□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/11/29]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第217号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『意味がない?』  小賢しいという言葉があります。大人が提示するアドバイスを意味がないと あっさり言ってのけます。自分の見識の不足を棚に上げて,他者を否定すると いう天動説的な思考に染まっています。また,自分が分からないのは,教え方 が悪いという幼児的な発想法であり,自分のせいではないのです。自分の至ら なさを弁えることが賢さへの入口なのですが,その入口から先に進まないうち に,自分を見失っています。持って回った言い方を止めて直截に言えば,学ば なくても大丈夫と甘えています。  辞書で言葉を探せない若者がいます。探せても,ページをめくる回数が多す ぎます。順序よく1ページずつ開いていったりします。普通の辞書なら黒い目 印がついているので,多くても4,5回もめくれば探し出せるはずです。大ま かに開いて,徐々に追い込んでいけばいいのですが,それを知らないようです。 教材として新学期に辞書を購入しても,卒業までにほとんど開いたことがない ということで,きれいなままでお蔵入りしています。  情報化社会の中で,子どもたちはたくさんの情報の流れの中にいます。しか し,生きることに関わるものは,面白くないという理由で除外されています。 子どもたちが知っていることは,知らなくても生きていく上で困らないものが ほとんどです。読み書きそろばんという旧い言い方を持ち出せば,国語力と計 算力という基礎能力が軟弱なままに置き去りにされています。特に国語力の育 ちが十分ではなく,大人ときちんと対話のできる態勢が取れなくなっています。 言葉の偏食の結果です。  若者言葉は,感情世界の表現が多くなっています。ムカツク,キモイなど, 気分を表す言葉なので,どうしても過激な方向にずれていきます。感情的な言 葉を使うことに馴染んでいるので,抽象的な言葉が異物のように感じられるの でしょう。苦いものを口にしたときのように拒否反応が現れ,意味がないと切 り捨てようとします。言葉に対するアレルギー反応と言ってもいいでしょう。 食育という食事の偏食を憂える動きがありますが,心の食事である言葉の摂取 も大事です。  感情語は幼児世界の言葉であり,抽象語は大人世界の言葉です。子どもの回 りに大人世界の言葉をもっと豊かに溢れさせておきましょう。大人はわけの分 からない言葉を使っている,自分の知っている言葉だけでは理解できない世界 があるということをしっかりと意識させることが出発点です。おそらく「今な んて言ったの」と尋ねてくるでしょう。そのときが大人世界を垣間見るチャン スになります。説明されて分からなくてもいいのです。なにか意味があるんだ, その受け止めが大事です。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12章★     【お子さんが,諦めてがんばらないことはありませんか?】                             (質問17-09) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○見切り  諦めるのか諦めさせられるのか,二つの場合が想定されます。いずれにして も,諦めが早いという言い方に注目しましょう。何事でもさっさと済ませるの がいいのですが,諦めはさっさとしてはいけません。諦めは遅いほうがいいの です。ところが,モノを買ってとねだるときには諦めは早くして貰いたいです ね。いつまでもしつこいと言わされていませんか。子どもにすれば,どうすれ ばいいのか迷ってしまいます。  遊びでも勉強でも,うまくいかないときには「もう止めた」と諦めます。気 分転換が必要な場合もあるでしょう。ちょっと気晴らしということです。ずる い子が逃げ出すのに使う口実です。それは意地悪な勘ぐりですが,その諦めが いつも早いと気になります。ところで,諦めるのはどういうときでしょう?  とてもできそうもないと感じるときです。自分の力と目標の難しさを分かった 上で,そのギャップにたじろぐときです。  それでは,がんばれるのはどういうときでしょう? 「もうちょっと」と思 うことができるときです。とても遠いと思えばげんなりしますが,もう少しと 思えばがんばることができます。スモールステップ。その見切りをすることが がんばりに必要な条件です。その見切りができるためには,似たようなことを したことがあるという自己体験や,友だちがちゃんとできているという観察を していればいいのです。  親のほうの問題として,早くできるようになって欲しいという過度な期待の 目があります。当然なこととして,ダメだという否定の方に傾くことになり, 子どもは自分を見限らされるようになっていきます。親の期待通りにいかない のは自分が無能なせいだと思い込まされ,ドウセという開きなりになっていく しかありません。こうしてがんばらない落ちこぼれは否定的な環境が育ててい くことになります。親の期待も小出しにするようにしてください。  ブタも煽てりゃ木に登る! 乱暴な言い方ですが,一理はあります。任せる と言われたらがんばれるのは,任されることが一種の煽てだからです。