サマースクール旅日記 (August.2000)
 
     
 

8月5日(土)リトル ベニスからの小船旅

適度な堅さのベッドのおかげで熟睡し、気持ち良く起床。ところが目の前が不自然に白っぽくかすんでいて、良く見えない。どうしたちゃっんだろ、とよくよく考えてみると、昨日の夜はコンタクトをはずし忘れていたのだった。いつもはO2をはめているのだけれど、旅行の時にはソフトにしている。あまりに装着感が良かったので、着けていることをすっかり忘れてしまったのだ。
またしても、が〜ん。旅の第1日目で角膜に傷でも入ったら一大事だ。とりあえずいつものようにまず寝起きのお茶を飲んでから、目薬を多めに挿してレンズが浮いた感じがしたところで、ゆっくりはずしてみた。大丈夫、痛みはない。
はぁ〜、良かった良かった。ちょっと不安だから、外出する直前まではめがねでいることにする。それにしても、今年は思いもかけないことが起るなぁ。2度あることは3度あるというし、覚悟しておこう。


オレンジジュースとセルフサービスのシリアルは食べた後。
地下に下りると、昨年いた小父さんではなく、はきはきした女性に替わっていた。
イングリッシュ ブレックファーストは、相変わらず豪華だ。他に人がいないのを幸いにカメラでバチリ。

部屋に帰って無事コンタクトレンズも正常にはまると、このまま学校に行くのはもったいない気がしてきた。外は日光が燦燦と降りそそいで、よい天気。
そうだ、 前から行きたいと思っていた運河巡りに行こう。さっそくチェック アウトして荷物を預かってもらうと、出かけることにした。

出発地のリトル ベニスは、地下鉄駅の裏手。そこからロンドン動物園を経由して、マーケットで有名なカムデン ロックまで1時間の船旅が楽しめる。
運河につくと、独特の細長いボートが待っていた。他には誰もいなくて、私が一番乗り。写真を撮りやすい席に座って待つこと15分。すごく静かで、まるでロンドンではないみたいだ。テムズ川くだりよりずっと落ち着いた感じで、一人旅に似つかわしい。
出発時間になる頃には、狭いボートがほぼ満席になった。粋なTシャツ姿の小柄な若い女性と、細いけれど逞しそうな男性がとも綱をはずして乗り込み、いよいよ出発だ。

水は緑色で「きれい」というわけじゃないけれど、風が涼しくて心地よく、見上げるお屋敷街も美しくて、快適な船旅。橋の上がレストランになっていたりするのも面白い。ちょうど子育てのシーズンなのか、カルガモや小型のクイナの雛が沢山泳いでいて可愛らしかった。

途中London Zooで何人か親子連れが降りて行き、あっという間に1時間経って終点に着いてしまった。

カムデン ロックはうって変わったような賑やかさ。面白そうだったけれど、ここで引っ掛かると学校に行くのが遅くなってしまう。群れ集う人ごみを見ながら、またまたサンドイッチの昼食を取って、ホテルで荷物をピックアップするとワットフォード行きの列車に乗った。

今年は独りなので、駅からはタクシーを使わずバスで行くことにする。バス停で待っている間に町の地図でも見ようと、手荷物を開けようとして凍りついた。鍵が開かない… ナンバーをそろえて開けるタイプの南京錠を付けているのだけれど、朝荷造りした時にうっかりロックを動かしてしまって、違うナンバーで鍵をかけてしまったらしい。
がーん、ついに来てしまった、3度目が。このカバンの中には、レッスンの時に必要なノートなど、わりと大事な物ばかり入れていたので、今度は結構ショックだった。ジム先生が「大丈夫だよ、Setsu」と言いながら、ナイフでザクザク鞄を切っている図など浮かんできて、目の前が暗くなる。
バスが来るまで30分、時間をつぶすつもりで頑張ろう。そんなにずれたナンバーになっているわけじゃないと思うから、100通りくらい試したら開くんじゃない? と、自分を慰めて、周りの人のいぶかしげな視線を浴びつつ、鍵と格闘すること20分。ついにカチリとはずれた時には、「やったー」という元気もなく、ただため息が出ただけだった。

無事学校に着いて部屋に行ってみると、今年は1階。窓が開けられないし日当たりが悪いけれど、荷物を持って入るのは楽だ。
荷解きは後回しにして、ダイニングに集まっているメンバーに挨拶に行く。いよいよサマースクールの始まりだ。トラブルはもうお終いになっていることを祈る。