1.書き方に関する問題

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(正)(許)(△)(誤)のしるしの基準

(正)

規範的、標準的、一般的な形   国語表記の本則

(許)

現代仮名遣い・送り仮名の付け方など、国語表記の許容

(△)

やや一般的でない形  やや適切でない形  

(誤)

表記・用法上の間違い

 

(き)

(95)(正)(き)いた風(ふう) (誤)聞いた風

(誤)「この仕事では、この箇所(かしょ)の出来・不出来が最大のかぎですね」「新米(しんまいのくせに聞いたふうなことを言うな」。

(コメント:「きいたふう」は、「(気の利いているようすの意から)未熟で何もわかっていないのに、いかにももののわかったような生意気な態度をとること。知ったかぶり」の意を表し、「利(き)いた風」と書くのが本来の表記である。「聞いた風」は、「人から聞いてすでに熟知しているといったようす」の意と誤解して用いたものであろう。しかし、最近の国語辞典の中には、「利いた風・聞いた風」と両者を併記するものもあり、それによれば冒頭例も全くの誤りとは言えないことになる。)

 

(96)(正)奇貨(きか)(お)くべし /(誤)貴貨居くべし

(誤)海外での勤務を希望する者は従来の手当をアップするとの会社発表に、一度外国での生活を経験したいと思っていた彼は、貴貨居くべしという気になって申し出た。

(コメント:「きか居くべし」は、「(珍〈めずら〉しい品物は後日〈ごじつ〉値が上がるから、買ってしまっておけば大きな利益をあげるもとになるということから)得難(えがた)い好機にであったら、それを逃(のが)さず利用しなければならない」の意を表す。「きか」は、「奇貨(珍しい品物)」のことで、「貴貨(貴い品物)」ではない。「居」は、「(後の用のために)しまっておく。蓄える」意。なお、この語の出典は「史記」〈呂不韋伝りょふいでん〉である。)

 

(97)(正)危機一髪(ききいっぱつ) (誤)危機一発

(誤)横から飛び出してきた子供に気付き、ドライバーは危機一発のところでハンドルを切った。

(コメント:「ききいっぱつ」は、「髪の毛一筋ほどのごくわずかな違いが助かるかどうかを決める、極めて危険な状態」をいう。「危機一髪のところで助かる」などと用いる。「ピストルを一発ぶっ放す」などと言うときの「一発」ではないので、冒頭例の「危機一発」は誤りである。)

 

(98)(正)起源(きげん) (正)起原

(正)生命の起原は四十億年ほど前にまでさかのぼると言われる。

(コメント:「物事の起こり、始まりのもと」の意を表す「きげん」は、「起源」とも「起原」とも書く。しかし、「起源」のほうが優勢であり、新聞も「起源」を用いている。(「源」も「原」も「水流の発する所、みなもと」の意。「原」は「源」の原字。)なお、現在では、ふつう、「源」は「みなもと」、「原」は「はらっぱ」というふうに意味が分化して使われる。)

 

(99)(正)機嫌(きげん) (誤)気嫌

(誤)言わでものことを言って、すっかり彼女の気嫌を損(そこ)ねてしまった。

(コメント:「その人の気分の状態。気分のよい状態。また、人の安否」を意味する「きげん」は、古くは「気嫌」と書かれた例も見られるが、現在では「機嫌」が標準的な表記である。なお、「機嫌」は、古語としては「様子。事情。時機。都合」などの意をもつ。)

 

(100)(正)毀損(きそん) (△)棄損

(△)大きな台風が来て家屋がだいぶ棄損した。

(コメント:「物をこわすこと。物がこわれること。また、名誉・信用・利益などを傷つけそこなうこと」を意味する「きそん」は、本来、「毀損」と書くのが正しい。しかし、「毀」が常用漢字表にないため、代用字「棄損」が用いられることもある。例、「名誉棄損」。国語辞典の中にも、「毀損・棄損」と両者を併記するものがいくつか見られる。)

 

(101) 来たる / 来(きた)

(△)「台風来る」の報に接し、家々では戸締まりなどの点検を始めた。

(コメント:送り仮名の付け方について。文語動詞「きたる」は、「来る」では「くる」と読まれるおそれがあるので、「来たる」としたほうがわかりやすい。しかし、「きたる来月三日」など連体詞の場合は「来る」と書く。)

 

(102)(正)生っ粋 /(正)生粋(きっすい)

(正)その界隈(かいわい)には生粋の江戸っ子の住んでいそうな趣(おもむき)の家々が並んでいた。

(コメント:「まじり気が全くないこと。純粋」の意を表す「きっすい」は、「生粋(きすい)」から変化した語で、「生っ粋」と「っ」を送るのが本来の表記である。公用文や教科書は「生っ粋」を用いている。(「真っ先」「木っ端」「先っぽ」「下っ端」などと同様。)しかし、古くから「生粋」も多く使われており、新聞の表記は「生粋」である。国語辞典の中にも「生粋」だけを掲げるものがある。)

 

