3.言い方に関する問題

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(正)(許)(△)(誤)のしるしの基準

(正)

規範的、標準的、一般的な形   国語表記の本則

(許)

現代仮名遣い・送り仮名の付け方など、国語表記の許容

(△)

やや一般的でない形  やや適切でない形  

(誤)

表記・用法上の間違い

 

(こ)

(137)(正)こいめ(濃いめ) /(△)こめ(濃め)

(△)もう少しこめ(濃め)に味付けしたほうがよい。

(コメント:接尾語「め」は、「厚(あつ)めの本。多(おお)めに見積もる」などと形容詞の語幹に付く。しかし、「濃い」だけは例外で、語幹「こ(濃)」ではなく、連体形「濃い」に付く形が一般的。対義語「薄い」については、「薄(うす)め」が正しく、「薄いめ」とは言わない。なお、「濃い茶」は「濃茶(こちゃ)」とは言わず、「薄茶(うすちゃ)」は「薄い茶」とは言わない。)

 

(138)(正)紅一点(こういってん)(誤)黒一点(くろいってん)

(誤)「定年後、近くのピアノ教室に通いはじめたのだが、生徒はおばちゃん数人と女の子ばかりのようだ」「黒一点というわけだ。うらやましい」。

(コメント:「紅一点」は、ふつう「男性ばかりの中に、女性がただ一人交じっていること」をいう。例、「部員中紅一点の彼女は、わが野球部のマドンナだ」。「黒一点(くろいってん。こくいってん)」はこの「紅一点」を踏まえた造語であるが、まだ広く認められている言い方とは言えない。)

 

(139)(正)肯綮(こうけい)に中(あた)る /(誤)肯綮を得る

(誤)彼のすることは常に肯綮を得ており、皆から信頼されていた。

(コメント:「肯綮に当たっており」(本来の表記は「肯綮に中(あた)る」。ただし、「中」の「あたる」が常用漢字表の音訓欄にない訓なので、「当たる」をあてることが多い。)が正しい。「肯綮」は「(刀でさく牛の)骨にかたく付着した肉と、筋の入り組んだところ」を指し、転じて「物事の急所や要点」を意味する。例、「彼の批評は肯綮に当たっている」「肯綮に当たる御意見」。)

 

(140)(正)公算(こうさん)が大きい /(△)公算が強い

(△)あれだけのスタッフをそろえられれば、今回の事業計画は成功の公算が強いと思われる。

(コメント:「公算(=あることが将来起こるであろうことの確実性の度合い。確率。見込み)が大きい」が本来の言い方。しかし、現在では「公算が強い」もかなり使われている。なお、「危険度」「死亡率」などは、数値に関係した語であるが、「危険度が高い」「死亡率が低い」と、大小ではなく、高低で言われることが多い。)

 

(141)(正)好評(こうひょう)を博(はく)した /(誤)好評を取った

(誤)この秋、ドイツから来た歌劇団は、東京・大阪公演ともに好評を取った

(コメント:「好評を博した」が適切。「好評を得る」という言い方もある。しかし、冒頭例の「好評を取った」は耳慣れない言い方である。「よい評判(ひょうばん)を取った」の場合は、「取った」でよい。)

 

(142)(正)(こう)を聞(き)く /(誤)香をか(嗅)ぐ

(誤)陳列棚(ちんれつだな)の古い香炉(こうろ)を眺めながら、私は、香をかぎ、歌を詠(よ)んで過ごしていたいにしえびとに思いをはせた。

(コメント:「香を聞く」は、「香をたいて、そのかおりをかぎ味わう。また、そのかおりから、たかれた香をかぎ分ける」ことをいう。(「聞く」は、かおり・においをかぐ意)。これを冒頭例のように「香をか(嗅)ぐ」とは言わない。なお、「香を楽しむ」という言い方もある。「嗅」は常用漢字でない。追記―平成22年11月告示の新しい「常用漢字表」には「嗅 キュウ かぐ」が追加された。)

