□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/09/20]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第207号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『家族参画?』  NHK朝のドラマ「天花」の中で,最近のままごと遊びの傾向として,子ど もが演じたい役柄は,赤ちゃん,ペット,兄姉であり,父と母の役はやりたが らないということが語られていました。このことは,よく耳にすることです。 赤ちゃんやペットは何もしなくて,ただのんびりとしていればいいということ です。兄や姉は好き勝手に遊んでいる,お姉さんはきれいに着飾ってお出かけ すればいいのです。  お父さんは遅くまで働いて,家ではくたびれています。お母さんは仕事,家 事,育児に追いまくられてとても大変です。ちっとも楽しく見えません。楽な 方がいいに決まっています。昔は,お母さんが大変だから,手伝おうと思った り,早く大きくなってお母さんを楽にしてあげたいと願う方向に育っていまし た。今の子どもたちは,どうして逃げようとするのでしょう。最も大きな気が かりは,家庭が一丸となってまとまるという気持ちを持てなくなってきたので はということです。  家族がまとまるには,求心力が必要です。動物の世界では,母親が中心にい ます。母系家族です。封建時代の仕組みとして家制度を維持するために,父系 家族が生まれましたが,家族の自然な形は母系家族と思われているようです。 家を動かすのは父親で,まとめるのは母親の役割と言われることもあります。 奥さんを山の神と呼ぶのも豊穣を願う家族の結束であったのでしょう。そんな 家族のイメージが時代の変化で薄れてきたのかもしれません。  求心力が現れるためには,中心として受け皿になる存在が不可欠です。気持 ちを受け止める人がいれば,家族の思いを束ねることができます。母親の包容 力がその役割を受け持ちます。そんな目に見えないものを求められても困りま すね。例えば,夕食の団らんといったありふれた暮らしの営みを,家族の気持 ちを寄せ集めて作り出そうという意思を共有することです。時間を合わせて皆 で手伝って用意します。そのとき,母親は「ありがとう」とひと言の感謝を述 べるだけでいいのです。  もしも子どもたちが母親を慕っていれば,慕われる母親のようになりたいと 思うはずです。ままごとの主人公になれるはずです。今も昔も子どもたちは, お母さんの大変さを見ています。そこで,大好きなお母さんを助けてあげよう と思うか,お母さんにはなりたくないと思うか,分かれ道があります。お母さ んの力になりたいと願うほど母親を大事な人と思っていないのではと危惧され ます。ママがいないとご飯はどうするのという心配しかしない子どもが現れて います。  お手伝いなどの機会を普段からふんだんに持っていれば,子どもの自分でも 暮らしの手助けになれることがいっぱいあることを知ります。家族で暮らすこ との最も重要なしつけは,ボクもワタシも家族の一員としてそれなりの役柄を 引き受けることができるという自覚です。その差配をしてくれるのが,母親な のです。もしもあなたは役立たずだからあっちの壁際にあるテレビでも見てい なさいと,家庭内リストラ状態に追い込まれたら,ままごとではそんな薄情な ママ役を嫌がるでしょう。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12条★       【子どもは,自分を高めようとしているんですよ】                             (質問16-12) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○第12条:自育権!  成長や発達のイメージは,山登りに擬せられます。先人が踏み固めた細道を 辿るのが普通です。先人に倣うという学びの道です。それでは,その登り方は どうなるのでしょう。高い山であれば,適当な間隔でベースキャンプを設けま す。○合目というステップを想定します。取りあえずあそこまでという目標で す。育ちでは,幼稚園,小学校,中学校,高校,大学といった学制が使われま す。もうすぐ一年生,一年生になったら,という節目です。  取り組むべき課題は細分化し,今目の前のできることを意識することで進展 が可能になるものです。そのペースはどうなんでしょう。三歩進んで二歩下が るという繰り返しです。辿る細道が行き止まりになることもあります。出直し が必要です。そんなとき,高みを見上げるはずです。育ちでは歳の近い先輩を 見れば,あそこに行けばいいという目当てがあるので,迷うことはありません。 傍にいるよそのお兄ちゃんやお姉ちゃんと付き合っていることがとても頼りに なります。  親が示す目標は将来という遙かなものです。雲がかかって見えない遠い山頂 です。あんな所まで行かなくてはならないの,うんざりしてしまいます。一歩 一歩が無駄に思えて,気持ちが萎えてしまいます。達成感が遠のいていきます。 子どもは子ども時代を生きることが大事だといわれますが,目の前にある丘を 登ることが子どもに相応しい育ちだからです。大人として育つのではなく,子 どもは子どもとしての育ちをしなくてはならないのです。子どもは自分の身の 丈の育ちをしています。  子どもの身の丈の育ちとは? 積み木を積み上げていますが,ゆがみに無頓 着なので倒れます。できない自分にいらつきます。それでも思い直してまたや ってみようとします。虎を描いていても,かわいいネコねって言われてじれっ たい思いをします。自分のイメージは人に簡単には伝わらないことを知り,虎 とネコの違いを探そうとします。片づけているつもりですが,向きが不揃いな のでちゃんと収まりきれません。なんとかしようと頭をひねります。  することなすことは中途半端ですが,その中でもできることがちょっと増え たら,一つ高みに登ったことになります。できるというのは,失敗しなくなる ことです。たくさんの失敗をしなければできるようにはなりませんが,それは すぐに目に見えるわけではありません。自分でも気がつかないうちにできるよ うになるものです。今日たくさん食べても明日に大きくなるはずもないのと同 じです。  