何故、CDは売れなくなってきているのか? 其の@
ここ数年、音楽制作自体が急速に変わってきています。

とうとう”テープレス”の時代に突入したな・・・というのが、率直な感想です。

10年ほど前に、ある人(音楽関連の仕事とは無縁の人)と話していた時に、「まだテープに録音しているの?」と言われた事を、今でも鮮明に覚えています。

その人は、レコーディング・システムや音楽制作に関して、全く知識の無い人なのですが、素朴な疑問として思ったそうです。

10年ほど前、ハードディスク・レコーダー(以下、HDR)は勿論存在していましたが、なにしろ1曲分の長さのマルチ録音をする事なんて想像も付きませんでした。

マスタリング編集用として、ソニックやサディが出てきた頃です。

あくまでも”編集用”としてのHDRでした。

その頃は、「音質がどうだこうだ」と、部署の先輩や同僚と話していたんですから・・・。(笑)

テープからHDRへの移行は、かなり急速な勢いで変化しました。

この急速なHDRへの移行は、音楽制作の方法が変わった事と比例しています。

制作費の中で、一番掛かるのがスタジオ使用料金です。

そこをカット出来れば、かなり低予算で制作していく事が可能です。

どのようにしてスタジオ料金を下げればよいか・・・というよりは、いかにスタジオを使わないで済むか?という所に新たな方法が見付ったというのが正直な所でしょう。

HDRを、アレンジャーやエンジニア等、個人で持つようになったので、スタジオを使用しないでも作業を進めていく事は十分可能になりました。

ヴォーカルの録音でスタジオを利用するくらいで、後は、自宅で作業・・・なんてセッションも多いですね。(私は受けていませんが・・・。)

HDRのシステムも急速に進化していまして、音質も全く気になりません。

”音”を”データ”として扱っているのが普通です。

もはや”テープ録音の時代の終焉”を感じていますね。

ここから先・・・実は今回の本題、”何故、CDが売れなくなってきているのか?”という所に(強引に)繋がります。

ネタ切れ防止の為に、この続きは次回に・・・。(笑)


イメージ・トレーニング
今回は、エンジニア的観点というよりは、プロデュース的観点から話しを進めていきたいと思います。

私がプロデューサーとしてヴォーカル録音をする際に、アーティストに対して常に言っている事があります。

それは、『最終系をイメージするように』という事です。

これはどういう事かと言いますと、ヴォーカル録音をする数日前に、唄う曲の仮カラオケを貰い、それを聴きながら、自分の声が入っている状態をイメージさせます。

つまり、CDになった状態をイメージするようにさせています。

アーティストのみならず、スポーツ選手等でもよく使う方法だと思いますが、いわゆる”イメージ・トレーニング”です。

自分でイメージした状態が、その人にとって一番ベストな状態である事は、疑う余地がありません。

一度イメージが固まったら、その後は、一切カラオケ(唄う曲)を聴かせないようにしています。

イメージが既に出来上がっているのに、それから更に何度も聴いてしまうと、色々と考え込んでしまって最初に出来たイメージが崩れてしまい、結果はつまらないものになってしまいます。

何事もそうですが、”最初に出来たイメージが一番良い”という事ですね。

そうして、数日後に本番のヴォーカル録音に入るのですが、この時点では技術的な事は一切言いません。

この期に及んで技術的な事をアドバイスしても、それは良い結果をもたらす事はありませんし、アーティストのベストな状態を引き出す事も出来ません。

こちらとしては、いかに早い時間でアーティストのベストな状態を引き出し、そしてイメージしてきたものを引き出すか・・・それだけを考えています。

それとアーティストに対して一番言っている事・・・。

それは、『唄うのではなく、詞に込められた世界を伝えるという意識で望み、イメージしてきたものを聴かせてくれればそれで良い。』という事です。

本番になると、『少しでも上手く唄いたい』・・・という気持ちも分かりますが、上手く唄おうとすればするほど、よい結果は出ません。

オーディションをしていて、一番感じる事はその辺の事なのですが、上手いだけの人だったら沢山居ます。

自分の声で、聴いている人にメッセージを伝えられないと、プロとして活動してしていけないと思います。

私が常日頃言っている、『人間の声に勝る楽器は無い』という事は、こういう意味を含んでいます。

上手くても、下手でも関係ありません。

要は、伝えられるかどうか・・・という事です。

ちょいと脱線してしまいましたが、この続きは近い内に・・・???


コンプレッサー/リミッターについて
今回は、コンプレッサー(以下コンプ)/リミッターについて説明します。

基本的にコンプとリミッターは同一の機材ですが、圧縮比(Ratio)の値により呼び方が変わります。

1.5:1〜5:1までがコンプで6:1以上がリミッターです。

だからといって使い分けている訳ではありませんが、ここでは<コンプ=リミッター>と思って頂いて結構です。

現在のレコーディングにおいて、コンプ/リミッターというのは非常に使用頻度の高い重要な機材の一つです。

巷でよく耳にする曲は、全てにおいてコンプが掛かっていると言っても良いでしょう。

私もレコーディング時には色々な用途で使用しています。

まず最初に、コンプとは「音圧を変えずに、音量を変化させる機材」の事を言います。

レベル差の激しい楽器の録音をする場合、コンプを使用しないで録音すると、基準となるレベルを見つけるのが非常に困難です。

ある程度レベルを決めても、サビに突入したらレベルが上がってメーターが振り切れてしまい、ベストな状態で録音が出来ません。

しかし、そういう時にコンプを使用すれば、ピーク時のレベルを押さえて、ある程度バランスの取れたレベルで録音する事が出来ます。

使用方法は人それぞれです。

私の場合を例に取りますと、楽器にもよりますが、録音時にコンプを使用する時は、基本的にはピークを軽く押さえる程度に掛けます。

多少のレベル差は、ミックス・ダウンの時に補正出来ます。

後処理の事を考えると、軽く掛けた方がベストであると自分では判断しています。

コンプの場合、録音時に深く掛けてしまうと、後でもう少し軽く掛かった感じにして欲しいと言われても出来ません。


聴覚と視覚について

「今聞こえる曲の感じは赤色のように感じるので、もう少し、黄色っぽい感じを出して欲しい・・・。」

いきなりですが、曲(又は音)をこうして、色で表現した事があるでしょうか?

