□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/08/22]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第255号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■               『就業?』  ニート(NEET)問題という言葉がここ数年社会事象として語られるよう になりました。NEETとは,Not in Employment, Education or Training の略で,職探しも進学も職業訓練もしていない若年無業者の意味です。成人後 の若者の特徴なので,子育て真っ最中の親にとっては直接には関係ないことと して見過ごしておられることでしょう。しかしながら,子育て環境の大きな変 動のうねりは,若者が育ってきたままに,今の子どもたちにまでつながってい るのです。  ニートの手前にはフリーターという姿があります。一言でいえば,きちんと した就業に馴染めない若者たちということです。大人になることは社会的役割 を担うことであると考えると,この傾向はかなり深刻に受け止められます。社 会の動きに流されない子育てをすることが親の役割であると考えると,自分の 意図が及ぶ範囲にいる我が子に対してはそれなりの手立てを講じてやらなけれ ばなりません。どんなことに気をつけたらいいのか考えてみましょう。  内閣府が発表した「青少年の現状と施策」(2005年)に載せられている「青 少年の社会的自立に関する意識調査」を見ておきましょう。調査対象は15〜 29歳の青少年とその親でした。青少年の就労意識は,「希望の仕事があれば 働きたい」が52.9%,「希望と違う仕事であっても働きたい」は24.3%にとど まっています。一方,親の方は「多少希望と違う仕事であっても働いて欲しい」 が52.9%で,「希望の仕事があれば働いてほしい」の23.9%を上まわっていま す。  青少年についてはさらに,「働いても働かなくてもどちらでもよい」20.9%, 「働きたくない」5.4%で,4人に1人が就労に否定的です。働かないが金は欲 しいという気だけはあって,女性やお年寄りに牙を剥くという卑劣な構図が現 れています。豊かな社会を享受することだけを学び,豊かな社会を担うという 気概を持ち合わせていないようです。「苦あれば楽あり」という道理を教えて こなかった親の無作為のツケが若者に覆い被さっているのです。  働くというのは自分のためにするのではない労働です。お金はおねだりして 貰うもの,強奪するものと思ってしまうと不幸しか得られなくなります。わざ わざ事を仕えるのが仕事,その感謝として真っ当な報酬が手に入ります。仕事 に自分の希望を持ち込むというのが無理です。仕事は他人を喜ばせるためにす ることです。その社会的な原則を,家庭にいる子どもへのしつけに取り込んで おくように心掛けることが手始めです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12願★      【パパお願い! 手伝わずに寝てばかりいないで!】                            《V20:WHAT-02》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○こんなこと・あんなこと!  夕食の後です。ワタシは食器を流し台に持っていきます。ママが台所で洗い 物をしています。パパはパソコンの前に座っています。「パパ,何をしてるの ?」,「ネット検索」。「お仕事?」,「じゃあないけど」。「パパはお家の お仕事はしないでいいの?」,「どうして?」。「ママはいつも忙しくしてい るのに,パパは暇みたいだから」,「・・・」。ワタシはママに「お手伝いを して」って言われるけど,パパはなんにも言われないのはどうして?  「オモチャを片付けてね」,「ハ〜イ」。日曜日の朝はお掃除です。ママは お部屋に掃除機をかけています。パパは遅く起きてきて,パジャマのままでテ レビの前でゴロゴロしています。ボクが「パパはまだパジャマのままだよ」と 言うと,「いいの,パパはお仕事で疲れているんだから,日曜日はゆっくりし てていいの」って,ママは言うじゃない! そう言いながらママの目はボクを 叱るときの目とおなじような気がするんだけど!  ママがお庭で枯れた花を抜いたり草取りをしています。買ってきた花の苗と 植え替えるためです。ワタシは抜かれた草を集めて両手で抱えて,庭の隅まで 運んで片付けてあげました。パパはリビングで新聞を広げています。パパはお 花には関心がないみたいです。ママが小さなスコップで穴を掘って苗を植え込 んでいきます。時々手を休めて汗を拭いているママを見ていると,パパが手伝 ってくれたらママもうれしいのにと思います。  パパの車でスーパーマーケットに買い物に行きました。ママと二人で店内に 入りました。パパは車の中でシートを倒してお留守番です。ママとカゴ一杯に 買い物をし,レジを済ませて,袋に詰めていきます。小さい袋は軽いのでボク が持ちます。ママは大きな重たい袋を両手に持っています。重たそうだけどボ クは持ってあげられない。パパだったらヒョイと持てるはずなのに。パパ,手 伝ってあげてよ。  パパと近くの公園に出かけました。ママが「パパにお外で遊ぼうと言ってお いで」と言うので,パパを誘ってお出かけです。