□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/06/27]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第247号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■             『私が産んだ子ども!』  母親の胎内で選ばれた生命が分裂を開始します。動き出した生命活動はひた すら生きることを求めて,胎動し,時満ちて誕生を迎えます。その瞬間に産み の親となり,腹を痛めた子どもという強烈な実感が刷り込まれ,母親にとって 子どもは我が身の分身となります。人が持ち合わせている自己愛,その中に我 が子もすっぽり入ってしまいます。わがことのように子どもに寄り添う感情は, 母性愛の源泉なのかもしれません。  子どもの喜びを我が喜びとし,子どもの痛みを我が痛みとする,その先に自 分の命に替えても子どもを守るという尊い覚悟が現れます。そうでなければな らないという理屈ではなくて,そうであるらしいというもう片方の親の素直な 感想です。ところで,そのような母子の関係を直裁に受容する父性と,母子分 離に挑む勇気をもつ夫性という相反する二つに対するバランス感覚を,男親た ちが持てなくなっているように感じています。  受容する父性は,母子を優しく慈しむことです。簡単にいえば,家庭を守る という役割であり,普通には生活費を稼ぎ出すことと思われています。家族の 暮らしを維持し続けることは,並大抵の苦労ではありません。心身をすり減ら すので,度が過ぎて挫折する場合もあります。そこまで自分を追いつめずに休 めばいいのにと思いますが,家族を背負っている身ではそれはできません。多 少の愚痴の出ることがあっても,苦労の背中が母子をしっかり担っています。  勇気ある夫性は,母子関係を壊すことです。壊すと言えば大げさですが,抑 制を利かすということです。人は記憶という能力を持っています。母親は大き な体験である出産を鮮明に記憶し,その持続性が私が産んだ子どもという意識 を強化し続けます。大切な記憶ですが,度合いが過ぎると母子分離を逃しかね ません。産みの母から育ての母への円滑な転換が求められており,そのきっか けを与えるのが夫性なのです。母を妻に引き戻し,子どもの自立機会を促すと いう役割です。  何事も時期と程度という要素が絡みます。乳児期の子どもにとって,夫性が 強く出過ぎると,母性機能を邪魔します。育児放棄といった事例が現れます。 父母はペースを合わせて,力を合わせて,気持ちを合わせて,お互いを慈しみ 励まし,子どもの育ちを支えていく中で,父性と母性を培っていきます。決し て難しいことではありませんが,無頓着で済むことでもありません。いつも語 り合い,寄り添っていこうと心掛けることが何よりです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12軸★        【信じているから,応える子どもに育ちます!】                               《MATOME》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○第00軸:絆  走れメロス。友人を信じ,信じられたから約束を守ろうとする友人のお話で す。それはお話の世界にしか存在しないきれい事でしょうか? 実生活ではあ り得ないことだから,お話に書かれているのでしょうか? そうありたいとい う願いに止まるのでしょうか? それであれば,人の進化は肉体だけに限定さ れて,心は未開状態から全く進化していないことになります。確かに,世間で は信じてはいけない人の事例ばかりが喧伝されています。  人が良いのもいい加減にしないと,どんでもない目に遭います。だからとい って,人を疑ってばかりいると,世間が怖くなって,世間に入っていけなくな ります。ニコニコして近寄ってくる人は,何か下心があるはずである。人の悪 口を聞かせてくれる人は,よそでは自分の悪口を言っているはずである。私を 見るあの目は,いかにも優しげに見えて実は哀れんでいる目である。猜疑心は とどまることなく,暗闇に深入りします。  この世間で最も大切なことは,信頼・信用です。信頼を失ったら,あらゆる ことが成り立たなくなります。義理という縛りも,信用を失わないための手管 です。義理を欠けば,信頼されなくなります。嘘が悪とされるのも,信用を裏 切ることだからです。人間関係は信頼の度合いに応じて,親密さの濃淡が現れ ます。親友であるかどうかの第一の目安は,信用できるかどうかです。渡る世 間には鬼もいますが,総じて信用していい人の方が多いと信じた方が得です。  結論を言えば,幸せな人生とは,信頼できる人に囲まれて暮らすことです。 それは,一人一人が信頼されるに足るという自負を持ち合わせていなければ, できない相談です。人のことはさておいて,先ず自分自身が信頼に応える覚悟 を持っていることが要件になります。今の自分を自分は友だちになりたいと思 うでしょうか? 自分自身が友だちになりたいと思う自分でなければ,信頼と いう絆を結んでくれる人は現れないでしょう。  子どもにとって,信頼できる人は親であり家族です。胎児が紐帯で親とつな がって育つように,子どもは絆という信頼関係を通して親から育ちのエネルギ ーを受け取っています。