私は、そう言われた事があって(今でもあるけど・・・。)最初はどう表現したらよいか分かりませんでした。

当たり前の事ですが、音は耳で聞くものであって、目で見る事は出来ません。

しかし曲を聴いていて、情景が思い浮んだりした事は誰でもあると思います。

ミックスをしていて、殆どの人が具体的に物事を言ってきます。(例えば、ボーカルのレベルをもう少し上げて欲しい・・・とか。)

私としては言われた通りにすれば良いので簡単なのですが、色で表現されると、それはそれは楽しいですね。

相手にとっての「赤」と自分にとっての「赤」のイメージは勿論違います。

今聴いている感じの何処が「赤」に感じるのかな?と、まずそこから考えて、相手と自分の中にある「赤」のイメージのギャップを埋めていき、どうすれば黄色っぽい感じが出るか?等、色々と思考錯誤の連続です。

色だけでなくイメージで物事を言われると、こちらとしても色々なアイデアが浮かんでくるので、やっていて張り合いがあります。

一つのアイデアを10倍にも、100倍にもする感性がそこで必要になってきます。

エンジニアは技術職ですが、芸術性を持ち合わせてないと出来ない職業でもあると思います。



ジャズのレコーディングについて
今回はジャズのレコーディングについて説明していきます。

ジャズのレコーディングに関しては、ポップスやロック等のレコーディングに比べて少し違う方法で進めていきます。

音を録音する事には変わりないのですが、基本的にジャズは同時録音(同録)で行います。

ですからマルチ・テープを使用せずに、2chで録音する事が多いです。

エンジニア・サイドもきちっとした音作りをその場でしないといけませんし、プレイヤー・サイドも演奏ミスは許されません。(しかし、演奏ミスが良い意味で"味"になる事も有ります。)

お互いに気持ちの良い緊張感を持ちながら、セッションに臨む事が出来ます。

数テイク録音して、その中から一番良いテイクを選びますが、中にはテープを編集して一つのテイクに纏める事も有ります。

ポップスやロックと違い、決められた譜面等有りません。有るとしたらテーマの部分の譜面だけです。

後はお互いのソロパートですからね。

同時で録音していかなければ、一体どういう曲なのか分かりません。

昔或る雑誌で読んだ事があるのですが、「ジャズに名演はあっても、名盤は無い。」という言葉は、或る意味非常に的を得た言葉だと思います。


ハードディスク・レコーディングについて

今回はハードディスク・レコーディングについて説明していきます。

ここ1,2年の間に、急速にハードディスク・レコーディングの割合が増えてきました。

ハードディスク・レコーディング専用のスタジオも増えてきています。

特にアメリカでは、テープ・レコーダーの主流が今だアナログの24chテープ・レコーダーなので、ハードディスクでのレコーディングは必要不可欠になってきています。

日本では、スタジオで常駐している所も増えてきていますが、プロデューサーやエンジニアが仕事場に持ち運んで行くケースも多々あります。

今や、主流のレコーディング・システムになりつつあります。(でもテープレスになることは決して無いと思いますが・・・。)

ハードディスク・レコーディングの利点は、コストパフォーマンスを下げられる、細かい直しが敏速かつ正確に短時間で出来る等があげられます。

打ち込み等は、わざわざスタジオを借りる事無く、自宅に機材さえあれば簡単に出来てしまいます。

唄の直しも、今までは手作業で煮詰めながらやっていましたが、ハードディスク・レコーディングだとマウスをクリックするだけ?ですしね。

しかし便利になればなるほど、周りのスタッフが何でも出来てしまうと思う事が実は怖かったりします。

機械に頼ってしまうと、向上心(演奏や唄等)がなくなってしまうかな?なんて思う事もあります。



一人多重録音について

今回は一人多重録音について説明します。

最近というわけでも有りませんが、一人で全ての楽器を演奏するアーティストは増えてきました。

素朴な疑問として、アーティストが一人なのに、どうして全部自分で演奏出来るのか?不思議に思いませんか?

僕は学生の頃良くそのような疑問を抱いていました。

バンドでもそうです。

ギタリストが一人だけなのに、色々なギターの音が聞こえたり、コーラスで一人の声が沢山聞こえたり・・・。

不思議でしたね。

これはマルチ録音という方法があって、それでその様な事が可能なのです。

マルチ録音に関しては前に説明しましたが、今回は具体的な例を挙げて説明していきます。

まず最初にラフな形でリズムトラック(ドラムス、ベース、ギター、ピアノ、パーカッション等)の録音を打ち込み(シンセサイザー)で行います。

その後にメロ関係(仮唄や仮メロ)の録音をします。

こうして最初にデモ・トラックを作成して、曲の感じやサイズを掴むのです。

この作業をしないとどんな曲なのか分からないし、何よりもガイドとなる物が無いと演奏出来ませんしね。

そしてこうした作業が終了したら演奏していきます。

最初はドラムスから始め、ベース、ギター、ピアノといった順番(勿論、人によって違います。)に録音していきます。

この時に注意する点は、パーカッションやドラムのループはシンセの音源をそのまま使用するという事がよく有ります。

シンセで打ち込んでいるので、リズムは完全に合っています。

これは一人多重録音にだけの事ではないのですが、生リズムの録音をすると100%に近い確立でリズムが揺れます。

ですから演奏する側の人は、シンセで最初に打ち込んで、それをそのまま使用する音にはきちんと合わせないといけません。

この辺の事を気になる人は、非常に注意を払って演奏しています。

しかし、人間が演奏している以上、リズムが揺れるのは当然の事ですし、演奏に乗ってきて、それでリズムが揺れるのは僕はかっこいいと思っているのですが、この辺は人それぞれですね。

多少リズムが揺れているけど、演奏がかっこよければOK!!とはなかなかいきませんね・・・。

プレイヤー側は気になって直したりしますが、そうするとこじんまりとして、演奏に勢いが無くなってしまう事が多々有ります。

ちょっいと脱線してしまいましたが・・・。

一人多重録音は演奏する側にとっては非常に大変だと思います。

全ての楽器を演奏するわけですからね。時間も掛かりますし、集中力も必要とします。

でもその分、自分の納得がいくまでする事が出来ます。

エンジニア・サイドも時間を掛けて音作りに没頭出来ますし、実験的な事も可能です。

普段出来ないような事を試したりします。

それが採用されたりする事が結構多いですね。

アーティストと二人三脚で制作してるという気になります。

今後、そのようなアーティストがもっと出てきて欲しいと思いますね。



リミックスについて

今回はBBSで質問の有った、リミックスについて説明します。

リミックスとは何か?

色々なパターンが有るのですが、マルチ・テープに入っているオリジナル曲の音素材を、手を加えずにミックス・ダウンのみする場合もあれば、音素材を幾つか抜いたり、足したりしてミックスする場合も有ります。

後はメロディーだけ一緒で、全ての音素材を録音し直す事もしますね。

この場合、どれもリミックスになります。つまり、リミックスとは既存する曲にもう一度手を加える事をいいます。

オリジナル曲と少しでも代わっていたら、それはリミックスになるのです。

リミックス集のレコード会社的内部事情はここでは避けますが、エンジニアとしても実験的な事に色々と挑戦できる機会なので、リミックスのレコーディング・セッションは楽しいし、気楽に?取り組めます。

