<秋(一)>
あかのまんま
「此辺の道はよく知り赤のまゝ」高浜虚子
あきかぜ
「大木の根に秋風の見ゆるかな」池内たかし
あきすむ
「水涼し秋澄む関のかざり鎗」蓼太
あきのあめ
「秋の雨しづかに午前をはりけり」日野草城
あきのくれ
「童部の独り泣き出て秋の暮」許六
あきのこえ
「北上の渡頭に立てば秋の水」山口青邨
あきのそら
「上行くと下来る雲や秋の空」凡兆
あきのた
「秋の田を刈るや白鷺人に近く」山口青邨
あきのひ
「水底の草にも秋の日ざしかな」高橋淡路女
あきのひ
「燈も秋と思ひ入る夜の竹の影」臼田亜浪
あきのみず
「はけどころなかりし秋の水いつか」杉山一転
あきばれ
「秋晴や囚徒殴たるる遠くの音」秋元不死男
あきふかし
「東京を好みて詠みて秋ふかし」中火臣
あさがお
「朝顔に喪服の人のかヾむかな」瀧井孝作
あささむ
「朝寒の膝に日当る電車かな」柴田宵曲
あしかり
「蘆刈の人現れて帰りけり」高浜虚子
あまのがわ
「夜の散歩銀河の岸に添ふ如し」井沢正江
いざよい
「いざよひや闇より出づる木々の影」樗良
いなすずめ
「稲雀風の形をつくりけり」米澤吾亦紅
いなずま
「稲妻のゆたかなる夜も寝べきころ」中村汀女
いね
「中学生朝の眼鏡の稲に澄み」中村草田男
いねかり
「誰かいま押せる気配や稲車」草野駝王
いも
「芋の葉の八方むける日の出かな」石田波郷
いわし
「鰯食ふ大いに皿をよごしては」八木林之助
いわしぐも
「鰯雲出てゐたる日の東京市」池内たかし
うずら
「縫物に針のこぼるる鶉かな」千代女
うらがれ
「末枯の陽よりも濃くてマッチの火」大野林火
おぎのこえ
「荻の声舟は人なき夕べかな」闌更
おちあゆ
「雨脚のうつろひ疾く鮎落つる」角川源義
おちぼ
「落穂拾ひ日のあたる方へあゆみ行く」蕉村
おどり
「我を遂に癩の踊の輪に投ず」平畑静塔
おみなえし
「日蔭より伸びて日南や女郎花」酒井黙禅
かえで
「沼楓色さす水の古りにけり」臼田亜浪
かがし
「物の音ひとりたふるる案山子かな」凡兆
かき
「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」正岡子規
かり
「雁啼くやひとつ机に兄いもと」安住敦
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