Fourth gate open!  
by  かまこ

 

「アツシ、俺結婚することにしたよ。」
「そうか、良かったな。でもお前、その人に俺たちの『趣味』、言ったのか?」
「大丈夫だ、それどころか俺たちより詳しいぞ。」
「お前、いい嫁さん見つけたな、そんな女、滅多にいないぞ。」

ウチのダンナが小学校の時からの友人「アツシ君」に自分の結婚を告げた時の会話である。滅多にいない女とは、私の事である。そして彼らの趣味であり、私の方が詳しいという ソレは皆さんよく御存知の、だからと言ってそんなに細部に及ぶまでは覚えていない「ウルトラセブン」である。。。

 

今でもウルトラシリーズは ティガ だ ダイナ だ ガイア だと放映され続けている。しかし、やはり最高峰は「ウルトラセブン」であり、新シリーズがどんなに特撮やCG技術を駆使していても、セブンを越えることはできないと思う。何故なら、セブンはウルトラシリーズの中でも特に、子供を対象にしつつも、さらに大人に向かっての「キツイ嫌味なメッセージ」を含んだ、異例の作品であったからだ。

勿論セブンは子供番組である。が、その中の何作品かは、子供と一緒に番組を見ているであろう大人達に対してメッセージを発している。
あまりオタク的に展開しても大変なので、監督や脚本家を個別に挙げることはせずに、私の好きなこのメッセージを、今まで御存知なかった人(殆どの人は知らないってば(^^;))に是非とも知っていただきたい。

 ウルトラセブンとは誰か?「主題歌を歌えばわかるでしょ、ほら『モロボシダンの名を借りて〜』っていってるじゃない?」というのが普通の答えであろう。確かにそうだがもうちょっと詳しく言えば、M78星雲から地球にやって来た恒点観測員340号、というのが彼の正体である。要するに、彼は地球人レベルから見たら超ヒーローだが、M78星雲的にはタダの観測員で、しかも上司からは名前ではなく番号で呼ばれる程度の、ヒラ職員なのである。将来を属望されたエリートだったのかもしれないが、この時点ではまだそう偉くはなっていないと思う。観測の途中で立ち寄った美しい星、地球が宇宙人に狙われているのを知って、己の職務を無断で放り出し、有給も申請せずに勝手に地球に居すわった、と考えると、結構勝手な奴である。社会人としては失格とも言える。我が社なら懲戒免職モノである。最終話では彼の上司が出てくるが、部下の無断欠勤に怒りもしない。M78星雲の社会は一体どうなっているのか。。。
ま、とにかく、その340号クンがモロボシ・ダンという架空の地球人になりすまして、ウルトラ警備隊にもぐり込み、一番大事な時にダンが不在になってしまうという「敵前逃亡」のリスクを負いながらもナニゲに変身して、地球を侵略しようとする宇宙人と戦う。

それがウルトラセブン、なのである。

子供番組だから、ツッコミ所は随所にある。地球防衛軍の中のエリート集団である「ウルトラ警備隊」に、モロボシ・ダンがなぜ簡単に、履歴書も住民票も出さずに入隊できたか?学歴詐称なんじゃないか?さらに車を運転しているけど無免許運転なんじゃないか?、などと言い始まったら夜が明ける。こういうツッコミはいつか別の機会に是非。。。 

セブンのファンなら必ず言及する「狙われた街」という話がある。メトロン星人というカラフルな宇宙人が、宇宙産の麻薬のようなもんをタバコに仕込み、タバコを吸った人間の理性を失わせるのである。度々起こる怪事件にウルトラ警備隊が捜査を始める(本来ならこれは警察の仕事だと思うのだが(^^;))。ハリコミをしていると怪しい男を発見し、尾行をする。するとその男は下町のさびれたアパートへ入って行く。ダンがそのアパートへ行くと、メトロン星人が待っている。あまりにも有名な「ちゃぶ台を挟んで宇宙人同志が向かい合う」シーンである。このメトロン星人は結構フレンドリーで、セブンに自分達の計画をベラベラと喋ってしまうが、どこかを侵略しようと思ったらこういう口の軽いヤツを実行部隊に入れてはいけない。メトロン星は人選を誤ったとしか思えない。彼はこう言う、「地球人はお互いを信頼し合って生きている。だから薬物を使って人の理性を失わせ、信頼感を崩してお互いを敵と認識させれば、勝手に戦争を始めて自分が何もしなくても自滅していく。いい考えだろう?」暴力に訴えない、実にお手軽な侵略方法を考えついたものである。あまり強くないお喋りメトロン星人はあっけなくセブンに敗れ、地球に平和がおとずれる。重要なのはここから先である。セブンとメトロン星人の戦いなどはどうでもいいのである。子供はセブンがジュワっと去って行った時点で、もう次の話は何だろうとかお風呂はいつ入ろうとか思ってしまうが、大人はこの次のナレーションを聞き逃してはいけない。「お互いの信頼感を利用するなんて、恐ろしい宇宙人です。でもご安心下さい、これは遠い未来の話です。」さあ、世界各国の政府首脳陣、全員整列してよーく聞け

