熱血オカメ



「アッチッチ〜!」

今まで動き回り、いたずらをしていたオカメが腕の上によじ登り、じっとしたまま羽根を膨らませます。その状態になると、それまで、あまり感じなかったオカメの足の熱さが伝わってきます。まるで、接している腕の部分が火傷しそうなほどなのですが、これは決して誇張した表現ではありません。

鳥にとって危険が迫った時、即座に離陸を可能にするためには常に身体を温めて置く必要があります。蒸気機関車が走り出すために水が沸騰していなくてはならないのと同じです。鳥も人間同様、恒温動物なのですが、その体温は半端ではなく、熱い風呂並みの40〜42℃の体温になります。熱く感じたのは、そのせいなのかとも思ったのですが、人間も含め、必ずしも身体(の一部)の表面温度と体温とは一致せず、通常、鳥の足は体温に比べ、かなり低いと言われています。なのに、なぜ、熱くなる?

人間に限らず、ほとんどの動物にとって体温44℃以上は死を意味します。その体温上昇を防ぐために身体表面に熱を伝え冷却する仕組み(人間の場合の発汗機能)を持っているのですが、鳥には汗腺がありません。・・・で、どうするかと言うと・・・、ここ連日(8/10〜8/20)の猛暑に、わが家のオカメは日中、時々、口を開け、あえいでいます。犬のようですが、浅く早い呼吸をすることにより、暖かい息を放出すると共に、口、舌、気道からの水分蒸発を促し、熱を外に逃がす行為、いわゆる、パンティング(pant:あえぐ)と言うものです(人間にも応用可能かと挑戦してみたのですが、かなりの腹筋運動が必要で、心なしか、体温が上昇したようにも・・・、と言うより、挑戦している自分が・・・)。

ただ、それとは別に、鳥には、その身体の構造から、もう一つの身体の冷却機能を持っています。羽毛に覆われていない、外気に接する部分、足です。体温が上がると足への血液(クーラントの役目)の流れを増やし、そこで冷却した血液を身体に戻し、体温を下げるというものです。長距離を飛行する渡り鳥などにとって、その運動で上がった体温を、運動を続けながら(止める訳にはいかない)下げ、体温を一定に保つために、誠に便利な仕組みで、まさに車で言うラジエーターの役割を果たします。この冷却機能は、たぶん、普通にしている状態で自然に働いていて、その限度を超した時、パンティングという動作に移るものと思われます。

でも、今回、飛行運動をした訳でもなし、単に、身体を膨らませ、まったりしているのに、なぜ、そのラジエーター機能が?

人間の場合、入眠時、身体表面が熱くなります(⇒末梢血管拡張⇒血流促進)。特に、乳幼児の場合、1.5℃も上がるといわれています。これは、何も、体温が上がったのではなく、体温(一部の?)を下げようとする生理の一つです。睡眠中の脳を保護するためと言われ、手足とは逆に額部分の皮膚温が身体の表面で一番低くなります。実は人間も、発汗による冷却機能だけではなく、ラジエーター機能も備えているのです。入眠時、この頭部を冷やす機能は鳥でも同じことが言えます。

そう、オカメの足が熱くなるのは、まどろみ、眠いと言うサインです。ただ、困ったことに、わが家のオカメは眠くなると、もう一つの行動を起こします。まるで、モグワイからグレムリンに変わるが如く、気が荒くなり、噛み付き魔に変貌します。まあ、眠くなるとダダをこねる聞かん坊、そう、人間の子供と、大して変わりませんが・・・

ところで体温40〜42℃の鳥の体感温度はどんなものでしょう。単純に人間と比較して、人間の感じる感覚の−4〜−5℃と言うのも乱暴ですが、一般的に小鳥は夏の暑さに強く、冬の寒さに弱いと言われます。オカメインコに限って言えば、そのふるさと、オーストラリア内陸、乾燥地帯の環境は湿度30%〜40%、温度35℃以上で、乾燥地帯特有の放射冷却のおかげで5℃以下にまで下がる時間帯もあると言う、かなり過酷?(日本の夏、高温多湿に比べれば天国?)なもので、推測するに相当タフな根性が備わっていそうなのですが、いかんせん、わが家のオカメの生まれが静岡県浜松市北区三ヶ日町と言うのも紛れもない事実で、朱に交われば赤くなる、今では立派なジャパニーズ、相当、軟弱そうです。