過ぎたるは及ばざるが如し

2003/08/22

日本が発展途上にある時代、国民全体が摂取カロリー不足であったし、それ故、
甘いものが貴重な存在でした。それと同時に、普段、菓子を口にする機会の
少ない時代、菓子を食することは、何にも代え難い喜びと満足をもたらしました。
物が溢れる今、菓子への欲求も、人それぞれの嗜好的な面が大きな要素と
なりましたが、この点(精神的満足)においては、今も昔も共通の利点と言えます。

かつて、菓子業界にファイバーシューなる、何とも奇妙な物が登場したことが
あります。メーカー側の思惑か、販売者側の思惑か、要するに、シュー皮や
クリームに食物繊維を無理やり混ぜ込んで、

『健康に良い!』

とアピールするのです。
『健康に良い』 と言う言葉には、誰もが誘惑を覚えます。
そんな人の弱味につけこんだ、一種の催眠的手法とも言えます。

それでも、そこで提供される菓子が、実際上、菓子(おいしい)たるもので
あれば、多少とも、救いがあるのですが、

『この菓子は、まずいけれど、身体に良いんだよ。』

と言うに至っては、詐欺的と言われても仕方ありません。

そもそも、菓子にヘルシーやダイエットをうたい文句にするには、無理があります。
もし、その効果を期待する分を菓子で摂取したならば、確実に健康を損ねているに
違いありません。ファイバーシューを食べて、食物繊維を摂取するよりも、
さつまいもを食べるほうが、はるかにヘルシーです。
と言うか、比べるに値すらしません。

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うちのおっかさん(妻)、菓子を売るに際し、要らぬお節介と言うか、
親しくなると、時々、数個のケーキや饅頭を買った客に、

「このお菓子は誰が召し上がるのですか?」

と、訊くのであるが、もし、

「自分で全部、食べる」

などと答えようものなら、平気で

「食べ過ぎ! 病気になる!」

と、注意します。


おいおい、うちは病気のもとを売っているのか?

確かに、摂り過ぎは健康を害する恐れがあると言うのは
間違いではないのですが・・・

何とも、商売っ気がない。


まあ、いくら健康に良いものでも、 『過ぎたるは及ばざるが如し』 で、実際、
売る側も、売った商品で健康を害してもらっては、ひとつも嬉しくありません。

『健康を害さず、かつ、喜んでもらう』

それが、買う側、売る側、双方にとってベストに違いありません。

これからも、おっかさんには、大いに売り惜しんでもらいましょう。