【 フレッシュクリーム 】
洋菓子店の顔となる生クリームは、メーカーによって味わいが少しずつ違っています。現在、
中沢乳業の生クリームを使用していますが、過去、数社の味を比べて、自分なりに最もおいしいと
感じています。それでも、乳脂肪45%、いわゆる、フレッシュクリームは、どこのメーカーも基本的には
おいしいとは言えます。
ただ、ホイップクリームになると、フレッシュクリームに比べると、味に歴然の差が出ます(その分、
値段に反映されている)し、それよりも、メーカーの違いによる味の差が出ます。ホイップクリームの
おいしさ故にメーカー(中沢乳業)を選択したと言えます。ならば、とにかく、フレッシュを100%使えば
満足の行く味になるのかと言うと、そうでもないのです。微妙なところですが、ここからは、
それぞれ、個人の感覚の差になります。
フレッシュクリームオンリーの味の重さ、くどさを減らす目的で、ある程度の割合で、
ホイップクリームを加えます(乳脂肪20%のホイップクリームを、フレッシュクリームを2に対し、
1の割合)。単に原価を考えるならば、ホイップのみを使用したり、乳脂肪の低いホイップに
変えたりすれば事は足りるのですが、『 おいしくない 』 になるのは目に見えています。
それほど敏感でない人ならともかく、これでは、多くの人を満足させることは無理です。
更に、欠かせないのがリキュールです。クリーム1000ccに対し、キャップ一杯ほどのリキュール、
そのリキュールの違いで、丸っきり印象を変え、それが、そのまま店の味になります。
柑橘系とチェリー、2種類のリキュールを加えていますが、クリームのみの場合と比べ、
あっさり感を出そうとしているわけなのですが、リキュールを加える加えないの二つを味見すると、
その差がはっきり分かります。
最近、よく店を利用していただく、近くのリゾートタウンのある住人、こちらに住むように
なって日も浅く、近くの情報に疎く、ある時、タクシーの運転手に、「いい菓子店はないか」と
尋ねたところ、「たぶん、大丈夫でしょう」と、ある菓子店を紹介してもらい、
案内されたらしいのですが、あまり、気に入らなかったと、うちの店に来て話すのです。
その店のケーキをして『値段、東京、味、いまいち』と感じたことを、そのまま口にして、
店の人と一悶着あったようで、よく聞いてみると、生クリームがおいしくないと言うのです。
(他にも、いろいろと批判をしていたのですが、・・・うちの店は大丈夫だろうかと少し緊張)
原価重視の工場生産ケーキと違い、自家製洋菓子を販売している店での生クリームが
一般の人がダメだと判断できるほどの不評をかうようなことはないと思っていたので、少し、
信じられない話でした。それと同時に、一般の人だからと、たかをくくり、気を抜いた物を
作ろうものなら、すぐ、見破られてしまうんだと言う、自分自身にとっての戒めになり、
いい教訓となりました。
それにしても、いくら気に入らないことを言われたにしても、言い返す店って、
実に勇気がある。
うちは、夫婦共々、小心者で、とても、とても、まね出来ない。
◆ 基本配合
・フレッシュクリーム(ホイップクリーム) 500cc
・砂糖 40g〜80g
・リキュール 5cc〜10cc
◆ 注意点
ただ、かき混ぜればいいだけで、手順も何もありませんが、完全に立てずに置くのがコツ、
使用する分を、その度ごとにホイップして使いましょう。絞りの作業は、一気に、
すばやくが基本です。あれこれ迷って、手の中に絞り袋を持っていると分離して、
おいしくなくなります。(立てる場所も、涼しい所で、出来れば下に氷水のボールを置く)
砂糖の量に幅がありますが、フレッシュクリームがおいしい場合、それだけでも十分おいしく、
少なくなります。砂糖を多くしては、折角のおいしいフレッシュクリームが台無しです。
逆に、おいしくないクリームの場合、その分を砂糖でごまかしている場合があります。
「甘すぎる!」と感じたときは、たぶん、それなりのクリームと思ってください。