オリジナル曲とは違い、遊びの要素が大きい(重要ともいう。)のがリミックスだったりします。

勿論、オリジナル曲でも遊びの要素は沢山有ります。

同じ事なのですが、リマスタリングという作業も有ります。

使用してる曲はオリジナルで、マスタリングのみやり直す事をいいます。

特にCDが発売された頃の作品は、マスタリングの状況もあまり良くなかったので、数年後にマスタリングのみやり直して発売してる作品も多いですね。

有名な所では、レッド・ツェッペリンの「REMASTER」という作品が有りますが、これはアルバム・タイトル通り、マスタリングをやり直したのです。

始めてレッド・ツェッペリンの作品がCD化された時のサウンドは、「あまりの凄さにコメントを差し控えさせてもらいます・・・。」という感じですね。

でも当時は「お〜〜すげ〜〜」なんて思っていたのです。



エンジニアにとってのスピーカー

今回はエンジニアにとってのスピーカーについて説明していきます。

音の出口であるスピーカーは、エンジニアにとって非常に重要な機材です。

それで聞こえてくる全ての音を判断する訳ですからね。

基本的にレコーディング・スタジオにはラージ・スピーカーとスモール・スピーカーの2種類のスピーカーが用意されています。

ラージ・スピーカーはスタジオの壁に埋まっているスピーカーの事をいいます。

勿論、埋まっていないスピーカーもありますが、それはスタジオの構造上の問題等があって、台の上に置いてあるスピーカーも有ります。

スモール・スピーカーはコンソールの上に置いてあるスピーカーの事をいいます。

「YAMAHA−10M」というスピーカーを殆どのスタジオで使用しています。

勿論、このスピーカー以外を用意してあるスタジオも有ります。

スピーカーの種類、用途はエンジニアによって違います。

スタジオで用意してあるスピーカーを使う人も勿論居ますが、自分のスピーカーを持ち込んで使用している人もいます。

私はマイ・スピーカーを持ち込んで使用しています。

個人的に録音機材の中で、スピーカーは一番こだわっている機材です。

スピーカーから出てきた音で全てを判断しますから、自分としても納得のいく機材で無いと困ります。

スピーカー選びで一番重要なことは(個人的意見)、ダイナミクス・レンジ(再生可聴範囲)でしょうか。

ダイナミクス・レンジを広く作っているつもりでも、再生されてないと判りませんからね。

スタジオでは同じスピーカーでも周辺機材(コンソールやアンプ等)の関係で違う聞こえ方をします。

私が使用しているスピーカーはアンプ内臓スピーカーなので、スピーカーのキャラクターを理解すれば何処に行っても迷う事は有りません。

スピーカーに関してはエンジニアによって考え方が違うので、全てに当てはまるという事では有りません。

これはあくまでも個人的意見です。



エンジニア精神論

今回はエンジニアの精神論について書いていこうと思います。

NO,15で書いた「レコーディング・エンジニアについて」とだぶってしまう個所があるかもしれませんがご勘弁下さいませ。

現在エンジニア(アシスタント・エンジニアも含む)として活動している人で、しょうがなくこの仕事を選んだという人はまず居ないと言って良いでしょう。

皆、エンジニアを目指して選んだ道だと思います。

ミュージシャンになりたいのだが、実力的に無理なのでエンジニアを選んだ、という人がたまにいます。

でもそういう人は100%脱落していきます。

それ程険しい道のりなのです。

セッションをしていてエンジニアはスタジオ内で中心的存在です。

全ての音に責任を持たなければいけません。

プロデューサー、ディレクター、ミュージシャンの意見をスピーカーから答えを出さないといけません。

口で言った所でなんの解決もしないのです。

かといって言われた通りにするだけではエンジニアは勤まりません。

1つのアイディアを10,20にするくらいの感性が必要です。

TDをしている時には最初の数時間は自分の世界でミックスをしていきます。

録音している時に思い浮んだアイディアを色々と試しながら進めていきます。

そこである程度聴かせられる状況になったら一度聴いてもらいます。

そこで他の人から色々な意見が出てきます。

それをそのままするのも良いですが、アイディアを膨らまそうとチャレンジしてみます。

しかし、大体ボツになる事が多いのですが・・・。

エンジニアもある意味サービス業なので、時には自分の主張を抑えなければいけない時があります。

しかし誰にも気付かないように、自分の主張を入れてしまう事もたま〜〜にします。

エンジニアって側から見るとかっこいい!と思われていますが、実際は地味〜〜な事ばかりしているのですよ。

でも好きだからやってられるのでしょうね。

セッション中は苦しい?想い出ばかりですが、自分の手がけた作品がテレビやラジオから流れてきたら、それはそれは嬉しいですね。

今までやってきた事が初めて報われたような気がします。

将来エンジニアを目指している人に向けてこれだけは必要!という条件は・・・「とにかく音楽が好き!!」ですね。

これさえあれば他は必要ありません。

このHPを見て、エンジニアを目指そう!と思った人が今後出て来たら嬉しいですね。



デモ・テープについて

今回はデモテープについて説明します。

最近デモテープを聴く機会が多いのですが、皆さん非常にクォリティーの高い素晴らしいデ・モテープを作っていて、見習いたいとよく思います。

その理由にアマチュア用(半民製機)の録音機材が安い値段で良い物が手に入るようになりました。

僕らが見てもびっくりするような物が沢山あります。

そのままCDにしても問題無い作品もありますね。

かなり凝ったデモテープも多いですが、個人的には凝ったデモテープよりかは制作者の勢いとか、その辺を重要視して聴いています。

