オカメの喜怒哀楽



オカメインコは『インコ』と言う名称が付いているのですがオウム科に属します。インコ科もオウム科(その他にヒインコ科)も同じオウム目に属するため、いわば身内のようなものなのですが、オカメインコ自体、以前はインコ、オウムとは別の科、あるいは、インコの仲間という見方がされていました。『インコ』の名称が付いているのは、その影響によるものと思われますが、オウムとインコの差異(骨格:頭蓋骨の形、内臓:胆嚢の有無)からオウムの種類ということになっています。また、オウムの多くは鳥として中型、大型になるのですが、その中でも小鳥に部類するオカメインコは特異で、要するに、オカメインコは最も小さなオウムということになります。体長は30p前後で、最もポピュラーな小鳥、セキセイインコ(体長20p前後)より、少し大きい程度です。

オウムの場合、外見的にもインコとはっきりと違った点があります。見ての通り、頭の部分、動く冠羽を持っているということです。オカメインコのピンと立っている冠羽は、他のオウムなどと比べても特徴的なのですが、それが寝たり、立ったりします。一説に興奮したり、緊張した状態の時に立ち、リラックスした時には寝て、その精神状態を表すと言うのですが、どうも、見ていると、その説は眉唾物で、単に姿勢によるものではないかと思われます。たとえば首を上に伸ばした時には立ち、姿勢を低くし、頭を下げた時には寝るといった具合です。要するに冠羽は、あごを引くと立ち、あごを上げると寝る構造になっているだけで、見る側が勝手に、その姿勢と精神状態を結び付けたに過ぎなく、冠羽と精神状態は全く関係ないようです。あごの状態以外にも多少、動いたりするようですが、いずれにしても、犬の尾っぽのような関連性は見られません。

「鳥に感情表現など」と思われるかもしれませんが、オカメインコの場合は、その身体の大きさに占める脳の割合はかなり高いといわれ、哺乳類の種類によっては、それ以上と言われています。脳の大きさが知能に比例する訳ではないのですが、かなり賢いのではと思われています。

わが家のオカメを観察していて、その性格も徐々に判明してきました。一般的にはおとなしく、飼い易いと言われていますが、人間と同様、多彩な感情を持ち合わせています。一言で言い表すことは出来ませんが、温厚、社交的、寂しがり屋、臆病、小心、おちゃめ、甘えん坊・・・、要するに、誰にでも好かれる性格の持ち主です。


ゲージの中、止まり木の上にも拘らず、目にも止まらぬ速さの反復横跳びは、もうすぐ、ゲージから出してくれるという喜び(期待)の表現です。とにかく、忙しく動き回っている時の機嫌は最高潮で、さらに、それを見て喜ぶ人間の感情がオカメの感情に共鳴するようで、オカメにとって、それ(人間が喜ぶ姿)も喜びの一つのようです。


オカメは首から上以外、身体に触られることを嫌がります。指でオカメの足をつつくと、大体、くちばしでつつき返します。時々、「きぃ〜〜」と言いながらの行動ですが、差し詰め、『てめえ、この野郎』と言ったところです。身体全体を羽根の上から掴むことも嫌がりますし、健康チェックのため、掴んだまま裏返されるのは最も嫌うようで、かなり激しく抵抗します。鳥にとって、裏返しになる経験はないでしょうし、特に、猛禽類や哺乳類の餌となる立場の小鳥にとっては、無防備極まりない状態と言えるのかも知れません。


人間と一緒にいることが喜びのオカメなのですが、人間がゲージのそばにいるにも拘らず、ほかの作業をしていて構ってくれない時、特に、その場所がいつもとは違う場合、小さな声で「ひゅ〜い、ひゅ〜い」と、いかにも哀しそうな(心細そうな?)鳴き声で、人間の注意を引こうとします。ゲージの外に出し、肩の上など、人と接触していれば安心のようで、鳴き止みます。


