急変と最期

[2000.8.14]

明け方からもーちんの容体が急変。ひどいアシドーシスを起こし、 呼吸状態もかなり
悪いので、挿管して再びIVHを取る。 アシドーシスを改善する為にいつもの様にメイロン
を(原液で)入れるが午前中は血液ガスのPhが全く改善されず、尿も出ない厳しい状態。
私達が病院に着いた時点で「あと1時間同じ状態が続いたらダメです」と 言われた。
原因についてはCRPが陰性なので感染などからでは無く、単純に元疾患(ミトコンドリア病)が
大きく動いたのではないか、との事。
他に心臓の動きを助ける為にイノバンを投与、利尿剤と抗生剤も入れる。
白血球数は2万にもなってしまい、熱は39度を越え、心拍は170台で意識は全く無い。
血液ガスは1時間おきに測定。末梢のAラインも確保。酸素の値は80台後半
胸の音もひどくてかなり痰が溜まっているようだが吸引してもほとんど引けない。

日記より。。。
昨日までは心拍が高い事を除けば割と安定していたと思っていたのに・・・
朝、先生から電話を受けた後、パパの携帯が繋がった途端「ダメだと思う」と言ってしまった。
情けないけど今回ばかりは厳しすぎる。呼吸器を入れているが意識が無いのに喘ぎが
ひどくて呼吸器とぶつかり合い、見てられない程に苦しそう。
シリンジポンプの数も今までで1番多く、体中管だらけになってしまった。。。
どうして急にこんな事になってしまったんだろう、来るべき時が来てしまったのか?
怖い、何も考えたくない。

の日から約1週間、もーちんは生死をさまよい続けます。
いつどうなってもおかしく無い
状況の中、もーちんは何度も持ち直し、
「生き続ける」力強い姿を私達に見せてくれました。

この日も「後1時間・・・」と言われたすぐ後からアシドーシスに改善が見られ、
最悪の状態からは脱したのでした。


[2000.8.15]

利尿剤が効いた様で、明け方からやっとおしっこが出始める。
朝には意識も戻り、目を開けてパチパチして痛みにも反応したとの事。
治療としては昨日に引き続き、末梢とIVHを使って、メイロン・抗生剤・イノバンを投与し、
更に今日はむくみが出たのでアルブミンと血小板を入れる。
今日も1時間おきに採血を行い血液ガスの測定をしているが、アシドーシスの方はかなり
改善されて正常値との境目を行ったりきたりするまでに快復してきた。
昨日の時点では炎症反応が出ていなかったが、今日なってCRPが20と出たので、
何かしらの感染も今回の急変の一因になったと思われる。
呼吸の方は昨日はあまりにひどいアシドーシスの為にあえぎがひどく、息を吸いすぎて
呼吸器とぶつかり合っていたが、良いのか悪いのか今日はすっかり呼吸器に乗ってしまい、楽に
呼吸をしている。ただなるべく早めに抜管したいので、常に設定を替えてあくまでも呼吸器は
アシストという形をとる。今日は最終的には酸素の設定を50%にしても酸素値は100%を保てていた。
血圧も落ち着き、心拍も120台まで下がる。熱も平熱。

日記より。。。
昨日はもう正直ダメかと思ったけど、一転して今日はすべてが良い方向へ向かっているので
安心した。(本当に良く頑張ったね、もーちゃん)ただ先生からは油断は出来ないと言われているので、
もしもの事を考えて、ママと
桂子を病院に呼んでもーちゃんに会ってもらった。今までも何度か厳しい
状況に追い込まれた事は
あったけど今回が1番厳しい気がする。意識が戻ったのは良かったけど、
その反面、痛みや
苦しみを感じなければならないのがかわいそう。とにかく少しずつでも良いから
確実に
良い方向へ向かう事を願うのみ。良くなったらすぐに家に連れて帰ろう。


[2000.8.16]

