あ と が き

 光月は映画が大好きで、幼少の頃から洋画ばかり観ていました。そんなこともあり、アニメという物は子供だましだと偏見を持って、どちらかというと今まで避けていました。
 それがちょうど一年程前、たまたまテレビで「エヴァンゲリヲン新劇場版:破」を観た時にその考えが覆されました。オープニングで、いきなりアルピーヌA310なんて、マニアックな車が出てきて”これ面白いかも?っ”て、思ってしまったんです。

 早速エヴァの全作品をレンタルで借りて観てみました。そしたらとても面白くってすっかりハマッてしまいました。今までアニメに対して抱いていた偏見が解かれて、もっと他の作品も観てみたいという欲求が湧いてきました。
 そこでアニメファンの友人に聞いたり、ネットの掲示板などで調べてみると、必ず出てくる名前が「涼宮ハルヒの憂鬱」という作品だったんです。
 この奇妙なタイトルの作品もすぐにレンタルで観て、余りの面白さにビックリしてしまいました。単なる学園ドラマが、驚愕のSFドラマへと発展していくのですから、よくこんな奇想天外な物語を思い付いたもんだと、とても感心しました。
 でも光月は見終わった後、気になったことがありました。それは何故この作品に綾波レイが出ているのかと? そう長門有希を綾波レイと勘違いしていたんです。普通に考えると、そんなことあり得ないんですけどね。
 その他にもアスカの性格や台詞はハルヒそっくりだし、渚カオルの雰囲気は古泉に良く似ているし。使徒と神人も同じような怪物だし。
 アニメ初心者だった光月には、アニメには萌えキャラ、お騒がせキャラ、無口キャラ、二枚目キャラなど、おきまりの性格キャラがいることを全然知らなかったんです。今ならお笑いですけれども・・・・・・。でもそのお陰でこの二つの作品を融合した物語を作ると、きっとおもしろい物が出来そうだと閃いたわけです。

 光月は同じジャンルの作品を余り書きたくなく、出来れば色んなジャンルに挑戦したいんです。だから過去にやったことのない人の作品を融合させるということが、とても魅力的な題材に思えました。
 しかしいざ始めると、これが大変なんですね。二つの作品の辻褄が合うプロットを構成していくのがとても難しくて、一体何回ビデオを観たのか分からないくらいです。
 何とかプロットが決まって文章化するにあたり、一度谷川流さんの原作を読んでおこうと思って読んでみたのですが、読後の衝撃は相当のものでした。

 光月は結構本を読むのですが、この原作の完成度には本当に感服しました。谷川さんの語彙の豊富さ、描写力の素晴らしさ、TVアニメはただこの原作を撫でたに過ぎません。これは大傑作です。
 これをライトノベルという狭いジャンルに収めてしまっていいのか? もっと多くの人の目に触れるべきではないのか? 翻訳して海外でも発表すべきではないのか? 光月が思うに、この原作は間違いなく世界でもトップレベルの小説です。
 でも谷川さんの原作が素晴らしければ、素晴らしい程、光月としての問題は大きくなります。とてもこんな文章は書けません。そこでもう開き直って自分の拙い文章で書くことに決めました。そんな紆余曲折の経過を辿って完成したのが本作です。

 ここで少し光月がこの小説でどうしても描きたかった部分を話させて下さい。それはエヴァンゲリオンが派手に戦っているその下で暮らす人々の生活です。
 あんな物が暴れているのです、そこで暮らす人は当然亡くなったり、家族を失う方も大勢いることでしょう。そんな不幸な人々の姿を少しでも描いてみたかったのです。何故なら同様の悲劇が世界中の紛争地帯で、今も繰り広げられていると思うからです。
 拙著を読まれた方が、この国で暮らし平和を享受している幸福を感謝し、また死の恐怖や不幸を背負っている方が、今も地球には沢山いるという事実を、ほんの少しでも考えて頂ければ幸いです。

2010年8月7日 天川光月