 

(143)(正)コーヒーを入(い)れる /(誤)コーヒーを立てる

(誤)今日(きょう)はゆっくりしていられるのね。今コーヒーを立てますわ。

(コメント:「コーヒーを入れます」が適切。「入れる」は、「湯を注いで飲み物をつくる」意。「番茶を入れる」「お茶を入れる」など。「立てる」は、「抹茶(まっちゃ)に湯を注いでまぜ合わせる」意で、「お茶を立てる」「お薄(うす)を立てる」などとは言うが、「コーヒーを立てる」とは言わない。)

 

(144)(正)黒白(こくびゃく)をつける /(△)白黒(しろくろ)をつける

(△)君の言うことが正しいか僕の言うことが正しいか、皆の前で白黒をつけようではないか。

(コメント:「ある事柄について、正邪・是非などをはっきりさせる」の意を表す「黒白をつける」は、「白黒をつける」とも言われるが、本来は「黒白を」が正しい。「シロ」「クロ」は、犯罪容疑の有無(うむ)をいう隠語である。「黒白をわきま(弁)える(=物事の是非・正邪を識別する)」「黒白を弁(べん)ぜず(=物事の是非・正邪が区別できない)」などの漢語については、「白黒をわきまえる」「白黒を弁ぜず」は誤りである。)

 

(145)(正)虎口(ここう)を脱(だっ)する /(誤)虎穴(こけつ)を脱する

(誤)これ以上雪にうずまっていては命がないというときに救援隊が到着し、幸いにも虎穴を脱することができた。

(コメント:「虎口を脱する(=一口にしようとして迫ってくる虎(とら)の口から逃(のが)れる。危険この上もない場所や状態から辛うじて逃れる)」が正しい。例、「その国を旅行している間に内乱が勃発(ぼっぱつ)し、まさに虎口を脱する思いで隣国にたどり着いた」。「虎穴」は、「虎穴に入(い)らずんば虎子(こじ)を得(え)ず(=虎のすむ穴に入らないと虎の子を手に入れることはできない。危険を承知で物事に当たらなければ大きな利益や成果を得ることはできない)」の故事に用いられている語。なお、「虎」は常用漢字でない。追記―平成22年11月告示の新しい「常用漢字表」には「虎 コ とら」が追加された。)

 

(146)(正)午後十二時十分(じっぷん)(正)午後零時十分

(正)本日の会議は午後零時十分より特別会議室にて食事をしながら行います。

(コメント:「午後十二時十分」も「午後零時(れいじ)十分」もともに正しい。一般には前者が多いが、新聞やテレビ・ラジオでは原則として後者を用いる。なお、「午後」「午前」は、昔の時刻の呼び名「午(うまの刻」を基準として造った言葉である。昼間の零時(午前十二時)ちょうどは「正午」と言うが、これは「正(まさ)に午の刻」の意。)

 

(147)(正)古式(こしき)ゆかしく /(誤)古式豊(ゆた)かに

(誤)皇太子の御成婚式が古式豊かに行われた。

(コメント:「古式ゆかしく」、または「古式にのっとり(従って。よって)」「昔ながらの形式で」などが適切である。なお、「古色ゆかしく」という言い方を耳にすることもあるが、誤りである。)

 

(148)(正)故障(こしょう)(△)故障中(こしょうちゅう)

(△){柱時計に付けられたはり紙の}故障中 

(コメント:この場合の「‐中」は、「授業中」「休憩中」「修理中」など、人間がその事をしている途中であることを意味する。したがって、「故障中」は不自然な言い方である。単に「故障」でよい。)

 

