俳句四季6月号に「俳句にアクセス」として掲載されたもの、お読みいただく機会がなかった方のために再録いたします

 このHPを覗いていただいている方には、いわば釈迦に説法の話ではありますが、ま、おなぐさみまで、ご講評をいただければ幸いです


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十五年経ってみると

                    森  利 孟   

 PC歴は15年、今家で2台、外とオフィスで各1台を使っています。
 15年前のPCと俳句の相性は劣悪、まず文字は16ないし24ドットのJIS規格による様々の珍妙な略字と文字の不足、印字は縦書きでも画面上では横表示という状況でした。
 それでもこのような制約に目をつぶれば、句会報の制作やらこんなに便利な道具もないわけで、私が制作しております春月主宰の戸恒東人の指導する原宿句会の句会報では、小冊子形式で一人1頁、裏表印刷、点盛り順の掲載というレイアウトをプログラムで自動化してデータ入力が終われば直ちに版組も終了、暇なときに印字や綴じの作業を行い2、3日後には句会報を発送という段取りもPCならではでした。
 扉主宰の土生重次の全句データベースでは季語で分類したり、頻出の用語を抽出するとか、「かな、けり」を使った句を検索などと遊んで見ると「かなかな」なんてのも見つけてくれたり、「風の句集」(本阿弥書店刊)の基礎資料ともなりました。(注:編集の原田紫野氏にご利用願いました)
 日常的には自作句のファイル化は当然ながら、投句の抜き書きと、投句記録の書き込みをマクロで一体化し、二重投句や、写し間違いを防ぐといった使い方もしています。
 また、エクスプローラ5.5により縦書き表示のホームページが作成できるようになり俳句らしい表示が可能になったのも嬉しいことです。
 旧仮名遣いの入力も、一太郎なら動詞の多くはハ行四段活用での単語登録で対応が可能という具合に、多くの制約は解消されつつあります。
 願わくば、当用漢字の正しい字体の実現、あるいはユニコードによってカバーされつつあるものの必要不可欠な漢字の提供と言った問題の解消、さらにはCD版あるいは電子辞書タイプの歳時記の充実が待たれるところです。
 また、メールのやりとりにより小さな句会を指導していますが、今後iモード、Lモードが俳句世代に普及すれば、リアルタイムのネット句会も容易になりますから、遠隔地、病床など仲々に句会に参加できない会員にとってもヴァーチャル句会への参加で俳句はより楽しいものとなるのではないかと思います。
 このように最近の技術の進歩により、PCと俳句は、存外相性の良い組み合わせにななっているようです。
 しかしかくなるPC派の私ながら、実作は吟行のみならず日常でも万年筆と句帳がもっぱら、こればかりは仲々変えられないものです。

             【俳句研究2000/6月号掲載】