今日になって後追いでCRPが更に28まで上がってきたが全体的には安定している。
呼吸器の設定も45まで下げる事が出来た。このまま安定していけばなるべく早い段階で抜管へ
持っていくとの事。ただ、またひどいアシドーシスがもし来たら、その時はもう、持ちこたえられない
だろうと言われた。

日記より。。。
昨日よりも更に安定してきている。本当に良かった。ただ今回のアシドーシスで壊れた細胞の
箇所については安定してからの検査で初めて分かるらしいので、それがちょっと怖い。
あとアシドーシス改善の為に原液で大量に入れたメイロンの副作用が少し出ているので
それも心配。
でも、悪い事はあまり考えず、とにかくまずは抜管目指して頑張ってもらいたい。





[2000.8.17]

また少しだけ、アシドーシスに傾いてきたのでメイロンを入れる。それから、手足と顔に浮腫みが

出たのでアルブミンも投与。しかし他は今日も安定していて、呼吸器の設定も35まで下げる事が出来た。

順調に回復の方向へ向かっていると思っていたので、この日も安心して家に帰りました。
しかし翌日、通常通りの面会時間に病院へ行くと、そこには14日に急変した時よりも
更に厳しい
状態になってしまったもーちんが居たのでした。。。



[2000.8.18]

17日のPM10:00から呼吸状態が悪化し始めたので調べてみたら、またしてもひどいアシドーシスを
起こしていたとの事。また尿が出なくなってしまったので利尿剤を使う。
今回は急性の肺障害も起こしていて、肺炎なのか水か溜まっているのかまだ分からないが
肺の70%がすでにダメになってしまっているとの事。呼吸の方は昨晩機械の設定を100%にしても
乗らなくなってしまったので、機械を替えたが朝方にまた乗らなくなってしまったので、手で
バックして酸素の値を上げてから、元の呼吸器に戻して何とか乗せる事が出来たらしい。
意識はナシ。後は本人の生命力次第との事。

日記より。。。
少なくとも昨日、私が帰るまでは安定していたと思っていただけに、ショックだった。
こんなに短い間に2度もひどいアシドーシスが起こしてしまってはもうダメだ。
どうしてこんな事になっちゃたんだろう。昨日最後に見たあの子はどんな様子だったろう。
意識のあるうちに無理を言ってでも抱っこさせてもらえば良かった。もーちゃんごめんね。
つらいかも
知れないけどもう1回だけ頑張って。



[2000.8.19] 

状況的に更に厳しくなり、ついに肺の90%がダメになってしまった。呼吸器は設定を
酸素100%にプラス圧をめいっぱい掛けてやっと乗っている状態。酸素の値は94くらいを
何とかキープしている。利尿剤は続けているが今日も尿は全く出ない。


日記より。。。
昨日も今日もいつダメになってもおかしく無い状態なのに、もーちゃんはがんばり続けて
いる。この状態で心臓が動いている方が不思議らしい。。。おしっこが全然出てないから
浮腫みがひどくなる一方でかわいそう。一体どうなってしまうんだろう。頭がおかしくなりそうだ。



[2000.8.20] 

メイロンを止めるとすぐにアシドーシスになってしまう。代謝性のアシドーシスに加え
ついに呼吸性のアシドーシスも起こしてしまった。しかもアシドーシスなのに高ナトリウムという
治療方法が全く正反対の症状が一度に出てしまっていて、この上ない最悪の状態。
もう手立てが無いので
今更だが、ステロイドを投与してみる。朝方に呼吸器に乗らなくなってしまい、
かなり長い時間、先生が手でバックしてくれてやっと呼吸器に乗せたとの事。酸素の設定は90%で圧は強め。

日記より。。。
今日、面会前にデパートに寄って、もーちゃんの秋物の服を一式揃えた。もーちゃんはもうあまり
動かせ無い状況になってしまったので、昨日から着替えが出来ない状態の為、せっかく用意した服も
着せられないなぁと思っていたら、Hさん(ナース)がハンガーを持って来てくれて
「着せることは出来ないけど、ベッドから見えるところに服を掛けてあげましょう」と言ってくれた。
もーちゃんには「良くなったら、あの服をが着れるよ」と耳元で何度も言って聞かせた。