首から上を指でさすると、掻いて欲しい場所を自分から向け、指定します。特に耳の後ろ付近は快楽のつぼ?のようで、時々、大あくびをします。



補足になりますが


後ずさりします。音、影に敏感です。自分の影にすら反応します。ドアや窓がきしむ音に怯えます。最初のパニックは掃き出し窓の開く音でした。見慣れないものに対する警戒心は強く、そこで、怖い思いをすると二度と近寄ることはありません。それを覚えているということは、ある意味、かなりの記憶力なのですが・・・


背後の机の上を指でコンと叩いただけで、飛び上がります。驚きの大きい場合は、飛び立って、逃げます。電話の呼び出し音やタイマー、目覚まし時計の電子音(ピピッ、ピピッ、ピピッ)は苦手なようです。この小心さは、捕食される側である、ご先祖様の身を守るための術(すべ)が遺伝したもの?


仏壇の鈴(りん)の音に、お祈りなのか、歌声なのか、奇妙な小声を発します。オカメにとって心地良い周波数のようです。

排泄
バックします。鳥の巣を汚さないよう、一応、巣の外にという気遣い?本能?。最近は、新聞の上がトイレと思っているようです。身体も膨らませます。体から熱が逃げ、体温低下に注意する意味合い?
ちなみに、鳥に膀胱はなく、出したいときに出します。これは、飛ぶということが職業の鳥にとっての宿命です。要するに、不要で重くなるものを、その身体の中に貯めるということは、それだけ、余分なエネルギー消費につながるからです。

挨拶
外で小鳥の鳴き声(仏壇の鈴の周波数に近い?)がすると、そちらに向かって意味不明な言葉を発します。先ほどの『祈』と似たような声なのですが、それよりも大きく、はっきりとした声を出します。

威嚇
羽根を大きく広げ、自分を大きく見せ、向かってきます。遊び(じゃれる)の意味合いもあります。

興味
好奇心旺盛です。人が変わったことを始めると、必ず、飛んで来て、その様子を眺めます。道を走る車を眺めるのも気に入っているようです。自分の親戚だということが本能的に分かるのか、窓の外を飛ぶ鳥には異常な関心を示します。水に興味があるようで、水道の蛇口から出る水や、洗濯機の中の水流に見入っています。古い洗濯機の脇に止まるのがお気に入りだったのですが、最近、買い換えた新しい洗濯機には、まだ、半分、『恐』の気持ちがあるようです。ひも状のものは、なんでも興味を示し、くちばしで、その感触を確かめます。なんと言っても、食物には大きな関心があり、食べる食べないは別にして、人間の食べているものは、すべて、欲しがり、とりあえず、舌でその感触、温度、味を確認します。



ある日の早朝、少々、困惑した顔の新聞配達員が交番に現れました。

「あの〜、拾い物・・・と言っていいのか、ちょっと相談が」

おまわりさんは、相手に威圧感を与えないよう、笑顔で

「何か、困りごとでも、おありですか?」

と対応しながら、彼のほうを向くと、その肩にはオカメインコがしっかり、しがみついています。
少しびっくりしたようなのですが、いぶかる仕草も見せず、冷静に、

「なかなか、かわいいですねえ。で、なんでしょう」

「実は、これなんです」

と、肩の上のオカメを横目で見ました。

「え?拾ったんですか、鳥を?」

「あっ、いえ、勝手に乗ってきたんです」

実は、その少し前、近くのマンション上層の一室、住人が誤って落とした食器の割れる音にびっくりしたオカメが、開いている窓から逃げ出して、例により、我に返ったオカメは、天敵から自分の身を守るため、あたりを見渡し、そこで発見したのが新聞配達員の肩だったのです。時間を経て飼い主からも、その交番に(オカメに対する)探し物の依頼があり、無事、飼い主の許へ帰ることが出来ました。



