□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/04/11]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第236号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■             『干渉から指導へ!』  前号で,二つの誕生について話しておきました。赤ちゃんの誕生と産みの親, もう一人の子どもの誕生と育ての親というペアがあります。赤ちゃんはわがま まいっぱいであり,その上言葉も通じません。そこで生活に必要なことをしつ けるときに,身体に直に伝えなければなりません。赤ちゃんは自分の身体を制 御するもう一人の子どもがまだ誕生していないので,親が代行してやらなけれ ばなりません。親が指令するという形なので,子どもにすれば「干渉」となり ます。  しつけは礼儀作法を仕込むことですが,本来は裁縫のときに正しい縫い目に する下準備として仮に糸で縫い押さえておくことを言います。仮の押さえとは, 仮に取り締まるという風に考えることができます。まっさらで何も分からない 赤ちゃんだから,仮に親が肩代わりをしてしつけているのです。やがて,自分 意識が芽生え,もう一人の子どもが誕生してくると,自分で自分を制御するよ うに「指導」する段階に進まなければなりません。その時期が反抗期として現 れます。  ママの言うことを聞かなくなる,それが子どもの自己主張ですが,もう一人 の子どもの誕生であると思ってください。言うことを聞いてくれなくなったら, 少しずつ子どもに自己決定の機会を与えていきましょう。もちろん,自己責任 も伴います。自分でするといったのにできない,それでいいのです。自分の実 力を思い知ることはとても大事なことです。もちろん,子どもに任せるといっ ていっぺんに放り出すのは無茶です。ゆっくりと一つずつ権限移譲をしていき ます。  指導というのは,こうした方がいいよという導きです。それを受け入れるか どうかは,子どもが決めることです。受け入れないからといって,無理矢理受 け入れさせようとすると干渉に変質します。子どもに任せていいことであれば 任せてみようかなと,もう一人の子どもにバトンを渡してみてください。○歳 になったから,お兄ちゃんになったから,1年生になったから,何らかのきっ かけを親子ともに意識すれば取り組みやすいでしょう。  任せてみてすべてがうまくいくとは限りません。そのときはうまくいくよう に繰り返し導き続けます。指導というのは根気の要ることです。一度で済むこ とではありません。何度言えば分かるの,それが当たり前だと思ってください。 決して子どもが悪いのではありません。もう一人の子どもの育ちがまだ追いつ いていないだけです。時期が来れば,あっけないくらいにうまくいくものです。 焦ることが指導を干渉に逆戻りさせることになります。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12軸★       【考えているから,子どもの自我が育ちます!】                               《WHO-2》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○第2軸:考える  ママはほんの少し昔のことですが,授業中に先生の話を伴奏にしてあれやこ れやの考え事をしていたことでしょう。どちらかといえば,物思いに近かった かもしれませんね。考えることと思うことは外見上似ていますが,やはりどこ か違うようです。ぼんやりと物思いに耽ることはできますが,だからといって 考えているということにはなりません。思うのと考えるのでは,結果として, 夢と現実の違いに行き着くはずです。  お腹が空きます。何か食べたいなと思います。思うだけではどうにもなりま せん。念力などは期待できません。冷蔵庫に何かあるかもしれないと考えます。 そこで,行動が可能になります。あいにくとめぼしいものが見つかりません。 また考えます。コンビニに買い物にでかければいい,でもそこではお金が必要 です。ママにお小遣いをねだりに行こうとします。ところが,ママは簡単には 財布を開いてくれそうもありません。そこで考えます。「ママ〜,お腹が空い た」と可愛く訴えます。  ママという人間も含めた環境に働きかけて,思いを遂げるにはどうすればい いのか,可能性を見つけようとする営みが,考えるという行為です。考えるた めには,条件が二つあります。一つは○○したいという自分の思いです。願い や意欲ともいいます。豊かな暮らしの中では,この思いの発芽が封じ込められ ることになります。意欲がないという症状として現れます。おやつがいつでも 揃っていると,食べたいなという思いが考える扉を開くことはありません。  もう一つの条件は,環境と自分のつながり具合について分かっているという 状況認識です。冷蔵庫のどこに何があるかを知っている,ママがどうすれば財 布を開いてくれるかという知恵を記憶している,コンビニで買い物したことが あるという経験知がある,そのような必要な知恵を持っているから,考えるこ とができます。自分にできないことがお金であるということに気付けば,ママ との交渉でなんとかなるのでは?という可能性に辿り着けます。  周りの状況を推し量り,同時に自分の限界を見極めて,何ができるのかを考 えるのは,もう一人の自分です。我思う故に我ありです。