□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/11/22]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第216号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■             『子育てより子育ち?』  子育ては楽しい。それは子育てを終えた方が言われることです。子育て真っ 最中では,そんな感慨を持つ暇などありません。次から次に押し寄せてくる難 題に追いまくられて,右往左往させられます。寝顔を見れば愛しさも湧いてき ますが,このままじっといつまでもおとなしく寝ていてくれたらと思うことが あります。連日の夜泣きに悩まされて,眠れない目にも会います。あれこれ世 話することばかり続いて,ホッとする時間,自分のためだけの時間はどこかに 置き忘れたような気になります。  自分だけがどうしてこんなつらい役回りを引き受けなければならないのかと 思いながら,かといって放り出すこともできず,気持ちが堂々巡りを始めます。 相応の堪え性があったとしても限界があります。何もかも嫌になって,楽にな ろうと思ったとき,子どものことを忘れてしまいたいと願うようになります。 目の前から消えてくれればいい,ただそれだけの思いなのですが,それが子ど もの身に危険な事態をもたらすときには虐待と化します。  人はつらいという気持ちを感じているとき,「つらかったね」という言葉を 掛けてもらえると救われます。自分のことを分かってくれる人がいるというこ とは,大きな慰めになります。それができる人は,先ずは連れ合いでしょう。 話をちゃんと聞いてくれさえしたら,それだけでいいということを語る方たち が居ます。できることならば,ほんの小一時間でいいから連れ合いが子どもと 遊んでくれて,子どもと離れる時間を作ってくれたらいいでしょう。その他に は,同世代の母親同士も共感という救いをもたらしてくれるはずです。  新聞にこんな話が載っていました。ある虐待事件の審議で,「そんな苦しい のなら,なぜ実の母親に相談しなかったのか」と裁判長が尋ねました。「そん なことをしても,責められるだけじゃないですか」と答えたそうです。若い母 親の母親世代の人は,「今時の母親は」と責める言動が目立ちます。自分たち はもっとしっかりしていたのにと,自信に満ちています。時代的にいろんな面 でたくましくならざるを得なかった背景を忘れています。さらに子育ての環境 も全く違うのです。若い母親だって懸命にがんばっているのです。  子育ての形が大きく変わってきているのですが,子育ちは変わっているはず はありません。食事の形は変わっても身体の育ちに必要な栄養素が不変である のと同じに,人に成るために必要な育ちの要件は不変です。そのことをちゃん と弁えていれば,時代の変化に惑わされない子育てができるはずです。子ども の育ちにとって大事なポイントを精選した上で,この子育て羅針盤の12章は 構成されています。子育ての新旧といった形に振り回されないためには,子育 ちを優先させることです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12章★     【お子さんから,不実を指摘されることがありませんか?】                             (質問17-08) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○誠実  不実? 一般的には誠実ではないことです。人との関係において誠実さは大 事な要件です。そこから,嘘つきは泥棒の始まりという諺も派生してきます。 しかしながら一方で,正直者は馬鹿を見るという処世訓も,残念なことに実生 活においては生き残っています。景気はどうですか? ボチボチです。本当の ことは曖昧にぼかす程度にすることがお互いの了解である場合もあります。そ れはそれとして,誠実であることが安穏な社会生活の基盤であることは自明の ことでしょう。  不実は,結果として裏切りに至ります。誠実な相手に不実で応えているとき です。秋ナスは嫁に食わすな。こんなに美味しい秋ナスは嫁には食わせてやら ないという意地悪姑の言葉でしょうか? 秋ナスはお腹を冷やすから大事な嫁 には食べさせないほうがいいという優しい姑の言葉でしょうか? 誠実とは相 手のことであると共に,自分に対するものでもあります。不実な気持ちで見れ ば,誠実も不実に染まって見えてしまいます。両方共に誠実でないと,活かさ れないものなのです。  母娘連れが,乳母車に乗せられて散歩をしている赤ちゃんに出会って,「ア ラ,かわいい赤ちゃんですね」。行き過ぎてしまった後で,「ママ,さっきの 赤ちゃん,全然かわいくなかったのに,どうして」,「いいの,かわいくなく ても」。「あなた,今日ね,この子と散歩していたら,みんな口を揃えてかわ いいかわいいって声を掛けてくれたのよ。どっちに似ているのかしら?」。余 計な詮索はしないほうが無難です。  「ママ,赤信号だから,渡っちゃいけないんだよ」,「いいの,車はどこに もいないでしょう,さっさと渡ってきなさい」。「ママ,お一人様一個限りっ て書いてあるよ,また買いに戻るの?」,「いいの,今度はパパとおばあちゃ んの分だから」。「アラ,こっちの方が安いわね,さっきのと交換しよう」, 「ママ,それはあっちにおいてあったものでしょ?」,「いいの,お店の人が 戻してくれるんだから」。小さな不実は日常茶飯事ですが,ちょっとぐらいと いう歯止めの甘さは要注意です。  不実は,通常は欲張りといった利己的な気持ちに歯止めを掛け忘れるときに 表立ってきます。特に迷惑を掛ける相手が見ず知らずの人である場合は,後ろ めたさという気持ちが弱くなり歯止めが利かなくなります。