□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/05/23]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第242号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■           『"できる"から"できた"へ!』  人を励ますときには,「あなたはやればできるから」と必ず言われます。実 際は,やらないからできません。子どもには,「真面目に勉強すればできるは ず」と励まします。やがて,子どもは「自分はやればできる」と思い込んでい きますが,同時に「でも今でなくても,いつかやればいい」と先送りをします。 「いざというときがきたら,そのときにやればいい」と逃げていくものです。 いざというときがきたときは,既に時を失して取り返しがつきません。  大人の後悔は,「あのときやっておけばよかった」ということがほとんどで す。コツコツと努力する人が成果を手中に収めるのは,やることを今している からです。やればできるという実践をきちんと果たしているから,「できた」 というステップを確実に踏んでいくことができます。「やればできる」はまだ やる前のこと,「やってできた」はやり終えたこと,その差は歴然としていま す。どちらを選んでいるか,それが成長の違いになって現れます。  「できる」と「できた」の違いは,やる前と後の違いだけではありません。 最も大事なポイントは,できると考えるのは頭であり,できたと実感するのは 手足であるということです。畳の水練という言葉を思い出してください。畳の 上でどんなにかっこよく泳いでも,水の中では役に立ちません。どんなに理路 整然と考えても,実際にはそう簡単には実行できないということは,大人であ れば経験済みのはずです。口ばっかりという状況がそこここに見られます。  想像の世界では不可能なことはありません。したがって仮想の世界に馴染む と,何でもできると錯覚し,人間の能力に限界があることを見失います。同時 にその限界を拡大することが成長であるという期待感を持つことができなくな ります。幼児期に遭遇する壁として,できない自分の発見があります。できる と思っていたのに,やってみたらできないことばかりです。そこを乗り越える ためには,「できた」ことを大人が見つけてあげる励ましです。  対人関係にも違いが出てきます。「あの人はできる人」という評価がある一 方で,「あの人はできた人」という評価もあります。できる人は,「こんなこ ともできないのか」と人の不甲斐なさを責め立てるようになります。大人が子 どもに言うセリフも同じです。できたひとは,「自分も最初はできなかったけ ど,繰り返していればできるようになる」と人を励ますことができます。でき ないことを悪いことと断罪しないので,温かさが伝わってきます。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12軸★        【素直だから,温かい人づきあいができます!】                               《WHAT-2》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○第8軸:温かさ  万事金の世の中。気持ちの上では否定したいかもしれませんが,現実にはし ようがないようです。欲しいものはお金がなければ手に入らないシステムにな っています。寂しいことです。それでも,お金で買えないものがあるというこ とを人が実感できるのは,お互いの温もりに包まれるときです。人は温もりを 求めます。でも,その温もりを与えることはあまり考えていません。身勝手な ものですが,そこから少しだけ抜け出せたとき,人とのつながりを手に入れる ことができます。  温もりを醸し出す条件とは,どんなことでしょう。温もりは離れていては伝 わりません。近接しているからこそ,伝わります。ママと赤ちゃんの触れ合い も,ダッコという形です。車には車間距離がありますが,同じように人の間に も適当な距離があります。見ず知らずの人からべたっとくっつかれると嫌なも のですが,同じように心理的な距離感もあります。親近感を持つと言いますが, 親との間のような近い間柄という意味です。温もりは,その辺りに漂うようで す。  親近感の元は人を信じられることです。人を素直に受け入れ,素直に接する ことです。信じることができないと,冷たく疎遠になります。大人社会で見受 けられるご近所づきあいの難しさも,陰には不信感が潜んでいるようです。よ く知らない人には信頼が置けないのは当たり前ですが,だからといって疑いの 念だけを持つようになると辛いことになります。疑り深い人は人を信じません が,実は自分がそうだからという根拠があることもあります。  世間には私腹を肥やすという不義があります。人づきあいにも,人を利用し ようとする嫌らしい謀が紛れ込みます。正直者が馬鹿を見るという教えもあり, 渡る世間は鬼ばかりといわれます。でも,そういうことが言われるのは,元々 は社会はそうではないからです。正直者が報われる世の中が当たり前だから, 馬鹿を見る場合が際立って意識されているのです。言葉があるのは,そういう こともあるという例外を教えるためであり,意識すれば例外しか見えなくなり ます。  私心があるのはどうしようもありませんが,その私を「私たち」と広げるこ とができるとき,社会性が育まれていきます。