(149) こだわる

(△)ここにお出しした料理は、当地きっての名コックがとことん材料にこだわり、腕によりをかけてこしらえたものです。

(コメント:「こだわる」は、「(ささいな事柄について)必要以上に気にする。その事に気持ちがとらわれる。拘泥(こうでい)する」意。例、「そんなミスにいつまでもこだわっていないで、これからの仕事をどうするかに全神経を使うべきだ」「お金(地位・体裁・容姿・勝敗)にこだわる」。最近、この語を「妥協(だきょう)しないで、とことん自分の欲するものを追求する」のような肯定的な意味合いで用いる人が多いが(例、「身につける物はすべて銘柄にこだわる」「こだわりの一品」)、これには抵抗があるという人も少なくない。)

 

(150)(正)言葉を濁(にご)す /(△)口を濁す

(△)その健康器具の効能を得々と弁じたてるセールスマンに、「近所で実際に買って使っている方は」と尋ねたら、急に口を濁した

(コメント:「言葉を濁す」は、「(肝心な点などを)はっきりと言わない。あいまいに言う」の意。これを「口を濁す」と言う人が増えているが、本来の言い方ではない。)

 

(151)(正)ごね得(どく) (正)ごて得

(正)男は、こんな示談金(じだんきん)では納得できないと、執拗(しつよう)ごて得をねらった。

(コメント:「ごて得」が本来の言い方であるが、現在では「ごね得」のほうがやや多く使われている。もともとは、「ごてる」は「ぐずぐずと不平不満を並べ立てる。ごてごてとめんどうなことを言う」の意、「ごねる」は「死ぬ。くたばる」の意。のち「ごてる」との混同が生じた。)

 

(152)(正)子はかすがい(鎹) /(誤)子はちょうつがい

(誤)子はちょうつがいとはよく言ったもので、あれほど別れたがっていた夫婦も、長男が生まれてからは結構仲良くやっているようだ。

(コメント:「わが子に対する愛情によって、夫婦の関係は緊密になり、夫婦の縁はつなぎとめられるものである」の意を表す語は、「子はかすがい(鎹)」であり、「子はちょうつがい(蝶番)」とは言わない。「かすがい」は、二本の材木をつなぎとめるために作られた、コの字形の大きな釘(くぎ)のこと。「ちょうつがい」は、開き戸や開きぶたなどの片方の端を軸として自由に開閉できるように取り付ける金具のこと。なお、「鎹」は常用漢字でない。)

 

(153)(正)木漏(こも)れ日(び)(誤)こぼれ日

(誤)公園の中を、年老いた夫婦が背にこぼれ日を受けながらゆっくりと歩いていた。

(コメント:「木漏れ日(=樹木の枝葉の間からもれてさす日の光)」が正しい。冒頭例のように「こぼ(零)れ日」とは言わない。「雲間からこぼれる日ざし」という言い方はおかしくない。なお、「零」の「こぼ(れる)」は常用漢字表の音訓欄にない訓。)

 

(154)(正)(こ)られる /(△)来れる

(△)あしたは八時までにこの会場に来れますか。

(コメント:「来られますか」が本来の形。「来れますか」は標準的な言い方ではない。)⇒ら抜き言葉について

 

(155)(正)こんがらかる /(△)こんがらがる

(△)君はちょっと黙ってくれよ。横から口を出されると、話がますますこんがらがってしまう。

(コメント:「こんがらかる」は、「絡まる。もつれる。複雑に入り組む。混乱する」などの意を表す。例、「こんがらかった毛糸をほどく」「問題があまりにも多岐にわたり、頭がこんがらかってきた」。冒頭例の場合、「こんがらかってしまう」<「後の「か」は清音>が標準的である。)

 

(156)(正)今昔(こんじゃく)の感(かん)(誤)昔日(せきじつ)の感

(誤)あの時の赤ちゃんが、今ここにいる美しいお嬢さんだとは、まさに昔日の感に堪(た)えません。

(コメント:「今昔の感(=今と昔とを思い比べて、そのあまりの変わりように驚いて起こす感慨)」が正しい。「昔日」は、「久しぶりに会った彼に、昔日の面影(おもかげ)はなかった」などと使われる語。)