□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/07/11]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第249号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『無口で悪い?』  日頃は無口でおとなしく,人づきあいもない。頻発している少年犯罪につい て語られるコメントです。その人間評価は「孤立」という状況を指しているよ うです。社会生活をする上で,人づきあいは大切な要件であることは確かです。 しかしながら,人づきあいの良さだけがいいとは限りません。全くないのでは 支障もありますが,ことさら良くなくても構いません。無口であるといっても, それは相対的なものです。無口であれば友だちができないというのも錯覚です。  無口であっても,笑顔を持てば,友達の輪は広がっていきます。無口で仏頂 面をしていれば,人を受け付けないというメッセージが発信されますが,笑顔 であればいつでも受信可能というサインを出すことになります。コミュニケー ションは受信と発信のペアが揃って成り立ちます。発信ばかりでは混線・干渉 が起こり,コミュニケーションにはなりません。付き合い上手な人は,実は聞 き上手な人の方です。  おとなしいというのも,あまり良い印象が持たれないようですが,そんな評 価をする方がおかしいと気付くべきです。沈着冷静であれば,見た目にはおと なしく見えます。穏やかであれば,おとなしく見えます。おとなしさの陰には, いろんな面が隠されています。もっと温かな気持ちで人間観察できる目を皆で 持ちたいものです。個性とは多様であり,だからこそ人づきあいは面白くなり ます。にぎやかな人ばっかりでは,騒々しいだけで面白くありません。  ところで,無口なおとなしい子どもについて,周りの大人が気をつけるべき ことがあります。無口であっても一向に気にすることはないということです。 自分の性格を否定し悩んでしまうことがあるからです。もう一つは,無口な子 どもの思いや気持ちをしっかりと受け止める耳を持つことです。黙っているか ら分からなかった,そんな繰り言が幾度となく聞かれました。声なき声を聞く, それは身体全体の感性を傾けることで可能になります。  はっきり言いなさい。それでしか聞けないというのでは,あまりに貧困なコ ミュニケーションです。「おはよう」という朝のあいさつの交換からでも,子 どもの気持ちが読めます。食事の様子からでも,いろんなことが読み取れます。 先日の明徳高校の事例では,ホームページにメッセージが発信されていました。 子どもが持っている表現にこちらから近づくという努力も必要です。大人はい つでも言いなさいと待っていますが,待っているだけでは遠い耳になります。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12願★       【パパお願い! 自分でするから手を出さないで!】                               《WHO-02》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○こんなこと・あんなこと!  テーブルの上にお菓子があります。手を伸ばしましたが,届きません。椅子 の上に載ったら届くはず。椅子を引っ張り出そうと背もたれに手をかけて引っ 張ったら,椅子が倒れそうになりました。慌ててパパが立ってきて,お菓子を 掴むと,ワタシに渡そうとします。「パパ,ありがとう」。受け取りながら, つまらないと思うのはどうしてなんでしょう。取ってもらったのはうれしいけ れど,自分でちゃんと取れそうだったのに!  夕べの食事が終わりました。ママが食卓の上を拭くようにとフキンを絞って 渡してくれました。パパは座ってテレビを見ています。ワタシがフキンを広げ て食卓を拭こうとしたら,パパがサッとフキンを取り上げてさっさと拭き上げ てしまいました。せっかく拭こうとしていたのに・・・。ママのお手伝いをし ようと思っていたけど,できなかった。どうしてパパはワタシにさせてくれな いんだろう。ワタシにだって拭くぐらいできるんだから!  近所の公園にパパと出かけました。芝生の横に大きな岩がそびえています。 よそのお兄ちゃんが登っているのを先週見ていたので,登ってみたくなりまし た。しがみついてよじ登ろうとしていると,パパが両脇を抱えてポンと天辺に のせてくれました。「違う,ボクが登るの!」。すぐに降りました。パパはせ っかく登らせてやったのにと怪訝な顔をしていますが,そんなことはボクは知 りません。お兄ちゃんのように登れるか試したかったのに!  積み木で基地を作っていますが,もう少しのところでガラガラと倒れます。 見かねたパパが別の場所でサッサと基地を作ってしまいました。「パパはすご いな」と横目で見ながら,「ボクだってできるもん」。下の方には大きい積み 木を,上の方には小さい積み木を,と教えてくれたらいいのに。ボクがどうし たらいいのか,それが分かりたいんだけど。パパと一つ一つ交代して積み上げ てみたいな!  パパは何でも上手にできる! だから,ボクができないとすぐに何でもやっ てしまいます。できないボクを見ているとイライラして,つい手を出したくな るみたい。