自分がこう言ったら 相手はこう思うだろうと考える,自分と相手を相対視できるのは第三者の立場 にいるもう一人の自分,すなわち自我です。思うのは自分,考えるのはもう一 人の自分ということになります。考える機会をたくさん与えれば,それだけ頻 繁にもう一人の子どもが活動できるようになります。  ・・・《もう一人の自分が育つのは,考えるプロセスを経ていくからです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○考える材料!  三人寄れば文殊の知恵。文殊とは? 知恵第一といわれ,釈尊の左にいる知 恵の徳を受け持つ菩薩のことです。ポイントは三人寄るということです。寄れ ば何が起こるのでしょうか? 単純に考えれば,知恵が三倍になるということ です。経験豊かな人が知恵が豊かです。経験とは物事の道理という知恵です。 視野の広い人が知恵が豊かです。視野とは状況把握の力です。三人の経験と視 野が重なることで,知恵が三倍になります。  グラグラッと突き動かされる中で,何も考えられなくなりました。何? た だ呆然と周りを見回すだけでした。福岡県西方沖地震の時のことです。状況判 断ができるまでにタイムラグがありました。いきなり非日常にスリップすると, 人は呆然自失に陥ります。建物全体が揺れ動いていると見えたとき,一瞬の間 を経てやっと地震だと判断でき,自分が置かれている状況が分かり,ほぼ同時 に身の危険を感じるという流れでした。  美味しい料理は,材料が揃っていて適切な調理によってできあがります。材 料が欠けたり,手順を違えたりすると台無しです。考えることも同じです。自 分というメモリーに蓄積された経験を,適切に使いこなすプログラムを書き上 げることが,考えるという操作です。何の経験もなければお手上げですが,似 た経験があればなんとかなるという可能性が見えるはずです。初めての地震へ の遭遇では呆然としましたが,その後の余震に対しては,かなり落ち着いて考 えることができました。  打つ手がない,お手上げ,手詰まり,そうなるとどうしていいか分からなく なります。考えるという行為が壁に突き当たります。その状態がしばらく続く と悩みという固まりに凝縮していきます。誰かに相談をします。助言によって 出口の手がかりが見えると,考えることが始まります。考えるためには,材料 が必要です。実はその材料は結構身近にあるはずですし,身近になければ使え ません。この使えるということが大事なのです。  最近の子どもたちには応用力がないといわれます。紙を切るときに,ハサミ が必要です。子どもはハサミがないから切れないといいます。実際は,紙を折 りたたんで定規で切ることができます。定規は線を引いたり長さを測るという 使用法以外に,紙を切るためにも使えるのです。これが最も身近な応用力です。 ナイフがあればいい,ナイフはどんな形かを観察して見知っていれば,似た形 のものが身近にないかを考えることができるということです。生活の工夫が考 える育ちを促します。  ・・・《考えるとは,経験を発展し手近な物事の利用性の発見過程である》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 考えさせて 手を出さず》 ※甘やかされて育った子は,自分で何もできなくなります。もう一人の子ども に考える力が宿っていないからです。自分の力をどう使えばいいかということ が考えられないのです。もう一人の自分が自分にできることは何かを知ってい て,手助けになるものを探し出すことができれば,考える行為に入れます。し かしながら,甘やかされていると,自分の力が分かりません,何が利用できる か覚えません。そばにある考える材料が何も見えていないのです。  人はものごとがうまく運ばないときに,つい他人のせいにする弱さを持って います。それは幼児期のわがままの名残です。自分は面倒を見られて当然とい う甘えが肥大すると,もう一人の自分は他人を利用することに長けていきます。 他人は近づかなくなります。他人が自分を除け者にすると思っていますが,実 は自分の方が他人をヒトとして尊重していないからです。がんばっている人に は手を貸したくなります。共生とはオンブにダッコではなく,自助努力にお互 いの助け合いを重ねることです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  ドロシー・ロー・ノルトの「子ども」という詩が話題になりました。   批判ばかりされた子どもは,非難することをおぼえる   殴られて大きくなった子どもは,力に頼ることをおぼえる   笑いものにされた子どもは,ものを言わずにいることをおぼえる   皮肉にさらされた子どもは,鈍い良心の持ち主となる   しかし,激励を受けた子どもは,自信をおぼえる   寛容に出会った子どもは,忍耐をおぼえる   賞賛を受けた子どもは,評価することをおぼえる   フェアプレーを経験した子どもは,公正をおぼえる   友情を知る子どもは,親切をおぼえる   安心を経験した子どもは,信頼をおぼえる   かわいがられ,抱きしめられた子どもは,   世界中の愛情を感じ取ることをおぼえる     (引用:あなた自身の社会:スウェーデンの中学教科書,新評論社)  心豊かな親からのしつけが,もう一人の子どもを心豊かに育みます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【見守るから,落ち着いた子どもに育ちます!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○