第109回原宿句会
平成10年7月6日 赤坂アビタシオンビル

   
兼題 玉虫 円座 松葉牡丹
席題 七夕


  東人
湿りたる円座に禰宜の坐り皺
衣ずれの音きらめかせ織女星
愛染祭のうぜんかづらの造花売る
玉虫の火を取りに来て激し
手の窪に松葉牡丹の種子を選る

  希覯子
  関口芭蕉庵
像五つ円座五つの芭蕉庵
伸子張り松葉牡丹のかたへより
玉虫のその名に背く姿とも
日照草開かずの門と知つてをり
七夕や母子の思ふこと違ふ

  千恵子
星座図に星の名拾ひ星祭り
法話聞く尻に円座の固さかな
岬への道幾曲がり合歓の花
青き水流れ玉虫飛びにけり
とりどりの色に陽を込め日照花

  法弘
潜水橋より七夕の竹流す
魚板なる松葉牡丹の静けさに
玉虫を殺し密かに持ち歩く
迎へ火や下駄ちぐはぐに突つかけて
しゆるしゆると畳みをすべる円座かな

  白美
玉虫や螺鈿を競ふ青のいろ
帯少し崩して結いし円座かな
七夕や一つ欠けたる夫婦茶碗
松葉牡丹小石で囲ふ花壇越え
ふくよかや円座飛び出す足の指

  箏円
看護婦が短冊くばる星祭
蔭もなし松葉牡丹や時報打つ
ほほづき市黒門町の格子消ゆ
本道の円座に猫の眠りけり
殊もなし玉虫とらふ駅あかり

  利孟
重ねたる隙の冷たき円座かな
七夕竹切符吐き出す改札機
肢が宙掻き玉虫の骸かな
松葉牡丹の垣の影へと検針員
音声に僅か時間差半夏生

  正
バス停は松葉ぼたんの咲ける家
円安やドル売り介入明易し
円座敷き聴くヘンデルや夕ごころ
玉虫や肩で風切る洒落男
七夕に始まる円売りニューヨーク

  隆
円座より足はみ出して笊豆腐
玉虫や古樟脳の匂ひをり
パグ犬や松葉牡丹の中走る
青白き手相を握る螢狩り
七夕や木に括らるる竹青し