1.書き方に関する問題

 問題別入り口  内容と構成  トップページ  見出し語一覧

(正)(許)(△)(誤)のしるしの基準

(正)

規範的、標準的、一般的な形   国語表記の本則

(許)

現代仮名遣い・送り仮名の付け方など、国語表記の許容

(△)

やや一般的でない形  やや適切でない形  

(誤)

表記・用法上の間違い

 

(た)

(233)(正)大義名分(たいぎめいぶん)(誤)大義明分

(誤)すべて会社再建のためという大義明分がなければ、一部の人に退職を促す人事部長など勤まらないよ。

(コメント:「たいぎめいぶん」は「大義名分」と書く。「大義」は「君主・国家に対する臣民としての道。人として守らなければならない道義」、「名分」は「身分や地位の名に応じて守らなければならない本分」の意。「明らかな本分」ということではない。)

 

(234)(正)太鼓(たいこ) (誤)大鼓

(誤)大鼓をたたくのがうまい彼は、部長には気に入られているが、同僚からはよく思われていない。

(コメント:「たいこ」は「太鼓」と書く。「太鼓をたた(叩)く」は、比喩(ひゆ)的に「調子のよいことを言って、人の気に入るようにする」意。なお、「大鼓」という語もあり、これは「おおつづみ」と読み、「能楽(のうがく)・長唄(ながうた)などで、囃子(はやし)に使う大きな鼓」を指す。)

 

(235)(正)大公国(たいこうこく)(誤)太公国

(誤)ルクセンブルク太公国は、ドイツの西端に接する、面積三平方キロの小国です。

(コメント:「大公(=ヨーロッパで、小国の君主<また、君主の一門の男子>)」の治める国ということで、「大公国」が正しい。「太公」は、祖父のこと。また、他人の父や高齢の人を敬っていう語。)

 

(236)(正)太公望(たいこうぼう)(誤)大公望

(誤)日曜日の川のほとりには、大公望たちが釣り糸を垂れていた。

(コメント:「釣りをする人。釣りの好きな人」を意味する「たいこうぼう」は、「太公望」と書く。もと、中国周代の賢臣、呂尚(りょしょう)のこと。文王が渭水(いすい)のほとりで釣りをする呂尚を見いだし、「この男こそ我が太公(=祖父)の時から待ち望んでいた賢人だ」と喜んだという故事から出た語。)

 

(237)(正)大息(たいそく) (△)太息

(△)上京した息子(むすこ)が学校へも行かず、バイトと遊びに明け暮れているという話を耳にし、父親は太息した。

(コメント:「大きなため息をつくこと。嘆くこと。大きく息をすること」の意の「たいそく」は、「大息」が一般的である。しかし、「太息」を併記する国語辞典もある。なお、「ちょうたいそく」の場合は「長大息」と書き、「長太息」とは書かない。)

 

(238)(正)太平洋(たいへいよう)(誤)大平洋

(誤)大平洋の中に浮かぶ常夏(とこなつ)の島ハワイには、毎年、多数の日本人観光客が訪れる。

(コメント:「たいへいよう」は、「太平な広い海」(英語 Pacific Ocean の pacific は「平和な。平穏な」の意)のことで、「太平洋」と書く。なお、「たいせいよう」は、「大西洋」(「大きな西の海」の意。英語 Atlantic Ocean )と書く。)

 

(239)(正)高根(たかね)の花 /(誤)高値の花

(誤)一介のサラリーマンにとって、広い庭付きのマイホームを手に入れることなど、まさに高値の花だ。

(コメント:「たかねの花」は、「(高い山の頂に咲いている美しい花の意から)欲しいと思っても、遠くから眺めるだけで、実際には手に入れることのできないもの」を意味し、「高根(高嶺)の花」と書く(「嶺」は常用漢字でない)。「高値」つまり「高い値段」の花ということではない。)

 

(240)(正)(たか)みの見物 /(誤)高見の見物

(誤)いま行われている争議は、リストラによる退職者の対象と条件についてなのだ。君がいくら組合員でなくとも、高見の見物というわけにはいかないだろう。

(コメント:「たかみ」は、形容詞「たかい(高い)」の語幹「たか」に、そのような場所の意を示す接尾語「み」が付いたもので、「自分に関係が及ばないような、少し距離を置いた安全な場所」を指す。したがって、「高みの見物」が正しい。なお、「高見の見物」という表記を認め、「『見』は当て字」とする国語辞典もあるが、一般的でない。)

