□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/10/04]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第209号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『背中で見る?』  お母さん。背中が見えていますか? ミラーの前に立って半身になりながら, 背中のラインを気になさっていることでしょう。それ以外には普段から背中を 意識することはありませんね。まっすぐ前を見てさっさとことをこなしている と,背中はがら空きです。それが普通です。でも,子どもは,お母さんが背中 も見えていると思っています。子どもとお母さんの間合いとは不思議なもので す。  子どもに背を向けていても,子どものちょっとした気配を読み取れるために は,気持ちを向けていなければなりません。難しいことではなくて,お母さん であろうとしていれば自然にできるようになります。ただ,赤ちゃんのときに オンブをしていれば背中の感性を育てられるのですが,ダッコが多いと十分で はないかもしれません。触れ合いは全身でするものであり,背中も含まれてい ます。ところで,背中背中と,いったい背中がどうしたというのでしょう?  もちろん背中そのものを取り上げているのではなくて,もののたとえです。 目で見えていなくても,子どものことがなんとなく分かっているということで す。そこには二つのポイントがあります。一つは,子どもを四六時中見ている ことはできないということです。目を離さなければならないことがあります。 そんなときでも,気配りを欠かさないということです。目を離した隙に風呂場 で・・・といった事故を防ぐためにも,どこにいるかだけでも感じていて欲し いのです。  もう一つは,なんとなく分かる程度でいいということです。お母さんは子ど ものことは何でも知っていないといけないと思い込む傾向があります。赤ちゃ んのときは神経を傾ける必要がありますが,育ってくるにつれて肝心な点だけ 分かっておけばいい,なんとなく分かっている程度でいいと思って欲しいので す。背中で見える程度ということです。お母さんが真っ正面からにらみつける ように見えていないと気が済まないと思うと,子どもは監視されているようで とても息苦しくなるからです。  子どもは親の背中を見て育ちます。でも,背中を見て親の何が分かるという のでしょうか? 親が何を見ているのか,何をしようとしているのかが分かり ます。もしも親の前にいて向き合っていたら,親が見ている世界は子どもの背 中の方になり子どもには見えません。親と同じ向きである,それは親の背中が 見える位置なのです。さらに,背中に現れる親の気持ちが分かります。疲れた お母さんの背中に,子どもはそっと手を当ててきます。「大丈夫?」。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12章★     【お子さんが,言うことを聞かないことがありませんか?】                             (質問17-01) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○母子分離  赤ちゃんはおっぱいを飲んで眠って遊んで育っていきます。わがまま気まま ですから,付き合わされるお母さんは大変です。少しは母親の苦労も分かって くれてもいいのにとため息も出ますが,詮無いことと諦めざるを得ません。赤 ちゃんが朝早く目覚めて,眠たい顔を突かれることもあります。いい加減にし てと邪険に振り払って泣かしてしまいます。その泣き声にビックリして目が覚 めてしまいます。赤ちゃんは自分勝手な主張を親に向けてきます。親が聞かな くてはなりません。  言葉を覚えてきて,なんとかコミュニケーションが取れるようになると,お 母さんは自分の言いたいことを子どもに伝えることができるようになります。 「ハーイ」という返事が返ってくると,分かってくれていると思います。とっ ても素直ないい子に育ってくれていると一安心です。そんな時期はすぐに終わ ります。やがて「イヤ」という返事が突き返されてきます。「お母さんの言う ことがどうして聞けないの?」という言葉が,甲高い声で子どもに向けられま す。  子どもの育ちには,反抗期があります。反抗期は母親によるしつけや指図を 拒否する形で現れます。好き嫌いといった好みに関することは,子どものわが ままに見える場合もあり,力ずくでねじ伏せてしまったり,なんとかなだめす かして目的を達します。嫌いなおかずを食べさせたり,洋服を選ぶようなとき です。このような好みに関することは,年齢と共に変わっていきますので,そ んなに無理をして変える必要はありません。  反抗には,もう一つのパターンがあります。自分で靴下を穿く,ボタンを留 めると主張したりすることです。お母さんの援助の手を振り払おうとする反抗 です。出かける時間が迫って,モタモタされる暇がないという状況では,さっ さとしなさいという催促がでます。できずにグズグズしていると,取り上げて やってしまうということになるでしょう。子どもがふてくされていることなど 気にしてはいられません。でも,このときのお母さんの我慢が,子どもを育て ることになります。  この反抗は育ちにとってとても大事なことなのです。母離れということがあ りますが,離れて誰が子どもの面倒を見るのでしょうか? それがもう一人の 子どもです。もう一人の自分が自分をコントロールするということです。言い 換えると,お母さんに言われてするのではなくて,子どもが自発的にするとい うことです。