「え?何故ですって?我々地球人は宇宙人に狙われるほどお互いを信頼してはいませんから。」キツいですね、キビシイですね、子供番組にこう言われてしまってはミもフタもないのだが、そういう事なのだ、大人社会は。

あれから30年、メトロン星人の地球侵略計画は今も未完のままである。 

セブンは宇宙人である。地球人ではないが故にしばしば地球人と意見が食い違う事がある。地球人は当然の事ながらまず「地球ありき」であるから、地球最優先にモノを考える。侵略してくる宇宙人も、やはり一番大事なのは自分達である。セブンはどうか?セブンから見れば侵略者も地球人も同様に「よそ様」となる。セブンだけが「一番大事なのは○○人」という立場にないのである。

第三者の、極めて公平な立場で物を言ってしまい、地球防衛軍の上層部に「やなヤツ」と思われれてしまう事もあるのだが、元々地球人じゃないから仕方がない。情の深い彼は最終的には地球人の味方をしてしまい、コトが終わってから考え込む彼。これがセブンの真髄と言っても過言ではない。

 

「超兵器R1号」という話、地球人が凄いミサイルを開発する事から始まる。

その破壊力は水爆の8000倍、しかもコレは実験用で、完成型はさらに凄い破壊力を持つという。これさえあればどんな侵略者が来てもヘーキと、防衛軍は大喜び、そしてそのR1号の破壊力の実験の為に生物のいないギエロン星が選ばれる。だがダンだけはその実験に納得できなかった。自分達の実験の為に星を1つオシャカにしてもいいのか?自分達が良ければ、他はどうでもいいのか?とまわりに聞いても、聞く耳をもっていない。開発者は「実験をすることによって地球がそういう兵器を所持している事を世間にアピールできる。そうすれば、地球を侵略しようとする奴はいなくなるだろう。持っているだけでいいのだ。」と誇らしげに熱く語る。そして「持っているだけで地球が平和になるなんて、素晴らしい〜」と安易に喜ぶ同僚。「でも、もし宇宙人がもっと凄いミサイルを開発してきたらどうするんですか?」と聞いても「そしたらこっちがもっと破壊力のある兵器を開発すればいい。」と言われてしまう。「それは血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ。」と年の割にジジ臭いことを言ってみても誰も解ってくれない。結局実験は行われ、標的となったギエロン星は木っ端微塵に吹き飛んでしまう、が、そこには生物が住んでいたのである。

核物質の影響か、巨大化したその生物は、乗物にも乗らず裸一貫で地球に復讐しにやって来る。宇宙空間をハダカで飛んだら水分が、などという配慮は無用、気合いで大気圏まで突破してしまう鳥に似た彼(彼女だったのかも?)。住んでる星が吹っ飛んでも死ななかった彼はメチャ強く、R1号にいただいた放射能をご丁寧にゴーゴー吐いてくれる。さすがのセブンも手こずり、防衛軍はさらに凄い兵器R2号の開発を始める。が、そこでやっとこさ気がつくのである。このR2号が効かなかったら?放射能を浴びて、さらにもっと強力にヤバいヤツになってしまったら?すでに東京は放射能の嵐、イスカンダルのスターシャにでも助けてもらうか?もしこれが山口百恵ならとっくに白血病になってるところだが、セブンはなんとかコイツを倒し、地球「だけ」は救うのである。