よくありがちなのは、デモテープは能天気(良い意味で)で勢いがあってかっこいいのですが、いざレコーディングに入るとこじんまりとしてしまう事が結構あります。

本番で緊張しているのでしょうが、デモテープの明るいのりをそのまま反映してもらいたいですね。

ですから自宅で作っている時も何も考えず、その場の「ノリ」をテープに吹き込んで下さい。

その方が絶対に聴く側に伝わります。



ピアノの録音について

今回はピアノの録音について説明します。

まずピアノという楽器ですが、非常にレンジが広くマイクのセッティングの仕方で聞こえ方が全く違います。

使用するマイクはコンデンサ・タイプのマイクを使用しますが、ピアノの種類によって変わってきます。

ピアノのマイクセッティングに関してですが、基本的にはピアノの蓋を開て、若干離れた位置にマイクを2本使用します。

あまり直接的な音を狙うので無く、間接的に響いてきた音を狙うようにして録音します。

劇伴等ではピアノのマイクに他の楽器の音が被ってしまう事があるので、その時にはふたを少しだけ開いて中に入れてマイクをセッティングします。

個人的に音が被る事自体気にしないのですが、ピアノだけは他の楽器の音が被ってしまうと後の処理が非常に大変なので極力被らないようにします。

ピアノのオフマイクに関してですが、個人的にはあまり立てません。

クラシックの録音やピアノをメインとしたアレンジの曲の時くらいですね。



マスタリングについて

今回はマスタリングについて説明します。

マスタリングとは、トラック・ダウン(ミックス・ダウン、以下TD)で作ったマスターテープ(アナログ、デジタル両方)をCDにする為に行う最終の作業です。

マスタリング時に作ったマスターテープをCDプレス工場に送って、そこで初めてCDになって皆さんの聴けるような状態になるのです。

マスタリングで使用されるテープは3/4インチのデジタル・テープ(通称、弁当箱)です。

このテープは映像用で主に使用されているテープなのですが、音声トラックしか使われていません。

つまり映像トラックは全く使われていないのです。

テープ幅のほんの数ミリしか使っていません。

マスタリングでどのような事をするかといいますと、曲順に並び替えたり、曲間を決めたり、全体的な質感(音質)を揃えたりします。

TD時にこのような作業はしません。

マスタリングはきちんとマスタリング・エンジニアがいるので、レコーディング・エンジニアがマスタリングを行う事は殆どありません。

たま〜〜にレコーディング・エンジニアがマスタリングをする事もあります。

個人的には第3者の意見を重要視したいので、マスタリング時には全く何も言いません。

もうおまかせ状態です。

同じ曲を何度も何度も聴いているので、普通の精神状態で聴く事が出来ないし、仮に自分でマスタリングしても、きっと良い状態で作業を進める事が出来ないでしょう。

レコーディングも重要ですが、マスタリングでも作品の出来を左右してしまうので極めて重要な作業なのです。



アシスタント・エンジニアについて

今回はアシスタント・エンジニアについて説明します。

レコーディングでは技術スタッフが基本的に2人しかいません。

レコーディング(ミキシング)・エンジニアとアシスタント・エンジニアです。

テレビは沢山の技術スタッフがいますが、レコーディングは少数で作業を進めていきます。

少ない分、やるべき事は沢山あります。

アシスタント・エンジニアの役割ですが、セッティング(例えばマイクのセッティングとか、コンソール周りのセッティング)、テープ・レコーダーのオペレート等があります。

セッティングやオペレートはアシスタント・エンジニアにとって当然の作業なので、さほど大きな重要点ではありません。

では何が重要か?

アシスタント・エンジニアにとって一番重要な事は、セッションの流れを作る事です。

これが出来るか出来ないかでセッション自体が大きく変わってきます。

セッションの流れを作れるアシスタント・エンジニアは作業もてきぱきと無駄なく進められるし、周りの状況もしっかりと判断出来ています。

そうするとエンジニア、ディレクター、ミュージシャンからも信頼されるようになります。

作業効率も非常に上がりますね。

逆にセッションの流れを作れないという事はミスも多いし、周りの状況判断も出来ていませんね。

そうすると周りのスタッフからも信頼されません。

どうしたらセッションの流れを作れるようになるか?これは経験を積むしかありません。

教えて出来るようになるものでもないし、本人に向上心が無いと気づかないでしょう。

テープ・レコーダーのオペレートが出来るだけの人は、何処のスタジオも必要無いと思います。

特に貸しスタジオにとってアシスタント・エンジニアはそのスタジオの顔ですからね。

スタジオを使用する側の人達からすれば、アシスタント・エンジニアでスタジオを選ぶ人も少なくありません。

現在アシスタント・エンジニアで頑張っている人達は、技術以外の何かを見つけられるよう頑張ってもらいたいと思います。



レコーディング・エンジニアについて

今回は少し視点を変えて、レコーディング・エンジニアについて説明します。

今、アシスタント・エンジニアとして頑張っている人、又は将来、レコーディング・エンジニアを目指している人が、全てレコーディング・エンジニアになれるとは限りません。

正直言って厳しい世界だし狭き門です。

まず学校を卒業して、スタジオ関係の仕事につける人は非常に少ないです。

スタジオを希望する人の数とスタジオの数があまりにも違います。

スタジオサイドも数人採用して、半年くらいの間研修期間として雇うので、そこで何人かふるいにかけられます。

スタジオに就職したからといって、いきなりセッションには参加出来ません。

最初はお茶くみや電話番が主な仕事です。

ここで嫌になって辞めていく人が多いですね。

10時に出社して、帰りは終電で帰るという日が何日も続きます。(その日に帰れるのはまだ良い方です。)

