□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/07/12]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第197号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■            『寄り添うために?』  「いいんだよ」。親は滅多にそんな言葉をわが子に向けることはできません。 そう言ってやれるのは,おそらく肉親ではない一歩離れた距離にいるよその人 です。親が勉強を見てやっているとき,子どもが間違えそうになると,「どう してそんな答になるの? やり直し!」と頭ごなしに叱りつけます。親は勉強 の教え方を学んでいないので仕方がありませんが,そのことを自覚していない ままに生兵法をするので困ります。勉強嫌いをしつけているのに!  子どもは覚え立てでなけなしの知識を動員して考えています。一方で,答を 間違えることは問題として予定通りなのです。間違えることを想定して作成さ れています。とにかく,自分で正しいと判断する通りにやってみることが大事 です。間違えていいんだよ,それが教える側の基本的なスタンスです。間違え たときに遡っていくと,思い違いや見落としなどの分かれ道に戻ってきます。 何故間違えたか,何処で間違えたかが分かります。間違えたわけを見つけて間 違えなくなること,それが本当の学力なのです。  最初は間違えてもいいと思っていると,子どもはノビノビと考えることがで きます。もしも,間違えてはいけないと強いられたら,オドオドしてしまって 力を発揮することはできません。育ちとは,自分のありったけを思った通りに 表に向かって出し続けることです。「思った通り」ということが大事です。誰 が思うかといえば,もう一人の子どもです。やりたくないなとブレ−キを掛け るのも,やってみようと意欲を発揮するのももう一人の自分です。  親の方はどうすればいいのでしょう。例えば,試合で勝つように祈りながら も,負けてきたら「いいんだよ」という言葉掛けが激励です。激励といえば, ガンバレと後押しをすることだと思われていますが,気にしなくていいんだよ というフォローがあってこそ,激励が完成します。大人であればミスは明確に 自覚しているので,自覚が足りないという意味での叱責も効果がありますが, 子どもの場合はもう一人の子どもの自覚が未成熟ですから,猶予を最大限に活 用しなければなりません。  できなくてもいいんだよ。そんなことを言っていたら,子どもは何もやろう としなくなるという心配も出てきます。できないままでいいんだと思われたら 困りますね。育ちを止めることになります。もちろん,ここで取り上げている のは,やってみたいという挑戦の気持ちがあるという前提の上のことです。そ のことに向けた親の関わり方は,楽しくしてみせることです。楽しそうだなと 思わせられたら,子どもは自分もやってみようとします。これが親子で一緒に やるという意味です。  ここまでできたね。それでいいんだよ。できたことをきちんと見つけてお墨 付きを与えることが,子どもの意欲を後押しします。その確認の仕方をもう一 人の子どもが覚えるからです。自分は全くダメなのではない,ここまではでき たと思うことで自信が育っていきます。もう一人の自分が自分を信頼できるよ うになるということです。人が育たないようにするには,周りがダメだダメだ と言い続ければ済みます。大人だって落ち込むはずです。いいんだよ。それが ゆとりある子育てです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12条★       【子どもは,自分を認めようとしているんですよ】                             (質問16-02) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○第2条:自認権!  人にどう思われるだろうか? 人がどう思おうと自分には関係ない! 他人 との関係では,その両極端の間を揺れ動くものです。褒められれば自分が認め られたという喜びがあり,貶されれば自分が認められていないと悲しくなりま す。そんな他人の思惑など意に介せずに,自分さえよければそれでいいという 強がりもあり得ます。もちろん,相手に応じて変幻自在でもあります。一概に 両断できるものではありません。  人はわがままで自分勝手で自己保身を優先するものです。そのことを認めた 上で,お互いに関わり合わなければなりません。きれい事では社会の中で生き ていけないからです。人は内に火山を抱えながら,それを上手に制御してお互 いに火傷をしないように,装いを整えて生きています。自分に嫌なことは人に しない,自分に好きなことを人にする。この二つが暮らしの原則です。自分に 嫌なことや好きなことをメモリーして客観的に見極めることができるのは,も う一人の自分です。わがままとは,もう一人の自分が育っていないために,T POに適った装いを纏うことができないことです。  人はこちらが気にするほど見てはいませんし,かといって全く見ていないわ けでもありません。人の目が気になるのは,実はこだまのようなもので,自分 が人をあれこれ見ているからです。例えば,人から疑いの目で見られていると 感じるのは,実は自分が人を見る目が疑いの目になっているからです。人の目 や人の思いというのは,もう一人の自分が自分を見る目であり思いなのです。  人の目を気にするのもしないのも,もう一人の自分が自分をどう見ているか ということです。もう一人の自分がしっかりしていれば,ふらついたり迷うこ とは少なくなります。人は十人十色でそれぞれいろんな感性や価値観を持って います。育ちの中でどの価値観が普遍的であるかを見極めて,自分のスタンス を選ぶことができたら,取りあえず落ち着けます。毎日の人付き合いの中で幾 分軌道修正をしていけばいいのです。  朱に交われば赤くなると言われています。朱色とは悪い色という意味ではな いのですが,朱色としかつきあっていないと,朱色が普遍と錯覚し,もう一人 の自分が朱色になるということです。片寄った選択をしないために,いろんな 色合いの人とつきあうことが大切です。狭い付き合いの人になんとなく違和感 を感じるのは,染まるからです。