親が持っているご近所や知人との信頼ネットワークは, 子どもにとって大切な育ちのネットワークになります。もしも核家族という閉 じた世界しかなければ,子どもは信頼の保証がない世界にはみ出していきます。 子どもたちの世界をすっぽりと包む規模の世界を,親たちは作っておかなけれ ばなりません。  ・・・《家族ぐるみの信頼ネットワークが,子どもを育てる豊かな絆です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○始末!  テレビでゴミをよその集積場に無断で持ち込む不届き者の映像が報じられて いました。人気のない寂しい場所に不法投棄する者もいます。管理者が見つけ て問い質すと,どうして自分だけを責めるのか,他の人もしているではないか と反論してきます。問い質した方が,何かしら矛先を鈍らしています。人のこ とはどうでもいいので,あなたがいけないことをした責任をどうとるのかと問 えばいいのです。他の人のしたことについて,あなたがとやかく言う立場では ないと説明すべきです。  いい年をしたそれなりの業務の看板を背負っている大人がこんなことでは, 大人になる途中で育ちをさぼっているとしか思えません。正義感を持ち出す嫌 みな論を展開するつもりはありません。そんな大層なことではなく,世間の常 識のレベルです。後始末をきちんとできない,それはかなり大切な資質の欠落 なのです。不始末とは始めと終わりがだらしないということであり,生き様に も反映してきます。  信頼関係をベースとする社会では,信じてくれることへのお返しはきちんと ケリを付けていくことです。いい加減にしておくと,信頼を失っていきます。 ここまではきちんとし終えたということが,信頼の証になります。子どもであ っても,暮らしの場できちんと後始末ができるように意識させるしつけが求め られます。やりっ放しにして平気な子どもは,基本的なしつけができていない ということです。  ダラダラとテレビを見続け,夜遅くまで起きていて,朝は眠くて起きられな いという生活パターンも,自分の時間という貴重な財産を無駄遣いすることに なります。テレビを消す時間,今日を終えて寝る時間といったケリを付けてい けば,翌朝はすっきりと目覚めることができます。ママとの約束という形で時 間を決め,約束をきちんと守るというしつけを通して,始末をしつけることも 可能です。ただし,子どもが幼いうちは厳しすぎないように!  子育ての場では,「自分のことは自分で」という自立を促すしつけが行われ ます。自分のこと? それは自分の始末です。始末のできることが自立となり ます。子どもは一つずつ始末ができるように育っていきます。手を洗ってタオ ルで拭きます。「手をちゃんと洗った?」。「ハ〜イ」。そこで終わっていま せんか? 手を拭いたタオルが放り出されてはいないでしょうか? おとなし く遊んでいてくれても,部屋中散らかってはいませんか?  ・・・《身の始末ができなければ,社会で不都合な事態を招くことになる》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 育ちを信じ 子を信じ》 ※ある講演を聞く機会がありました。講演を聞くコツは,一つだけ学んで帰る ことです。あれもこれもと欲張ると,結局何一つ覚えることができません。 「遊びとは,不愉快を楽しむことである」と聞き取りました。ゲームを例にす ると,負けるかもしれないというストレスを楽しみます。うまくいかないこと をなんとかできるようになりたいという気持ちが,遊びには内在しています。 簡単にできることは,遊びにはなりません。  遊び心を育てておけば,不愉快なことに遭遇しても,楽しんで向き合うこと ができます。遊びという言葉は不謹慎であるかもしれませんが,楽しむという 処し方全般を遊びと考えることもできるはずです。余裕を持つということも, 心に遊びを持つことになります。子育ての場でいろんな不愉快な思いをするこ とがあるかもしれません。それを真っ向から受け止めずに,楽しむような気持 ちで臨んでみてはいかがでしょうか? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  子育て羅針盤第19版も今号で完結します。次号からは第20版に改まりま す。発刊してから丸5年目を終えようとしています。毎週のお届けを5年間, 我ながらよく続けてきたものと感心しています。それよりも,この地味なマガ ジンを購読してくださっている方に,心よりお礼を申し上げます。読んでいた だけるから,続けることができると思っています。これからもがんばって書き 続けてまいります。  次号からは,「ママお願い,パパお願い・・・」という形式で書く予定にし ています。目先を変えることで,イメージを変えようとしています。発想がど の程度新鮮になるのか分かりませんが,努力してみるつもりです。版を重ねる とき,なるべく前に書いたことを避けようとしていますが,そのことは底をつ くという状況を招き,かなり込み入った話をせざるを得なくなっています。簡 潔明瞭にという初心を思い出すことにします。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【ママお願い! そんなに細々と指図をしないで】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○