反抗できるということは,もう一人の子どもがちゃんと育ってい るという証です。言うことを聞かなくなったときから,子育ての対象はもう一 人の子どもに替わるのです。 ・・・《反抗することは育ちの節のようなもので,なくてならないものです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○指導と干渉  育ってきた経験という財産をお母さんは持っています。先に読んで推理小説 の結末を知っているようなものです。子どもは今から読もうとしています。一 日一ページをめくりながら,あれやこれやと思いを巡らせて展開を楽しもうと しています。育ってしまえばいいというのではなくて,プロセスをじっくりと 歩んでこそしっかりとした育ちになります。お母さんのしつけは,気をつけな いと,小説の結末を教えてしまおうとすることになります。子どもは嫌がって 言うことを聞こうとしません。  子どもたちの根気が育っていないという面があります。子どもが根気を紡ぎ 出すようにするには,どのように育ててやればいいのでしょう? 根気はあれ やこれややりながら上手くできる道を探そうとする意欲です。探すこと自体が 楽しいことなのです。その楽しさは,自分でやろうと決めることから生まれま す。もしも,やらされていたら,楽しさはないでしょう。教科書を読まされて も楽しくはありませんが,読んでみようと決めて選んだ図書は楽しく読めるの と同じです。  お母さんは遊びよりも学習をしてほしいと思っていませんか? 何か有益な ことをしてくれればいいのにというお母さんの思いとは裏腹に,子どもはくだ らない遊びに夢中になります。そんなことよりもこっちをしなさいと言っても, ちらっと見るだけで無視されます。その場はそれで済ましてください。気が向 いたらするだろうという程度にして,選ぶチャンスに掛けてやります。選択肢 を加えてやればいいのです。今すぐしなさい,それは干渉になり,指導とは別 物になります。  しつけは,赤ちゃんのようにまだもう一人の自分という判断者が育っていな い時期にするものであり,親がよかれと思うことを押し付けることになります。 しかし,幼児や児童になれば,もう一人の子どもが選んで決めることができる ように,いくつかの選択肢を与えるようにしましょう。選択肢とは,するかし ないかではなくて,あれをするかこれをするかという形がいいでしょう。ニン ジンを食べなさいというのではなくて,ニンジンとピーマンのどちらかを食べ てみようというやり方です。  乳幼児期から児童期への子育ての転換は,干渉的であるしつけから,選択決 定を旨とする指導へ急がず一つひとつ変えていくことです。一言でいえば,決 定権をお母さんからもう一人の子どもに移譲するということです。子どもを占 領するのではなくて,独立させるのです。そのプロセスは確かにじれったいの ですが,それを耐えて待つことのできるのは親しかいません。しつけをし続け ているといつまでも甘えてばかりな子どもに育ちます。決めさせていけば,考 える子どもに育ちます。  ・・・《もう一人の子どもを思えば,子育ての新しい展開が見えてきます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育てには,子どもの成長に合わせたバージョンアップがあります》 ※子どもが親に望んでいることは,自分のことを分かって欲しいということで す。その自分とは,もう一人の自分の存在です。お母さんは子どもを見ていま す。でも,もう一人の子どもは自分とお母さんを見ています。お母さんはお仕 事で忙しいから,もし自分の寂しい気持ちをぶつけたら,お母さんはきっと気 にするだろうと考えて我慢しています。我慢しなくていいのよ,ごめんね。も う一人の子どもの気持ちを分かってあげてくださいね。  子どもは何も考えていないのではありません。子どもなりにあれこれとお母 さんのこともしっかりと考えています。それをあからさまに表す力がないだけ です。不幸にも虐待をしてしまうお母さんであっても,子どもは自分のためを 思って叱ってくれているのだとお母さんを信じきっています。その信じる気持 ちを分かってもらえないことが,虐待の痛みより遙かに子どもにはつらいこと です。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  九州に九月に三つの台風が上陸し,日本列島には今年通算八個の上陸となり ました。有り難くない新記録だそうです。ところで,九州の九とは何のことで しょう? 県を数えると,福岡,佐賀,長崎,熊本,大分,宮崎,鹿児島の七 県です。昔の藩の数で,筑前,筑後,肥前,肥後,豊前,豊後,日向,大隅, 薩摩の九つです。四国については,調べてみてください。また,中国地方は, どういうわけで中の国と呼ばれているのでしょう? 社会のお勉強です。  第17版が始まりました。今号から段落数を6から5に減らしました。深い 考えがあっての変更ではありません。短い方が読みやすいのではといった単純 によかれという気持ちからです。皆さんの思いを確かめることもなく,ただの お仕着せに過ぎません。こういうのを身勝手といいます。ともあれ,内容は落 とすつもりはありませんので,これからもご贔屓くださるようにお願いいたし ます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆   次号では,【お子さんから,お話を聞かされることがありませんか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○