そして隊長はダンのつぶやきを上層部に伝える。「それは血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ。」その言葉を聞き、初めて自分達の責任を感じる開発者達。さあ、各国首脳、軍関係者、全員正座してよーく聞け。「人間はそんなマラソンを続けるほど、愚かな生き物なんでしょうか?」防衛軍はついにミサイルの開発の中止を決定する。開発中止を聞いてダンは喜ぶが、すぐに表情は暗くなる。回し車をクルクル回し続けるリスの映像と暗いダンの顔がかぶる。。。それは血を吐きながら続ける悲しいマラソン。。。

  どーよ、子供番組にしてこの重厚なテーマ、あんな国やこんな国にそのまま字幕をつけて送って差し上げたい作品である。当事者は己の過ちに気がつかないものであるが、第三者は気がついたりする。気がついた者が過ちを指摘し、当事者は過ちを正していかなければいけない。が、セブンは指摘こそしたものの、当事者に正すように説得しきれなかった。(ヒラの観測員にそこまで主張しろというのは無理な話である)自分さえ良ければ他はどうなってもいいなんていう、そんな社会にしてはいけない、と言いたかったのかも知れないが、子供には難しすぎる話である。わっかるっかなー、わっかんねぇだろーなー、と思いながら作ったんだろうなぁ。

  ダンが第三者という立場に立ってしまうのはこれだけではない。

「地球が平和ならヨソの星はどうなってもいいの?地球人がヨソの星を侵略しないなんて、そう思っているのはウルトラセブン、あなただけよ。」と宇宙人にピシャリと言われた事もある。

地球人は、守ってやる程の価値があるのかと言わんばかりのセリフであるが、正しい事を言ってるのはこのペダン星人という宇宙人のような気がする。

  「ダーク・ゾーン」という話では、ペガッサという宇宙都市が、動力部の故障で地球に衝突しそうになり、地球の軌道を少し変えるように要請する。が、地球の軌道を変えられないと聞き、そのお粗末な科学力に「あんびりーばぼー」と失望する。こうなったら地球を吹っ飛ばすしかペガッサが生き残る手段が無い、そしてペガッサを吹っ飛ばすしか地球が生き残る手段が無い、にっちもさっちもいかなくなった時、第三者セブンの出番である。問答無用でペガッサを破壊しようとする防衛軍に対して、ダンはペガッサの住民を地球に移住させて、故障した都市自体は爆破するという譲歩案を出し、可決される。喜び勇んでペガッサに「地球へ移住しろ」と呼びかけるが、何と無視されてしまうのである。お互いのために良かれと思ってした事なのに、これじゃあ余計なお世話サマ、ダンの面目丸潰れである。結局時間切れでペガッサは地球からの攻撃で破壊されてしまうが、万が一の時の地球爆破要員として地球に来ていて無事だった、たった一人のペガッサ星人は夜の闇に消えていく。地球人もペガッサ星人もまあどっちもどっち、共存していくのは難しかったのかも知れないが、地球にとってもセブンにとっても後味の悪い結末である。

宇宙都市を築けるほどの科学力を持ちながらも、地球のミサイル攻撃を避けられなかったとは間抜けなペガッサ星人、パトリオットの一つも無かったのか?なーんて事を考えるのはお子様に任せ、我々大人は別の事を考えてみたいもんである。アッチをたてればコッチが立たない、たまたま地球に世話になっていたからか、セブンは地球側についてしまったが、彼はどうすべきだったのだろうか?キレイゴトを並べるのは簡単である、が、こういうガケップチ状態で選択してしまう事というのは、結局自分中心になってしまうのだという事を痛感させられる。私だってペガッサを破壊するだろうし、アナタもそうするでしょ?

  ウルトラセブンは昭和42年(うわ〜(^^;))から約1年間放映された。全49話、うち2話は前後編なので47の物語で成り立っている。ちょっとマニアな人なら知っている事だが、セブンに関する一般的なデータにはこの49話のうち12話というものが無い。49話放映されているのに、48話しか無いのである。12番が縁起が悪かったとか、そういうものではない。当初放映はされたものの、その後封印されてしまったのである。内容や宇宙人が微妙にタブーな事に触れてしまったということでとある団体から抗議があり、そのまま欠番となってしまった。制作側に問題があったというよりは、その宇宙人の表現(よく「宇宙忍者」バルタン星人、などと書かれる、その「宇宙忍者」に相当する部分)に問題があったらしい。本当に欠番にするほどのものではないのではないか、と思うのだが、この幻の12話を改めてリリースする予定は無いらしい。非常に残念に思うが、それほどウルトラセブンという作品は、きわどいテーマを選んで作られていたのである。この回のゲストはなんとウルトラマンのフジ隊員を演じた桜井浩子で、彼女はアンヌ隊員の友人役ということで出演している。重ね重ね惜しい作品である。なんとかDVD化されないだろうか。。。

