2.読み方に関する問題

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(正)(許)(△)(誤)のしるしの基準

(正)

規範的、標準的、一般的な形   国語表記の本則

(許)

現代仮名遣い・送り仮名の付け方など、国語表記の許容

(△)

やや一般的でない形  やや適切でない形  

(誤)

表記・用法上の間違い

 

(し)

(73) しい(思惟) / しゆい

(△)その男の目標は、我々のしゆい(思惟)するところをはるかに超えたものであった。

(コメント:「思惟」は「しい」(漢音読み)とも「しゆい」(呉音読み)とも読むが、前者は「考えること。思考」、後者は「仏教語として、一つのことを思いつづけること。よく考えること」の意で使われることが多い。例、「年々汚れのひどくなる環境をどう守っていくべきか、すべての住民が思惟(しい)をめぐらさねばならない重大事だ」「一切(いっさい)の思惟(しゆい)・分別を断じて空(くう)をさとる」。したがって、この場合は、一般語としての読み「しい」のほうがよい。なお、「惟」は常用漢字表にない字。)

 

(74)(正)しいか(詩歌) /(正)しか

(正)わたしは、しか(詩歌)のうち、とりわけ近代詩が好きです。

(コメント:「詩歌(=漢詩や和歌、また、詩、俳句・短歌の総称)」は、「しいか」とも「しか」とも読む。しかし、前者のほうが一般的。NHKでも「シーカ」の発音を優先させている。)

 

(75)(正)しいん(子音) /(△)しおん

(△)しおん(子音)とは、唇(くちびる)・舌・歯などで空気の流れを遮(さえぎ)ったり、摩擦や振動をさせたりして発する音をいう。

(コメント:「子音」は「しいん」と読むのが一般的である。)

 

(76)(正)しかん(弛緩) /(△)ちかん

(△)前半で10点も取られたら、選手の気持ちがすっかりちかん(弛緩)してしまい、後半はさらに点差が開いて惨敗(ざんぱい)した。

(コメント:「弛緩(=ゆるみたるむこと)」は、「しかん」が標準的な読み。「ちかん」は慣用読みである。なお、「弛」は常用漢字表にない字。)

 

(77)(正)しこう(施行) /(正)せこう

(正)新しい法案が可決され、来年の四月一日からせこう(施行)されることになった。

(コメント:「施行」は「しこう」とも「せこう」とも読む。国語辞典では、前者を本見出し、後者を参照見出しとするものが多い。NHKでは、「施行」を「シコ―」、「施工」を「セコ―」と発音して区別し、法律方面では、「執行(しっこう)」と区別して多く「せこう」と読む。なお、「せぎょう」と読むと、「(仏教で)功徳(くどく)のため、僧や貧しい人々に物を施(ほどこ)し与えること」の意となる。)

 

(78)(正)しじゅうかた(四十肩) /(誤)よんじゅうかた

(誤)会社でパソコンを使わざるを得なくなってから、よんじゅうかた(四十肩)がひどくなってまいったよ。

(コメント:「四十肩(=四十歳ごろになって慢性的に肩の関節が痛み、思うように腕が動かせなくなること)」は、ふつう「しじゅうかた」と読み、「よんじゅうかた」とは読まない。NHKでも、「シジューカタ」と発音し、「ヨンジューカタ」とは言わない。なお、「四十七士。赤穂浪士(あこうろうし)」「四十八手。相撲(すもう)など」「四十九日(の法要)」なども、「しじゅうしちし」「しじゅうはって」「しじゅうくにち」と読み、「よんじゅうしちし」「よんじゅうはって」「よんじゅうくにち」とは読まない。)

 

(79)(正)したつづみ(舌鼓) /(△)したづつみ

(△)子供たちがしたづつみ(舌鼓)を打ちながらケーキをほおばっている。

(コメント:「舌鼓を打つ(=うまい物を食べたときに思わず舌を鳴らすこと)」は、「したつづみ」とも「したづつみ」とも読むが、前者のほうが標準的。)

 

(80)(正)じっぴき(十匹) /(△)じゅっぴき

(△)(そり)じゅっぴき(十匹)の犬に引かせる。

(コメント:「十」には「ジュウ」と「ジッ」との二つの音があるが、「十字架(じゅうじか)」「十文字(じゅうもんじ)」などの場合は前者、「十匹(じっぴき)」「十回(じっかい)」「十戒(じっかい)」「十干(じっかん)」「十本(じっぽん)」「二十世紀(にじっせいき)」などの場合は「ジッ」と発音するのが一般的である。)

 

(81)(正)しゅっしょう(出生) /(正)しゅっせい

(正)少年は、病の床にある母親から、自分のしゅっせい(出生)の秘密を告げられた。

(コメント:「出生」は、「しゅっしょう」とも「しゅっせい」とも読み、どちらも正しい。しかし、本来の読みは前者で、NHKでは、その「シュッショー」を優先させている。)

 

(82)(正)じゅんぷうまんぱん(順風満帆) /(誤)じゅんぷうまんぽ

(誤)転職した当初は何事もうまく行かず、毎月相当な赤字を出しましたが、三年たった今では店もじゅんぷうまんぽ(順風満帆)といったところです。

(コメント:「順風満帆(=帆(ほ)に追い風をいっぱいに受けて、船が快調に進むこと。物事が順調に進むこと)」は、四字すべて音で読む「じゅん・ぷう・まん・ぱん」が正しい。)

 

(83)(正)じょういかたつ(上意下達) /(誤)じょういげたつ

(誤)毎週月曜日の九時に開かれる会社の会議は、常にじょういげたつ(上意下達)の場でしかなかった。

(コメント:「上意下達(=上の者の命令や意志が下に伝えられること)」は、「じょういかたつ」と読み、「じょういげたつ(げだつ)」とは読まない。対義語は「下意上達(かいじょうたつ)」。)

