□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/05/09]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第240号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■           『"伝えた"から"伝わった"へ!』  皆さんは親孝行をしていますか? 愚問ですね。おじいちゃんおばあちゃん は孫を可愛がってくれます。遠くにいるのであれば,里帰りの際に歓待しても らえます。もう亡くなられているなら,天国から笑顔で皆さんを祝福しておら れることでしょう。親にとって最もうれしいことは,世代のつながりを実感で きることです。親は子どもに自分の命を伝えます。その子どもが孫に命を伝え ます。そのとき,祖父母は自分の命が孫に伝わった歓びを受け取ります。最高 の親孝行ができていますね。  親は思いを子どもに伝えようとします。でもそれがきちんと伝わっているの かというと,自信が持てませんね。この子は分かっているのかしら? そんな 迷いを抱えながら,毎日の子育てをしていくしかありません。有り余る子ども 思いの親心は,子どもには荷が重いということもあります。よかれと思ってい ても,かえって子どもには拙いことになる場合もあります。離乳食のように, 一人一人の子どもの育ちに合わせた伝え方があります。  貧しい国の子どものために,先進国からミルクが届けられます。ところが, 実のところあまり役に立たないそうです。先進国のミルクは栄養が豊かすぎて, 貧しい子どもたちの身体は受け付けないそうです。助けたつもりなのですが, 助かったとはならないのです。善意といえども,それがきちんと届くとは限ら ないということです。衣類を届ける場合も,ドレスのようなものを届けたとし ても,日常の暮らしの服装としては不適当になります。  日常では,相手に届けるものとして最も身近なものは,言葉です。こちらの 意図を伝えたつもりでも,相手に伝わったとは限らないことが起こりえます。 単なる言葉の行き違いにすぎませんが,時には大きな傷を与えてしまうことも あります。「あなたなんか,うちの子どもではありません!」。うちの子ども でいたかったら,ちゃんということを聞きなさいというつもりでしょうが,子 どもに伝わるのは見放されたという言葉通りの意味です。  伝言ゲームという遊びがあります。人から人へ言葉を伝えていくと,最後の 人に届いたときは全く変わってしまうという転換を抑制しながら,どれほど正 確に伝わったかを競う遊びです。噂にまとわりつく尾ひれが,やがて本筋に入 れ替わってしまう怖さがあります。言った言わないというすれ違いも,伝えた つもりが伝わっていないということの一つです。どうしたら伝わるように話す ことができるのか,子どもにそのコツをしっかりとしつけてくださいね。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12軸★        【話しているから,知恵を生かそうとします!】                               《WHEN-2》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○第6軸:話す  一人で考えているよりも何人かで話している方が,考えが深まったり広がっ たりまとまることがあります。言葉が絡み合うことで,ひらめきが生まれるか らです。どうしてでしょう? 人に話す場合は,自分の考えをきちんと伝えよ うとして,最も相応しい言葉を選ぼうとするはずです。結果として,言葉遣い が丁寧になります。人の考えとは言葉を使って構成されるものなので,考えが 研ぎ澄まされ練り上げられていくことになります。これが学校授業の骨子です。  自分の側の事情だけではなく,話している相手から被せられる言葉も,大き な意味を持っています。例えてみましょう。「白い犬がいた」と話します。相 手から「どれくらいの大きさだった?」と尋ねられます。話している方は分か っていますが,聞く方は分からないからです。大きさを伝えるのに,どう言え ばいいのでしょう? 「小さな犬だ」と言っても,伝わりません。人によって 小さいという大きさはまちまちだからです。  「猫より一回り大きいぐらい」と言えば,伝わります。相手と共通にイメー ジできる大きさとして,猫を持ち出したことが大事です。自分しか知らないも のでは役に立ちません。あるいは,背丈が20センチぐらいという言い方がで きれば,もっとはっきりしてきます。こうしたやりとりをして細部の確認が進 んでいくと,ただ白い犬でしかなかったイメージが詳細に描かれていきます。 そうかもしれませんが,それがどうしたというのでしょう?  子どもの絵がチグハグなのは,大きさという細部が見て取れていないからで す。例えば,家の大きさと人の大きさの割合がデタラメです。自分の大きさを 基準にして,大人は大きく,お家はもっと大きく・・・といった感覚を育てて いきましょう。また,人の絵もプロポーションが不釣り合いです。手はどんな 形か,腕はどうか,肩は,胸は,腹は,腰は,足は,足首は? 身体の部位を 表す言葉を覚えることで,人のイメージの細部がちゃんと見えるようになるは ずです。  絵は感性の表現だから,絵を描くのに言葉は要らないと思ってはいませんか? しかしながら,その感性も言葉を手がかりにしなければ掴まえることができま せん。負の感性も,イライラする,ムカツク,腹が立つ,嫌になるなどの言葉 があるから,意識レベルに持ち込むことができます。