□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/01/03]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第222号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□          あけましておめでとうございます。   皆様のこの一年が幸せでありますように心からお祈り申し上げます。   なお,昨年はご購読を頂きありがとうございました。   今年も引き続いてどうぞよろしくお願い申し上げます。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■                『絆?』  昨年一年の間に,お子さんはずいぶんと成長なさったことでしょう。大人の 一年はさして変化は見えませんが,子どもの一年は見違えるほどです。それだ けに育ちの姿がよその子と比べるときに大きく違って見える場合があります。 うちの子はもうできるとか,まだできないとか,子育ての優劣を見せつけられ るようで,何気ないやりとりでも気になってしまうものです。育ちのペース配 分は一人一人の子どもによって違いますので,大して気にしないで下さい。か えって焦りが出て逆効果です。  子育ては,さあ子育てと構えることではありません。また暮らしの邪魔にな るからと家庭では子ども部屋に追い込んだり,専門家のいる園や学校に押し付 けることでもありません。子育ては親が暮らしの中で行うことです。親以外の 人が子育てという行為を行うことはできません。簡単に言えば,家族として共 に日々を暮らすことが,子育てそのものになります。世話をしなければという 発想,育ててやっているという意識,それは親の持つべきものではありません。  どんな生い立ちで育ったか,それが人の一生を左右します。生い立ちとは家 庭や地域の暮らしです。家族として育つことが,人の育ちの土台になります。 もちろん,大人と子どものけじめは必要ですが,その上でできることを持ち寄 るという共同生活を営めばいいのです。この話を持ち出すと,子どもにできる お手伝いなど見当たらないという反論が必ず出てきます。お手伝いと改まって 考えるからです。家族が自分のことは自分でするということから始めればいい のです。パパも!!  家族としての絆は,どこにあるのでしょうか? 家族は寄り添って生きてい くものです。子どもは親を頼って育っていきます。夫婦はお互いに助け合って 生きていきます。助けてもらうから家族になれるのでしょうか? 確かに家族 のありがたさは,そこに見えることでしょう。でもそれは絆ではありません。 夫婦がお互いに相手がいなくても生きていけると感じたら,離婚することにな ることからも推察できます。お互いに相手のために何かしてやれることがある という気持ちが絆なのです。  誰からも必要とされなくなったら,生きてはいけません。誰からも頼りにさ れなかったら,生きる気力は出てきません。誰からもいて欲しいと思われなか ったら,生きる喜びはありません。必要とされる,頼りにされる,いて欲しい と願われる,それは常に心を開いて相手のためにできることを求め続けること で実現します。愛は受け取るものではなく,与えるものであり,それが絆を編 み上げます。子どもが親の愛を受け取るだけではなく,与えることを覚えたと き,親子の絆が結ばれます。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12路★     【お子さんから,大嫌いと言われることがありませんか?】                             (質問18-01) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○壁となる親  子どもの成長は早いので,去年の衣類は今年は小さくなってしまいます。経 済を考えると,大きめの衣類を購入することになります。今年は袖と裾を巻き 込んで着せておき,来年は解けばいいという案配です。今時はそんなみっとも ないことはしないでしょうね。第一子どもが贅沢になってきて嫌がることでし ょう。少子という事情はお下がりという便法も使えなくしています。アルバム を見ている弟が,お兄ちゃんがボクの服を着ていると言う場面もなくなってき ました。  親は子どもの思い通りにしてやれません。お菓子が欲しいといった駄々に, いつも付き合っているわけにはいきません。何やかやで親の壁に阻まれたとき, 子どもは「ママなんか大嫌い」と言ってのけます。親の都合ばかりではなく, 子どものためによかれと思っていることもたくさんあります。それなのにそん な言葉を返されたら,やさしいママは落ち込んでしまいます。どうして分かっ てくれないの? その壁を乗り越えることが親と子の両方に課せられた一つの ハードルです。  女は弱し,されど母は強し。そんな言葉がありました。人は誰かを守ろうと するときに強くなれます。諦めるわけにはいかないという固い意志が湧いてく るからです。子どもを守りきろうとする愛が母親を強くします。それを慈愛と 呼びます。ところで,子どもを猫かわいがりすることが親の愛と勘違いする場 合があります。子どもの喜ぶ顔が見たい,それが愛の証であるからです。たし かにわがまま気ままをさせれば,子どもは喜びます。しかしそれは親の愛とは 似ても似つかないものです。  子どもが崖っぷちに立って飛んでみたいと願っているとき,親は無理矢理に でも引き戻すはずです。そんな大げさなことではなくても,災禍につながる危 険を避けること,社会生活上してはいけないこと,人として恥ずかしいこと, 家族の暮らしのために我慢すべきことなど,思い通りにならない現実の壁を, 親は自分を壁にして子どもの前に立ちはだからなければなりません。それが子 どもを守ることになるからです。