第8回原宿句会
平成3年7月10日

   
兼題 夏痩せ 向日葵 夕焼け  
席題 鰺  


  東人
夏痩せや出る一方の葬祭費
向日葵やキャラバンサラエの素掘り井戸
鯵を焼くぜいごを剥げば高級に
山麓を向日葵畑絹の道

  京子
魚河岸の裸電球鯵光る
夏やせはどなたがことぞ酒うまし
夏痩せとうなじ青みし恋やつれ
夕焼けすビル電線の向こう側

  玄髪
さかんなる向日葵の下照りかへり
夕焼けて吾子を呼ぶ母語尾長し
妻返へしひとり鯵焼く廚かな
夏痩せや妻の寝息の気に障り

  重孝
格子戸の前で向日葵おいでやす
信州で見た夕焼けは絵に描けず
びゅんびゅんと後追いかける鯵の群れ
夕焼けに想ひををのせて西の方

  白美
向日葵やゆるり電車が野を走る
猥談も竿より漏るる開き鯵
夕焼けや前略のみで筆を置く
夏痩せの父麦とろを人啜り

  健次
山途切れ夕焼けの海波静か
夏やせとささやく女性を軽く抱き
群れをなす鯵の姿や水族館
夕焼けを眺めて飽かぬハイキング

  利孟
向日葵や牛乳瓶を頬につけ
夕焼けを山猫の馬車駆け抜ける
夕焼けやグラスの氷ちと揺らす
テトラポッドさびきに鯵の連なりて

  美子
鯵爆ぜる音添えて出す夫の前
ヒマワリがサンバを踊りつつ伸びる
夏痩せて小さく笑う母となる
厖大な活字に埋もれ夕焼ける

  大和
夏痩せや立木の上に大日輪
夏痩せやだらりだらりと通勤路
夏痩せや昨夜の宴胃に重く