福々饅頭(通称:みそまん)

特徴:黒砂糖を主体にした蒸饅頭です。皮に
山芋を混ぜ込んで、しっとり感を持たせると共に
カラメルを多くし、香ばしさも適度に付けました。
餡は粒とこしの混合で、じっくり煮込んであります。
上質の餡を使用していますので、コク(粘り)があり
ます。さらに、粒餡を混ぜることにより、水々しさも
併せ持たせ、かなり軟らか目に仕上てあります。
全体として、しっとり感に重点を置いています。



 父の代になりますが、全国菓子大博覧会で金賞、名誉副総裁賞と
2年連続で受賞しています。自分自身、当時、他の職に就いていた時期で、
どういった経緯で受賞したのかは分かりませんが、父にとっては、その人生に
おいて、生まれてきた証を残せた意味でも、その2つの受賞は、最も至福な
出来事のひとつだったに違いありません。
 その父は亡くなる半年前ですら、 病院のベッドで
「ああしたらどうだろう、こうしたらどうだろう」と、
動けなくなった本人に代わり、息子の自分に提案し続けていたことからすれば、
本人自身、更に、おいしくなると思っていただろうし、正直、自分もまだまだ、
納得の行くものではないと感じていました。
 それよりも、父が亡くなった時点で悔いの残ったのは、自分自身、転職して
間もないこともあり、菓子屋としての経験も知識も浅く、まだまだ未熟の上、
父から受け継ぐ時間的余裕(家に戻ってから父が亡くなるまで)がなかったことです。

 菓子というものは嗜好品ゆえに、時代と共に変化しますが、おおむね、今は
(今に限らないのかもしれませんが)、『しっとり』 『あっさり』 が本流のように思われます。
受賞した当時とは、皮も餡も変わりました。本来から言えば、受賞した味ではないので、
それを売りにすること自体、『看板に偽りあり』と言われそうですが、今、父の時代からの
お客様から「親父さん以上のおいしさ」と言う言葉をいただき、それも許されるのでは
ないのかと思っています。

 せめて、父の亡くなる前に、このくらいまで到達したかったというのが本音ですが、それでも、
まだまだ、80点の味、この先、この職についている限り、100点を目標に進むつもりです。
ただ、人生を終えるまでに到達できるとは思っていませんし、また、100点は永遠にないと
思っています。気張るつもりはありませんが、上に向けて、試行錯誤をしていくつもりです。
どうか、応援のほど、よろしくお願い致します。

 この福々饅頭は、町内はもちろん、隣接の豊橋市、浜松市内、湖西市、豊川市、
新城市の他、町内リゾート施設におみえになった遠く、関東、関西のお客様にも
お求めいただいていて、その評判も上々です。
 三ケ日にお越しの際は、是非一度、『福々饅頭』の味を、皆様の舌でお確かめ下さい。

※尚、『福々饅頭』に限り、品切れのないよう気を使っていますが、ご予約いただければ
幸いです。ご予約は、おおむね1時間前で結構ですが、前日以前でしたなら、
必ず、ご用意いたします。




〓 みそまんセール 〓
 広く、皆さんに、『福々饅頭』の味を知っていただく為に、年に3回ほどの『みそまんセール』を
実施しています。是非、この時期を見計らって、ご来店ください。

時期:4月初旬、9月初旬、12月初旬
期間:15日間
内容:通常90円のところ、30円引きの60円で販売


今は、かなり少なくなりましたが、かつては、セール期間中、多い日で2000個を捌いたことも
あったのですが、バブル時のハプニングのようなもので、結局、一時の現象、嬉しさよりも、
体がもつのか心配でした。何にしても、昔からのメイン商品ゆえに、常に切らさないように
気を配ってはいますが、大量のお買い求めの場合、出来れば前日の予約をお願いします。



〓 (2003/6) 〓
 10年程前、浜松のある、不動産業をしていると言うお客様、S氏が始めて来店した際、
「ここら辺りから、みそまんが発祥したと聞いたけれど、この店か?」と聞かれたことがありました。
 恥ずかしい話、自分自身、その時まで、店で売っている『福々饅頭』が浜名湖北岸一帯での
通称『みそまん』とは知りませんでした。最近、隣町、『気賀』のお年寄りが、テレビ(ローカル番組)の
インタビューで「みそまんは三ヶ日の方から伝わった」とも答えていました。

