に生きている子どもですから,その是非をと    やかく言うことではありません。とはいえ,あまりに早い疑似体験は,    お年頃になった時に妙に白けてしまうことはないのかと心配されます。    前にも書きましたが,若い方の男女関係がギクシャクしています。     悪さをして叱られたことで泣き叫んだ女児が,「おとなしくなるまで    そこにいなさい!」とトイレに閉じ込められました。しばらくギャーギ    ャーと泣き叫んでいましたが,そのうちおとなしくなり,そろそろ反省    したのかと思われた頃,トイレから悲鳴が聞こえてきたのです。トイレ    ットペーパーを大量に流してトイレが詰まり,洪水が起きていました。    ママはそれに懲りて,次からは風呂場に閉じ込めることにしました。お    となしくなってからママがドアを開けたとき,湯船からはもうもうと泡    がたっていました。ありったけのシャンプーとコンディショナーを湯船    に張ってあった水に入れたのです。懲りない子はどうしましょう?     子どもは目を離すと,とんでも無い悪さをしでかしてくれます。でも    それは大人の目です。子どもの目では,未知への冒険です。こんなこと    をしたらどうなるか,という結果までは考えません。因果関係はたくさ    んの経験の後で手に入るものだからです。先のことなど考えずに,その    場にあるものを使って遊んでいるだけなのですが,それが繰り返し続け    られるから,やりすぎてしまうのです。閉じこめられたことさえ忘れて,    遊びという冒険をする子ども,その一つ一つが育ちの歩みです。     小学校1年生の娘さんには,ママが働いているので,「出かけるとき    はちゃんと,どこに行くか書いていきなさい」と言ってあります。いつ    もは「○○ちゃんの家に行って来ます」などとメモをしていくのですが,    ある日ママが帰ってみると「秘密基地に行ってきます」と書いてありま    した。ちゃんとメモをしてあるから言いつけは守っています。それにし    ても,秘密基地ってどこにあるんでしょう? 分からないようにしてい    るから,秘密基地なんですが!     子どもはまだメモが相手に伝わるかどうかまでは斟酌できません。マ    マには知らせてないから秘密なのですが,秘密だからママは知らないと    いう,ママの立場からの考えに至ることができません。大人にすれば同    じことだと思われますが,自己中心的な考え方しかできないと同じでは    ないのです。ママに内緒の秘密を持つことは,自己確立への必須科目で    す。心配ですから秘密基地を探しますが,見つけても知らんぷりをして    おいてください。親離れという冒険をしているのですから。   ・・・《気になる冒険も必要で,行き過ぎないように見守ってください》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子どもの冒険は,やってみないと分からない体験と心得て下さい。》 ※ママはおそらく,いい加減にしなさいという言葉を発する機会が多いことで しょう。子どもはしつっこく飽きずに繰り返します。子どもの思いの中では, 一回一回少しずつ工夫をしてうまくやろうとしています。良いこととか悪いこ とという評定とは関係なく,とにかくやってみたいのです。やってしまって痛 い目を見れば,それはもうしない方がいい,こうしていけないことを封印して いきます。  よい結果になることを先に考えるから,臆病になります。結果として,やら なかったことが増えてきて,育ちがこぢんまりとまとまってしまいます。少し 羽目を外すくらいがよいのですが,そのためには結果を想像するのではなく, 実体験することです。転んだことがない子どもは,上手に転ぶことができない のです。幼いうちに小さな痛みとつきあって転ぶ練習をしておけば,大きくな って転んだ時に怪我が軽くて済みます。大人の目には冒険に見えても,子ども には生き抜く練習なのです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  昨日は「父の日」。母の日と比べると,勢いは負けています。以下同文とい う軽い扱いに似ています。格落ちという扱いを受けてはじめて,自業自得とい うことを思い知ります。子どもとの間に,その程度のお付き合いしかしてこな かったということです。することをしないで,してもらえないことを嘆くのは 卑怯というものです。  父親というのは,子どもと密着していないから,父親の役目を果たすことが できます。でも,密着していないことをいいことに,よそ見をしすぎるきらい があります。よく,父親の役割って何ですかと問われます。先ず最低限やらな ければならないことは,連れ合いを愛おしむことです。そして母親とパートナ ーになることです。そこから入れば,自ずから父親の役割は見えてきます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【ママは,どうして子どもの心を掴まないの?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○