 

(241)(正)(たか)をくく(括)る /(誤)多寡をくくる

(誤)相手はまだ幕内も下のほうだと多寡(たか)をくくって土俵に上がると、大関といえどもとんでもない目にあうおそれがある。

(コメント:「たかをくくる」は、「(物事の限度・限界をひとまとめにする<軽く見る>ことから)せいぜいその程度だろうと安易に予測する。たいしたことはないと見くびる」意を表すようになった語。「高をくくる」が正しい。「多寡(=多いことと少ないこと。多いか少ないか)」は、「金額の多寡は問わない」などと使われる語。「高が知れる(=程度や限度がわかる)」も、「多寡が知れる」とは書かない。)

 

(242) 大宰府(だざいふ) / 太宰府

(誤)学問の神菅原道真(すがわらのみちざね)公を祭る大宰府天満宮には、大勢の学生が参拝していた。

(コメント:「大宰府」も「太宰府」も「だざいふ」と読み、ともに使われるが、前者は官衙(かんが)(=官庁。役所)や史跡関係を指すときに使われ(例、「大宰府跡(あと)」)、後者は地名の場合に使われる。冒頭例は、太宰府(=福岡県中部に位置する地名。現在、太宰府市)という地域にある天満宮の意であり、「太宰府天満宮」が正しい。

 

(243)(△)賜物(たまもの)(△)(たまもの)

(△)私が今日あるのもあの方の御援助の賜物と厚く感謝しております。

(コメント:「神仏や高貴の方からいただいたもの。転じて、一般的に他から受ける恩恵。苦しい試練の後に得られるよい結果」の意を表す「たまもの」は、古くは「賜」と書かれ、のち、「賜物」とも書かれるようになった。現在でも、この両表記はかなり広く行われている。しかし、常用漢字表の「賜」には「シ、たまわる」とあり、「たまもの」「たま」は載っていない。したがって、同表に従えば、「たまもの」と仮名で書くことになる。新聞でも仮名書きにしている。)

 

(244)(正)(たまわ)る /(許)(たま)わる

(許)市長より御祝辞を賜わる

(コメント:送り仮名の付け方について。活用語尾だけを送る「賜る」が本則。しかし、活用語尾の前の音節から送る「賜わる」も認められている。)

 

(245)(正)探検(たんけん) (△)探険

(△)子供のころは様々な探険にあこがれるものだ。

(コメント:「未知の地域を、危険を冒して探り調べること」を「たんけん」と言うが、危険を冒すことに重点を置けば「探険」、探り調べることに重点を置けば「探検」が当たっている。しかし、実際には、「探検」が多く使われ、新聞でも「探検」を用いている。)

 

(246)(正)単刀直入(たんとうちょくにゅう)(誤)短刀直入

(誤)短刀直入に伺いますが、この機器を一台売ると、マージンはいかほど頂けますか。

(コメント:「単刀直入」は、一本の刀を振りかざして敵陣にまっすぐ切りこんでいくことが原義であり、そこから、「前置きを抜きにしていきなり本題に入ること」を意味するようになった語。「たんとう」は「短い刀」の意ではない。)

 

(247)(正)淡泊(たんぱく) (△)淡白

(△)わたしは、てんぷらのようなしつこいものより、すしのような淡白な食べ物のほうが好きだ。

(コメント:冒頭例の「たんぱく」は、「淡(あわい。うすい)」と「泊(うすい〈薄〉。浅い)」とが結合した語で、「あっさりしたようす」を意味する。したがって、本来の表記は「淡泊」である。しかし、国語辞典には「淡白」を併記するものも多い。新聞では「淡泊」を用いている。)

 

(248)(正)鍛錬(たんれん) (正)鍛練

(正)夏目漱石(そうせき)は若いころ精神を鍛練するために正月を禅寺で過ごしている。

(コメント:「鍛」は「金属を熱して打つ」意、「錬」は「金属を熱して柔らかくする」意。「鍛錬」で「金属をきたえること」を意味し、転じて、「心身をきたえること。技を磨くこと」の意でも使われるようになった。一方、「練」は「生糸を柔らかくしてより分ける」意から「ねる。みがく。きたえる。慣れる」の意で使われるようになった字。「鍛錬」も「鍛練」もともに正しい表記であるが、新聞では「鍛錬」を用いている。)