父は生前、隣町、気賀のある店と情報交換で、相手から、ある羊羹の作り方を、そして、
こちらからは、『福々饅頭』の作り方を相手に伝えたと 言います。それが、そのお年寄りの言う事に
該当すると言う確証は何もありませんが、『少しばかり、その気になって』 しまいました。

 まあ、こう言う話には尾ひれを付けたり、それぞれ勝手に作ったりで、それはそれで、にぎやかで
いいのですが、何にしても、肝心なのは「おいしい」か、「おいしくない」かだけであって、
それを判断するのは、お客様自身です。

 尾ひれや作り話を自らする菓子屋の浅薄さを皮肉って

   日本中 うちが元祖と 饅頭屋

という川柳をラジオで聞きました。饅頭屋だけが自己満足、見ているほうは冷ややかな様を
詠っているのですが、それは 『少しばかり、その気になった』 自分のこと???

 店にとって、お客様から、本音で「おいしい」と言われることが最も嬉しいことです。
あまり余分なことは考えず、それを、励みに饅頭作りに精進しようと思います。
まあ、人間が小さいので無理だと思いますが・・・



〓 (2003/12) 〓
 『みそまん』の通称は、少し紛らわしいのですが、味噌を使っているからではなく、
その色が味噌の色に似ているからと言う理由で誰からともなく呼ばれ、広まり、
ここ浜名湖北岸を中心に、一般的に通じる名詞になりました。

 店により、大きさも味も食感も違っていますので、それぞれの店の『みそまん』を
比べるのも、なかなかの趣向だと思います。黒砂糖を基調にした皮に、
こし餡と言うパターンが一般的ですが、何と言っても、皮はしっとり、ふっくら、
餡に粘りと旨みが基本です。皮はパサパサ、餡はザラザラは論外です
(実は、自分も最初は、まさにその通りでした)。

 店で『みそまん』を売っていると、自然とお客様の口から、他店の『みそまん』の
話が伝わってきます。そんな、忌憚のない話を自店でしていただけるのは、ある程度、
ここの 『福々饅頭』 を 『みそまん』 と認めていただけるようになったと言う証と、
勝手に解釈していますが、その話の中で、他店の『味が変わった』と言う話を
聞きました。自分の場合も含め、代替わりが大きな理由のようなのです。
作る人が代わると、微妙に、その味も変わっていくのは自然なのかも知れません。

 ある店で先の浜松のS氏、
「おい、みそまんは置いてないのか?」
「あの〜、ご予約は?」
「あるのか、ないのか、一体どっちなんだ?」
 本人は、自分では至って普通の喋りと思っているようです。
ただ、知らない人からすれば、喋り方もそうですが、体はガッシリ、顔付きはコワモテ、
外見からも、かなり高圧的に見えてしまう。
「あっ、しばらく、お待ちください」
と言って、奥へ引き込み、中で何やら相談している。
しばらくすると
「ちょうど、先ほど、キャンセルした方がいました」 ← おい!
と、意外にもあっさりと分けてくれたのだそうです。

 確かに、客商売をしている者の宿命として、
・お偉いさん(らしい)
・威圧感がある
・お役人
・親しい間柄
には弱いのかもしれません。
と言うより、当店は、人間が小さいゆえに、列記に限らず、すべてに、悲しいほど弱い?です。

 15年ほど前の話になりますが、娘が町立の幼稚園のときの宿泊訓練で、ある県の施設に、
役員の親が監視役で一緒に泊まったのですが、その時、幼稚園の園長を兼ねる隣接の
小学校の校長先生も一緒でした。

 その先生が、当時、噂の店の『みそまん』を土産に持参し、
「実はねえ、あの店の主人とは顔なじみで、今日は無理を言って分けてもらった」
と、持参した『みそまん』は、見るからに、ふっくら、しっとり、口に入れて、再び、感動の、
今までに味わったことのないおいしさに、とても、自分の『みそまん』とは比べ物にならないと
実感しました。まさに、『これが、うまい饅頭だ!』 と言わんばかりの存在感がありました。