ボクだって早くパパのようにできるようになりたい。どうすればい いのかな? 一つ一つ教えてくれたら,ボクはがんばってやってみるけど。こ れからもパパの後を追いかけていくから,パパ,ゆっくりと歩いてね。 ・・・《子どものできない所を肩代わりすると,子どもは自分が見えません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○自分を知る!  自分を知ることは,育つ上でとても大切なことです。子どもは,無茶なこと を平気でしでかします。自分のことを分かっていないからです。自分には何が できて,何ができないか,それは試行錯誤の中でもう一人の自分が判断するこ とですが,もう一人の自分は遅れて産まれてくるからです。子どもを育てると は,自分をちゃんと分かっているもう一人の子どもを育てることです。ややこ しい話で分かりにくいですね。別の説明をしてみましょう。  パパやママが,「しんちゃんはいい子だね」と言ってやると,もう一人のし んちゃんが「しんちゃんはいい子」とそのままの言葉を覚えます。その言葉は, 自分を他者が見ている言葉です。丸ごと言葉を覚えることで,自分を他者の目 で見る立場に立ちます。そこにもう一人の自分がすんなりと入り込むことがで きます。もう一人の子どもはパパやママの立場を真似することで,自分を客観 的に見つめることができるようになります。  保育園の子どもたちが,先生に引率されて園の外に出かけることがあります。 道すがら子どもたちはあっちこっちに興味を示し,並んで歩いている列はグラ グラと揺れ動きます。自分はどこに向かおうとしているのかという,もう一人 の自分のコントロールが全く効いていません。先生は「自分勝手に動かないで」 と大声で注意をしています。先生と同じ立場で自分を動かすのはもう一人の子 どもの役割ですが,そのもう一人の子どもがまだ未熟なのです。  子ども集団にスルッととけ込めない子どもがいます。だからといって,拒否 しているわけではありません。離れたところからじっと見ています。「そんな に気になるのなら,サッサと入り込めばいいのに」と背中を押し出してやりた くなり,じれったい思いをさせられます。集団の中の子どもが何をどうしてい るか,もう一人の子どもが見極めて,自分だったらどうするか,同じようにで きるか,シミュレーションをしています。準備が終われば,入っていけます。  もう一人の自分が育ってくると,自意識が出てきます。自尊心は,自分を大 切な存在だともう一人の自分が慈しむことです。もしも,もう一人の自分の目 に確信が持てないとき,人の目が気になり,自尊心は不安定になります。先の ことですが,思春期の動揺は,もう一人の自分が子どもから大人へ脱皮すると きのバージョンアップの過程で現れます。もっと大きな価値,社会的な価値と いう基準で自分という存在を再確認できるもう一人の自分になろうとする脱皮 と考えることができます。 ・・・《もう一人の自分が自分を知れば,対人関係の育ちが順調に進みます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 親の目子の目 重ね合い》 ※前号と合わせた二つの号では,「誰が育つのか」という課題を考えています。 単純に「子どもが育つ」と思っていると,子育てが脇道に逸れやすくなります。 そこで,「もう一人の子どもが育つ」という見方をしてはどうでしょうか,と いう提案をしています。あまり聞き慣れない話になっていると思いますが,子 育ちということを考える上では効果的であるはずです。「もう一人の子ども」 は抽象的には自我と思っていただいても構いません。  我を忘れるという言葉があります。忘れるのは誰かという問をすれば,自分 ですと答えるしかありません。忘れられる自分と忘れる自分の二人の自分が居 ます。二人の自分を区別するために,忘れる自分をもう一人の自分と呼ぶこと にしています。この言い方を踏襲すれば,自信とはもう一人の自分が自分の能 力を信じることと説明できます。日本語は主語を省くことが通常なので,そこ を再確認できたらと考えています。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  日照りの後は雨模様。兎角この世はままならないものですね。気象庁は気象 をコントロールする役所ではないのかと思います。他の省庁は計画を立てて予 算を取り実践しているのに,気象庁は自分では何もしていません。単なる予想 をしているだけで,外れたとしても責任は一切取りません。信じた方が悪かっ たというのでしょうか。従兄と電話でそんな他愛のない戯れ言を交わしました。  人権問題啓発強調月間です。社会を明るくする運動の啓発も行われています。 駅前で啓発のビラと物品を利用者に配る役回りを果たしました。若い娘さんは あいさつも受け取りも完全に無視する方が多いように感じました。そんなに毛 嫌いしなくてもと思ったりしますが,隙のない装いの中に妙な異物を持ち込ま れては困るのかもしれません。人生いろいろ,男もいろいろ,女もいろいろ。 出会いもいろいろです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【ママお願い! そんなに怖い目でにらまないで!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○