私のついていた所は、最初に就職したスタジオが非常に小さいスタジオだった為、入った3日後にはセッションについていました。

右も左もわからない状況でアシスタント・エンジニアとしてデビューしたのです。

最初は今思い出しても悲惨なくらいあほあほでした。

パンチ・インは当然のごとく間違えるし、そんな事を何度も続けると、エンジニアの人が灰皿やリモコンを投げ、ミュージシャンには怒鳴られるし・・・。

今となっては良い経験ですが、当時は泣きそうでした。

そんなこんなで半年くらい経ち、運が良い事に正式にスタジオの一員になりました。

その頃には結構???まともになってきたのです。

そして、一年後に自分としては大きな編成の録音がしたいという欲望にかられて、キング・レコードの試験を受けたのです。

だめもとで受けたら受かってしまい、晴れてキング・レコード録音部の一員になりました。

そうこうしてるうちに、「このままではいけない・・・。」な〜んてまた思ってしまい退社しました。

退社後NYへ修行の旅に出ました。

これが私の中で転機となった出来事です。

エンジニアとしての考え方、将来自分のなるべき姿をNYで学んできました。

日本にいたら絶対に思いもしなかった事を肌で感じて学んできました。

帰国後、フリーランスのエンジニアに・・・。

とまあ、自分の事をつらつらと書いてきましたが、レコーディング・エンジニアになるのって大変なのです。

スタジオに入ったら常にその場の中心的存在でないといけません。

プロデューサーやディレクターの支えとならないといけないし、そう有るべきだと思います。

有る意味、エンジニアもプロデューサーなのです。

レコーディング・エンジニアって皆さんの想像してるより、ずっと地味な職業ですよ。

日の当たらない場所に何時間も拘束されてるし、同じ事の繰り返し・・・。

でも、それが楽しいのです。

音楽が好きでないと出来ないでしょうね。

エンジニアに限らず、音楽関係の職業についている人は音楽バカです。

中途半端な考え方や志で、レコーディング・エンジニアを目指している人は考え直した方が良いと思います。

仮にスタジオに就職できたとしても、多分1ヶ月もたないでしょう。

ちょいと今までと方向が違っちゃいましたが、思い当たる事があって今回こうして書いてみました。



リバーブについて

今回はリバーブ(エコー)について説明します。

リバーブとは日本語にしてみると、音響残響装置ですね。

原音に対して残響を付け加える装置です。

リバーブの種類は大きく分けて3種類ありまして、プレート(鉄板)系、ホール系、ルーム系の3つです。

他にエフェクト系のリバーブもありますが、基本的にはこの3つです。

それぞれの特徴として、プレート系は素直な感じ、ホール系はホワッとした感じ、ルーム系はソリッドな感じです。

プレート系のリバーブは、どんな音に付けても違和感がありません。

一番使用頻度の高い種類のリバーブです。

EMTという大きさが畳3畳分くらいの非常に大きな機材のリバーブがあるのですが、それは僕の非常に大好きなリバーブです。

メンテナンスの行届いてるEMTは素晴らしいサウンドがします。

ホール系のリバーブはストリングスやブラスセクション等、全体的にホワッとさせたい時にはホール系のリバーブを使用します。

ホール系単体の時もありますが、プレート系と混ぜて付ける事も多いです。

個人的にヴォーカル・リバーブはホール系を使用します。

このリバーブを使用する時に、原音のエッジがわからなくなるまでかけるような事はあまりしません。

沢山かかっているけどリバーブが見えないという絶妙なかけ方をすると、非常に美しく聴く事が出来ます。

ルーム系のリバーブはドラムスやエレキギターにかける事が多いです。

とにかくエッジを出したい時には使用します。

部屋の中で演奏している感じを出したい時には、名前の通り、このリバーブを使用します。

さて、それぞれのリバーブの特徴を上記で説明しましたが、細かく分けると色々な種類のリバーブがあります。

ホール系では、ラージ・ホール、ミディアム・ホール等そこからまた沢山の種類があります。

しかし、沢山有っても使用するのは決まってしまいますね。

他にエフェクト系で、ディレイ、ハーモナイザー、フェーザー、フランジャー、コーラス等があります。

この辺はリバーブとはまたちょっと違うので、おいおい説明していきます。

個人的なベスト・リバーブはEMTとQuantecです。

これさえあれば他は要らないくらい大好きです。

特にヴォーカルにQuantecのリバーブを使用すると、太くて素晴らしいサウンドになります。

ほとんどレンタルしてますが、なんとか手に入れたい機材です。



コーラスの録音について

今回はコーラスの録音について説明します。

基本的にメインボーカルの録音が終わったらコーラスの録音をします。

理由は幾つかあって、まずコーラスパートに字ハモがあると、メインボーカルと長さやタイミングを合わせないといけません。

後メインボーカルの録音時まで歌詞が決まっていないという事もあります。

もう一つ大きな理由は、トラック(チャンネル)の問題が大きいです。

よくある例として、三声ダブルというコーラスアレンジがあります。

これは高、中、低の3パートをダブらせるのですが、

例えば一番高いパート(高)を唄い、厚みを出すために同じパートをもう一度唄います。

つまりこれだけで2チャンネル使用します。

これを3パート録音すれば6チャンネル必要になります。

メインボーカルを録音する前に、コーラスのパートでそれだけチャンネルを使用してしまえば、メインボーカルを録音するチャンネルが無くなってしまいます。

このような理由で、メインボーカルを録音した後にコーラスパートを録音します。

録音方法ですが、これは上記で述べましたが、一人が3パート重ねる時もあれば、それぞれのパート別にミュージシャンを呼んで、一緒に録音する事もあります。

一人で重ねる時は全てとはいいませんが、メインボーカルを唄ってる人がコーラスパートも録音する事が多いです。

この方法のメリットは、三声のバランスをトラックダウン時に細かく取る事が出来ます。

デメリットはチャンネルを沢山使用する、録音時に時間がかかってしまう、等といった事が挙げられます。

それぞれのパートでミュージシャンを呼んで録音する時のメリットは、短時間で録音できる、チャンネルが少なくて済む、等ですね。

デメリットは内声のバランスを録音時に取らないといけないので、トラックダウン時に内声のバランスを変える事が出来ません。

一人で重ねる方法と、数人で一緒に唄う方法とでは、アレンジは全く一緒でも聞こえ方は全く違います。

一人が一本のマイクに向かって唄うのと、数人が一本のマイクに向かって唄うのでは、空気感とか厚みが違います。

前にとあるアーティストの録音時にアーティストとディレクターの協力を得て、パート別にマイクを変えて録音したのですが、非常に素晴らしいコーラスを録音する事が出来ました。

高いパートは高音域にキャラクターを持つマイクを、真中のパートはレンジの広い素直なマイクを、低いパートには低音域にキャラクターを持つマイクをそれぞれ使用してみました。

ぱっと聴きは殆どわからないと思いますが、現場にいる人には好評でした。

エンジニアとしてコーラスの録音時に注意する事は、唄っている人にしっかりと三声を聞こえる様に、コーラス・バランスを取らなければいけません。

中には一度唄ったパートをカットして他のパートを唄う人もいますが、それをしてしまうとコーラスのアンサンブルがわからないし、コーラスのバランスも取れません。

でも、唄う人が一番唄いやすい方法を取る事が先決です。



ストリングス・セクションの録音について

今回はストリングスセクションの録音について説明します。

ポップスやロックでの一般的な編成は、1stViolin(以下1stVln)、2stViolin(以下2stVln)、Viola(以下Vla)、Cello(Ce)、という編成が一般的です。

人数は6422くらいですね。

劇判等ではこの編成にContra Bass(以下CB)が加わります。

劇判、演歌等の録音ではほぼ同録で行いますが、ポップスの場合、殆どがダビングで録音します。

録音の方法ですが、上記の編成(6422)だと各セクションにマイクを1本ずつ立てるだけです。

つまり4本で済みます。

後はアンビエンスマイクを2本立てるくらいです。

1人ずつにマイクを向ける事はカルテットでない限りしません。

セクションの並び方ですが、1stVlnが向かって左側にきて、後は横に2stVln、Vla、Ce、と並んでいきます。

それが一般的なのですが、スタジオによっては箱の大きさの問題で縦に並べたりもします。

その時は向かって前方の左側に1stVln、前方の右側に2stVln、後方の左側にVla、後方の右側にCe、といった具合に並べます。

マイクセッティングに関してですが、プレイヤーの頭上1.5〜2M位離してマイクを立てます。

Ceに関しては比較的オン気味(1M位)離れた位置にセッティングします。

アンビエンスに関しては横に並んでいる時は2stVlnとVlaの中間に立てます。

縦に並んでいる時は位相の問題があるので、個人的には立てません。

録音時にエンジニアとしてどのような事に注意するかといいますと、ストリングスのダビングはかなり早い時間に終わってしまうので、素早くレベルを決め、アルコ(白玉)とピッチカートのレベルがかなり違うので、ピッチカートの時はレベルを持ち上げないといけません。

とにかく譜面を頭に叩き込む必要があります。

コンプレッサーやイコライザーをかける暇はあまりないですね。

レベルやバランスが決まってしまえば後は比較的楽にセッションを進める事が出来ます。

このような感じでストリングスの録音を進めていきます。



ブラス・セクションの録音について

今回はブラスセクションの録音について説明していきます。

ブラスセクションの編成がトランペット(Trp)、トロンボーン(Trb)、バストロンボーン(BTrb)、ホルン(Hrn)、チューバ(Tuba)という編成で説明していきます。

まずTrpですが、人数は3,4人が普通です。その時にマイクを人数分立てる事は殆どしません。

基本的には1本で済ませたいのですが、Trpのバランス(内声)を考えた時に2本がベストである時は立てます。 

何故少ない本数で済ませたいのかといいますと、4人が1本のマイクに向かって吹いている音と、それぞれに立てたマイクに向かって吹いている音では、音圧感が全く違うからです。