(103)(正)木で鼻をくく(括)る /(誤)木で花をくくる

(誤)その男性の丁重(ていちょう)な挨拶(あいさつ)に対して、彼は、木で花をくくったような挨拶を返しただけであった。

(コメント:この語は、「(鼻汁〈はなじる〉を木でこすって取るような、はた目もかまわぬ不体裁な振る舞いをすることから)無愛想に応対するさま。冷淡にあしらうさま」をいう。「くくる」は「こくる(=強くこする)」の誤用が慣用化したもの。したがって、「木で鼻をくくる」が正しく、冒頭例のように「木で花をくくる」とは書かない。)

 

(104)(正)機転(きてん)(△)気転

(△)今度(こんど)うちの店に入った娘さんは実によく気転の利(き)く子で、皆大助かりしています。

(コメント:「状況に応じてとっさに心が働くこと。とっさにうまい考えが出ること」の意を表す「きてん」は、「機転」とも「気転」とも書くが、「機転」のほうが一般的である。)

 

(105)(正)木に縁(よ)りて魚(うお)を求める /(誤)木に寄りて魚を求める

(誤)彼に先方との仲介役を頼んでも、木に寄りて魚を求めるようなものだと思うよ。先方の会社に知人がいるといっても、守衛さんだけらしいから。

(コメント:「木に縁りて(縁って)魚を求める」が正しい。「木に縁りて魚を求む」は、「(木によじ登って魚を捕(と)ろうとする意から)目的を実現させるための手段が間違っていて、何かを得ようとしても得られないこと。また、見当違いのはなはだ難しい望みを持つこと」をいう。「縁」は「よじ登る」意。冒頭例のように「木に寄りて…」とは書かない。(「寄らば大樹の陰」の場合は「寄る」。)出典は中国の「孟子(もうし)」〈梁恵王(りょうけいおう)・上〉。)

 

(106)(正)記念(きねん) (△)紀念

(△)雷鳥(らいちょう)は特別天然紀念物に指定されています。

(コメント:「後日の思い出として残しておくこと。また、そのもの」の意を表す「きねん」は、古くは「紀念」も使われたが(「史蹟(しせき)名勝天然紀念物保存法」という法律もあった)、現在では「記念」が一般的である。)

 

(107)(正)寄付(きふ) (正)寄附

(正)母校の図書館に自分の蔵書を寄附する。

(コメント:「(公共の事業・設備などのために)金品を贈ること」を意味する「きふ」は、「寄付」とも「寄附」とも書く。一般には「寄付」が多く、新聞表記も「寄付」である。しかし、法令・公用文における公式の表記は「寄附」である。なお、「付則・附則」「付属・附属」「付帯・附帯」「付置・附置」なども、法律では「附」の字を用いる。)

 

(108)(正)詭弁(きべん) (△)奇弁

(△)ああまで奇弁を弄(ろう)して自分の過失ではなかったと言い張るとは、あの男の人間性が疑われるよ。

(コメント:「道理に合わないことを無理やりに正当化しようとする議論・弁論。こじつけ、ごまかしの論」を意味する「きべん」は、本来、「詭弁」が正しい(「詭」は、「いつわる、あざむく」意)。しかし、「詭」が常用漢字表にないため、代用字「奇弁」が使われることもある。また、「詭弁」には、「論理学で、外見・形式をもっともらしく整え、正しいように見せ掛けた虚偽の論法(多くの場合、相手をあざむいたり困らせたりすることになる)。ソフィズム」の意もあり、この場合は、代用字「危弁」が使われることもある。しかし、公式の文書や書き取りの試験などにおいては、ともに「詭弁」と書いたほうが間違いない。)

 

(109)(正)肝いり(煎り) /(△)肝入り

(△)彼は、社長夫人の肝入りで見合いをしたそうだ。

(コメント:「きもいり」は、肝(肝臓。内蔵。心)を火で熱して焦(こ)がすことから、「あれこれと心を砕いて、双方の間を取り持ったり人の世話をしたりすること」をいう。したがって、「肝煎り」が本来の表記である。(「肝を煎る」は、「気持ちをいらだたせる。やきもきする。また、人の世話をする。取り持つ」の意。) しかし、「煎」が常用漢字表にないため、「肝いり」と書かれることが多い。現在、国語辞典の中には、「肝煎り・肝入り」と両表記を掲げるものもあるが、「肝入り」は掲げない辞典も多い。)

 

(110)(正)(きも)に銘(めい)じる /(誤)肝に命じる

(誤)この度の先輩の親身(しんみ)な御忠告、ありがたく肝に命じました

(コメント:「肝に銘じました」が正しい。「肝」は、「生気のもととなる臓器。転じて、心」の意。「銘」は、「刻み付ける」意。「肝に銘じる」は、「強く感じたことを心に刻み付ける」ことをいう。したがって、冒頭例のように「肝に命じる」とは書かない。)

 