思い通りにことが運ばないというのは,大人でも感じています。思いはいつ も先走りします。一つひとつできることを積み重ねていかなければなりません。 手順を見極め計画を立てて実行するしかありません。子どもにそんな計画性を 求めるのは無理です。子どもはただできるようになりたいという思いに突き動 かされて試行錯誤を繰り返します。それでいいのです。できないことがいけな いことではありません。自分にはできないことがあると知ることが育ちの扉な のです。   ・・・《生きる心として確保すべきものは,第六に自らを育てる心です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○育つために?  育ちのプロセスは,「失敗」して立ち止まり,そこで振り返って「反省」し, どうしたらいいのか「学習」をして,もう一度「挑戦」するという4行程のサ イクルと考えることができます。この連続した行程が円滑に進んでいけばいい のですが,やはり不調になります。出直しを繰り返すことになります。ところ で,今の子どもたちが持てなくなっているものは,「反省」というサイクルが 不得手ということです。反省を促すという子育てが滞っているためです。  「どうしてできないの?」,「できないことはしなくていいの!」。その言 葉が,立ち止まりを許してくれません。反省というのは,ちょっとだけ後戻り をすることです。先を急ぐ気持ちが強いと,後戻りなどしたくないものです。 でも,それが次のジャンプへの助走になります。バネがはじけるためには,い ったんギューッと縮こまることが必要なのと同じ事情です。失敗をきちんと受 け止めて直面する勇気が必要です。親が支えてやる激励はこのときです。  親や大人は教えこもうとします。ところが,教えるというのは思うほど簡単 ではありません。まずは,反省している者でないと,教えても聞く耳を持ちま せん。子どもに何度言っても聞かないという状態は,教えているつもりでも教 わろうとしていないからです。反省してどこがいけなかったのかなという気持 ちになっていれば,教えられることに耳を傾けようとします。学ぼうという学 習意欲は,反省をしないと出てきません。いわゆる頭ごなしに教えても効果は ありません。  教える内容にも留意しなければなりません。してみせるということが一般的 な教え方ですが,どんなことでも大人と子どもでは格段の違いがあります。大 人のやり方を見ているだけでは,どこをどうすればいいのか見えません。「分 からないところはどこ?」と尋ねても,「どこが分からないか分からない」と いう返事が返ってくるはずです。子どもが失敗したところをゆっくりとしてみ せます。こうしたらうまくいく,こうしたから失敗した,二通りの違いを見せ てやればいいでしょう。  「そうか」という納得を得られたら,子どもは自分からもう一度挑戦しよう とします。「そうかな?」と半信半疑の場合には,「やってごらん」といって も躊躇するでしょう。そのときは,失敗してもいいという余裕を持たせてやり ます。すぐにはできないけど練習すればできるようになるから,と期待を持た せてやればいいでしょう。もちろんそれでもなかなかできません。ちょっとし たコツは,ちょっとしているだけに,分かりにくいものです。そこに根気が必 要になります。  なんとかできるようになりたいと思っていれば,ある日思いがけなくできる ようになります。そのときは大いに喜んでやりましょう。がんばった甲斐があ ったということを印象づけてやれば,次からの頑張りが苦にならなくなり根気 が身に付きます。がんばればなんとかなるという経験は,大きな育ちの力にな るからです。最近の子どもにはその頑張り体験が不足しているから,根気も引 き出すことができません。根気は外から注入できるものではありません。   ・・・《育ちには基本的な4つのステップが連動しなくてはなりません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子どもの育ちは小山を登り切った喜びに誘われると心掛けて下さい。》 ※先日体験学習に関するシンポジウムを聞く機会がありました。小学校で田植 えと稲刈りの体験をすることが広く行われていることについて,問題提起があ りました。体験とは一貫したまとまりでなければ意味がないという指摘です。 実際は田植えをして,あとは放置して,実ったら刈り取りだけの体験です。最 初の苗作り,途中の草取りなどのたくさんの手間は人任せにして,出来上がり だけを掠め取ります。それは「泥棒教育」という言葉で表現されていました。  子どもたちの食事も同じ状態です。「お腹が空いた」といえば食事が頂けま す。用意する手間暇はお母さん任せです。いいとこ取りだけで暮らせるという しつけが行われているのです。食事を頂くにはそれなりの苦労が必要だという ことを知らないのは,育ちにとって間違ったイメージを持たせることになりま す。育ちは細々した苦労を自分で引き受けることだからです。苦労しないと育 ちは止まるということを思い出すべきでしょう。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  刈り入れの終わった田んぼにスズメが群れていました。落ち穂があるのでし ょう。稲の切り株から新しい青葉が伸びています。生きようとする力はすごい ものです。人には無駄に見えるでしょうが,稲はひたすら生き延びようとして います。生きる意味など稲には必要ありません。生きているということそのも のの姿が田んぼに見えています。何かの目的があるから生きていくのではなく, ただ生きているだけで十分なのでしょう。  次の日曜日は小学校の運動会です。招待を受けているので出席してきます。 幼い子どもたちが懸命に走ったり跳んだり踊ったりする姿は,とても心和むも のです。そんなことができるのかと感心することもあるはずです。楽しみです。 皆さんのお子さんも運動会でがんばっていることでしょう。頑張りをほめてや ってくださいね。成績は二の次です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【子どもは,自分を生かそうとしているんですよ!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○