合掌

2006/06/10

注意:食事の前後に読むことは、避けた方がいいと思う。

『食肉センター』 と言う名称は、自分たちの食卓の上の、
美味しい肉を連想させますが、要するに屠殺施設に他なりません。
そもそも、人が生きると言うことは、他の命と引き換えにしているに過ぎません。
その認識を持ってこそ、食への感謝が生まれます。命の尊さを実感します。
ゲーム社会に育つ児童の多くが、生はリセットできると思っている現在、
死を現実のものとして捉えられる社会にする必要性が求められています。
教育的配慮などと小ざかしい言い訳で、格好良く 『食肉センター』 などと称すよりも、
堂々と 『屠殺場』 と銘打つ方が、教育的配慮に優れているようにも思います。

かつて、豊田市食肉センターの計量施設改修工事で、しばらく、現場に
通ったことがあるのですが、施設に近づくに連れ、異臭が増して行きます。
昨今のアメリカ牛肉輸入問題を受け、家畜の解体されるシーンなどは、
テレビ映像などを介し、お目にかかっているとは思うのですが、
その場の におい までは想像もつかないと思います。この行程なしに、食肉が
食卓に上がり、人間様の口に入ることはないわけで、くさい などと言うのも
おこがましいのですが、とにかく、想像以上の におい が立ち込めています。

家畜たちは解体され、各部位に分別され、最後に残った物、要するに
消化器官の内容物、いわゆる汚物をストックする場所があるのは当然の
ことであり、それが異臭の原因となっています。
たぶん、堆肥等に再利用されるとは思うのですが、その場所と言うのは、
簡単な屋根と、あとは三方を、人間の背丈ほどのコンクリート壁で囲んだだけの、
いわば、半分、野ざらし状態で、そこから発せられる におい は、風の向くまま、
気の向くままの状態です。

改修工事は冬の時期でしたが、そのスポットは発酵する熱で湯気が立ち上がり、
そればかりか、目を凝らすと、その湯気の向こう、汚物の表面がうねっています。
蛆(うじ)の大群です。更に、多分、必要な作業で、決して、嫌がらせ?ではないと
思うのですが、一定時間ごとにショベルカーでひっくり返すから、もう大変です。
異臭発生に拍車をかけていました。

当時、弁当持参の慎ましい生活をしていたのですが、構内で、その蓋を開けることに、
かなりのためらいがありました。それでも、不思議なもので、3日も経てば、
絶対、慣れないと思っていた におい も、気にはなるけれども、気にしなくなり?ました。
悪臭の中、例えるならば、ポットン便所の中、平気で、弁当の蓋を開け、
ランチタイムを堪能できるようになった自分を、自分ながら適応能力にたけた
(鈍感な?)野郎だと感心しました。

そんなある日、牛を5、6頭乗せたトラックが施設内に入ってきました。
牛たちは、いつもと違った雰囲気と におい に対し、かなりの警戒感を持ったようで、
荷台の前部分に寄り集まっています。

それでも、係員たちは鼻輪にかけたロープを引っ張り、尻を叩き、無理やり降ろそうとします。
悲鳴にも似た鳴き声を上げ、精一杯腰を引く抵抗も空しく、全頭が施設内に消えたのですが、
その鳴き声は続いていました。牛たちは、これから始まる(自分たちが終わる?)出来事を、
動物的な勘で察知していたに違いありません。



牛に突進され、三重県公社職員重体
四日市食肉センターから逃走
 4日午前6時50分ごろ、三重県四日市市新正の市食肉センターから、
トラックで運び込まれた食用牛1頭が逃走した。
近隣の女性から通報を受けた署員らがパトカーなどで追跡。
約50分後、センターの北東1キロの駐車場に追い込んだが、
捕獲しようとした同市寺方町の県四日市畜産公社業務部長、
川村和美さん(56)が牛に突進され、頭を打ち意識不明の重体。
牛もそのまま金網フェンスに頭を打って死んだ。

 四日市南署などの調べでは、逃げ出したのは、
福島県塙町から搬送された3歳雌の食用牛で体重730キロ。

 センターは、同公社が運営。
食肉処理する牛の係留場前に男性運転手(55)がトラックを止め、
1頭ずつロープを引いて係留場に移した際、1頭が何かの音に驚いて暴れ、
運転手がロープを離したすきに門が開いた敷地出入り口から逃げた。

 牛は近鉄四日市駅やJR四日市駅周辺の市街地計6・3キロを走り回り、
片側2車線の国道1号も二度横断。追跡した公社職員によると、
人間が全力疾走したほどの速さだったという。
牛の逃走時、センター内には運転手以外に守衛1人しかいなかった。
(6月5日付新聞より)



怪我をされた方の回復を祈る思いは当然なのですが、牛にすれば、
自分の人生を終えたくない一心の行動、あまり責める気持ちになれません。

4、5年ほど前、三ヶ日の山あいにある保育園まで配達していたときの出来事です。
進む小道の突き当たり、T字部分の道向こうに、何か白くて大きな物体が見えました。
居るはずのない生き物が悠然と路傍の草を食べています。体長2m以上、
体高も、大人の胸辺りまであろうかと言う、丸々と太った豚です。
すぐ脇まで車で近づいても逃げる気配すら見せません。

そこまで落ち着かれると妙なもので、豚の居る風景に違和感を感じなくなりました。
それに、しばらく見ていると、情が移り、かわいらしくさえ見えてきました。
いずれ、変わり果てた姿になる運命、しばしの平和を楽しませてあげようと、
そのまま、そうっと現場を後にしたのですが、すぐそばには、保育園もあり、
やはり、通報すべきだったのでしょうか?

豚が保育園に進入! 一部、乱暴な・・・

保育園児に追いかけられる!


と言う可能性も十分ある訳で・・・。


人間様の居住空間において、牛は繋がれるべきもの、

しかし、豚には放し飼いの姿がよく似合う?

あの豚は今頃、いったい、どうしているのだろうか?

合掌