(111)(正)九仞(きゅうじん)の功(こう)を一簣(いっき)に虧(か)く /(誤)九仞の功を一気に欠く

(誤)ようやく完成の見込みが立ったこの研究を、都合(つごう)をつけようとすればなんとかなりそうな資金を惜(お)しんで中止にしてしまうとは、九仞の功を一気に欠くようなものだ。

(コメント:「九仞の功を一簣に虧く」が正しい。この言葉は、「山を作るのに、九仞の高さになっても、最後の一もっこ(「簣」は「土を運ぶもっこ」のこと)をやめれば、仕事が完成したとは言えない」というのが原義。(「九仞」は「非常に高いさま」の形容。一仞は、一説に七尺。)そこから、「長い間の努力が実ってほとんど成功しかけた物事が、最後のちょっとしたことが原因で台なしになる」の意を表す。「いっき」は、「一気飲み」「一気に仕事を仕上げる」などの「一気」ではない。なお、「千尋(仞)の谷」との紛れによるものか、「千仞の功を一簣に欠く」と言い誤る人もいるようである。(「虧く」と「欠く」は通用する。)「仞。簣。虧」は常用漢字表にない字。)

 

(112)(正)きゅうり(胡瓜) /(誤)きうり

(誤)家庭菜園できうりを作ってみたところ、思いのほかにたくさんできた。

(コメント:野菜の「胡瓜」は、「き(黄)+うり(瓜)」を語源とする(別の説もある)。歴史的仮名遣いは「きうり」であるが、現代語としての標準的な発音は「キューリ」である。仮名による表記もその発音にのっとって「きゅうり」が適切である。)

 

(113)(正)強豪(きょうごう) (△)強剛

(△)強剛どうしの対戦は二対二の九回表を迎え、球場の声援がいちだんと大きくなった。

(コメント:「きょうごう」は、「強豪」と書くと「貫禄(かんろく)と実力を兼ね備えていて、きわめて強いこと。また、そのような人やチーム」を意味し(例、「強豪ぞろい」)、「強剛」と書くと「強くて物事に屈しないこと。手ごわいこと。また、そのようなさま」を意味する(例、「彼は強剛な意志の持ち主だ」)。しかし、国語辞典を見ると、同一見出しの下に「強豪・強剛」と併記するものもある。(「強剛」は、現在はほとんど使われないので、掲げていないものもある。)例文の場合、意味に共通するところのある「強剛」を使っても全くの誤りとは言えないが、「強豪」が適切である。)

 

(114)(正)協力(きょうりょく)(誤)恊力

(誤)被害者救済の募金に恊力する。

(コメント:「ある目的のために、力を合わせること」を意味する「きょうりょく」は、「協力」が正しい。漢和辞典の中には、「恊は、協と全く同じ語を表す異体字にすぎない」と記すものもあるが、「恊と協とは別字」とするもののほうが圧倒的に多い。古くは「共力」という表記も見られるが、現在では使われない。)

 

(115)(正)魚介類(ぎょかいるい) (△)魚貝類

(△)漁港に近い魚屋の店頭には、遠海・近海のさまざまな魚、えび・蟹(かに)、いか・たこ、さざえ・あわび、貝、うに・なまこなどの魚貝類が所狭(ところせま)しと並べられていた。

(コメント:「ぎょかいるい」は、「魚類と貝類。また、(食用となる)水産動物の総称」を意味する。本来の表記は「魚介類」であり(「介」は「甲(こう)(=こうら)や殻(から)」の意)、魚や、亀(かめ)・蟹かに・貝などのたぐいを指す。国語辞典では、「魚介(類)・魚貝(類)」の順にこの二つを併記するものが多いが、「魚貝(類)」は載せないものもある。)

 

(116)(正)醵出(きょしゅつ)(正)拠出

(正)被災者救済のために金品を拠出する。

(コメント:「きょしゅつ(=ある目的のために、金銭や品物を出し合うこと)」は、「醵出」が本来の表記である。しかし、「醵(=金銭を出し合って酒を飲む)」が常用漢字表にないため、代用字「拠出」が広く使われている。「拠」は、「手で寄りすがって落ち着く。頼みとしてすがる。よる」の意。)

 

(117)(正)きりゅう(桐生) /(誤)きりう

(誤)きりう(桐生)は絹織物(きぬおりもの)で有名な土地です。

(コメント:群馬県の地名「桐生」の現代仮名遣いによる表記は「きりゅう」である。発音は「キリュー」。歴史的仮名遣いは「きりふ」。語源は、「桐(=植物の、きり)」+「生(ふ)(=一面にそれを産する場所)」。)

 

(118)(正)均整(きんせい) (正)均斉

(正)浜辺(はまべ)で戯(たわむ)れる水着姿の少女たちは、皆、均斉のとれた健康的な体をしていた。

(コメント:「きんせい(=釣り合いが取れて、安定していること)」は、「均整」とも「均斉」とも書く。(「均」は「ひとしくする。ととのえる」、「整」は「乱れないようにきちんとととのえる」、「斉」は「偏(かたよ)りがないようにきちんとととのえる。一様にそろえる」の意。)しかし、一般的には「均整」のほうがやや優勢である。)