<冬(一)>
あじろ
「宇治山に残る紅葉や網代守る」高浜虚子
あられ
「草の根に走り溜れる霰かな」富樫菰聖窟
いつる
「星冱てて人のこころに溺れけり」松村蒼石
おしどり
「静かさやをしの来て居る山の池」正岡子規
おちば
「雄鶏や落葉の下に何もなき」西東三鬼
かいつぶり
「かいつぶりさびしくなればくヾりけり」日野草城
かえりばな
「汗拭いて米搗く僧や帰り花」蓼太
かき
「牡蛎食ふやテレビの像に線走る」田川飛旅子
かざはな
「やんでゐし風花のまた小松原」有働亨
かぶ
「蕪白し順緑に母送らねば」眼迫秩父
かも
「鴨啼や弓矢を捨て十余年」去来
かり
「犬の眼と鋭さ同じ猟夫の眼」松村竹炉
かれあし
「枯蘆や難波入江のさヾら波」鬼貫
かれおばな
「吹きあてゝこぼるゝ砂や枯芒」松本たかし
かれぎく
「炭屑に小野の枯菊にほひけり」几董
かれの
「枯野はも縁の下までつヾきけり」久保田万太郎
かれはす
「枯れ蓮のうごく時きてみなうごく」西東三鬼
かれむぐら
「あたたかな雨がふるなり枯葎」正岡子規
かんがらす
「寒鴉己が影の上におりたちぬ」芝不器男
かんぎく
「寒菊や粉糠のかゝる臼の端」芭蕉
かんごい
「寒鯉の雲のごとくにしづもれる」山口青邨
かんすずめ
「天の国いよいよ遠し寒雀」西東三鬼
かんつばき
「寒椿落ちたるほかに塵もなし」篠田悌二郎
かんのうち
「くわりん落ち木瓜守りけり寒の内」籾山梓月
かんぶな
「水を釣って帰る寒鮒釣一人」永田耕衣
きた
「北風に言葉うばはれ麦踏めり」加藤楸邨
こおり
「氷上にとぼしき蜆掻きあげぬ」木村蕉城
こがらし
「木がらしや目刺にのこる海の色」芥川龍之助
このは
「木の葉ふりやまずいそぐないそぐなよ」加藤楸邨
こはる
「小春日や石を噛みゐる赤蜻蛉」村上鬼城
さざんか
「山茶花や暫く絶えて又一つ」杉山一転
さむし
「傷兵にヒマラヤ杉の天さむざむ」横山白虹
さゆる
「風冴えて魚の腹さく女の手」石橋秀野
しぐれ
「折りもてるものをかざして時雨けり」富安風生
しも
「霜の墓抱き起されしとき見たり」石田波郷
すいせん
「水仙や古鏡の如く花をかゝぐ」松本たかし
すみ
「学問のさびしさに堪へ炭をつぐ」山口誓子
せつぶん
「節分や肩すぼめゆく行脚僧」幸田露伴
せんりょう
「いくたび病みいくたび癒えき実千両」石田波郷
そうばい
「早梅や深雪のあとの夜々の靄」増田龍雨
ぞうすい
「雑炊もみちのくぶりにあはれなり」山口青邨
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