今でこそ、自分なりに、何とか、太刀打ちできるのではないかと言う域に達したとは
思っています(思い上がり?)が、今後も、大きな目標には違いありません。



〓 (2006/5) 〓
最近、妻が、かつて、『おいしい!』 と言う感嘆の声を上げた店の饅頭を食べる機会が
あったのですが、その時、妻は、

「なぜだろう? なぜ、昔、この饅頭を食べて感動したのだろう?
確かに美味しいけれど、今は、あの時ほどの感動がない」


と言う感想を漏らしました。

自分の店の味とは比べ物にならない位、美味しいと感じた味が、今、再び、口に入れ、
それほどでもないと感じた訳です。もちろん、その店の味が変わった訳ではありません。
変わったのは、日頃、賞味している、かつては、どうしようもなかった自分の店の味です。
少しずつ変わり、今に至っている分、その変化が分からなかったと言うことで、それは、
取りも直さず、自分の店の饅頭が、大きな感激を呼んだ、他店の饅頭の味に近づき
つつあることを意味します(と、思います)。

彼岸過ぎ、奥浜名湖の観光団体の企画で、旧引佐3町にある菓子店の『みそまん』を
一箇所に集め、それを1個ずつ詰め合わせ、販売する催しを行いました。
午前11時が販売開始時刻だったのですが、驚いたことに、8時から並び始める人まで
現れる盛況で、気の毒だと言う思いから、15分ほど時間を繰り上げて販売を
開始したのですが、30分ほどで用意した個数を完売したそうです。

その15分前販売のおかげで、11時に来た人が、
「11時と聞いていたのに、何で、もう始めているんだ!」
と騒ぎ出し、短時間完売で、品物を手に入れることもできなかったことも相まって、
まさに、一触即発の雰囲気を呈したのですが、すべての店の位置を標した案内図を
配布することで、何とか、場を収めたと聞きます。饅頭ごときに、それほどの騒ぎに
なるとは、『みそまん』も大した物なのか、それとも、食べ物の恨みの大きさゆえなのか?

ただ、当日は妻の実家の法要で臨時休業だったため、その人々が案内図片手に
押し寄せた?かどうかは分かりません。たぶん、その影響は会場近辺の店だけで、
時間と費用(ガソリン)を犠牲に、山二つ越え、ここまで来たのかは少々、疑問です。

要らぬお節介かも知れませんが、少し、心配になりました。
参加した菓子店は12店だったのですが、と言うことは当然、12個の『みそまん』を手に
したことになります。味比べと言うことで、もし、それを実行することになると、ひとりで、
12個も食べることになり、『まんじゅう、こわい』状態になってしまうのでは・・・
当然、3分割、4分割などして、複数の人間で味わったとは思うのですが、
中には、ひとりで食してしまう命知らずの方も・・・

つい最近、そのイベントの報告を兼ね、今後の対応を検討する会議が開かれたのですが、
その時の過熱ぶりが、、果たして持続性のあるものか、それとも、初回と言うことも手伝った
一過性のものか図りかねると言うのが正直な感想です。

とりあえずは、引き合いが何件かあるようで、それを利用し、継続をすると言うことで、
話はまとまったようなのですが、先回はその観光団体の奉仕活動があってこそ
成り立っていただけに、これから、遠方への出務まで提供する話になると、少しばかり、
二の足を踏む思いがあります。

売って利益を得るのが目的ではなく、あくまでも、知ってもらう⇒足を運んでもらう⇒
にぎわう(地域起こし?)
と言う趣旨は十分に分かってはいるのですが・・・



〓 (2007/6) 〓
一年以上前に、浜名湖北岸の観光振興を目的に発足した団体の提起により始められた、
いわゆる 『奥浜名湖みそまん物語』(地区12店のみそまん詰合せ)は、無事、
一年が過ぎ、更に今後、同様の形(イベントに出品販売)で進められるようです。
相変わらずの盛況ぶりは、自分たちの予想をはるかに超えるものなのですが、
その影響の多くが、その団体の会長の力によるところが大きく、ほとんど、その人物の
力といっても過言ではありません。

