高校2年、夏休みへ入った、ある水曜、朝早く、息子は部活(ラグビー)に
出かけていきました。サーフボード(お遊び用、幅広、短め)を背中に背負って
「部活の前に、友達と海で遊んで、その後、行く。」
と言残し・・・、この後の、思わぬ悲劇が、彼を襲う。(どこかで聞いたような・・・)
余談、と言うか伏線になりますが、その一日前、三者面談がありました。おっかさん、
「毎日、部活で夜10時帰宅、家では少しも勉強しませんが、
このままでいいのでしょうか。」
担任♀、
「さとし君は、授業で集中するタイプだよね。部活でも何でも、
若いうちは、打ち込むことが大事です。大丈夫ですよ、お母さん。」
親の気持ちを少しも察してくれない。それどころか、本人が、
いい気になってしまうほどの誉めよう。
「人間同士、友人のことを誉めるのは、よくありますが『あいつはいい奴だ』と
『奴』呼ばわりするほど信頼されることは滅多にないですよ。さとし君は、
皆からそう言われます。安心してください。」
確かに、息子のことを誉められるのは嬉しいのですが、普通、たとえば、
「お母さん、大丈夫です。このまま頑張れば国公立はOKです。」
と言うように勉学方面のことを、まあ、誉めないまでも、親の言ったことの
意味を察し、それをを援護する形で、尻を叩いてくれるものだけどねえ。
(実は、この担任、息子の卒業後、ラグビーの顧問の先生と結婚、
ラグビー部員を誉めるのには、後で考えると、それなりの納得がありました。)
それが、災いしたのか、息子、たぶん有頂天気分だったと思います。
出かけて、2時間もしないうちに、電話。どこからだと思います。
おっかさん、受話器をとって相手を確認するや否や、さーっと顔色が
引いていきました。お題の
『無免許』 から、もう、察しは付きましたね。
『警察⇒息子⇒無免許⇒警察⇒息子⇒無免許⇒警察⇒息子⇒無免許⇒警察⇒息子⇒無免許』
そんな言葉が走馬灯のように、おっかさんの頭の中を何度も何度も、
ぐるぐると駆け回ったことでしょう。
身元引受人ということで、自分が海のそばの派出所(新居町)へ
車を走らせました。二人、『あいつはいい奴』同士が神妙に座っていました。
息子は半べそ状態。友達(免許あり)が乗ってきたバイクに、こんなところまで
警察も来ないだろうと言うことで、代わる代わる乗っていたようで、
ちょうど息子が乗ったところで、パトカー、少し言葉としては不謹慎ですが、
運が悪いと言うか、でも、よく考えれば、良かったのですが、貸した友達と
一緒に連行されました。(貸したほうも罪になるんです。)
そこで、双方の家に電話して、こちらが在宅だった為?、連絡が入った次第。
自分も表面上は冷静を装ったのですが、かなり、心の中は動転していたようで、
調書に息子の名前、さとし(諭嗣)の『諭』を『論』と書いて、息子の書いた字と
親である自分の書いた字が違うと言うことで、少しばかり、ざわっとした雰囲気に
なりましたが、なんとか引き受けが許可になり、最後に
「このことは、一応、学校には知らせませんが、後日、家庭裁判所から出頭命令が
来ますので、親同伴で出廷してください。」と、告げられました。
外に出て、「じゃあ、今から、学校に行って、報告するか。」と言うと、
息子、「おっとさん、それは、ちょっと・・・」
「隠していても案外、分かってしまう。それならば、分かる前に
こちらから出向いたほうが潔いと違うか?」の進言に息子、
「たぶん、自分は停学になるけれど、**(←『いい奴』)も停学になってしまう。」
と言う。「それなら、最初っから乗るなよ!」の言葉に意気消沈、でも、息子が捕まって、
それを貸した『いい奴』まで、一緒に停学になるのは、少しばかり理不尽、
とりあえずは、放置することにし、解散。(いいのかなあ?甘い?)
『いい奴』はバイクでどこかへ、息子は高校へラグビー、自分は帰宅。
裁判所からの呼び出しは、もう、忘れてくれたのではないかと思った、2,3ヶ月後に、
しっかり来ました。世の中、期待するほど、甘くはありませんでした。
裁判所に赴くと、何ヵ月かの分を一括で処理するようで、親子連れが30組以上、ぞろぞろと
集まってきていて、指定の入り口へ入ろうとすると、もう、受付のソファーは満席、
立って待つ人もかなりいる状態で、皆、一様に押し黙り、眉間にしわを寄せたような状態、
どえりゃあ、空気が重い。たまらず、息子に「おい、出るぞ。」と言い、外で待つことに。
まずは思いっきり深呼吸。「今日は長い一日になるあ」(←ひとりごと)と、覚悟を決めました。
まず、前歴などないか、また親を含めた今の気持ちなどの調書作成、これが、全員に対して
行われる為、どちらかと言うと、圧倒的に待つ時間のほうが、とてつもなく長い。
(でも、あの時、警官に捕まって、よかったと思ったのが実感、もし、無免許で人身事故など
起こそうものなら、それこそ、親にとっても、それどころか、本人の人生にとっても取り返しの
つかないことになっていたかも知れません。)
全員の取調べが終わり、更に、それに対する審査があり、そこで問題のある場合、
別扱いになるようで、実際、その時も、ひとり、再度、取調べを受けていました。
そして、問題ない(問題があったから呼び出された?)というか、初犯の人間だけが、
法廷へ、親たちは傍聴席へ、そして、開廷。
交通事故を起こした少年とその家族の悲劇などの話を含めた裁判官の話、
子供たちを順番に指名し、それぞれの意見陳述、そして判決、
要するに「初犯はしっかり反省すれば、その罪を問わない。」と言うもの。
そして、無罪放免。やっと、帰ることが出来ました。
捕まったとき、派出所の警官から「学校の対応は別にして、免許さえ取れば、
法的には問題はないので、乗りたいのなら、とりあえず免許を取りなさい。」
と言われたのであるが、息子は相当、懲りたようで、まあ、反省もあったのでしょう、
「高校の間は、原付の免許は取らない。」と宣言。
でも、大学に入って真っ先に ⇒ 自動車学校(中型バイク)教習申し込み
丸っきり別の話・・・でもないのですが、今日、東名高速道路上り線、
愛知県新城の地点、先週、4人の犠牲を出した大型トラックの追突事故現場でしょうか、
雨の中、ゆりの花束が、路側帯ガードレール脇に、たむけてありました。何とも、悲しげに。(合掌)
追記:2003/7/5
『判決』でも言葉としては間違いにならないかも知れないが、
家裁の場合、普通、『審判』と言うのが正しい?
それと、もし、家裁の審判の後、免許を取ったにしても、免許を持った人間の、
いわゆる免停期間、取得した免許は警察の預かりになっていた可能性が大きい。
http://www1.harenet.ne.jp/~s-kishi/mumenkyo.html