超一流主義

2003/10/02

10年程前、おっかさんが、町の図書館から借りてきた一冊の本、そのタイトルの
仰々しさに、つい手に取り、ページをめくってしまったのが、運の尽き、
実に嫌な気分にさせてくれる本に出会った。

『超一流主義』 斎藤澪奈子

かなりの毒舌内容に、ページをめくって最初は、何のパロディかと読み進むうちに、
紛れもない本人の思いと認識するうちに、読むに耐えなくなり、ついに、半分も
読み進まないところで、その本を部屋の隅へ放り投げるに至った。
残ったのは、気分の悪さだけ、何の感動も感銘もない。人の心と言うものは、
こうまで汚くなれるものかと呆れてしまった。巻頭に著者の写真が載っていた
のであるが、本文を読んだ後は、違う人物に見えて来た。

一貫して、人を称して「アッパー」⇒「一流」と「ロアー」⇒「その他」に分類し、
まずは、自分自身を「アッパー」と位置付け、本人曰く「その他、どうでもいい人」
を徹底的に卑下し続ける内容になっている。
確かに、物事をポジティブに捉えるのは、前に進む上で欠かせない心構えであるが、
人を中傷したり、卑下することにより、自分を高揚させることが、人間として、
価値のある生き方とは、とても思えない。

こんな著者の考え方は、自分としては理解困難なのであるが、吉本ばななをして、

「痛快、明晰、高度のユーモア。正しく生きてきた人が正しいことを明るく書くと
いうのは何と気持ちのいいこと!しかもこの本は大爆笑の面白さだ。この知性、
この美しさ、このかっこよさ。私はこの時代にこのヒロインと同席できたことを
幸福に思う。人類は奇跡的にすばらしい。このひとを見ていると心からそう思う。」


と、その本を紹介している。ここまで、捉え方が違うものなのか、愕然としてしまった。
人の心を踏みにじることが正しいと言い切る考え方に悲哀すら覚える。

その著者も、昨年、かなりの若さで亡くなったと言う。

竹信悦夫による「超一流主義」への書評(2002年2月13日)
「FLASH」(2002年2月12日号)
元祖ゴージャス美女・斎藤澪奈子さん“急死”の真相

(略)「残念なのはなぜもっと早く医学療法を試さなかったのかということです」
と父親の重孝氏は本誌の取材に無念さを滲ませる。
(略)
絶頂時に経歴詐称疑惑などを報じられ徐々に露出度が減っていった斎藤さんが
極秘結婚、女児を出産したのは'94年。左ページの写真は本誌がスクープした
妊娠中のショットだが、その後は夫である民間療法の専門家・内海康光氏ともども、
内海氏の前妻から不貞を理由に1億円の損害賠償を求められて敗訴。'97年からは
ロスを仕事の活動拠点にしていたが、'99年には内海氏と離婚するなどトラブルが
続いた。
「彼女は離婚を機に米国に移住。ロスで自作のヒーリングCDや化粧品の販売や
講演活動などをしていたようです。このころから精神世界にのめり込み、インドの
神秘治療の研究などもしていました」とは知人の話。
だからか、斎藤さんは体の変調についてヒーラー(治療師)に相談していた。
昨年冬に出版された雑誌では、その際の様子を書いてもいる。ヒーラーは彼女に
こんなアドバイスをしたという。「エネルギー的に見て、あなたが悪い病気に
かかる確率はゼロに等しい(略)。それはあなた自身にしか治せない。外部の
力では治せないから、ヘタにいじらないほうがいい。あなた自身が最高の
ヒーラーなんだから」。(略)
享年44歳の若さだった。

果たして、最後の時まで、絶対の自己愛に溺れ、奢り続けたのだろうか?
再び、あの著書を読んだ後の、何とも、後味の悪い気分になってしまった。