1本のマイクに向かって吹く方が圧倒的に音圧があります。

これは後作業でどうにかなるものでは有りません。

人数分マイクを立てて後で纏める事も出来ますが、内声のバランスはとれても音圧感だけはどうしようもありません。

この事に関しては、ブラスセクションだけでなく、全ての楽器に当てはまります。

次にTrb,BTrbですが、それぞれマイクは1本ずつ立てます。

Trbに関しては内声のバランスを考えるとそれぞれに1本ずつ立てたいのですが・・・。

楽器が比較的大きいので、座る位置も第1、第2が少し離れてしまいます。

お互いにマイクに向かって吹いてもどうしても遠くなってしまうので(譜面台の問題もあるが・・・)、マイクに余裕があるときは極力立てるように心がけています。

上記で述べた事と矛盾していますが・・・。

Hrnに関してですが、クラッシックの録音(特にホール録音)とポップスの録音ではマイクのセッティングが全く違います。

クラッシックの時はプレーヤーの前にマイクを立てますが、ポップスではその様なセッティングは殆どしません。

後ろ側にマイクを立て、マイクは1人に付き1本立てます。

直接的な音を狙うというよりかは、若干ラッパの部分?より上の位置にセッティングします。

後つい立等を後ろ側に置いておくと反射音が上手く拾えます。

つい立を置くだけで音の抜け方が全く変ってきます。

Tubaに関してですが、これはラッパの真上にマイクを立てます。

同録では一緒のセクションで録音していきますが、ダビング時はTubaだけ別に録音する事が多いです。

とにかく吹くのが大変そうですね。

大体このような感じなのですが、ブラスセクションのマイキングは全体的にオフ気味(1〜2M程度離れた位置)に立てます。

ピークが強い楽器なので、近くにマイクを立てると音が歪んでしまったり、レベルがとれません。

オフ気味に立てた方が音が綺麗に伸びて来た所を拾えます。

ブラスセクションの録音で使うマイクは、ピークに強いマイクを使用します。

個人的な好みで言ってしまえば、TrpにはRCA-77X、Trb,BTrbには47fetか67、Hrn,Tubaには47fetですね。

このマイクを使って録音出来たら、もう涙がちょちょ切れる位嬉しいです。

でもなかなかないんですよね・・・。

エンジニアはスタジオにある機材(マイクを含め)で最高のサウンド作りを心がけなければいけません。

無いからといって借りるのは・・・。



ヴォーカル録音について

今回はヴォーカルの録音について説明します。

唄物のレコーディングで一番重要になるのがヴォーカル録音です。

ですから周りのプロデューサーやディレクターは気合が入っていますし、もちろん歌手の人も気合が入っています。

ヴォーカルの録音の時にエンジニアはどのような事を注意しているか・・・?

まず重要なのは歌手の人が唄い易いようなモニターバランスを取ってあげなければいけません。

コードやリズムをしっかり感じるモニターバランスが必要です。

後は自分の声が頭の芯で聞えてくるような処理をしなければなりません。

自分としては声を張って唄っているけど、聞え方はつまったような感じ(コンプレッサーのかけ過ぎ)だったり、リバーブで声が遠くにあるような感じではいけません。

とにかく唄が抜けて聞えるようにします。

このような事に気をつけないとベストなテイクを録音する事が出来ませんし、エンジニアは歌手が最高の状況で唄える環境を作る必要があります。

これで全て完了という訳ではありません。

このような状況を作りましたらヴォーカル録音が始まるのですが、唄っている時にはきちんとレベル・コントロールをする必要があります。

唄中でキーの低い所や、ささやいて唄っている所はきちんとレベルを持ち上げる必要がありますし、逆に声を張っている所はオーバーレベルになりやすいので、レベルを下げる必要があります。

しかしこの辺はエンジニアによってばらばらで、一度レベルを決めたら全くフェーダーを動かさない人もいます。

後処理(TD)を考えての事なのですが、僕はその逆で、TDの事はヴォーカル録音の時に考える事ではないので、今出来るベストな録音をしようと心がけています。

ヴォーカルの録音は頭から通しで唄うという訳ではありません。

勿論その様な方法で録音もしますが、パーツ事に録音していく方法もあります。

激しい曲とか、喉の弱い人はパーツで録音していく事が多いです。

一番と二番と別の日に録音したという事も少なくありません。

無事ヴォーカル録音が終了したら一本に纏める作業に入ります。

前にも述べましたが、それぞれのトラックから良い所を抜いて纏めていきます。

良いテイクをより素晴らしいテイクに変えようと必死に選びます。

この作業だけで数時間かかる事もあります。

このような感じでヴォーカル録音は進みます。

終わる頃には皆さんぐったりしてますね。



トラックダウンについて

今回はトラックダウン(ミックスダウン)についての説明をします。

トラックダウン(以下TD)とは、マルチトラックテープに録音した音を2ch(ステレオ)にまとめる作業の事をいいます。

この作業をしないとCDになりません。

さてどのような事をするかといいますと、リバーブ(エコー)をつけたり、コンプレッサーをかけたり、定位をつけたりして、聴き易くなるようにバランスを取っていきます。

TDには決まったやり方というのはありません。

これはエンジニアの感性で作業を進めていきます。

時間は人それぞれ違いますが、僕はだいたい4〜5時間を目安に作っていき、それで関係者に聴いてもらって手直ししていきます。

中には2時間くらいで作ってしまう人もいれば、10時間以上かけるひともいます。

私は長時間集中力が続かないので、早めに作り込んでいきます。

まずはリバーブに関しての説明をします。

リバーブにも沢山の種類があってプレート(鉄板)系、ホール系、ルーム系等色々あります。

TDをしていく上で、何種類ものリバーブを使用していきます。

例えばドラムスにはルーム系のリバーブを使い、ギター、ピアノ等にはプレート系、ストリングスやブラスにはホール系のリバーブを使用します。

勿論ヴォーカルにも専用のリバーブを用意します。

次にコンプレッサー(以下コンプ)の説明をします。

これは何かといいますと、音量感を変えずに音圧を変える機械です。

コンプはTDでかなり駆使します。

コンプの使い方で作品の上がり方もがらっと変ります。

気がついたら全ての音にコンプがかかってる事も多々あります。

例えばヴォーカルで声を張って唄っている場所があるとします。

そのままにしておくとレベルが取れず、メーターも振り切ってしまい、オーバーレベルになります。

そういう時にコンプを使用すると、ある程度のレベルで引っ掛ってくれるので、レベルも取りやすく、バランスも取りやすいのです。

こうして1つ1つ音を調整していって皆さんに聴いてもらうのです。



大編成のスタジオ録音について

今回は大編成のスタジオ録音について説明していきます。

最近では大きな編成での録音は少ないのですが、映画音楽、アニメーションの劇伴、演歌等は同時録音(同録)でレコーディングします。

映画音楽、アニメの劇伴でのよくある編成は、ドラムス、ベース、ギター、ピアノ、シンセ、ラテンパーカッション、ブラス、ストリングス、木管楽器、クラッシックパーカッション等といった感じです。