公共に対する責任 感が薄れていくのと同根です。自分に対する誠実さをきっちりと育てていない と,他に対して不実を行うことになっていきます。「誰にも迷惑を掛けていな い」,それが子どもたちの不実へのパスポートになっていることを知っておい てください。     ・・・《誠実という価値は 自分に向けてこそ育っていくものです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○感謝と利用  社会にある関係は義理と人情という二つのしがらみに類別することができま す。契約や分業役柄による関係は義理の範疇に入り,理性的な関係です。暮ら しにおける取引や買い物といった社会的関係が典型的です。子どもの世界では, 先生と児童・生徒の関係は役柄によるものであり,労働契約によります。親も 勤務や自営という職業役割を背景とした義理的な関係の中にいます。そこには お互いを利用するという持ちつ持たれつの関係があります。  駕籠に乗る人担ぐ人,そのまた草履を作る人。自動券売機で切符を買い交通 機関を利用するとき,運転者と利用者は給料と乗車料という金銭的な媒介によ ってつながっていることになります。分業化された暮らしを円滑につなぐため に,金銭という対価を用いているのが現代社会です。お金さえあれば何でもし てもらえる,そのような環境に子どもは育っています。遊ぶことまでもお金で 買おうとしている子どもたちに,大人たちはいったいどんな将来を託そうとし ているのでしょうか?  金の切れ目が縁の切れ目です。人間関係は人情に基づいています。ところが, 人情の世界に金銭が絡んでくると,ややこしくなってきます。金で済む男女関 係というものもあり,人情が絡むと修羅場になります。援助交際が女子学生と 中年男性というパターンから,若い男と中年婦人にまで拡大しているようです。 気持ちまでもお金でどうにでもなるという浅ましさです。子どもが大人社会を 汚いと感じるのは,利害に基づく関係の蔓延が嫌らしいという感覚があるから です。  お歳暮にも,感謝と賄賂のしるしという二つの了解があります。感謝であっ ても,デパートの包み紙でなければという心遣い?が込められます。贈る側の 人がデパートの包み紙のほうがうれしいと思っているから,受ける側の人もそ う思うだろうと用心しています。子どもはクリスマスプレゼントの包み紙がど このものであろうと気にせずに,中味をうれしがっています。何が誠実なのか, 大人は考え直したほうがいいのかもしれません。  子どもの回りに感謝を生み出す仕掛けがあるでしょうか? 子どもの日とは 「こどもの人格を重んじ,こどもの幸福をはかるとともに,母に感謝する」と いう趣旨が法定されているのをご存じでしたか? 誕生日とは育ててくれた親 に感謝する日でもあります。家庭の中で「ありがとう」という言葉が行き交っ ていますか? 特に,子どもが何か手伝ってくれたら,誠実に「ありがとう」 と言ってやってください。その親の態度がお金で買えないものを教えることに なるからです。    ・・・《双方の誠実が感謝を,どちらか一方の不実が利用を生みます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育てには,生きるための本物の価値を伝える使命があります》 ※子どもは泣いたり喚いたりあれやこれやの手練手管を使って,親を思い通り に操ろうとする小悪魔です。決して純真無垢ではありません。幼い時期は,食 べて寝てということ以外は必要以上にがめつくないから救われています。成長 するにつれて親の目をくらまそうとする知恵もついてきます。見え透いた嘘を 言うこともあります。騙された振りをするということも必要になるでしょう。  かわいい子どもですが野放図にするわけにはいきません。一つだけの家訓の ようなもの,これだけは守ることという暮らしの芯になるものを決めておくこ とが不可欠です。時間を守る,約束を守る,悪口は言わない,弱いものイジメ はしない,テレビやゲームは1時間だけにする,など。年齢にあった決め事を 一つ持つことで,暮らしの中で必要な価値を具体的に持たせることができます。 あれやこれやといっぺんに押し付けても,子どもは受け止めきれません。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  新しい読者の方がおられるので,子育て羅針盤の構成がどうなっているかを 改めて簡単に説明しておきます。基本的には12章構成ですが,「誰が育つの か(1,2),どこで育つのか(3,4),いつ育つのか(5,6),何が育つのか(7,8), なぜ育つのか(9,10),どのように育つのか(11,12)」という5W1Hの問に答 えようとしています。各問について,「個の育ち」と「社会性の育ち」という 2面を加味して,6問×2面=12章という構成になっています。  版を改めてきたことから論旨が広がっており,対応が見えにくくなっている かもしれませんが,下記にご案内をしているホームページ「徒然窓」にあるバ ックナンバーから初期の版を読み返して下さるようにお願いします。タンパク 質の摂取をするためには,肉ばかりでとは限られていません。食材はいろいろ とあり,時期に相応しいものを摂取すればいいのです。おなじように,子育て 羅針盤の12章も改版毎に,違った食材について述べているものとお考えくだ さい。結果として,子育ちに必要なものがちゃんと与えられるようになってい るはずです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,【お子さんが,諦めてがんばらないことはありませんか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○