信じて いるよという言葉が人を励ますのと同じです。もちろん煽てるには下心があり ますが,任せるについても心配があります。その心配を抑え込むためには,子 どもの育ちを信じることです。今の子どもではなく,明日の子どもを信じてや るのが親心だからです。 ・・・《もうすぐそこにあると見切れる目標を持つことががんばりの源です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○我慢と断念  子どもは本来しつこいものです。小さい頃は,もういい加減にしなさいと言 わなければならなかったでしょう。止めさせる最も大きな要因は時間です。出 かける時間,食事の時間,寝る時間といった生活のリズムが,中断を余儀なく します。そのことは生きていく上で必要なことなので,「後で」とか,「また 明日」といった接続の習慣を持たせるようにしなければなりません。人の記憶 という機能を利用するのです。  がんばるというのは,やっていることをもう少しだけ続けることだと述べま した。もう止めようかなと思うときに,もうちょっとやってみようと自分を動 かすだけでいいのです。そこにある言葉が「継続は力なり」です。もうちょっ とのがんばり,それがコツコツ励むことであり,地道に力を育てる方法です。 子どもには先が見えないのでかなりきついことです。今すぐできないと嫌,そ んな幼児性を徐々に卒業させなければなりません。  ボタンを押せばパッと出来てしまう環境にいれば,すぐにできるのが普通だ と刷り込まれます。いったんそうと思い込んでしまうと,抜け出すのはたいへ んです。ホットケーキが食べたいというとき,粉から練り上げてフライパンで 焼くという手間暇をママのそばで見ながら,まだかまだかと心待ちにする体験 があれば,自然に我慢を身につけていきます。袋をバリッと破れば済むおやつ では,我慢など必要ありません。物事には手順という手間暇があってできあが る,それが当たり前なのです。  小さな種を蒔いて水をやり,陽にたっぷり当てていると,少しずつ伸びてい きます。種が大きく育ってきれいな花を咲かせます。一日一日の少しの成長が やがて実りを見せるという育ちの過程を身近に体験しておくと,今日できるこ とをしていけばきっと目標に届くはずと信じられるようになります。明日につ ながる今日を知っている子どもは,我慢をする意味を自然に理解することがで きます。我慢の中に楽しみを見つけられるようになるといいですね。  今すぐということにこだわり,時間の流れを止めて刹那に生きていると,我 慢はできません。今できないときには,断念するしかありません。断念は後が ないので,育ちにはつながりません。何をやっても投げやりで中途半端になり ます。今すぐというのは,済んでしまったことにつなぐことをしようとしませ ん。実際にはこんなに極端に割り切れるものではありませんが,我慢と断念の 違いを弁えて子どものしつけに臨むことが大切です。  ・・・《明日があれば我慢を,今日だけなら断念を子どもは身につけます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育てには,明日に向かうという動きがあります》 ※子どもは今を精一杯に生きています。その今が明日にきちんとつながること を感じていれば,明日を楽しみにできます。子どもが生き生きとしているとき は,そんなときです。今日も明日も同じと思っていれば,ただ生きているだけ, 生きている喜びなど湧いてきようがありません。大人でも明日が見えないと, 生き甲斐など感じるはずもありません。「また明日」,そんな声が出るように 育てたいものですね。  明日には辛いことや嫌なことが待っている場合もあるでしょう。それでもど こかに小さくても楽しいことがあれば,さらには明後日はいいことがあると見 つけることができたら,我慢してみようという力が湧いてくるものです。朝の 来ない夜はないと,もう一人の自分が自分に言い聞かせることもできます。明 日のために今日を生きるのではなくて,今日を生きたら明日が来ると考えてみ ませんか? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  2月前に新設されたわがまちの生涯学習センターに野良猫が住み着いていま す。敷地内のテニスコートでプレーする人が持ってきたバックを開けて昼食を 失敬するそうです。センターの入口近くに立っていると人なつっこくすり寄っ てきます。エサを与えている人がいるようです。猫が嫌いな人は追い払うよう に職員に求めていると聞きました。これから朝夕が冷えてきますが,名前も知 らない猫がどう生きていくのか気に掛かります。  霧島神宮に行ったとき,山道を車で走っていると,鹿が道端にいたので停車 して眺めることにしました。そばに寄ってきました。食べ物を差し出すと寄っ てきて,手から食べました。すっかり慣れています。人と共生してるようです が,それが幸せなのか,事情を掴んでいないのでよく分かりません。旅人の感 傷的な思惑は旅の想い出だけにしておきましょう。深入りは禁物です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,【お子さんから,約束をさせられることがありませんか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○