人に土地柄があるのも染まるからです。子ど もの時の友だちは,もう一人の子どもの育ちに影響するので,子ども集団が望 まれるのです。  児童期にはいると友だちと同じであることを望む傾向が出てきますが,それ はもう一人の子どもが自分を認めようとしているからです。心配なのは,今の 子どもたちは同じ年齢の友だちしか持っていないので,十人いても一色状態で あり,とても狭い価値観に閉じこめられていることです。小さなことに過敏に なって,もう一人の自分がピリピリしているので,人付き合いも苦手になって いきます。異年齢集団の付き合いがあれば,ゆったりとしたもう一人の子ども が育ち,自分を余裕を持って認められるはずです。      ・・・《生きる心として豊かにすべきものは,第一に自尊心です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○分別?  子どもが場所柄を弁えないで,お利口にしていなくても,少々のことなら大 目に見てもらえます。子どもには場の雰囲気を読めないというハンディを与え ています。それは自分の行動をチェックするもう一人の子どもがまだ育ってい ないと考えられているからです。もう一人の自分には,他者と共通認識を持つ ことが期待されているのですが,体験不足であれば分からなくて当たり前とい う猶予が与えられています。  世間の常識から外れたとんでもないことをしでかした人に対して,精神鑑定 がなされることがあります。責任を問えるかどうかという資格検査ですが,そ れは言い換えればもう一人の人がちゃんと存在しているかどうかという調べで す。昔は狐憑きなどと言われ,正気を失っていると考えられていましたが,も う一人の自分が得体の知れない物の怪に取って代わられているように見えたの でしょう。責任のある行動とか判断能力とは,もう一人の自分がきちんと目覚 めていてこそ,とれるものです。  成人式というのは人に成ると書きますが,もう一人の自分の育ちの卒業であ り,社会的に認められた人になるという意味です。気分次第で騒ぐ成人には, まだもう一人の自分が未成熟という評価が下されます。20年掛かけて育たな ければならない,人というのはとてつもない精妙な生き物なのです。20年と は7305日です。一日に一つの育ちのネジを組み込んでいけば,7305点 のネジです。それが多いと感じられるか少ないと感じられるか,子育て作業の 手順を考えてみてください。  しつけをし常識を植え付けちゃんとした社会性を身につけさせる,それはも う一人の子どもの育ちになります。自制するとは,自分の本能的な行動をもう 一人の自分がコントロールできる状態です。我を忘れるというとき,自分が何 をしたか思い出せないはずですが,もう一人の自分がフリーズしているからで す。冷静にとか沈着にということは,もう一人の自分が考えて決める分別を円 滑に進める条件なのです。もしもきれたら,もう一人の自分は幽閉されて,人 は正常ではなくなります。  相手の身になって考えるという思いやりも,もう一人の自分が相手の立場に 立てるから,実行することができます。身ずまいを正すときには,人の目にな って自分を見ていますが,それができるのはもう一人の自分です。時と場合に よっては,本音と建て前という対立が起こりますが,自分ともう一人の自分と の葛藤と見ることもできます。物語を読んでいるとき,主人公になったつもり で本の世界に入り込んで疑似体験をしているのは,もう一人の自分なのです。 本を読まなくなった子どもたちは,もう一人の自分を眠らせたままにしている と言うことができます。  人は自分を環境の中に適合させようとします。適応性が人の最も大切な能力 です。五感によって情報を集め,最も相応しい行動を経験の中から選びます。 理に適った判断ができれば,分別のある人として生きていけます。このとき, 自分の能力を弁え能力を発揮させているのは,もう一人の自分です。逆に,能 力を発揮させないのは,ダメな自分ともう一人の自分が切り捨て諦めているか らです。子どもの可能性を伸ばしているのは,親や先生ではなく,もう一人の 子どもなのです。     ・・・《分別を備えたもう一人の子どもの育ちが子育ての本質です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子どもの育ちはもう一人の子どもの育ちであると心掛けて下さい。》 ※わがままな赤ちゃんが,やがて自分の中に生まれてくるもう一人の赤ちゃん と二人三脚をはじめると,聞き分けのできる子どもに育っていきます。子育て は目の前にいる子どもだけではなく,子どもの中に生まれたもう一人の子ども を育てることです。それが産みの親が育ての親になるということです。お兄ち ゃんやお姉ちゃんになるとしっかりするのは,もう一人の子どもが自分はお兄 ちゃんだと自覚するからです。  自分を見ることのできるもう一人の子ども,そう考えて頂くと子育ても違っ て見えてくるはずです。ママが細かく直に指図してしつけるのではなくて,考 えて決めさせるという機会を与えることがもう一人の子どもを呼び覚ますこと になります。言われてするのが嫌だと言うようになったら,もう一人の子ども に徐々にバトンタッチをしてやってください。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  もうすぐ夏休みですね。子どもを家族の一員として温かく迎えてやってくだ さい。家族の一員とは家族としての暮らしをさせることです。家事などにしっ かりと関わらせてやりましょう。子どもは邪魔だからあっちに行っていなさい とか,余計なことはしないで勉強をしなさいとか,育ちの機会を奪わないでく ださい。幼児童期に家族と過ごす時間は心の育ちをします。人としての育ちを 大切にしてください。  7月は個人的には隣の県で泊まりがけの集中講義が入っており,結構忙しい 月になっています。夏バテしないようにがんばろうと気持ちは高めていますが, 身体がついてこないという現実を感じています。皆さん方も,これから暑さに 向かうときですので,どうぞご自愛ください。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【子どもは,自分で安らごうとしているんですよ!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○