浮腫みのせいでお腹が妊婦の様になってしまったので、パジャマのズボンのゴムを切った。
もう浮腫みは限界を超えている。
大人並に利尿剤を入れているがそれでもおしっこが全く出ないのでHさん(ナース)が
導尿を試みてくれた結果20ccの尿が出たので、リカバリー中に拍手が起きた。
皆さんのその優しさにうれしくて泣けてしまった。ホントにナースの皆さんは一所懸命やって
くれている。夕方、MさんとFさん(以前のお世話になったナースさん達でMさんはもーちんの
プライマリーナースだった方)がもーちんに会いに来てくれた、ホントにうれしかった。
もーちゃんも最後に大好きなMさんに会えてきっとうれしかったろう。
それからこの日はもーちゃんの大好きなたる君のママ(あきちん)も、もーちゃんに会ってくれた。
うれしかった。。。
ホントはもっと多くの人に会ってもらいたいけど、部屋の性質上などからそうはいかないのだが、
もう最後だから会える人には会わせてやりたい。ホントにもうお別れはそこまで来てるんだから。

今日は患者会の方々に電話で直接相談してしまった。突然の電話にも関わらず

皆さんとても親切にアドバイスをしてくれた。ゆうぱぱさんは夜うちへ電話をしてくれて
ゆうちゃんが頑張った時の状況などを話して下さったので、とても参考になったし、励まされた。
ありがたい。。。もーちゃんは今日も頑張っている。でもつらい、見てるのがつらい、もう、いいよ、もーちゃん。 



[2000.8.21] 

明け方に両肺がほぼ潰れてしまい、心臓に負担が掛かり始めたところで病院に呼び出され、
ご近所にお住いの患者会のYさんに病院まで送って頂いて、AM7:20病院へ着く。
今日も浮腫みがホントにひどい。病院へ着いた時は若干落ち着いていたが、AM9:00過ぎから
全く呼吸器に乗らなくなり、ついに厳しくなって来た時に看護婦さんから「お母さん抱っこして上げて下さい」と
言われて私の腕の中で処置が行われ、「あーこれで終わり、お別れなんだ」と思った矢先に持ち直した。
そんな余力がもーちゃんの体に残っていたとは思えないので、ホントに驚いた。まだ頑張れるの?もーちゃん。

その後はほんの少し残ってる肺の使える部分をパンパンに初めから膨らましておいて酸素を送る
設定に
替えたところ、うまく呼吸器に乗りはじめた。ただ相変わらず尿が一滴も出ていない。

日記より。。。
もーちゃん、苦しいかな、ごめんネ、もう頑張らなくても良いよ。本当にごめん。
ママはもーちゃんを健康に生んで上げられなくて
本当にゴメンネ。
おしっこが出ない。もうこれ以上苦しめないで下さい。




最後の日

AM7:00過ぎ、心拍が下がり始めたとの連絡を受けて病院へ向かう。病院へ着いたのがAM8:30。
着いた直後は心拍90台で酸素値が80を切る度に呼吸器からアンビューに替えて主治医のI先生と
研修医の先生方で交替に手でバックして、95くらいになったら呼吸器に戻すという事を繰り返していたが、
途中でサチュレーションが拾わなくなってしまったので、心拍の値を目安に変えて、90を切ったらバックする
事にする。
しかし徐々に心拍が下がってきて、80切ったらバック、70切ったらバックとしているうちに
50も切る様になって
しまい、そこからは40、30、20とあっと言う間に下がっていって、そこからはI先生が
ずっと手を止めずに
バックし続けてくれたが、ついに心拍0となりA先生が心臓マッサージに入ったが
もーちんは2度と返って来る事は無く、
午前11時10分天国へと旅立った。

日記より。。。
もーちゃん、いっぱい、いっぱいがんばってくれてありがとう。ごめんね。
ママはこれからどうしようか。もーちゃんが居なくなったら、何も無いよ、
ママには何もないよ、ごめんね。