実在したユダヤ人ピアニストの自伝を元に、ドイツ軍のワルシャワ侵攻から撤退までの壮絶な体験を、ロマン・ポランスキー監督の実体験を反映して撮られた映画です。アカデミー賞7部門ノミネートを見ないでどうする・・・と誘われ、観て参りました。
ナチスのユダヤ人を蚊や蝿でも殺すような軽さで殺害するシーンも淡々と描かれ、それがかえってリアルで観ていて重く重く心に圧し掛かってきて・・・辛かった。人はここまで残酷になれるものなの?
戦場を生き抜く強靭な肉体のヒーロー像とは程遠い、シュピルマンの華奢な体サバイバルをただただ冷静に追いかけていく形で映画は進行していく。中盤からは主演のエイドリアン・ブロディのひとり舞台といった感じです。ピアノを弾くシーンも自分で弾いているのだそうです。
終わるまで一度も感動の涙は流れず、ただ放心状態でした。
ただユダヤ人というだけで迫害され殺されるような悲しい事は二度とあってはならないし、忘れてはいけないことだ。でも、戦争はどちらかが100%悪で、どちらかが100%善では無いのだ。個人レベルでは、いろんな人がいるのだ。
“ナチスにも善人がいたし、ユダヤ人にも悪人がいた”という事実も、忘れてはいけないと思った。
ここからはネタバレ(読んでもいい人だけ反転してお読みください)
ドイツ将校に見つかって、シュピルマンがショパン(バラード第1番)を弾くシーンは圧巻です。
ショパンを演奏することは、戦時中のポーランドではナチスドイツによって禁止されており、ドイツ将校の前でショパンを弾くというのは死を覚悟しての演奏だったはず。ある種の抵抗と、ポーランド人しての誇りで、あえて弾いたのでしょう。最初はゆっくりと弾き始め、だんだん演奏に入り込んでいく。そして将校も音色に聴き惚れ、目にも尊敬の念が見えてくる。この将校との関係がこの映画に加わったことで深みが出た重要な場面です。
シュピルマンを助けたドイツ将校は、名前を聞く「シュピルマン・・・ピアニストらしい名前だな」というシーンがあるが、ドイツ語を知らないとイマイチ意味が判らないけど、シュピール(Spiel)はドイツ語で「演奏する」という意味があるらしいのです。それを私は知らなかったので「リチャード・クレーダーマンもシュピルマンも最後にマンが付くしね?」なんて思ってたのよん。
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