総人数30〜40人くらいです。

演歌は上記の編成に後はマンドリンやアコーディオン(クラビ)等が加わります。

もちろん曲にもよりますが、ブラスや木管が入らない場合もあります。

総人数は20〜30人くらいです。

録音はそれぞれの楽器をブースに入れたり、ついたてで仕切ってセパレートして録音します。

これだけの人数で一斉に録音するので、スタジオも大きな箱でないといけません。

個人的にはセパレートして録音するのはあまり好きではなく、それぞれの楽器が良い感じに音がかぶってくれる方が臨場感が出て好きなのですが、スタジオ事情もありましてなかなかそうは言ってられません。

特にブラスセクションとティンパニーに関しては音がかぶってこそ、素晴らしいサウンドになります。

エンジニアとしても同録は非常に気合が入ります。

指揮棒が降られた瞬間に全ての楽器が鳴るので、モニターバランスを取るのも大変です。

全ての楽器が聞こえてくるようにバランスを取らないといけません。

ミュージシャンも自分の音が聞こえてこないし、アレンジャーもアレンジが見えてこないので緊張します。

しかし、一発でモニターバランスが取れていた時は鳥肌が立つほど最高に気分がいいです。

マイクはかなりの本数になります。

50本くらいでしょうか。

それだけでフェーダーが一杯になる事もあります。

ストリングスは基本的にパートで1本でいいのですが、たまに血迷って?ワンプルトンに1本立てたりすると、それだけで15本くらいいってしまいます。

アンビエンス・マイクは僕は立てる事はないですが、これに関してはエンジニアによりますね。

反対にブラスは少ないです。

トランペットは1本、トロンボーンも1本ですが、バストロンボーンがあるとそれ用に立てます。

ホルンは人数分、チューバも人数分です。

だいたいこのような感じで録音は進みます。



コピーとダビングの違いについて

今回はコピーとダビングの違いについて説明します。

よく「このCDダビングして。」とか「この曲ダビングして。」等言う人がいますが、ダビングというのは重ねるという意味なので、この場合での表現は間違っています。

紙をコピーするのにダビングという言葉は使いませんよね。

では何故音楽ソースの時だけこのような言い方をするのでしょうか?

私の意見なのですが一番考えられる理由として、言葉の響きが良いから・・・と思っているのですが。

後はオーバーダビングという作業があるので、そこからもきていると思われます。

コピーは別の素材に同じように写す事、ですから「CDをコピーして。」とか「この曲コピーして。」が正解です。



テープ上で出来る編集作業について

今回はテープレコーダーで出来る編集作業について説明します。

まずデジタルのマルチトラックレコーダーで出来る編集作業を説明していきます。

デジタルピンポン(以下デジピン)という作業があるのですが、これは何かといいますと、同じタイムコードで別のトラックにコピーする事をデジピンといいます。

この作業の応用編として、複数のトラックの良い所をだけを抜いて1本のトラックにまとめたり出来ます。

ヴォーカルに関しては、ほぼ全部といって良いくらいこの作業をしています。

例えば「今日は魚が安いです。」という歌詞???があったとして、全体は1本目に録音したテイクが良いが、「魚」という言葉のピッチ(音程)が悪いから差し替えたい、という事が多々あります。

そういう時は「魚」という言葉が良いテイクを探してそこだけ別のテイクに差し替えます。

単語だけでなく一言だけの差し替えも可能です。

このような事を書くと幻滅してしまう人もいるかもしれませんが、実際はこのような事をしてしっかりとした良いテイクを作っています。 

更に応用編としてトラック・ジャンプ(以下たたき)という作業もあります。

これはどういう事かといいますと、例えば2ハーフの歌詞で一番のサビと最後のサビが同じ歌詞だったとします。

一番は上手く唄えてるのだが、最後の方はいまいち良くないという場合に、

一番から最後のサビへサンプリングして別の場所に持ってくる事をいいます。

更なるこれの応用編としてタイミングを微妙に(1/1000秒)ずらす事も可能です。

「こんな事は?」というような事もあらあら不思議・・・出来てしまうのですね。

こうして最善のトラックうを作って皆様に聴いて頂いているのです。

アナログのテープレコーダーでの編集作業ですが、これは前にも説明しましたが「テープを切って貼る。」のみです。

テープレコーダー内での編集作業は出来ません。

昔はアナログテープが主流でしたので誰もが出来ましたが、現在はデジタルテープが主流なので殆ど手切りでの作業はしなくなりました。

アナログテープの編集方法は音を探して、ここだ!!という所でテープを切ります。

これだけなのですが音を探るのが大変なのです。

正規の回転で回していないので手探りで探します。

こればかりは慣れですね。

教えて出来るものではありません。



チャンネル分けについて

今回はチャンネル分けについて説明します。

テープについてはNo,3で説明しましたが、テープに録音する為に最初にフォーマットという作業を行います。

フォーマットとはテープに番地を記録させる(タイムコード)事をいいます。

例えば48chのマルチテープをフォーマットしているとして、テープ上に48個分の部屋(48本の線という考えでもいいです。)も一緒に記録させていきます。

そうする事によって同じタイム上に48ch分の部屋(線)が出来た事になります。

因みにフォーマットしたテープは約35分くらい録音できます。

6〜7曲分くらいですね。

さてチャンネル分けですが、フォーマットされたテープに1つ1つ音を分けて録音していく事をいいます。

例えばドラムスを例にとって説明しますと、H/Hを1ch、Kickを2ch、タムを3,4ch等という感じに分けて録音していきます。

基本的にはマイク1本に対し1chですが、中には同じ楽器に複数マイクを立てて、まとめて1chにする場合もありますし、タム等広がり(定位)を持たせるために複数立てたマイクを2ch分使い録音していく時もあります。