オカメの気持ちも理解できるようになり、オカメの方もなつくようになると、このまま肩に乗せ、外に出ようとも、信頼と安息の場所である肩の上から離れることはないと錯覚するかもしれませんが、それは早合点です。人間の肩の上が安心できる場所ということは学習したかも知れませんが、その小心な性格までは変えることはできません。不測の事態で、その場所から簡単に離れて行ってしまいます。多くの鳥が持つように、帰巣本能があり、再び戻る可能性もあるのかも知れませんが、オカメにとっては、そんなことより、まず自分の身の安全を確保する事(最初に発見した人間の肩)を優先するに違いありません。それ自体、その賢さ(馴れ馴れしさ?)ゆえんなのかも知れません。確保した人間の善意があれば、多くは飼い主の許へ戻ることになります。

インターネット上でも迷子の鳥の情報が氾濫していて、その多くがオカメインコとセキセイインコなのですが、鳥はオカメインコとセキセイインコだけではありません。確かに、逃がす原因は、人間側の逃げないだろうという過信と、窓を閉め忘れるという油断に他ならないのですが、捜索依頼の多さは、鳥の価値(値段)が微妙に影響しているようです。大型のインコやオウムになると20万円を超え、高いものでは80万円に届く種類もあります。そんな高価な鳥が逃げてしまったら、まさに、宝石が空のかなたへ消えたようなものなのですが、オカメはおよそ1万円から2万円(種類によっては10万、20万もするものもありますが、うちはタダ)、セキセイインコも高くて1万円前後です。ついつい、油断してしまうのかもしれません。

それにしても、オカメインコ(セキセイインコも?)は、その値段の割りに、犬や猫以上になつき、賢い上にしゃべる可能性もあります。しぐさも愛らしいところがあり、餌代もほとんどかからず、臭いも出ません。どちらかと言うと、インコ臭と言われる独特のいい(バターに似たような?)匂いがします。これは、キビ、粟を主食にするためらしいです。最近、人間様の食べるものを欲しがるようになったので、ひょっとして人間のような体臭を持ってしまわないかと少し心配ですが、万が一、そうなっても、ほんの体重100g、ポケットに入るほどの大きさですので、そんなに気になることはないでしょう。トイレは、放鳥した場合、ところ構わずですが、ほんの2mmほどのトグロで臭いもありませんし、割合、きれいに拭き取れます。唯一の難点は細かい羽が抜けることぐらいなのですが、それは、犬猫にしても同じ事で、掃除は小まめにすることが必要になります。

もし飼う意思があるのであれば、是非、2週間程度の雛から世話をし、絆を深めてください。ショップにいる成鳥を見て、あなたが気に入っても、その鳥があなたになつくとは限りません。人間との信頼関係ができずに成鳥になった場合、人間の言うことをなかなか聞かず、ゲージに入れるのが大変になり、何よりも、逃げてしまう可能性も高くなります。わが家のオカメは遊び足りないとゲージに入ることに躊躇しますが、ほとんどの場合、その入り口の前でオカメを乗せたままの手を静止していると、自分の意思で中へ入ります。ゲージが自分の家であると、しっかり認識しています。

さあ、あなたも飼ってみてはいかがでしょう。
アパート、マンションなどがペット禁止でも、いやなペット臭がない分、こっそり?、安心して?、飼えます。何よりも長生きしますので、長く、生活を共にすることが出来ます。オウムや大型のインコは50年程(記録では80歳も)の寿命ですが、オカメインコでも20年ほどです。

ひょっとして、この先、自分よりも長く・・・


やはり、アパートでは、鳥に鳴くのをやめるように説得できるか、完全な防音設備が完備できない限り、無理かもしれません。管理人ぐらいでしたら聞かれも、「野鳥では?」と、とぼけることも出来ますが、24時間、隣に住む住人の耳からのシャットアウトは現実的には不可能です。本人にとって心地良い鳴き声も、他人には単なる騒音にしか過ぎない場合がほとんどですので・・・