迷惑を掛けないようにするとい う心根は,人にとやかく言われないための用心ではなく,私たちという共同世 界を意識できることに発しています。私たちという気持ちが湧いてくると,人 に対して素直に接することができます。親近感が作用する範囲は,私たちとい う意識の範囲と重なっています。私意識しか持てないと,温もりを発すること はできません。  ・・・《私たち世界を信じる素直さが,温もりを分かち合う源になります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○人間関係!  人間関係といえば,二人の関係が主にイメージされているのではないでしょ うか? 実は,人間関係とは三人以上で現れてくるものです。二人の間では, 好きなら付き合って,嫌いならそっぽを向いていればいいのです。ところが, 嫌いな人ともそれなりに付き合わなければならないのが,社会的な人間関係で す。三人のうち二人が関係を持てなくなると,三人社会は成り立たなくなるか らです。家庭も父と母と子どもの三者の付き合いがある社会なのです。  子どもたちが仲のいい友だち関係という部分にこだわって,人間関係を狭く しているようです。すごく仲の良い友だち,仲のいい友だち,ときどき付き合 う友だち,なんとなく話をする友だち,あまり話したことがない友だち,ほと んど関わらない友だち,といった多層な関係をもつことが大事です。いくつか の三人目の付き合いを持つことです。学校での友だち,地域での友だち,チー ムの友だち,さらには異年齢の友だち,いろんな取り合わせが望ましいでしょ う。  二人だけの仲というのは,いいときはいいのですが,何かがすれ違うと急に 冷めていきます。かわいさ余って憎さ百倍という急展開が訪れて,敵対関係に まで暴走してしまうことがあります。裏切られたという衝動が湧いてくるから です。三人目がいれば,なだめ役になってくれますし,一次休戦という冷却期 間の後に修復のできる機会がやってくるものです。人は人によってつながって いく,その信頼感が人間関係の要です。  子どもとママの関係はとても強いものがあります。それは人間関係の温もり を教えてくれる大切な基本です。そこから,父親やきょうだい,隣のおじさん やおばさん,おばあちゃんや知り合いの人など,いろんな人との間にも程度の 違う温もりがあることを経験させておくべきです。熱いか冷たいかというディ ジタル感覚ではなく,いろんな温もりを感じるアナログ感覚が育っていないと, キレルという反動に気持ちが振り切れることになります。  大事なことは,仲良しであるためには,いつも一緒にいて同じ気持ちを共有 していなければならないという厳しい条件を自他に突きつけないことです。し ばらく離れていても,仲良しであり続けることができますし,多少の違った価 値観を持っていても認め合うこともできます。お互いを尊重し合うということ は,違いを認める余裕が前提になります。ママと意見が違うことがあっても, 大の仲良しであることに変わりはないはずです。  ・・・《敵でも味方でもない多様な関係を持てば,つきあいは楽しくなる》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 人と付き合い 磨き合う》 ※わがままと素直の境界はどこにあるのでしょうか? そんな質問を受け取っ たことがあります。「自分に素直」と言葉を連結すれば,それはわがままと重 なる部分が出てきます。わがままは自分に素直ですが,自分に素直だからとい ってわがままとは限らないということです。わがままは自分だけの利を考える ことです。当面する他者との人間関係をベースにしていれば,わがままから抜 け出すことができます。  一般には他者との関係に利他という意識を持ち込むことが勧められます。し かし,それは大人でも困難な信条です。せめて相手にも幾分かの利を分け与え るという節度が持てればいいでしょう。例えば,順番にするといった約束をす ることで,お互いの納得を得る方策が可能です。社会生活の上で公平性という 原則はかなり幅広く有効になります。お互い様という感性が育てば,温かい人 間関係をもたらしてくれる知恵が見えてくるはずです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  教える現場では働きかけをしますが,ほとんどの学生が応じてくる中で,反 応をしてこない者が数人出てきます。教育は人間関係ですから,ウマが合うと か合わないといった選別があるものです。理由ははっきりとせず,ただなんと なくということが多いでしょう。第一印象がよくなかったとか,声が気に入ら ないとか,いろんなことをこじつけることができます。それを気にせずに,素 直に真面目に気長に向き合っていくしかありません。  無視されたから無視し返す,気に入らないから反発する,そんな単純な感性 では,人とはつきあえません。ましてや次世代を育てるという営みでは,単な る未熟さを確定する軽はずみな判断は厳禁です。人は育ち変わっていくもので す。よい方に変わることの信頼にすがって,その手助けができる喜びを見つけ るように努めていきます。誠意を見せていけば,それが見えるように育ってく れると願って,毎週向き合っています。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆     次号では,【認めてやるから,待てる子どもに育ちます!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○