「どこに行こうか?」とパパ が聞くので,「公園」と答えて引っ張ってきました。公園に着くと「パパはこ こにいるから,遊んでおいで」と言いながら,木陰の芝生に座り込んでしまい ます。ボクはパパと遊びに来たんだけど? いろんな遊びを教えてもらえると 楽しみにしているのに? 育ちを手伝って! ・・・《賃仕事しかしない甘えは,家庭を買っているという妄想を生みます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○教育力!  家庭の教育力が低下していると言われています。そんなことを言われても, 当事者である親は戸惑うばかりです。何が足りないのか,誰も言ってはくれな いからです。はじめての子どもの世話に追いまくられて,毎日があっという間 に過ぎていきます。これ以上何をすればいいのでしょうか? ちゃんと育てな くてはと思っていても,ちっとも言うことを聞いてくれません。ひっぱたいて も言うことを聞かせるということではないようです。  子どもは親に似て育っていきます。学ぶという行為は真似ることです。子ど もは親の言うようにはせずに,親がするようにします。子どもの振る舞いの中 に連れ合いの姿が見えることがあります。家庭環境が子育ちを導いているとい うことです。家庭の教育力の低下とは,家庭生活が教育的に不十分になってい ると考えればいいでしょう。例えば,親しき仲にも礼儀ありと言われているよ うに,親夫婦が人間関係の見本になっているかどうかです。  家庭は基本的な社会です。家庭の中で子どもは社会のままごとをしているよ うなものです。直接に子どもにあれこれしつけをするのではなく,親自身の暮 らしぶりに心配りをしていればいいのです。ちゃんとした大人であるパパも, 家庭ではママに甘えることがあります。そこで,ママに何かをしてもらったら, 「ありがとう」とちゃんと言います。世間ではそれが当たり前なのです。家族 だからと手抜きをしていると,子どもはそれが当たり前と勘違いをします。  けじめということも忘れてはいけません。親と子どもの間には,けじめがあ ります。夜更かし型になった大人とは違って,子どもは早寝早起きのリズムに しつけます。子どもは早く寝るというけじめです。食事の美食も子どもは控え めにするけじめがあります。美食は成長の妨げになるからです。子どもが日常 的に一番美食をしているようでは心身共に健康とは言えません。また欲しいも のを手に入れるためには親にねだるだけではなく,どこかで我慢するというけ じめも大事です。  家庭生活に巻き込むということも必要です。幼い頃にする決まったお手伝い といったしつけは,家族みんなの生活に関わっていく入口です。勉強していれ ばいいといった風に生活から隔離するような仕打ちは,子どもの社会観を枯れ させるだけです。社会とどう関わって自分の役割を獲得するか,それが自立し て生きるということだからです。家族の中でどのような役割を果たしているか, その体験を価値観として大人になることができるのです。 ・・・《家庭が小さな社会として機能するとき,子どもに教育力が働きます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 親の姿が 教材に》 ※子どもに名前を付けるとき,育って欲しい子どもの姿を思い描いて字を選ん だはずです。優しい子どもにと願えば"優",人に好かれる子どもにと願えば "和"などとあれやこれや楽しい迷いがあります。ところで,「子の名前 付け たようには 育たない」という川柳があるように,現実はずれていくものです が,それでも親は育って欲しい目標に追い風となるような支えをするものです。  親が子どもに影響を及ぼす所は家庭しかありません。こんな風に育って欲し いという目標を子どもの前で演じて見せることです。最初は演じていますが, 子どもの育ちとともに演技ではなく自然の姿になります。子どもとともに育つ というのはそういうことです。親が子どもへの願いにつられていつの間にか変 わるのです。その親の姿が下書きになって子どもの育ちが進んでいきます。親 は後ろ姿に気をつけましょう。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  私の町では隔年で「青少年の翼」という育成事業が実施されています。経験 者のお兄さん,お姉さんがリーダーとなって主に中学生がアメリカのオレゴン 州に出かけています。日程は5泊7日で,定員30名,負担金は85,000 円です。今年は31名の団員が19日に出発しました。女子が21名,男子が 10名という割合ですが,その他の行事でも同じ割合が見られ,どうも女子の 方がいろんなことに積極的です。  ところで,翼と隔年交代で「少年の船」という事業が行われています。かつ て沖縄に行っていた頃,小学生の団員がガラスビンに手紙を入れて海に流した ことがありました。そのビンが太平洋を一年かかって渡り,オレゴン州の人に 拾われて,それ以来翼の行き先がオレゴン州になって交流をするようになりま した。子どもたちは今どのような経験をしているのでしょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【ママお願い! お家のことをいやいやしないで!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○