チャンネル分けとはこのような事をいいます。

そうする事によって一斉で録音しても間違えた個所があれば、それぞれの楽器だけでやり直す事も出来ますし、オーバーダビングも可能なのです。



マイクセッティングの後は

今回はNO,2の続きでマイクセッティングが終わった後について説明します。

マイクセッティングが終わりましたら音決めをします。

これは何かといいますと、録音する前にそれぞれの楽器の音を貰い、イコライザーやコンプレッサーをかけたりしてテープに録音するレベルを決めます。

勿論この時にある程度のモニターバランスを取ります。

バンドの録音だと音決めに結構時間をかける事も出来るのですが、スタジオ・ミュージシャンで録音する時は余り時間をかけられないので手早く決めます。

内容によっては時間をかけて音決めする事もありますが、基本的に「短時間で最高のサウンド」を作るようにしなければなりません。

全ての楽器の音決めが終わりましたら譜面の確認を兼ねてテストで演奏します。

この時はテープに録音する事はあまりありません。

エンジニアはこの時にモニターバランスを取ったり、音決めしたりと一番忙しい瞬間です。

音が鳴った瞬間にばっちりバランスが取れていると物凄く気持ち良いのですが、ありゃりゃという感じですとこれはこれは大変です。

演奏し終わりましたらテストで一度録音します。

そこで最終的な確認をして本番で録音します。

基本的には「乗り」が一番重要視されます。

皆が納得のいくテイクが録音出来たら、それをベースに間違えた箇所を差し替えたりします。

テープへ録音する時にチャンネル分けという事をするのですが、次回はこのチャンネル分けについて書いていこうと思います。



マルチ・トラック録音と2トラック録音の違いについて

今回はマルチトラック録音と2トラック録音の違いについて説明します。

まずマルチトラック(以下マルチ)録音ですが、現在のレコーディングでは殆どがこの方法で行われています。

それぞれのパートをばらばらにテープに録音していくのですが、マルチトラックテープという物がありまして、これはデジタルテープとアナログテープの2種類あります。

デジタルテープには24ch、32ch、48chの3種類、アナログテープには4ch、8ch、16ch、24chの4種類それぞれあります。

マルチテープと1本のテープにチャンネル分(例えばデジタルの48chテープなら48ch分)の線が入っていて、そこにそれぞれのパーツに分けて録音出来るテープです。

この辺はテープレコーダーにも関係してくるのですが、それに関しては別の機会に説明します。

マルチ録音の特徴ですが、パート別に録音出来る、差し替えが容易に出来る、テープ上での編集作業が出来る等といった事が上げられます。

これにより、より複雑に、より細かく等突き詰めて作業が出来ます。

因みにマルチトラック録音の可能性を引き出したのは「ビートルズ」ですね。

特にアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブバンド」以降は当時としてはかなり実験的なレコーディングをしていたと思います。

次に2トラック(以下2ch)録音ですが、これは簡単に言ってしまえば「一発録音」です。

クラッシック、ジャズ、純邦楽、民族音楽等マルチ録音もありますが、殆どが2chで録音します。

2ch録音の特徴は、その場の雰囲気をテープ上に録音出来る、短時間で録音出来る、制作費を安く上げる等といった事が挙げられます。

マルチと違い、間違えたからといって容易に差し替えは出来ません。

ではどうしているかといいますと、間違えた箇所の前後を一斉に録音して、それが良ければテープを切って貼りつけます。

これは機械では出来ません。

手動?で行います。

正に職人の作業といえるでしょう。

私の得意とする作業です。

2chのテープはデジタルとアナログの2種類ありますが、デジタルのテープに関しては切って貼るという事は出来ません。

きちんと専用の編集機があります。



リズム録音について

今回はロック、ポップスのリズム録音について詳しく説明します。

編成がドラムス、ベース、ギター、ピアノという一般的な編成で話を進めます。

最初にドラムスについてですが、プレイヤー(曲にもよりますが)によってドラムスのセッティングが違います。

ここでは普通のセッティングで話を進めていきます。

基本的にキック(Kick)、スネア(SNr)、タム(Tom)、ハイハット(HH)、シンバル(cymb)といったセッティングです。

録音はどのようにして録っていくかといいますと、当たり前の事なのですがマイクを立てます。

パーツ事にマイクを立てていきますが、エンジニアによってマイクの種類や本数等ばらばらです。

まずキックですが、オンマイク(近く)、オフマイク(遠く)でそれぞれ1本ずつ立てます。

個人的にオフマイクはあまり好きではないので、オンマイクで2本種類の違うマイクを使用します。

スネアは表と裏に1本、タムもそれぞれに1本、ハイハットも1本それぞれ使用します。

シンバルは基本的に2本使用しますが、枚数の多い時は追加します。

シンバル1枚ごとにマイクを立てることはしません。

パーツだと基本的にこのようにマイクを立てます。

後はアンビエンスを録音する事もあります。

部屋の響きを録音するのですが、マイクは2本でドラムセットから少し離れた位置に立てます。

次にベースとギター(エレキです。)ですが、アンプを鳴らす事が多いです。

ギターは基本的にアンプのみですが、ベースはラインの音も一緒に録音します。

マイクはそれぞれ1〜2本使用します。

ピアノは基本的にLOW,HIとそれぞれ1本ずつ使用します。

マイキングはエンジニアによってかなり違います。

ハンマーに近づける人もいますし、オフ気味に立てたりと色々です。

個人的にはオフ気味に立てます。

だいたいこのような感じでマイクを立てます。

全てがこの方法ではありません。

あくまでも一般的な方法です。



Recordingとは?

「仕事は何ですか?」と聞かれ、「Recording Engineerです。」と答えると「オオー!」とか「凄いですね。」とかよく言われるのですが、しかしどのような作業をしているか知らない人が多いようです。

そこで今回からこのページで「Recording」について書いていこうと思います。

「Recordingとは・・・?」Record=記録、ing=現在進行形、つまりRecording=記録をしているという事になります。

まずはRecordingの流れを大まかに説明します。

一番最初にリズムの録音をします。

今回は打ち込みではなく生楽器を例に書いていきます。

編成はジャンルによって異なりますが、一般的なポップス、ロックのRecordingだと、ドラムス、ベース、ギター、ピアノ、シンセサイザー等で一斉に録音します。

そこで何度か録音して、良いテイクが録音出来たら間違えた箇所があれば差し替えをします。

一箇所間違えたからといって全部やり直す必要はありません。

例えばベースで「1コーラス目のBだけ間違えたのでやり直したい。」というのであれば、そこだけ差し替える事が出来ます。

CDを聴いても分からないと思いますが、実際はこうして直しています。

そうしてリズム(ベーシック)の録音が終わりましたら、オーバーダビングをしていきます。

例えばギターだと一曲の中で色々な音色の音が聞こえると思いますが、わざわざその分人を呼んでいる訳ではありません。

一人の人が何度も演奏しているのです。

次ぎに曲によってはブラスセクションやストリングセクションをダビングしたりします。

最後にシンセサイザーのダビングをしてオケに関してはこれで終了です。

次は肝心の唄入れをします。

人によって違いますが、何度も何度も唄う人もいれば数回で唄い終わってしまう人もいたりと、この辺はバラバラなのですが、だいたい4〜5テイクくらい録音します。

その中から一番良いテイクを選んで、それをベースに悪い箇所を直していきます。

この辺は楽器と一緒なのですが、唄の場合キープテイクから選んでいったりします。

例えば全体の雰囲気はこのテイクがいいけど、何箇所かピッチ(音程)やリズムの悪い箇所があったとします。

そのような時は他の上手く唄っているテイクから選んで、殆どの唄は色々なテイクを繋ぎ合わせて一本にまとめます。

この辺の事はその内に詳しく説明をします。

こうして唄入れが終了して最後にコーラスの録音をします。

これでオケに関しては全て終了です。

全て終了したらトラックダウン(ミックスダウン)という作業にとりかかります。

これはどんな作業かといいますと、ばらばらに録音した音をステレオ(2CH)にまとめる作業です。

この時にリバーブ(エコー)を付けたりコンプレッサーをかけたり定位を付けたりします。

最後にマスタリングという作業があります。

トラックダウンとマスタリングに関してはその内に詳しく説明します。

マスタリングが終了しましたらCDプレス工場にマスターテープを工場に送って後は盤が出来あがって来るのを待つだけです。 

とりあえず概略ですが、今後はそれぞれの事に関して詳しく説明をしていこうと思います。