悲しむことがないように育てることも大事な のです。  子どもはママのせいで思い通りにならないと思ってしまいます。当然気分を 害されるのですから,その不快感を解消しなければなりません。その処方箋と してママに言葉をぶつけてきます。黙って受け止めてやればいいのです。いっ たんストレスをはき出せたら,そこから育ちが始まります。どうしてママは自 分の思いを拒むのか? もう一人の子どもが必ず考えます。なぜなら,思いを 遂げるためにはママを説得できる理由を探さなければならないからです。      ・・・《もう一人の子どもは,親を壁に見立てて育っていきます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○親離れ  この頃子どもが外であったことを話してくれなくなった。心配なので,部屋 の掃除の折につい子どもの机の引き出しを開けてしまったところ,買ってやっ た覚えのないオモチャがあります。「このオモチャはどうしたの?」と,帰っ てきた子どもに詰め寄ります。「勝手に人の引き出しを開けて覗くなんて,マ マなんて大嫌い」。思いもしない反撃をされて,ママはカッときます。しては いけないことをしたという後ろめたさを突かれたからです。  許されることと許されないことがあります。我慢できることと我慢できない ことがあります。ちょっとしたこととちょっとでは済まないことがあります。 してはいけないことにも程というものがあります。ふうてんの寅さんが「それ を言っちゃおしめえよ」と言いますが,「それをしちゃおしめえよ」というこ ともあります。たとえ親であっても子どもの人権を踏みにじるようなことはし てはいけません。人権? 一人前でもない子どもに,いっぱしの人権なんか認 められるわけがない?  人権の法解釈といった小難しい話はさておいて,子どもの育ちを大切にする という立場での子どもの権利と考えてください。もう一人の子どもは,自分を 大切にしようとする自尊意識を持ち合わせています。その現れとして自分のも のという所有権を意識するようになります。「ボクの机」であり,ボクしか触 ってはいけないものなのです。掃除のためにママが机に触るのは,ボクにとっ ては許されることです。引き出しの中を見られることは,許し難いことになり ます。自尊権を侵されるからです。  親離れとは,親の支配からの離脱です。親からもう一人の子どもへの支配権 移譲なのです。自分のことは自分で考えて決めるということであり,その考え る自分がもう一人の自分ということになります。このもう一人の子どもの誕生 と育ちが,子育ての出発点になります。たとえ未熟で頼りなげであっても,も う一人の子どもとできるだけ対等な形で付き合っていく人権の尊重が,子離れ になります。大嫌いという宣言は,内政干渉するなというプライドを掛けたメ ッセージなのです。  悪い芽は早く見つけて摘み取らなければなりません。その大義名分を振りか ざして子どもを監視検閲していると,子どもの中に反発を生み,度重なってい くと憎悪にまで凝縮しかねません。長じたときに暴発すれば,悲劇を招きます。 皆さんがしているように普段の様子を見守っていれば,子どもに悪い芽があれ ば必ずぼろが出てきます。心配は程ほどにしておいたほうが無難です。子ども の心理的な領分にズカズカと踏み込んではいけないということを,気に留めて 置いてください。    ・・・《親であっても,子どもの城に土足で踏み込んではいけません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育てには,気をつけないと親の身勝手が紛れ込むことがあります》 ※「早くしなさい,愚図なんだから」。後半が余計なひと言で問題です。子ど もを否定しているからです。しつけは行動を正すことですから,「早くしなさ い」はいいのです。愚図という言葉は子どもの存在をマイナス評価しています。 自尊心を傷つけているだけで,逆効果です。どういう点で逆効果でしょう?  自分にいい感情を向けてこない人の言うことは聞きたくないと思うのが自然だ からです。  イヤイヤすることは身に付きません。嫌いなおかずを無理矢理食べても,身 体が拒否するのと同じです。子どもが楽しくなるような仕掛けを編み出してく ださい。遊びの形を取ればいいのです。「どっちが早くできるか,ママと競 争!」。子どもは喜んで巻き込まれていきます。手加減して負けてやります。 「すごい!」。子どもを褒めてやる機会が自然に訪れてきます。忙しくそんな 悠長なことはやっていられませんか? いつでもということではなく,たまに でもいいのです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  この18版では,お子さんが親にはちょっぴり痛いことを突きつけてくる場 面を取り上げていきます。いずれもドンと構えていればいいのですが,つい大 人げなく挑発に乗ってしまうこともあります。もしそんな局面を迎えても,す ぐに気がついて修正をしていれば大丈夫です。相談に乗ってくださる先輩の親 がいれば,そんなことはよくあることと一笑に付されて,フッと気持ちが吹っ 切れるはずですが,一人であればそんな気詰まりを抱え込んでしまいます。  この羅針盤が子育ての重苦しい気持ちを少しでも和らげるのに役に立てばと 願っています。かゆいところに届かないといったもどかしさもあると思います が,一方通行ということと限られた文字数ということでお許しください。今年 も皆さんとご一緒に子育てについて考えていくつもりですので,ご意見やご感 想などメールをお待ちしております。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆   次号では,【お子さんが,人の悪口を言い募ることはありませんか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○