今まで、浜松のはずれである三ケ日における 『みそまん』 の知名度は、はっきり言って、
それほど高いとは言えなかったのですが、徐々に、三ヶ日にまで浸透してきたようです。
それも、自分たちが気付かないうちに。

12店の品物がセットになっているだけに、それぞれの店にとって、その評価が
気になるところなのですが、かなり詳しく評価しているブログがあります。
『奥浜名湖みそまん物語』の影響によるところなのかは別にして、
そのブログにおいても、自分の店を含め、三ヶ日の店が登場するのは最後の方
になります。しかし、採り上げた店はかなりの数で、そのまめさには感心しきりです。
http://blogs.yahoo.co.jp/the_lytton/folder/372026.html

みつわは2ページ目(ページが若いほど最近の掲載)になりますが、
かなり、高評価をしていただいていて、ほっとしています。
(評価が低かったならば、たぶん、採り上げなかったって?)

それにしても、この食べ比べ・・・、
ほどほどにしないと、健康に影響が・・・



〓 (2008/5) 〓
最近、わが店の福々饅頭(みそまん)の客に、微妙な変化が?・・・

はっきりと、みそまんを目的に、それも、初めて訪れる人が増えているようです。
例年ですと、ゴールデンウィークが過ぎ、暖かくなるにつれ、その気温に反比例するように
売りが鈍ってくるのですが、例年になく健闘しています。これも、『みそまん物語』(引佐
地区12店の詰合せの不定期の催事販売)効果と言えなくもないのですが、
ただ、みそまん物語を企画した観光協会(奥浜名湖観光連絡協議会)の思惑と、
少しばかり、食い違っているようです。

観光協会としての『みそまん物語』の位置づけは、それを媒体に奥浜名湖地域へ、
地域外から人を寄せて、地域の経済的恩恵をもたらすところにあります。
いわゆる、自治体や観光協会が口にする『地域活性化』と言う代物です。
もちろん、地域内でワイワイ騒ぐことも意図しているのかもしれませんが、
期待しているのは、より広範な影響です。

猫も杓子(しゃくし)も『活性化』、それさえ口にすれば、すべてが許されるような風潮に、
少々、違和感を覚える自分が、それに乗っかっているようで、心なし、引け目を
覚えるのですが、それはさて置き、観光協会にとって期待した効果は、まだまだ、
疑問符の付く状態のようです。精力的にマスコミに取り上げてもらったり、
浜松地区で開かれる観光に関する全国的規模の会議などでも宣伝したりは
しているようなのですが、認知度は発展途上のようです。

12個セットの限定的な売り出しに、最も喜んだのは、実は、地元の人間です。
今のところ、出張販売は浜松市を飛び出すことはありませんが、それでも、
みそまんを販売している店がある、旧引佐3町に近ければ近いほど、
売れ行きが良いようで、逆に、離れれば離れるほど、鈍る傾向があるということです。
地元で育った饅頭だけに、そこでの認知度が、他のどこよりも高いのは当たり前で、
おまけに12店を回らなくても一箇所で手に入ると言う利点も十分、理解しています。
今のところは地域内でワイワイと言ったところですが、まだまだ、始めて3年目、
継続こそ力と言うように、これからが勝負と言えます。

では、みそまんを提供している、それぞれ店はと言うと・・・・、
とは言え、自分のところしか分からないのですが、みそまんを求める人の中に、
顔馴染みでない客が増えたのは確かなようです。何人かとの話の中で、
隣町からやって来ていることが分かり、それも、『みそまん物語』で食べ比べてみてと
言うことのようです。昨年、既に兆候があったにも拘らず、気にも留めていなかったのか、
それとも、今年からの現象なのか、いずれにせよ、徐々に、それなりの効果が
表れ始めているのは確かなようです。

それよりも、わざわざ、隣町から、わが店に足を運んでもらったと言うことの方が、
自分にとっては意義深いものがあります。取りも直さず、12店のみそまんを食べ比べて、
その上で、わが店のみそまんを高く評価して頂いたと言う証です。
食べたいという気持ちが沸かなかったのならば、こうして店に来ることもなかった訳で、
その来店が、自分にとって自信になっていることは確かで、これからの励みにもなります。