あの人のそばにいるとド キドキする,それが恋というものだと知ったとき,気持ちに納得がいったはず です。豊かな感性は豊かな言葉から発します。そこにお話を読む効用の一つが あります。  ・・・《きちんと話そうとすることが,言葉を覚えるきっかけになります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○知恵!  異業種の方からお話を伺うとき,業界用語というものに出くわします。さら っと話されるのですが,どうにもピンと来ません。どういうことかが分からな いからです。暮らしの中でも略語やカタカナ語が増えてきて,世間から遠ざか っているような気になります。知らない言葉というのは,聞いても意味が分か らないだけではなく,なによりも聞き取れません。「いま何と言ったの?」と 聞き直すことになります。次には「何のこと?」と続きます。  不謹慎ですが,お坊さんのお経を耳にしても,何のことやらちんぷんかんぷ んです。罰当たりなことに,聞いていると眠くなってきます。聞こえていても 聞こえてこない言葉だからです。見知らぬ人たちの会話を耳にしたとき,知っ ている言葉や関心を持っている言葉が出てくると,つい耳をそばだてます。言 葉がちゃんと聞こえてくるからです。ものごとを知り考えるためには,それな りの言葉が欠かせません。言葉を覚えることが,知恵を得る方法なのです。  子どもは名前という固有の言葉を覚えることで,自己と他者を意識化するこ とができます。誰かがいるというのではなく,○○ちゃんがいると名前で認識 するとき,お友達という関係が成り立ちます。見ず知らずの人とは言葉のつな がりがないので,認知できません。さらに,ボクのオモチャ,○○ちゃんのオ モチャという所有権の区別ができるのも,名前というものがあることを知って いるからです。「あれは何?」 子どもの質問は言葉を知りたいからです。  聞き分ける,見分ける,分かりが早い,と並べてくると,なんとなく見えて くるものがあります。「分ける」ことが「分かる」ことであるということです。 最も基本的な分け方は,言葉で分けていくものです。大根,ネギ,ゴボウ,・ ・・と野菜を分けます。山や川や池と風景を分けていきます。人には男と女が いて,大人と子どもがいます。血液型という区分けもありました。喜怒哀楽と 気持ちを分けていますし,生老病死と苦を分けています。分かろうとするから です。  分けることは違いを見つけるということでもあります。違いの分かる男とい うCFがありましたが,真偽,善悪,美醜という違いを弁える知恵を,子ども には持たせたいですね。悪ふざけをちょっとぐらいならとか,皆がしているか らと躊躇なく踏み出すけじめの無さは,違いを曖昧にしていることになります。 生活のリズムも,ダラダラするのではなく,きちっとここからは○○をすると いう時間の区分ができるようにすればいいのです。片付けも分けて整理するこ とです。  ・・・《ものごとを分ける言葉は,生きていく上で最も必要な言葉である》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 言葉ありきで 知恵付けて》 ※言葉なら任せておいて。ママは自信満々でしょうが,少しばかり苦言を言わ せてください。おしゃべりの中の言葉は,どこに出してもいいという言葉では ないのではないでしょうか? 大丈夫ですか? 中学生くらいの子どもは,マ マたちのおしゃべりを情けないと感じることもあるようです。本当は好きでは ないけれど,お付き合いだから仕方がないということかもしれません。いずれ にしても,子どもに聞かれても恥ずかしくない会話をするようにしてください。  叱るときの言葉は少し乱雑になります。怒りが紛れ込むからです。ほめると きの言葉はとても温かくなります。歓びが込められるからです。子どもをほめ て育てるように心掛けていれば,気持ちは優しく,言葉はきれいになります。 いつもは叱ってばかりで,たまにほめ言葉を使うと,皮肉っぽくなってしまい ます。何か下心があるように伝わります。言葉遣いに気をつけると,親子関係 もよい方に動いていきますよ。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  街中にある建物に公的な用向きのために出かけることがあります。駐車場が 狭いために,車でのお出かけはご遠慮下さいと通達が出ています。一台ぐらい という思いを振り切って,バスで出かけます。一時間に一本のバスが走る交通 田舎であるために不便なのですが,バスに乗ってしまうと,ぼんやりと窓から の景色を楽しむことができます。普段のペースと違うと気が重いのですが,車 とは違った旅路を辿るのも一興と思い返しています。  移動する時間を無為な時間と感じる習性は,忙しい暮らしの賜物でしょう。 スローライフという言葉が,違った選択肢もあるということを教えてくれます。 ゆったりとした時間を過ごすことは,心にゆとりを持ち込むために必要という 効用もありますが,効用という考え方を通り越す無為の中に大切なものがある のかもしれません。ただぼんやりとすることに落ち着かない,そこから解き放 たれるまでにはもう少し時間が掛かりそうです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆     次号では,【ほめてやるから,素直な子どもに育ちます!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○