 

(84)(正)しょうけい(憧憬) /(正)どうけい

(正)ひときわ美しくて頭がよく、その上気立ての優しい彼女は、学校中の男子生徒のどうけい(憧憬)の的であった。

(コメント:「憧憬(=あこがれ)」は、「しょうけい」が本来の読み。「どうけい」は、明治末期から使われるようになった慣用読み。現在、この「どうけい」のほうがやや優勢。なお、「憧」も「憬」も常用漢字ではない。)

 

(85)(正)じょうしょ(情緒) /(正)じょうちょ

(正)夕日に映える山の湖面には、なんとも言えないじょうちょ(情緒)が漂っていた。

(コメント:「情緒」は、「じょうしょ」とも「じょうちょ」とも読む。伝統的な読みは前者だが、慣用読みの後者も一般に広く使われている。常用漢字表の例欄にも「情緒(ジョウチョ)」(「ジョウショ」とも)とあり、NHKでも「ジョーチョ」と発音している。)

 

(86)(正)しょうもう(消耗) /(△)しょうこう

(△)早朝からの力仕事で、すっかり体力をしょうこう(消耗)した。

(コメント:「消耗」は、「しょうこう」が本来の読みである。しかし、現在では使われる度合いが逆転し、慣用読み「しょうもう」のほうが一般的である。)

 

(87)(正)じょじょうふ(女丈夫) /(△)じょじょうぶ

(△)あの社長は、業界でも評判のじょじょうぶ(女丈夫)だ。

(コメント:「女丈夫」は、女でありながら「丈夫(じょうふ)(=一人前の男子)」のようだということ。読みは「じょじょうふ」(「ふ」が清音)が正しい。しかし、現代では「じょじょうぶ」と言う人も多く、この読みも全くの誤りとは言えないであろう。なお、「偉丈夫(=体がたくましく、りっぱな男)」も、本来の読みは「いじょうふ」だが、「いじょうぶ」と言う人が多い。)

 

(88)(正)しょたいめん(初対面) /(△)はつたいめん

(△)彼は実に気さくな性格で、はつたいめん(初対面)の人ともすぐ打ち解けて話し合うことができる。

(コメント:「初対面」は、「しょたいめん」が一般的な読みである。しかし、「はつたいめん」も全くの誤りとは言えない。「初体験」は、逆に「はつたいけん」が一般的であるが、「しょたいけん」も誤読とは言えない。)

 

(89)(正)しわす(師走) /(正)しはす

(正)しはす(師走)の街に出ると、行き来する人々も心なしかせわしげに感じられる。

(コメント:(旧暦)十二月を意味する「師走」は、常用漢字表・付表に「しわす。「しはす」とも言う」とある。NHKでは、「シワス」と発音し、「シハス」は用いない。)

 

(90)(正)じんかん(人間)至る所青山あり /(正)にんげん至る所青山あり

(正)君は近々ブラジルへ移って農業を始めるとか、にんげん(人間)至る所青山ありだ、大いに頑張りたまえ。

(コメント:「人間至る所青山あり」は、江戸時代末期の僧、釈月性(しゃくげっしょう)の作と伝えられる漢詩の結句(けっく)である。「人間」は、「にんげん」と読むと「ひと」、「じんかん」と読むと「人の世。世間」の意となる。漢文では「人間」を「ジンカン」と漢音で読むならわしがあるから、本来は「じんかん」と読むべき詩句であろう。しかし、現在、国語辞典に「にんげん…」の形で掲げるものがかなり見られる。意味は、「この世の中には、あらゆる所に己の骨を埋める土地(青々とした美しい山)がある。(または、人間はどこでも己の骨を埋める土地とすることができる。)だから、大望を抱いて故郷を出、広い世界で大いに活躍すべきである」ということ。)

 

(91)(正)しんしんいちにょ(心身一如) /(誤)しんしんいちじょ

(誤)頭の中で考えるだけで実際の行(ぎょう)を積むことがなければ、決してしんしんいちじょ(心身一如)の境地になど到達できるものではない。

(コメント:「心身一如」は、「しんしんいちにょ」と読み、「しんしんいちじょ」とは読まない。仏教語としては、「身心一如」と「身」を先にし、読みも「しんじんいちにょ」と三字めを「じ」と濁音にするのが本来の形。)

 

(92)(正)人生(じんせい)、行路(こうろ)(かた)し /(誤)人生行路、難し

(誤)人はだれも一生のうちに何度か人生行路、難しの感を抱く場面に突き当たるものです。しかし、その時こそその人の真価が問われるのです。

(コメント:「人生行路難し」は、「人がこの世に生きている間には、山あり谷ありの難所を進んだり、悪天候や思わぬ災難に見舞われたりする旅路を行くのに似て、実にさまざまな苦難があるものだ」という意味。この言葉の構成は「人生+(行路+難し)」である。したがって、読みは、「人生行路、難し」ではなく、「人生、行路難し」が正しい。なお、近年、「人生航路」という表記もしばしば使われるが、「人生、航路難し」とは書かない。)

 

(93)(正)しんぱん(審判) /(△)しんばん

(△)攻撃側の監督は、ホームスチールをアウトとしたしんばん(審判)の判定に激しく抗議した。

(コメント:「スポーツなどで、勝敗や反則などを判定すること。また、その人」を意味する「審判」は、「しんぱん」とも「しんばん」(「バン」は慣用音)とも読むが、前者が一般的である。NHKでも「シンパン」と言い、「シンバン」とは言わないことにしている。特に、キリスト教でいう「最後の審判」の場合は、「しんぱん」であり、「しんばん」ではない。)