  セブンの魅力の一つに音楽がある。冬木透という、とある大学教授が作曲を担当していた。怪獣モノなのに、「NHK名曲アルバム」のような「美しさ」があるのは、BGMによるところが大きい。そのBGMはバリバリクラシック調、ハイドンやモーツァルトを思わせる、優しく、そして流れるような旋律が特徴である。フルートやホルン等の管楽器が実に心地よく響いて、音楽だけでも十分楽しめるのである。さらに美しい旋律以外にも名曲はある。戦闘シーンで多用された5拍子の曲、あれほど現場の緊張感を感じさせる曲は無いと思う。変拍子も不協和音も実にうまく計算してあり、「うわ〜、怪獣出ちゃったよ、やだなー」という雰囲気が5拍子に乗って伝わってくるのである。

余談だが、最近作られたセブンの新シリーズで、ささきいさおが主題歌を歌っている。うーん、なんかリキ入り過ぎで、しかも彼の唄は何を歌っていても宇宙戦艦ヤマトにしか聞こえない。コレは失敗だよー。ただ、彼は古い方の主題歌で「セブン〜セブン〜セブン〜セブン〜」ってやってる男性コーラスの一人だったらしい、今度はソロというわけだ。でもどうしても「さらば〜地球よ〜」と歌い出しそうで、どうも落ち着かない。

  セブンの魅力と言えば、メカ類のカッコ良さというのも忘れてはいけない。 空中で3つに分かれたりドッキングしたりする戦闘機、コレはカッコいい。

操縦しているのがトム・クルーズだったら、もうその場で服のボタンを外しているかもしれない。が、残念ながらソガ隊員だったりする。このソガ隊員、後に女優の多岐川裕美と結婚する。(離婚もする(^^;))

このウルトラホーク1号が格納庫から出てくるシーンは特にカッコいい。

Fourth gate open, fourth gate open(第4ゲートオープン)」と指示されながらシズシズと出てくる。そして「Quickly! Quickly!(急げ)」とセカされ、「Full the throttle(エンジン全開)」、「OK, lets go!」で飛び出すのである。ここだけ英語っていうのも変だが、このシーンは何度見てもイイ。糸が見えてもいいのだ、誰が何と言ってもウルトラホークはカッコいい。

ところで、この第4ゲートはいつも開けるのだが、その後第3ゲートや第2ゲートを見たことがない。一体どこにあったのだろう?

防衛軍内のコンピュータはさすがに超大型。この時代では、今あるようなコンピュータ事情が予想できなかったのであろう。パンチ穴の空いたテープがピョロピョロとコンピュータから出てきたのを、そのまま読む隊員たち。そりゃ嘘だ、パンチされたテープはそのままじゃ読めないよ。

宇宙に飛んで行く専用のウルトラホーク2号、滝の中からザバっと出てくるウルトラホーク3号、潜水艦のハイドランジャー、地中専用のマグマライザー、ゴツい車のポインターなど、ネーミングもお洒落で、デザインも美しい。

女の子から見ても、いいなー、欲しいなーと思うメカなのである。

そういや、制服もカッコ良かったな、グレーでシック。ウルトラマンの時は、エルメスもびっくりのオレンジ色だったし。

 

ビデオが無かった時代は、再放送の度に万障お繰り合わせの上、頑張って見ていた。ビデオデッキを買ってからは深夜に再放送した「ウルトラ倶楽部」(司会は大好きな泉麻人)を録画して、好きな時に見ていた。そして今はDVDがあるので、鮮明な画像をお気軽に見ることができる。みなさんも「たがか子供の怪獣番組」なーんて言わずに、もう一度、ジックリと見て欲しい。

そしてこのイヤミな作品に是非「ニヤリ」と笑って欲しい。


『皆が引いたって、いいのだ。コレがオタクの生きる道。笑ってくれる人が一人でもいてくれれば、それでいいのであります』 と、かまこ。
私は、大好きだよ〜♪が〜っと、ひとつの道に突っ走るヒト。
あのぉ〜、ウルトラセブンって、セーラー服を着てるように見えない ?   Miwa

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